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京都家庭裁判所 平成19年(家)2381号 審判

申立人

相手方

主文

相手方を申立人の推定相続人から廃除する。

理由

第1申立ての要旨

申立人の推定相続人は,妻Cが既に死亡していることから,長男の相手方と二男のDの2人だけである。相手方は,これまで,何度も窃盗で捕まったり交通事故を繰り返したりし,申立人夫婦に多大の苦痛を与え,数百万円の負担をかけたうえ,平成16年夏ころ親子の縁を切ると自ら言って家出し,今日まで音信不通となった。申立人は,相手方に著しい非行があり,自宅不動産等を相手方に相続させるつもりがないので,相手方を推定相続人から廃除するとの審判を求める。

第2当裁判所の判断

1  事実の認定

一件記録によれば次のとおり認めることができる。

(1)  申立人とCは,昭和44年×月×日に婚姻し,昭和×年×月×日に相手方,昭和×年×月×日にDをそれぞれもうけ,その後,姓を「◎◎」から「●●」に変更する必要から,同年×月×日に協議離婚した後すぐに再び婚姻した。Cは平成13年×月×日に死亡した。

(2)  相手方は,中学時代にコンビニで万引きしたのを手始めとして以後窃盗等を繰り返し,これまで何度も刑務所に服役してきたが,現在も,平成19年10月の現金盗につき常習累犯窃盗の罪に問われて懲役2年の刑に処せられ,○○刑務所に在監中である。相手方は,このほかにも,交通事故を繰り返したり,消費者金融から借金を重ねたりし,それでいながら,賠償や返済をほとんど行わなかった。申立人は,このため,窃盗や事故の被害者らに謝罪し,被害弁償や借金返済等に努め,これにより,多大の精神的苦痛を被るとともに,少なくとも400万円から500万円程度を負担した。なお,相手方は,申立人とCが成績優秀なDを依怙贔屓し,相手方に厳しい態度を示すことに反発し,窃盗等を重ねたものであると述べている。

(3)  申立人は,一級建築士等の資格があり,a株式会社に勤務し,平成19年5月に定年退職した。現在,失業保険や厚生年金を受給し,自宅でDとの2人暮らしを続けているが,約2400万円の住宅ローンと約240万円の教育ローンを抱えており,再就職を考慮中である。Dは,現在,b大学大学院博士課程に在籍し,研究生活を送っている。

(4)  申立人は,評価額1300万円程度の自宅土地建物と評価額のつかない原野のほか数十万円の預金を有するところ,平成16年ころ全財産をDに相続させる内容の公正証書遺言を作成済みであり,相手方が将来遺留分を主張してDを苦しめることが予測されることから,相手方を推定相続人から廃除することを思い立った。申立人は,相手方が求める手切れ金を渡すつもりがなく,将来における兄弟間の遺産争いを防ぐためにも,相手方との関係を断ち切るためにも,相手方を推定相続人から廃除してほしいと述べる。

(5)  相手方は,申立人に迷惑をかけたことを自認しつつ,推定相続人から廃除されることに納得できないとし,手切れ金として500万円ないし600万円を用意してくれるなら,これを受け入れてもよいし,遺留分を放棄してもよいと述べる。

2  検討・判断

相手方は,これまで窃盗等を繰り返して何度も服役し,今も常習累犯窃盗罪で懲役2年の刑に処せられて在監中であり,このほかにも,交通事故を繰り返したり消費者金融から借金を重ねたりしながら,賠償や返済をほとんど行わず,このため,申立人をして被害者らへの謝罪と被害弁償や借金返済等に努めさせ,これにより,申立人に対し多大の精神的苦痛と多額の経済的負担を強いてきたことが明らかであって,申立人に対する著しい非行があったと認めるべきである。そして,これまでの経過や事情に加えて,相手方が自身の行状につき申立人にも責任の一端があるかの如く述べたうえ多額の手切れ金を要求しており,申立人がこれに応じる意思がないと述べていることからみて,両名の親子関係に改善の見込みがあるとはいい難く,その他,本件に顕れた諸般の事情を勘案すると,相手方を申立人の推定相続人から廃除するのが相当である。

第3結論

よって,申立人の本件申立ては理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり審判する。

(家事審判官 播磨俊和)

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