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仙台高等裁判所 昭和24年(新を)602号 判決 1950年7月31日

被告人

玉井惠子

主文

原判決を破棄する。

本件を青森地方裁判所八戸支部に差し戻す。

理由

弁護人川村彌永吉の控訴趣意第一点

性病予防法第五条に依れば、同法にいわゆる性病とは梅毒、リン病等を指称し、伝染の虞がある性病にかかつている者が、売いんしたときは、同法第二十六条の規定に依つて処罰を免れないところ、行為当時伝染の虞ある右の性病にかかつていることの認識がなかつたならば、同条に依る処罰の対象にはならないことは所論の通りである。然るに本件について、原判決摘示の証拠を検討するに、被告人が行為当時たる昭和二十四年七月二十六日から同月三十日までの間、売いんしたこと及び、同年八月一日現在において淋病の陽性者であることは認められるけれども、前示売いん行為を為した当時性病にかかつていたという事実は、記録上証拠となるべきものはなく、却つて被告人の原審第一回公判調書に依れば、被告人がハウスメードをしていた当時も、ダンサーになつてからも、進駐軍の命令で時々性病の検査を受けたが性病に罹つていなかつた、と供述しているのであるから、原審としてはすべからく、その検診医其の他の者につき証人として尋問する等、適切な方法に依り審理を尽した後でなければ、被告人に対し有罪の認定は為し得ないのに拘らず、漫然この点につき審理を遂げないで終結し、判決をしたのは審理不尽の違法があるものと謂わなければならない。

仍つて爾余の論旨に対する判断を為すまでもなく、本件控訴は理由があるから、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十九条に依り、原判決を破棄し、同法第四百条本文に則り、本件を青森地方裁判所八戸支部に差し戻すべきものとする。

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