大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所宮津支部 平成16年(モ)126号 決定

●●●

申立人(原告)

●●●

同訴訟代理人弁護士

由良尚文

東京都目黒区三田1丁目6番21号

相手方(被告)

GEコンシューマー・ファイナンス株式会社

同代表者代表取締役

●●●

同訴訟代理人弁護士

●●●

●●●

●●●

●●●

主文

1  相手方は,本決定送達の日から14日以内に,別紙文書目録記載1及び2の各文書を提出せよ。

2  申立人のその余の申立てを却下する。

理由

第1申立て及びこれに対する相手方の意見

1  申立て

申立人と相手方との間で平成4年ころ締結された金銭消費貸借契約にかかる取引について,契約当初からすべての取引を利息制限法所定の利率により充当計算しなおすと,被告に不当利得が存在するという事実を立証するため,民事訴訟法220条3号後段に基づき,相手方が保管する契約当初からの金銭消費貸借契約書並びに契約当初からの契約年月日,貸付金額,受領金額などの貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)19条及び同施行規則16条所定の事項を記載した帳簿について,文書提出命令を求める。

2  相手方の意見

(1)  相手方は,コンピュータデータによって取引履歴を保管し,顧客からの開示要求に応じてきたが,開示手続には少なからず人的物的負担を伴い,また,何らかの形で顧客情報が流出する可能性があり,不必要に大量な情報の保有は顧客にとっても好ましくない結果を引き起こす可能性があること,さらに,古い取引に関する詳細な支払履歴は被告の業務遂行上必ずしも重要でなかったことから,取引履歴の保管期間について一定の運用規則を定めることとして平成14年春ころからその策定作業を行った。

(2)  ところで,貸金業法19条にいう帳簿は商法32条1項の商業帳簿には当たらないから,同法36条1項により10年間の保存が義務づけられたり,同法35条の開示命令の手続を経ることによって顧客に対し開示義務を負うものではない。

また,貸金業法19条及び金融庁事務ガイドラインによっても,貸金業者は顧客に対し取引履歴の開示義務を負うものではない。

したがって,相手方は申立人に対し本件文書を開示すべき義務を負っていないからこれを削除するという相手方の運用は何ら申立人に対する義務違反やその権利を侵害するものではない。

(3)  相手方は,上記のような検討のもと,近畿財務局の了解を得て,平成15年1月1日以降,10年間を経過した取引履歴をコンピューターから自動的に削除するシステムを採用した。

(4)  なお,相手方は,その後,同年10月ころ,上記システムによる取引履歴の削除を一時停止し,平成16年5月1日から再度すべての取引履歴を保存するようシステムを変更する指示を行い,平成5年10月以降についてはシステム上アクセスが不可能であった状態を解除し,開示可能な状態にした。

(5)  よって,相手方は申立人に対して平成5年10月以降の取引に関しては取引履歴については開示することは可能であるが,同年9月30日までの取引履歴については,上記システムにより既にコンピューターの記録を削除しており,存在しない。

第2当裁判所の判断

1  本件基本事件は,申立人(原告)が,貸金業者である相手方(被告)に対し,被告から平成4年ころから継続的に金員を借り入れ,これについて利息制限法による制限利息を超える弁済をしてきたので,利息制限法を適用して充当計算をし直すと,少なくとも107万3036円の過払いが生じている旨主張し,不当利得返還請求権に基づき上記金額の返還を求め,また,貸金残債務98万1346円の不存在等を求めている事案である。

2(1)  そこで検討するに,本件文書が民訴法220条3号後段の文書に当たることは明らかであり,また,申立人主張の事実を立証するために必要な文書と認められる。

(2)  申立人は,相手方との取引開始時期について平成4年ころと主張し,平成6年6月8日以降の取引に関して相手方が保存するコンピューターの記録をプリントアウトした文書である計算書(乙1),取引明細(乙2)及び取引履歴リスト(乙3)の記載によれば,相手方の申立人に対する平成6年6月8日時点の貸付残高は47万9320円であると認められるから,同日以前にも相手方と申立人との間には金銭消費貸借契約に基づく取引があったものと推認される。また,相手方が貸金業者であること及び上記第1,2(3)の相手方の意見によれば,相手方は平成6年6月8日以前の申立人との取引についても,金銭消費貸借契約書を保存し,その取引履歴をコンピューターに記録し,保管しているものと推認される。

(3)  これに対し,相手方は,顧客の開示要求に応じて行う開示手続には少なからず人的物的負担を伴うこと,不必要に大量な情報の保有すれば顧客情報が流出した場合に顧客にとっても不利益が生じる可能性があり,古い取引履歴は被告の業務遂行上あまり重要でないことから,取引履歴について一定の保管期間を定めることとし,その際,貸金業法及び商法上の帳簿の保存期間に関する規定の解釈及び貸金業法及び金融庁事務ガイドラインによっても取引履歴の開示義務を負わないと解釈したことから,平成15年1月1日以降,10年間を経過した取引履歴をコンピューターから削除するシステムを導入した旨主張する。

しかし,相手が主張する上記削除システム導入の事実を裏付ける具体的な資料はない。

加えて,コンピューターのデータとして記録するという相手方の取引履歴の保存形態からすれば,相手方の負担が10年を超える取引履歴の開示の場合,10年未満のそれに比べて著しく増加するとは考えにくい。また,相手方は,従前,その顧客から取引履歴の開示要求を受けていたものであるから,現在の業務遂行上余り重要でないことをもって,古い取引履歴を保存する必要性がないと認識していたとは認められないし,情報流出の危険性については,取引履歴の新旧によって事情が異なるとは認められない。さらに,上記相手方における取引履歴の保存形態等に照らせば,帳簿の保存期間や取引履歴の開示義務について相手方が上記のとおり解釈していたことをもって,直ちに,古い取引履歴を廃棄する必要性を有していたとも認められない。

よって,相手方が主張する上記の諸事情は,いずれも貸金業者である相手方の事務処理上,削除システムを導入する必要性及び合理性を基礎づけるものとは認められず,削除システムによって削除されたから平成5年9月30日以前の取引履歴は存在しない旨の相手方の主張は直ちに採用できない。

3  なお,本件記録によれば,相手方は,平成6年6月8日以降の取引にかかる文書を既に申立人に提出していることが認められる。

よって,本件申立ては主文第1項掲記の限度で理由がある。

(裁判官 久保井恵子)

文書目録

1 申立人と相手方との間の平成4年から平成6年6月7日までの金銭消費貸借取引に係る契約書面の原本又は控えの全部

2 申立人と相手方との間の平成4年から平成6年6月7日までの金銭消費貸借取引に関する契約年月日,貸付金額,受領金額等の貸金業の規制等に関する法律19条及び同施行規則16条所定の事項が記載された部分の全部

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例