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仙台高等裁判所 昭和25年(う)375号 判決 1950年7月20日

被告人

高橋タマキ

主文

本件控訴は之を棄却する。

理由

弁護人石塚與八郞の控訴趣意第一、(1)、(2)、に付て。

所論、原審証人藤澤甲市及び同伊藤淸三の証言を綜合しても、被告人が、本件被害発覚直後、右両証人及び鈴木惣治郞の面前に於て犯行を自白したことが、右鈴木惣治郞の強要に依つたものとは認められず却つて、自己の自由意思に依るものと認められるから、原審が被告人の右自白の顛末を供述している右両証人の証言を事実認定の資料に供したことは何等違法ではない。又、右両証人の証言は被告人の言動に付其直接聞き且つ見たことを其内容として居るのであるから是は傳聞証言ではなく、証據能力を具有して居ること勿論で、原審が之を援用したことは違法ではない。論旨は理由がない。

(弁護人石塚與八郞の控訴趣意)

第一、犯罪事実の誤認

(1)  原判決は証人藤澤甲市、伊藤淸三の傳聞供述を証拠として、被告人の犯行であると認定した。けれど、被告人は其犯行を否認しておつたのだが、司法委員鈴木惣治郞の強要に会い、心ならざる自白をしたものであることが、同証人等の供述によつて窺知せらるる。

即ち、被告人の供述は任意にされたものでない疑があるから、之を証拠とすることは許されないものである(刑訴三二四ノ三1、三二二但三二五)

(2)  そして、前記の傳聞証拠の他には被告人の犯行なりと認むべき証拠はないのにかかわらず、被告人が之を犯したものと認定したのは事実の誤認である。

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