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仙台地方裁判所 昭和55年(わ)86号 判決 1980年12月26日

本籍

宮城県石巻市立町二丁目一九番地

住居

同市立町二丁目七番一号

薬局経営

梶山貢

明治二七年九月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官大野恒太郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、自己の次女中嶋よしの夫である中嶋正彦が宮城県石巻市立町二丁目六番一二号で営んでいる中嶋外科医院の経理事務全般を統括していたものであるが、右中嶋よしと共謀のうえ、右中嶋正彦の業務に関し、同人の所得税を免れようと企て、架空仕入等を計上し、簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの中嶋正彦の総所得金額は八四九〇万一三〇九円でこれに対する所得税額は四三一三万三〇〇〇円であるにもかかわらず、昭和五二年三月一〇日、同市千石町二番三五号の所轄石巻税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は六二四七万九六六二円でこれに対する所得税額は二七二六万三四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一五八六万九六〇〇円を免れ

第二  昭和五二年一月一日から同年一二月三一日までの中嶋正彦の総所得金額は九五二二万八三八五円でこれに対する所得税額は五〇三五万一〇〇〇円であるにもかかわらず、昭和五三年三月一〇日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は六五四一万六一七〇円でこれに対する所得税額は二八七七万九六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税二一五七万一四〇〇円を免れ、

第三  昭和五三年一月一日から同年一二月三一日までの中嶋正彦の総所得金額は一億二七四一万四九〇九円でこれに対する所得税額は七三三三万三九〇〇円であるにもかかわらず、昭和五四年三月一三日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は八一七九万四三五五円でこれに対する所得税額は三九一一万八九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税三四二一万五〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通(証拠番号乙一号証-以下、単に乙一のように表示する-、乙二)

一  国税査察官作成の昭和五四年七月二六日付質問事項書(乙三)

一  被告人作成の同年七月二七日付「質問答」と題する書面(乙四)

一  国税査察官作成の同年七月二七日付再質問事項書(乙五)

一  被告人作成の同年七月二七日付「再質問答」と題する書面(乙六)

一  国税査察官作成の同年七月三〇日付質問事項書(乙七)

一  被告人作成の同年七月三〇日付「質問事項答」と題する書面(乙八)

一  国税査察官作成の同年八月三日付「預金等の内訳明細の確認について」と題する書面(乙九)

一  被告人作成の同年八月三日付「答」と題する書面(乙一〇)

一  中嶋よしの検察官に対する供述調書四通(甲四三ないし四六)

一  中嶋よしの大蔵事務官に対する質問てん末書二通(甲二七、三一)

一  中嶋正彦の検察官に対する供述調書(甲四〇)

一  石母田忠子の検察官に対する供述調書二通(甲四一、四二)

一  石母田忠子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(甲二二、二八)

一  菅原昭夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲四七)

一  検察事務官作成の電話聴取書(甲一〇)

一  大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面(甲一一)

一  中嶋よし作成の「診断書作成料調」と題する上申書(甲一三)

一  石母田忠子作成、中嶋よし提出の「雑収入(赤電話の委託手数料)の収入除外額について」と題する上申書(甲一六)

一  中嶋よし作成の「売店の売上について」と題する上申書(甲一七)

一  中嶋よし作成の「入院患者分の暖房料について」と題する上申書(甲一八)

一  中嶋よし作成の「外来患者の暖房料について」と題する上申書(甲一九)

一  石母田忠子作成、中嶋よし提出の「架空仕入について」と題する上申書(甲二一)

一  中嶋よし作成の「経費の架空計上について」と題する上申書(甲二五)

一  中嶋よし作成の「上申書の訂正について」と題する上申書(甲二六)

一  中嶋よし作成の「入院患者まかない費について」と題する上申書(甲二九)

一  石母田忠子作成、中嶋よし提出の「架空等給料賃金について」と題する上申書(甲三三)

一  梶山陽子の大蔵事務官に対する供述調書(甲三四)

一  尾形良志美の大蔵事務官に対する供述調書(甲三五)

一  大蔵事務官作成の仕入及び買掛金調査書(甲二〇)

一  国税査察官作成の「架空仕入先等に対する書面照会の結果について」と題する調査報告書(甲二三)

一  大蔵事務官作成の減価償却資産に係る調査書(甲三二)

一  大蔵事務官作成の専従者給与等調査書(甲三六)

一  大蔵事務官作成の専従者控除額調査書(甲三七)

一  松岡巳三男作成の回答書(甲二四)

判示第一及び第二の事実につき

一  中嶋よし作成の「雑収入の除外について」と題する上申書(甲一二)

一  中嶋よしの「入院患者室料額について」と題する上申書(甲一四)

一  中嶋よしの大蔵事務官に対する質問てん末書(甲一五)

一  押収してある収入明細集計表五枚(昭和五五年押第五五号の七の一ないし五)

判示第一及び第三の事実につき

一  中嶋よしの大蔵事務官に対する質問てん末書(甲五八)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の昭和五一年分の脱税額計算書(甲一)

一  押収してある「五一年分の所得税の確定申告書」一綴(前同押号の一)及び「昭和五一年分所得税青色申告決算書」一綴(同号の二)

判示第二及び第三の事実につき

一  中嶋よしの大蔵事務官に対する質問てん末書(甲五七)

一  中川秀雄作成の「レントゲン装置の販売価額等について」と題する書面(甲五九)

一  押収してある見積書一綴(前同押号の一〇)及び当座口振込通知書等一綴(同号の一一)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の昭和五二年分の脱税額計算書(甲二)

一  押収してある「五二年分の所得税の確定申告書」一綴(前同押号の三)及び「昭和五二年分所得税青色申告決算書」一綴(同号の四)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の昭和五三年分の脱税額計算書(甲三)

一  中嶋よし作成の「診療収入の明細について」と題する上申書(甲三八)

一  中嶋よし作成の「昭和五三年分の雑収入除外額について」と題する上申書(甲三九)

一  中嶋よしの大蔵事務官に対する質問てん末書(甲五六)

一  石母田忠子作成、中嶋よし提出の「入院患者まかない費科目の実際額について(53年分)」と題する上申書(甲三〇)

一  押収してある「五三年分の所得税の確定申告書」一綴(前同押号の五)、「昭和五三年分所得税青色申告決算書」一綴(同号の六)及び収入明細集計表一枚(同号の八)

(法令の適用)

被告人の判示各行為は、いずれも所得税法二四四条一項、二三八条一項、刑法六〇条に該当するところ、情状によりいずれも懲役と罰金を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額以下において処断することとし、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役一〇月及び罰金五〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は高額に上る脱税事犯であり被告人の刑責は軽視できないものではあるが、本件において被告人が法の誤解から青色申告の場合には租税特別措置法二六条の優遇措置を受けられないものと考え、実質的にみて同条の援用をした場合に必要経費として認められる金額と同一割合の金額が必要経費となるように作為することを主たる目的とした犯行である点に特異性があること、本件についての修正申告による税額、加算税などがすべて納付ずみであること、犯行後被告人は中嶋外科医院の経理事務から手を引き、同病院では新たに公認会計士を依頼して同種違反防止の態勢がとられたこと、被告人の経歴、前科のないこと、年令、家庭の事情その他本件にあらわれた一切の情状を斟酌して主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する

(裁判官 渡邊達夫)

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