大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台地方裁判所 平成18年(む)308号 決定

主文

本件請求を棄却する。

理由

第1本件請求の趣旨及び理由は,弁護人ら作成の「裁定申立書」第2に記載のとおりであるから,これを引用する。その要旨は,検察官が,被告人の取調べに関する警察官作成の取調べ状況報告書37通及び検察官作成の取調べ状況等報告書15通(以下「本件各報告書」と総称する。)につき,取調べ状況を明らかにするため必要な部分のみの抄本を開示し,その余を不開示とする旨回答したことから,本件各報告書の全部の開示を命ずるよう請求するというのである。

第2当裁判所の判断

1  一件記録及び検察官が当裁判所に提示した本件各報告書によれば,検察官が不開示としたのは,警察官作成の取調べ状況報告書のうち「逮捕又は勾留の理由となっている犯罪事実に係る不開示希望被疑者供述調書作成事実」の有無及び通数欄と検察官作成の取調べ状況等報告書のうち「被疑者等がその存在及び内容の開示を希望しない旨の意思を表明した被疑者供述調書等」の有無及び通数欄(以下まとめて「本件不開示欄」という。)であることが認められる。

2  本件各報告書は,被告人に対する取調べの年月日,時間,場所その他取調べの状況を記録した書面(刑訴法316条の15第1項8号)であり,その性質上,検察官が証拠請求している被告人の検察官及び司法警察員に対する各供述調書の証明力を判断する上で重要であることは当然である。

しかし,本件では,本件不開示欄以外の本件各報告書は全て開示されているから,弁護人らが,本件不開示欄の記載内容について,被告人自身から聴取して,確認することは十分可能である。また,取調べに際し,被告人が不当な利益誘導を受けた内容が記載された供述調書が存在するなど,本件不開示欄の記載が被告人の供述調書の証明力を判断する上で重要であることを窺わせる特段の事情は,弁護人らから主張されていない。したがって,本件不開示欄を開示すべき重要性,必要性が高いとはいえない。

弁護人らは,真に被告人の取調べ状況を吟味し,被告人の供述調書の証明力を判断するには,本件各報告書全部の開示が必要であると主張する。しかし,前記のとおり,本件不開示欄の開示の必要性を直ちに認めることはできない上,本件不開示欄を開示すると,非開示希望供述調書の有無等が明らかになり,供述者や関係者の安全やプライバシーが侵害されたり,捜査の秘密の保持に支障を来すなどの弊害を生じるおそれがある。

3  以上を総合すると,本件不開示欄の開示が相当であるとは認められず,本件請求は理由がないから,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山内昭善 裁判官 齊藤啓昭 裁判官 岸田航)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例