大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和60年(ワ)1719号 判決

原告

笹岡繁

ほか一名

被告

椿野則之

ほか一名

主文

一  被告らは、原告笹岡繁に対し、各自金四〇五万二九六五円及び内金三六五万二九六五円に対する昭和五九年一二月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告笹岡正子に対し、各自金三一五万二九六五円及び内金二八五万二九六五円に対する昭和五九年一二月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らの、被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを四分し、その一を被告らの、その余を原告らの負担とする。

五  この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告笹岡繁に対し、各自一八八七万九九九七円及び内金一八一二万九九九七円に対する昭和五九年一二月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告らは原告笹岡正子に対し、各自一六八七万九九九七円及び内金一六一二万九九九七円に対する昭和五九年一二月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  別紙交通事故の表示記載の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

2  責任原因

(一) 被告林重男の責任(運行供用者責任)

被告林重男は、本件加害車両(以下「被告車」という。)の所有者として、自動車損害賠償保障法三条により本件事故によつて原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

(二) 被告椿野則之の責任(一般不法行為責任)

本件事故態様は前記のとおりであるが、本件事故現場である新町通はいわゆる問屋街であり、車両の通行、人通りが極めて多い場所であるから、被告椿野則之(以下「被告椿野」という。)としては、このような場所で停車するときは道路の左端に停止し、かつ、運転席ドア(右前方ドア)を開けるに際しては、その背後から進行してくる車両等の妨害にならないよう十分その安全を確認してからその措置をとるべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、同被告は、新町通の中央付近に被告車を停車させたうえ、右背後の安全を確認せず、漫然と運転席ドアを開いた過失により本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条に基づき、本件事故により原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

3  原告の死亡

房子は、本件事故により頭部を強打して脳挫傷の傷害を負い、本件事故翌日の昭和五九年一二月六日午前〇時五〇分頃、右傷害により死亡するに至つた。

4  損害

(一) 房子死亡による逸失利益

房子は、本件事故当時五四歳で、原告笹岡繁経営にかかる仏具金具製造業を手伝うとともに、筝曲の教授としても収入を得て活躍していたものであり、その逸失利益は次のとおりである。

(1) 事業専従者関係 金七六六万〇三八〇円

房子は、本件事故当時、仏具製造を手伝うことにより月額平均一〇万円の収入を得ていたものであるところ、同人の就労可能年数は死亡時から一三年、生活費は収入の三五パーセントと考えられるから、年別のホフマン方式により年五分の割合による中間利息を控除して逸失利益を算定すると、七六六万〇三八〇円となる。

(計算式)

10万円×12か月×(1-0.35)×9.821=766万0380円

(2) 筝曲関係 金三〇七二万四六〇四円

房子は、本件事故が発生した昭和五九年において、筝曲関係で次のとおり収入があつた。

ア 月謝 金三一五万一〇〇〇円

イ 演奏会等 金七六万四五五五円

ウ 免許申請 金二〇万七二〇〇円

合計金四一二万二七五五円

右収入のうち経費を三割とみて、これから房子の生活費(三五パーセント)を控除し、筝曲関係においては通常八〇歳まで就労が可能であると思料されるから、これに対応する新ホフマン係数を乗じて逸失利益を算定すると、三〇七二万四六〇四円となる。

(計算式)

412万2755円×(1-0.3)×(1-0.35)×16.379=3072万4604円(1円未満切捨)

(3) 以上を合計すると、房子の逸失利益は、金三八三八万四九八四円となる。

(二) 原告らの相続

原告笹岡繁は房子の夫、同笹岡正子は房子の子であり、原告らは、二分の一ずつの割合で房子を相続した。

(三) 葬儀費用等

原告笹岡繁は、房子の死亡により、葬儀料等の支出を余儀なくされたが、同人が筝曲関係の仕事に従事していたことから、二〇〇万円を下らない費用を要した。

(四) 原告らの慰謝料 各金七〇〇万円

(五) 弁護士費用 原告ら各七五万円

5  損害のてん補

原告らは、自賠責保険から各一〇〇六万二四九五円の支払を受けた。

6  よつて、原告笹岡繁は被告ら各自に対し、金一八八七万九九九七円及び弁護士費用を除く内金一八一二万九九九七円に対する昭和五九年一二月五日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を、原告笹岡正子は被告ら各自に対し、金一六八七万九九九七円及び弁護士費用を除く内金一六一二万九九九七円に対する昭和五九年一二月五日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1項の事実は認める。

2(一)  同2項(一)の事実は認める。

(二)  同2項(二)につき、被告椿野に安全確認に不十分な点があつたことは認めるが、その程度、態様は争う。

本件事故態様は後記三のとおりである。

3  同3項の事実のうち、房子が原告ら主張の日時に死亡したことは認める。

4(一)  同4項(一)、(三)ないし(五)は争う。

(1) 原告らは、専従者給与についても逸失利益であると主張するが、右給与は、単に納税上の節税目的から所得税の確定申告書に記載されているに過ぎないものであり、房子の労働に対する対価とは認められない。

(2) 筝曲関係の収入につき、演奏会出演料は、多額の経費を要しこれによる収入金はほとんど残らないことが認められるから、房子の年収計算から除外されるべきである。また、房子の収入に対する経費として四五パーセントを、生活費として五〇パーセントを控除するのが相当である。なお、原告らは、房子の就労可能年数として八〇歳までを主張するが、これを認めうる証拠はなく、原則どおり六七歳までとするのが相当である。

(二)  同4項(二)の事実は知らない。

5  同5項の事実のうち原告ら主張の金額が自賠責保険から支払われたことは認める。

三  被告らの主張

(過失相殺ないし公平による損害の分配)

本件事故現場である新町通は、北行き一方通行で七・一メートルの車道幅員があり、道路右側には幅一・三メートルの路側帯が設けられているところ、被告椿野は本件事故直前、右道路の西側に北に向けて被告車を停車させたものであるが、同車両の東側はなお約三・六五メートルの余裕があつた。同被告は、被告車を停止させたのち、右サイドミラーで右後方を見たが、人車の姿が見えなかつたので、後方に注意しながら車から降りるべく運転席ドアを三〇センチメートルほど開けたところ、かなりの速度で被告車に接するようにして自転車を走行してきた房子の左手付近が右ドアの先端部と接触し、右自転車は衝突地点から約二メートル先まで飛ばされて転倒し、また房子は衝突地点から五メートル先まで飛ばされ転倒して頭部を強打したものである。

右のとおり、本件事故が発生したことについては、被告椿野において一層確実に安全確認をしてドアを開けるべきであつた点に過失が認められるものの、他方、房子においても、十分余裕をもつて被告車の東側を通行できたにもかかわらず、被告車に接して走行するという危険(一般に、路上に自動車が停止しているとき、その車両から人がドアを開けて降りてくることは通常予測されることであり、殊に、本件においては、被告車は房子のすぐ前方で停車したばかりの状態であつたから、同人において、同車両から人が降りてくる可能性の高いことを知り得たものである。)な走行方法をとつた点、及びかなりの速度で走行した点において過失が認められる。

以上のとおり、本件は、通常なら被告椿野の行為によつては死亡の結果が発生するとは到底考えられないような事故であり、かつ房子の側にも前記のとおり過失が認められるから、過失相殺ないし公平による損害の分配として、損害の算定にあたり三割の相殺がなされるべきである。

四  被告らの主張に対する原告らの答弁

被告ら主張の事故態様は争う。被告椿野は、被告車を道路中央付近に方向指示器もつけずに停止し、かつ全く後方の確認をしないままドアを一気に開けたものであり、重大な過失が存する。他方、房子が速度を出しすぎていた事実はなく、同人の過失は何ら認められない。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  請求原因1項の事実は当事者間に争いがない。

二  責任原因

1  運行供用者責任

請求原因2項(一)の事実は当事者間に争いがない。したがつて、被告林は自動車損害賠償保障法三条により、後記のとおり本件事故により原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

2  一般不法行為責任

房子が昭和五九年一二月六日午前〇時五〇分頃死亡したことは当事者間に争いがなく、前一項及び右争いのない事実に、いずれも成立に争いのない乙第一〇、第一三、第一四号証、第一七ないし第一九号証、原告笹岡繁(以下「原告繁」などという。)本人尋問の結果、被告椿野本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)を総合すると、本件事故の経過として次の事実が認められる。

(一)  本件事故現場は、四条通から約一五〇メートル北に入つた新町通の路上であるが、同所は、北行き一方通行で車道幅員が約七・一メートル(道路東側に幅約一・三メートルの路側帯が設けられている。)あり、最高速度が時速二〇キロメートル、駐車禁止の各規制がなされ、本件事故当時は晴天で路面は乾燥していた。また、本件事故時、本件事故現場付近の人、車の通行量はそれほど多くなかった。

(二)  被告椿野は、本件事故当時、被告車を運転して四条通から新町通に入つて北進し、本件事故現場西側にある商店に赴くべく右商店の前で停車しようとしたものであるが、同所には自転車二、三台が駐車してあつたため、右自転車東側の道路やや中央付近に東側を約三・六メートル空けて被告車を停車させ、右サイドミラーを見ると同時位に下車しようとして運転席右側のドアを約三〇センチメートル開けた瞬間、後記のとおり、折から同所を通りかかつた房子運転の自転車が右ドアに衝突した。

(三)  他方、房子は、本件事故当時、その所属する筝曲の会の会議に出席するため、自転車に乗つて新町通を北進し本件事故現場にさしかかつたものであるが、前項のとおり、停車したばかりの被告車の右側を急ぎかげんに同車に接するようにして通過しようとしたところ、被告椿野が開けたドアの先端が右自転車の左ハンドル付近に衝突し、同車は右斜め前方に押し出されて衝突地点から約二メートルの地点で横倒しとなり、房子は、更に右衝突地点から約五メートル右斜め前方の地点まで投げ出され、その際頭部を強打して脳挫傷の傷害を負い、本件事故翌日である昭和五九年一二月六日午前〇時五〇分頃、右傷害により死亡するに至つた。

以上の事実が認められ、右認定に反する被告椿野本人の供述部分、乙第二三号証の供述記載部分はいずれも措信し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右認定した事実によれば、本件事故が発生したことについては、被告椿野において、被告車から下車するために運転席右側のドアを開く際、右後方から進行してくる車両の有無に注意し、その安全を確認すべき注意義務を怠り、漫然右ドアを開いた過失があるというべく、同被告は、民法七〇九条に基づき、後記のとおり本件事故により原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

三  損害について

1  房子死亡による逸失利益

(一)  筝曲関係

(1) 月謝収入

原告繁本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第三号証の一ないし三八、証人山口琴栄の証言及び右原告本人尋問の結果によれば、房子は、筝曲の組織である京都当道会に所属し、昭和三〇年頃から弟子をとつて琴及び三絃を教えるようになり、本件事故当時も三五名を超える弟子をかかえ、昭和五八年度は三〇〇万四〇〇〇円程度の、本件事故前一年間(昭和五八年一二月から昭和五九年一一月まで)は三一八万円程度の右弟子からの月謝による収入を得ていたこと、筝曲関係の仕事は、六〇歳前後が働き盛りで、体力的な限界もあつて弟子の数は次第に減少すること、ただし、弟子の中からいわゆる職格者(師匠以上の者)が増えるにしたがつてその収入は安定してくること、近年は筝曲関係において弟子の数が伸び悩む傾向にあること、以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右事実を併せ考慮すると、房子は死亡後も、後記(4)のとおり就労可能な七〇歳まで少なくとも年間三〇〇万円の月謝による収入を得ることができたものと推認できる。他方、証人山口琴栄の証言によれば、右収入のうち少なくとも四割は経費に要すると認められるから、結局、就労可能期間中の房子の得べかりし年間収益は一八〇万円ということとなる。

(2) 免許料

原告笹岡繁本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第一三号証によれば、房子は、本件事故当時、いわゆる免許料の師匠収入分として、年間一四万〇〇五〇円の収入があつたことが認められる。

(3) 演奏会などの収入

いずれも原告繁本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第六号証の一ないし一三、第九、第一〇及び第一二号証並びに右本人尋問の結果によれば、房子は本件事故前の一年間に演奏会の出演料やラジオ出演料、レコードの吹込料として七五万円程度の収入があつたことが認められる。もつとも、証人山口琴栄の証言によれば、演奏会の出演料は、先方に渡す御祝金の他、琴や三味線で世話になる楽器屋に祝儀を渡したり、その都度髪を結つたりすることで、あまり手元に残らないと認められる(原告は、経費は三割程度であると主張し、前掲甲第六号証の一ないし一三はこれに副うものであるというけれども、右証拠に記載されている経費は御礼金のみであるから、右証人山口の証言に照らし、右原告の主張は採用できない。)うえ、ラジオ出演やレコードの吹込は定期的なものとはいえないことからすれば、右収入の約二割にあたる年額一五万円をもつて逸失利益と認めるのが相当である。

(4) 稼働年数

成立に争いのない甲第一号証によれば、房子は死亡時五四歳であつたことが認められるところ、原告は、房子は少なくとも八〇歳まで筝曲関係の仕事が可能であつた旨主張する。しかしながら、原告繁本人尋問の結果によれば、房子は、生前健康体で活発に仕事をこなしていたことが認められるうえ、原告が立証するまでもなく、一般に琴など芸事の個人教授については比較的高齢まで就労が可能であると解せられるものの、証人山口琴栄の証言によれば、五、六〇歳まで琴や三絃の教授を続けてきた人はそのまま続けてやつていく人が多い一方、七〇歳くらいになると、体力的な理由から琴や三絃の教室を構えるのを辞める人もあることが認められることに照らすと、房子は、七〇歳まで就労が可能であつたと認められるものの、それを超えて就労できたとの立証は未だないというべきである。

(二)  錺金具製作関係

原告繁本人尋問の結果によれば、房子の夫である繁は、房子の父親の仕事を受け継いで、社寺で使用される錺金具の制作に従事し収入を得ているものであるが、家内工業的色彩が強い職種で、房子も女学生の頃から父親を手伝い仕事の内容にある程度精通していたこと、そこで、房子は、筝曲の仕事の合間をぬつて、月、水、木曜日の家事を済ませた後の空いた時間に、夜の一〇時から一一時頃まで繁の仕事を手伝つていたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右認定の事実によれば、錺金具の制作による収入のうち房子の寄与分については、逸失利益として認められてしかるべきである。

ところで、いずれも成立に争いのない甲第七、第八号証及び原告繁本人尋問の結果によれば、房子は、死亡当時、税務申告上、繁の右事業収入から月額一〇万円の専従者給与を受けていたことが認められるところ、繁は、房子が実際に右給与の支払いを受けていた旨供述する。しかしながら、繁と房子が夫婦であつたことからすれば、右供述はにわかに措信し難いうえ、原告繁本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第二号証の一ないし三によれば、昭和五八年においては、右金額は一律六万円であつたものが、翌五九年には一律一〇万円になつていると認められることなどに照らせば、一〇万円という金額は税務申告上の技術的処理のための数字といわざるを得ず、これを直ちに房子の労働の対価とみることはできない。

そこで、錺金具制作による全収入は必ずしも明らかではないけれども、前認定の事実によれば、房子の生活は筝曲関係の仕事及び主婦としての仕事がその中心をなしていたもので、錺金具の制作は空いた時間における手伝い程度でありその収益に占める寄与はそれほど高いとは思われないことを考慮すると、房子の右寄与相当額は、同人の生活費の一部にあてられたというべく、損害算定上、その評価については、生活費の控除を二割にとどめることをもつて足るものと解せられる。

(三)  以上によれば、房子の逸失利益は左記のとおり一九二八万八六五三円となる。

(計算式)

(180万円+14万0050円+15万円)×(1-0.2)×11.536(16年の新ホフマン係数)=1928万8653円(1円未満切捨)

(四)  前掲甲第一号証によれば、原告らが夫及び子として房子を相続し、他に相続人はいないことが認められるから、原告らは、右房子の逸失利益につき、法定相続分に従い各九六四万四三二六円(一円未満切捨)ずつ相続したことが認められる。

2  房子死亡による慰謝料

原告らが房子の夫及び子として多大な精神的苦痛を受けたことは容易に推認しうるものであるところ、前認定のとおり房子の生前の生活状況等諸般の事情を考慮すると、原告らの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては、原告両名につき各六五〇万円が相当である。

3  葬儀費用

原告繁本人尋問の結果によれば、房子の葬儀費用として一〇〇万円以上を要し、これを同原告が負担したことが認められるところ、房子の職業等を考慮すると、本件事故と相当因果関係にある葬儀費用の損害額としては、一〇〇万円が相当である。

四  過失相殺

前記二2で認定した事実によれば、本件事故が発生し重大な結果を招いたことについては、房子においても、急ぎかげんに自転車を運転し、被告車に接近して通過しようとした過失があるというべきである。もつとも、自動車が道路脇に停車しているため、やむを得ずそのすぐ脇を自転車が通行することは通常よくあることで、走行方法としてそれ程責めることはできないというべきであるから、後方を十分確認しないまま不用意にドアを開けた被告椿野の過失は大きいというべく、原告らの損害の算定にあたつては二割の過失相殺を行うのが相当である。

そうすると、原告笹岡繁の損害額は一三七一万五四六〇円(一円未満切捨)、同笹岡正子の損害額は一二九一万五四六〇円(一円未満切捨)となる。

五  損害のてん補

原告らに対して、自賠責保険から合計二〇一二万四九九〇円が支払われたことは当事者間に争いがないところ、弁論の全趣旨によれば、原告らは、それぞれ右金額の二分の一ずつ取得したものと認められるから、未払損害額は、原告笹岡繁が三六五万二九六五円、同笹岡正子が二八五万二九六五円となる。

六  弁護士費用

本件事案の内容、審理経過、右認容額等に照らすと、原告らが被告らに対して本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、原告笹岡繁が四〇万円、同笹岡正子が三〇万円とするのが相当である。

七  結論

以上の次第で、原告笹岡繁は、被告ら各自に対し、四〇五万二九六五円及び内金三六五万二九六五円に対する本件事故発生日である昭和五九年一二月五日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を、原告笹岡正子は、被告ら各自に対し、三一五万二九六五円及び内金二八五万二九六五円に対する同じく昭和五九年一二月五日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求める限度で本訴は理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 河合健司)

交通事故の表示

一 発生日時 昭和五九年一二月五日午前一〇時八分頃

二 発生場所 京都市中京区新町通四条上ル小結棚町四二六番地付近路上

三 加害車 普通乗用自動車(京五七る八三二〇号)

被告椿野運転

四 被害車 自転車

笹岡房子運転

五 態様 被告椿野が、加害車を停車させた後運転席ドアを開けたところ、加害車の右後方から進行してきた笹岡房子運転の自転車の左前部と右ドア先端部分とが衝突した。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例