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仙台地方裁判所 平成4年(ワ)301号 判決 1993年6月30日

原告

宮城県信用保証協会

代表者理事

三浦徹

右原告訴訟代理人弁護士

吉田幸彦

被告

株式会社鈴正電機

代表者代表清算人

鈴木正太郎

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一本件訴訟の経緯は記録によれば、次のとおりである。

1  原告は、平成四年三月二六日当裁判所に別紙訴状(写し)を提出し、当裁判所は、同年四月八日第一回口頭弁論期日を同年五月二〇日午前一〇時と指定し、被告(鈴木正太郎)に対し、訴状副本、第一回口頭弁論期日呼出状等を送達したところ、右書類は、同月一五日、所轄郵便局の窓口において同郵便局に出頭した被告本人に送達された。

2  第一回口頭弁論期日においては、原告訴訟代理人及び被告(被告鈴木正太郎を除くその余の被告らの一部も出頭したが、その関係は省略する。)が出頭し、原告は訴状を陳述したが、被告が答弁を留保したため、弁論は続行された。

その後の口頭弁論期日において、被告は、請求棄却の申立てをしたものの、原告が請求原因事実について検討し請求の趣旨の一部変更もあり得ると上申したこともあって、口頭弁論期日は追って指定とされたまま推移していた。

3  しかるところ、被告は、平成四年七月三一日死亡し、右死亡の事実はやがて原告及び当裁判所の知るところとなった。

4(一)  被告の妻鈴木とも及び第一順位相続人である藤原長子ほか一名は、いずれも仙台家庭裁判所に対し、被告の相続につき放棄の申述をし、平成四年一〇月二一日、右申述はいずれも受理された(同裁判所平成四年(家)第一六三一号ないし第一六三三号)。

(二)  被告の第二順位相続人である鈴木なつよは、同裁判所に対し、被告の相続につき放棄の申述をし、平成五年一月一八日、右申述は受理された(同裁判所平成四年(家)第二二五八号)。

(三)  被告の第三順位相続人である鈴木正二郎ほか四名は、いずれも同裁判所に対し、被告の相続につき放棄の申述をし、平成五年三月二五日、右申述はいずれも受理された(同裁判所平成五年(家)第二五六号ないし第二六〇号)。

5  被告には、右の者のほかには相続人となるべき者がみあたらず、また、本件で訴求されている求償金の連帯保証債務のほかには、積極・消極いずれの相続財産もみあたらない。

6  原告は、右のような事情から、本件訴訟の受継のための手続をとることなく、平成五年四月三〇日、当裁判所に訴えの取下書を提出した。

二訴訟係属中に被告が死亡し、その被告に訴訟代理人がいない場合、その訴訟は当然に中断する(民訴法二〇八条)が、さらにその被告に相続人がいない場合においては(相続人たるべき者全員が相続放棄をした場合を含む。以下同じ。)、原告において、民法九五二条一項に基づき相続財産管理人の選任を求め、又は、相続財産法人につき特別代理人の選任を求めたうえ、その相続財産管理人又は特別代理人を相手方として訴訟受継の申立をする以外には、その訴訟を進行させることはできず、裁判所が原告の協力なくして自ら訴訟の進行を図ることはできない。

訴訟進行を図ることは第一次的には裁判所の職務であるが、原告及び被告の協力も必要不可欠であり、特に積極的に訴訟を提起した原告は、被告や裁判所以上に訴訟進行につき重要な役割を負うべき場合があり、原告の行為なくしては訴訟進行が図れない事態に陥った場合には、原告は積極的に裁判所に対し訴訟進行のための必要な行為をすべきことが要請され、裁判所は原告に対し訴訟進行のための必要な行為をするよう命ずることができるものというべきである。そして、それにもかかわらず、原告が何らの行為もしないため、訴訟進行が図れない状態が長期間続いた場合、又は、長期間続くことが確実と認められる場合においては、原告はその訴訟の追行権をもはや行使することができず、その訴えは不適法として却下することができるものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、前記判示のとおり、本件訴訟の被告は訴訟代理人なく、かつ、相続人なくして死亡しており、したがって、本件訴訟は原告が相続財産管理人又は特別代理人の選任を求めて訴訟受継の申立てをしない限りその進行が図れない状態になっているところ、原告はそのような状況のもとで訴えの取下書を提出し、爾余の訴訟行為をする意思を放棄し、裁判所が原告に対し訴訟進行のための必要な行為をするよう命じたとしても、これに応じないことは明らかである。そうすると、本件訴訟はもはやその進行が図れない状態が長期間続くことが確実と認めざるを得ない。したがって、原告は本件訴訟の追行権をもはや行使することができなくなったということができるから、本件訴えは不適法として却下するのが相当である。

三よって、本件訴えを不適法として却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官六車明)

別紙訴状<省略>

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