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仙台高等裁判所 昭和24年(新を)520号 判決 1950年8月31日

被告人

齋藤俊一郎

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役一年及び罰金一万円に処する。

此の罰金を完納することが出来ない時は金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

但し此の判決確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

職権を以て調査するに、

原判決はその判示第一の(イ)(ロ)において被告人は昭和二十一年九月から昭和二十四年五月二十八日迄連日に亘つて自己の麻薬中毒症状緩和の為相当量の塩酸モルヒネを注射施用した旨の事実を確定し、しかも特段の事情を認定することなしに、右一連の行為の内昭和二十一年九月から昭和二十二年十一月十四日迄の部分は之を連続一罪とし、その後の行為は之を単独一罪として法令の適用をしている。併しながら、麻薬中毒患者がその中毒症状を緩和するため連日に亘つて麻薬を施用する場合は、その間その断絶を認むべき特段の事情のない限り、その犯意は単一のものであると解するのを相当とし、従つて其の間連日に亘つて繰返される行動は包括的に法律上一個の行為をなすものと解するのを相当とする。果してしからば、原審が前記の事実に対し、特に犯意の断絶を認むべき事情を示すことなしに前記のような法令の適用をしていることは、理由不備又は擬律錯誤の誤をおかしているものというべきで、原判決はこの点でも破棄を免れない。

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