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仙台地方裁判所 昭和48年(モ)548号 判決 1990年4月24日

債権者

熊谷春男

右訴訟代理人弁護士

松倉佳紀

鈴木宏一

松澤陽明

債務者

株式会社本山製作所

右代表者代表取締役

本山重幸

右訴訟代理人弁護士

三島卓郎

主文

一  債権者と債務者間の当庁昭和四八年(ヨ)第九五号地位保全等仮処分事件について、当裁判所が昭和四八年四月一六日になした仮処分決定はこれを取り消す。

二  債権者の本件仮処分申請をいずれも却下する。

三  訴訟費用は債権者の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  債権者

主文第一項の仮処分決定を認可する。

二  債務者

主文第一ないし第三項と同旨

第二当事者の主張

一  申請の理由

1  債務者は、肩書地に本社及び工場を置き、東京、大阪、名古屋に営業所を、札幌、広島、北九州等に出張所、事務所等を設けて、コントロール・バルブ、自動制御器等の製造、販売を業とする株式会社であり、後記本件解雇がなされた昭和四七年一一月当時約七六〇名の従業員を擁していた。

債権者は、昭和四三年九月二日債務者に雇用され、製造部工作二課、CCD室等の勤務を経た後、昭和四六年三月一〇日生産管理部管理二課(以下「管理二課」という。)に配属され、後記本件解雇当時毎月二五日限り金六万三二七六円の賃金の支給を受けていた。

2  債務者は、昭和四七年一一月二四日に債権者を解雇したと称して、債権者と債務者との間の雇用関係の存在を争う。

3  債権者は、財産を全く有しておらず、賃金を得て生活しているものであるが、このままでは、本案訴訟を追行することも不可能となるので、保全の必要性がある。

4  よって、債権者は、債務者に対し雇用契約上の地位を有することを仮に定めること、並びに、昭和四七年一二月分の未払い賃金三万〇七八三円及び昭和四八年二月二五日以降毎月二五日限り各金六万三二七六円の賃金を仮に支払うことを求める。

二  申請の理由に対する認否

申請の理由1及び2の各事実は認める。

同3の事実は否認する。債権者は父や兄と同居しているが、同人らは多くの不動産を有し、農業を営むかたわら、ビル賃貸業をも営んでおり、極めて裕福なものであるから、保全の必要性はない。

三  抗弁

(前掲本山製作所(雇用関係存在確認・本訴)事件と同旨のため省略)

理由

(以下、前掲本山製作所(雇用関係存在確認・本訴)事件と同旨のため省略)

第七結論

以上の次第であるから、本件解雇は有効であり、債権者と債務者間の雇用関係は昭和四七年一一月二四日をもって終了したものであるから、債権者の雇用契約上の地位保全と右期日より後の賃料の仮支払いを求める本件仮処分申請は、いずれも被保全権利の疎明がないことに帰するので、保全の必要性について判断するまでもなく理由がない。従って、これを認容した原決定は不当であるのでこれを取り消し、本件仮処分申請をいずれも却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 磯部喬 裁判官遠藤きみ、同石井浩は、転勤のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 磯部喬)

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