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京都地方裁判所舞鶴支部 昭和35年(ワ)25号 判決

原告 株式会社関西相互銀行

被告 深田木材株式会社更生管財人 吉川壇 外一名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告側。

請求の趣旨。

被告等は原告に対し、別紙第一〈省略〉第二〈省略〉各記載の物件を引渡せ、訴訟費用は被告等の負担とするという判決並びに仮執行の宣言を求める。

請求原因。

(一)  訴外、中小企業金融公庫(以下訴外、公庫と略称)は昭和三十二年九月十日、訴外深田木材株式会社(以下訴外深田会社と略称)に対し、設備兼運転資金として金一千万円を貸付けその返済方法として昭和三十三年三月十日を初回とし、以後毎月十日限り、右元金を一回金三十四万円宛、二十九回に分割して支払い、最終第三十回目に金十四万円を返済して完済し、右分割弁済を怠ると分割弁済による期限の利益を喪うことと定め、

その担保として訴外深田会社はその所有の別紙第三目録〈省略〉記載の不動産(宅地及び工場)に順位第一番の抵当権(以下本件抵当権と略称)を設定し、なお、右同日同会社所有の別紙第一目録記載の物件(工場備付の機械器具)に、更らに追加として昭和三十二年十一月十六日同会社所有の別紙第二目録記載の物件(工場備付の機械器具)に、それぞれ譲渡担保権(以下本件譲渡担保)を設定し、訴外公庫はその所有権を内外共に完全に取得し、右各設定当日、占有改定により、右物件の引渡を受けると同時に、訴外深田会社に無償で使用させ、訴外公庫の請求次第、何時でも、これを返還引渡すことと定めた、

(二)  訴外深田会社は昭和三十四年八月十日分以降の右分割弁済金の支払を怠つたため、同会社は右約旨に従い期限の利益を喪い、訴外公庫は貸付元金四百二十二万円及び利息、同損害金合計七百十四万四千三百四十八円について全額一時返済の請求権を取得した、

(三)  訴外、公庫は昭和三十五年一月三十日、原告に対し右(二)記載の債権を本件抵当権及び譲渡担保附のまま、譲渡し、同年二月五日訴外、深田会社に対し、書面でその旨を通知し、同書面は翌日六日、訴外深田会社に到達した、

(四)  そこで、原告は訴外深田会社に対し、本件譲渡担保物件を無償で使用させ、同会社は原告に対し、請求次第、何時でも、これを返還することと定めた、

(五)  訴外深田会社は企業再建のため、昭和三十四年六月二十六日京都地方裁判所舞鶴支部に会社更生手続の開始を申立、同裁判所は昭和三十四年十二月二十五日、右開始を決定し、被告両名を更生管財人に選任した、

(六)  しかし、本件譲渡担保物件は訴外深田会社の財産に属しない原告の所有動産であり、仮令、会社更生手続が開始されても原告の右物件占有者、訴外深田会社に対する取戻権には影響がない、

それで、原告は右物件の引渡を受け、その換価代金を被担保債権の弁済に充てるため、右所有権に基き、訴外深田会社の更生管財人である被告等に対し、本件譲渡担保物件の引渡を求める。

(七)  被告等の主張事実は全て否認する。

立証関係。〈省略〉

被告等側。

答弁の趣旨。

主文第一、二項と同じ判決を求める。

答弁事由。

(一)  原告主張事実中、前記請求原因(一)乃至(五)記載の事実(但し、原告の譲受債権額は金七百十四万四千三百四十一円の範囲で認める)を認める。

(二)  しかし、次のとおりの理由により、原告の本訴請求は失当である。

(三)  原告は、その主張の債権を本件抵当権及び本件譲渡担保と共に譲受け、昭和三十五年三月十日前記裁判所にこれを、更生担保権として届出、被告等更生管財人は本件抵当不動産全部を千四十万千五百三十円と評価し、昭和三十五年三月二十五日、前記裁判所で開かれた更生債権及び更生担保権の調査期日に原告の更生担保権は金七百十四万四千三百四十一円(殆ど全額)の範囲で異議なく確定し、

ついで、更生管財人提出の更生計画案は関係人集会の審理及び可決を経て昭和三十五年十二月十九日、前記裁判所によつて認可され、その決定は当時、確定した、

右認可決定によると、原告の更生担保権金七百十四万四千三百四十一円は昭和三十六年十二月十九日から向う六年間、毎年一回宛、均等に分割して弁済を受け、右完済するまで、本件抵当権は全て存続すると記載されている、

(四)  原告が更生担保権者として届出をする以前に取戻権を行使するならば暫く置く、しかし右届出により会社更生手続に参加し、前記内容の更生計画案が認可され、その決定が確定した現在において、しかも、原告は本件譲渡担保物件の所有者であるが被担保債権の弁済を受けると本件譲渡担保権は消滅し、右所有権は譲渡担保設定者に復帰するという譲渡担保の性格と本件譲渡担保は本件抵当権の共同担保であるという関係を考えると、会社更生法を無視し、債務者が単に支払遅滞に陥つた事実を以て、取戻権行使の要件とすることは許されない、原告が更生手続に参加した以上、原告は認可された更生計画に従い弁済を受けるよう義務付られ、しかも本件抵当物件の評価額が原告の被担保債権を遥かに上廻る関係で右債権の殆ど全額の弁済が保障され本件抵当権の存続が認められた結果、原告が更生担保権者としての優先権は充分に保護され、従つて、その他の共同担保である本件譲渡担保は既に消滅したものと解さねばならない。

(五)  仮りに、取戻権の行使を認め、譲渡担保物件を換価処分して被担保債権の弁済に充てることを原告に許すとすれば、前記認可決定を後になつて不法に覆す結果を招き、原告は更生担保権の弁済の他、譲渡担保物件の処分による弁済を受け、二重過当の優先的取扱を受ける結果となつて、会社更生法の意図する事業の維持、更生はもとより、債権者間の利害調整は期待すべくもない。

立証関係。〈省略〉

理由

(一)  前記原告請求原因(一)乃至(五)記載の事実については当事者間に争いがない。

また、本件譲渡担保権の実行は原告が目的物件を任意に換価処分し、その代金を弁済に当てるという原告主張事実については被告等が明らかに争わないから、これを自白したものとみなさなければならない。

次に、成立に争いがない甲第一乃至第五号証(但し、甲第二及び第五号証は各一、二、)同乙第一乃至第三号証並びに、弁論の全趣旨を綜合すると、

原告は訴外公庫から、その主張の債権を本件抵当権及び本件譲渡担保権と共に譲渡け、原告主張のとおり、右債権譲渡通知と右両担保権譲渡の第三者に対する対抗要件を具備させ、昭和三十五年三月十日、京都地方裁判所舞鶴支部にこれを更生担保権として届出、被告等更生管財人は本件抵当不動産全部を金千四十万千五百三十円と評価し、昭和三十五年三月二十五日、前記裁判所で開かれた更生債権及び更生担保権の調査期日に原告の更生担保権全額、金七百十四万四千三百四十一円(原告主張の金額との差金七円は前記乙第一号証によつて原告の誤算と認める)は異議なく確定し、更生管財人提出の更生計画案は関係人集会の審理及び可決を経て、昭和三十五年十二月十九日、前記裁判所によつて認可され、その決定は当時、確定した。

右認可決定によると、

原告の更生担保権金七百十四万四千三百四十一円は昭和三十六年十二月十九日から向う、六年間に毎年一回宛、均等に分割して弁済を受け、右完済するまで、本件抵当権及び、本件譲渡担保権は全て存続すると定められた。

という事実を認定することができる。しかし、他に右認定に反する証拠はない。

(二)  完全に所有権を取得し、第三者に対する対抗要件を具えた譲渡担保権者は原則として、更生手続によらず、その目的物件を更生会社から取戻す権利を有するものと解するを相当とする。

しかし、本件には、被告等の主張するとおり、右原則的な場合と異つた特別な事情がある。

原告の譲受債権は本件抵当権及び本件譲渡担保権によつて共同的に担保されているが、本件抵当権によつて担保されている限りでは更生担保権に外ならぬ。しかも、本件抵当不動産の評価格が前記のとおり、原告の債権額を遥かに上廻る関係で右債権の全額が更生担保権として確定し、その優先権が充分に保護され、更生計画によつて向う六年間に均等に分割して弁済を受けることと定められた以上、原告はこれに従わねばならない義務がある。

即ち、原告の債権は右更生計画によつて、その内容の変更を受けたわけである。

この変更は、同一更生担保権を担保する本件譲渡担保権の行使に影響を与え、これを抑制するものと解するを相当とする。

(三)  被告等は本件譲渡担保権は消滅したと抗弁するけれども、前記更生計画認可決定において、本件譲渡担保は本件抵当権と共に全て存続することが定められているから、右抗弁は採用しない。

(四)  それで、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 上村清輝)

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