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仙台地方裁判所 平成14年(わ)595号 判決

主文

被告人を懲役18年に処する。

未決勾留日数中130日をその刑に算入する。

押収してある作業用ナイフ1丁を没収する。

理由

(証拠により認定した犯罪事実)

被告人は,

第1  A(当時54歳)の殺害を決意し,平成14年10月2日午前3時25分ころ,宮城県柴田郡a町b番地cB公園南側階段等において,同人に対し,殺意をもって,その頸部,胸部等を所携の作業用ナイフ(刃体の長約18.3センチメートル,平成14年押第54号の1)で多数回突き刺すなどして右総頸動脈切断,心臓損傷等の傷害を負わせ,よって,そのころ,同所において,同人を頸部・胸部の刺創による失血により死亡させて殺害し,

第2  業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時,場所において,前記作業用ナイフ1丁を携帯し

たものである。

(事実認定の補足説明の要旨)

弁護人は,判示第1の犯行について,被告人には殺意はなかったものであるから,被告人には傷害致死罪が成立するにすぎない旨主張し,被告人も弁護人の主張に沿う供述をする。

しかしながら,被告人が,殺傷能力十分な作業用ナイフを用い,被害者の身体枢要部をねらって多数回にわたり同ナイフを突き刺し,その結果,被害者に致命的な損傷が多数箇所形成されていることなどからすれば,被告人に確定的殺意があったことは明白である。また,被告人が,犯行当日に自首して以降,捜査段階を通じて一貫して確定的殺意を認めていたことなどからすれば,被告人の供述調書の信用性に疑問はないというべきで,確定的殺意があったことを否定する被告人の公判廷における供述は,到底信用することはできない。

以上によれば,被告人に殺人罪が成立することは明らかであって,弁護人の主張は採用できない。

(累犯前科) 省略

(量刑の理由の要旨)

本件は,被告人が,自己の雇主である被害者に対し,殺意をもって,その頸部,胸部等を刃体の長さ約18.3センチメートルの作業用ナイフで多数回突き刺すなどし,その頸部や胸部の刺創による失血により被害者を死亡させて殺害したという殺人の事案と,その際,業務その他正当な理由による場合でないのに上記ナイフ1丁を携帯したという銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。

犯行の動機を見ると,被告人は,被害者が未払いの給料を支払おうとしないことなどから被害者に裏切られたなどと考えて激高し,本件犯行に及んだというのであるが,その動機は短絡的で,理不尽かつ自己中心的なものであって,酌むべきものはない。

犯行の態様を見ると,被告人は,被害者に馬乗りになって,被害者の頸部,胸部などを多数回,思い切り刺し続けるなどしたというのであるから,本件殺人の犯行態様は,強烈かつ執拗で,極めて残忍である。また,上記ナイフは,刃体の長さ約18.3センチメートルの先端鋭利なものであって,これを携帯していた本件銃砲刀剣類所持等取締法違反の犯行も悪質というべきである。

そして,被害者の貴い生命を奪った本件の結果は誠に重大であり,被害者の子らや元妻が,被告人に対して峻烈な処罰感情を示しているのも当然のことである。

加えて,被告人は,殺人罪により懲役8年に処せられた前科を有しながら,その刑を服役してから8年8箇月余り後に,再び殺人という重大な犯行に及んだのであって,被告人の刑責は極めて重いといわざるを得ない。

しかし,被告人が被害者に不満を抱くなどした経緯は理解できないわけではないこと,犯行直後に自首していること,被告人は,平成11年9月の最後の服役を終えて出所した後は,本件犯行に至るまで約3年間に道路交通法違反(速度違反)による罰金刑を受けた以外に犯罪歴はなく,被告人なりに更生に努めていたと見ることができること,被告人が,本件を反省し,被害者の冥福を祈り,遺族に対して深く謝罪していること,被告人の帰りを待つ母,妻及び幼い3人の子がいることなど,被告人に有利ないし斟酌すべき事情も認められ,これらの諸事情を総合考慮すれば,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 本間榮一 裁判官 齊藤啓昭 裁判官 菅原暁)

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