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京都家庭裁判所 平成20年(家)1223号 審判

主文

被相続人Cの相続財産から申立人Aに対して金300万円及び相続財産管理人保管にかかる別紙動産類目録記載の宝石類,硬貨,メダル,旧紙幣,商品券及び印紙を,申立人Bに対して金300万円をそれぞれ分与する。

理由

1  申立ての要旨

(1)  被相続人は,平成19年×月×日に死亡して相続が開始した。

(2)  被相続人には法定の相続人が見当らなかったので,相続財産管理人が選任され,同人の請求により相続人捜索の公告がなされたが,期間内にその権利を主張する者がいなかった。

(3)  申立人らは,被相続人の生前,同人と特別の縁故関係があったから,相続財産の分与を求める。

2  当裁判所の判断

(1)  本件記録によれば,申立ての要旨(1),(2)の事実のほか,次の事実が認められる。

ア  被相続人は,DとEの間の一人娘であり,生涯独身であったため,昭和15年に父Dが死亡し,昭和35年に母Eが死亡した後は,○○市で父親の代からの○○店を営んで一人暮らしをしていた。

イ  申立人Aは,被相続人の父Dの妹Fの孫にあたり,申立人Bはその夫である。

ウ  申立人Aの母親G(Fの子で,被相続人の従姉にあたる。)は戦時中の昭和17年から同20年までの間,子供らと共に○○市に移り住んだことがあり,この間,当時10歳前後であった申立人Aを含むG一家と被相続人一家との間に親族としての緊密な交流があった。

エ  昭和20年春には申立人Aの一家は□□に移り住み,申立人Aは昭和29年に申立人Bと結婚した後,その勤務の関係で長年△△に住んでいたが,被相続人との間では,電話や手紙で連絡したり,盆や暮れの贈答を交わすなどの交際が続いた。また,昭和63年に申立人ら夫婦が先祖の墓参りに○○を訪れた際には,申立人Aは43年ぶりに被相続人に再会し,申立人Bは被相続人と初めて対面した。

オ  その後,申立人らは再び□□に転居したこともあって,被相続人と直接会う機会がなかったが,平成11年×月に至り,被相続人宅に訪問看護に訪れていた担当者から,89歳に達している被相続人が失禁や徘徊を繰り返す状態であり,一人暮らしは無理なので,施設への入所が必要であるとの連絡を受けた。このため,申立人らが電話で直接被相続人と話そうとしても認知機能の低下のために意思の疎通が十分に行えない状態であったため,申立人Bが○○の福祉事務所等に電話等で連絡をとって,身元保証人となって被相続人を特別養護老人ホームである○○○○に入所させた。

カ  その後,申立人らは,平成11年×月から被相続人が死亡した平成19年×月までの約8年間に39回にわたって○○○○や被相続人が入院していた病院を訪れ,被相続人の看護・療養状況に気を配ったり,話し相手となったり,被相続人の体調のよいときは被相続人をタクシーで外出させ,被相続人の好む食事をさせたりした。

また,申立人Bは平成12年×月には被相続人の成年後見人に選任されて無報酬で財産管理等にも尽力した。このようなことから,上記の申立人らの訪問のうち30回分の旅費等の費用は後見人としての事務に必要な費用として被相続人の財産の中から支出されたが,残りの9回分については親族としての訪問であるとして自費でまかなった。

キ  被相続人が平成19年×月×日に97歳で死亡した際には,葬儀は○○○○の施設葬として介護関係者らの参加を得て行われたが,この葬儀の喪主には申立人A,施主には申立人Bがなり,この葬儀に要した費用は申立人らが負担した。また,その後の満中陰,新盆,一周忌の法要等も申立人らの費用負担で行った。これらの葬儀や法要等に要した費用は240万円余(申立人らの旅費・宿泊費等合計90万円も含む。)であった。

更に,被相続人はかねてから,母親と同じ墓に納骨してもらいたいと述べていたところ,申立人らが寺の住職らと折衝した結果,このことも実現可能となった。

(2)  上記認定事実に照らすと,申立人らと被相続人の関係は,被相続人が89歳という高齢のための認知症状により一人暮らしが困難となって○○○○に入所するまでは,遠隔地に住んでいたこともあって,通常の親戚関係の域を出るものではなかったと見るべきであるが,被相続人の○○○○入所後は,申立人らは被相続人の療養看護や財産管理及び死後の法要等に尽力したものということができ,特別縁故者にあたるものといえる。

そして,上記認定の事実から窺われる縁故関係の性質,内容,程度,申立人らが被相続人の葬儀や法要等のために負担した費用の額,相続財産の種類と額その他一切の事情を考慮すると,申立人らに分与すべき相続財産は,主文記載のとおりとするのが相当である。

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