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京都地方裁判所 昭和53年(行ウ)14号 判決 1982年7月30日

京都市中京区大宮通四条上ル錦大宮町一二六番地

原告

新日本土地開発株式会社

右代表者代表取締役

北尾半兵衛

右訴訟代理人弁護士

香川公一

京都市中京区柳馬場通二条下ル等持寺町一五番地

被告

中京税務署長

人西操

右指定代理人

一志泰滋

本落孝志

村田巧一

速水彰

城尾宏

木下昭夫

杉山幸雄

長田竜三

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対し昭和五一年六月三〇日付でなした昭和四八年六月一日から昭和四九年五月三一日までの事業年度分法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに同事業年度分会社臨時特別税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分は、いずれもこれを取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、宅建業並びに不動産賃貸業を主たる営業とする法人であるが、昭和四八年六月一日から昭和四九年五月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)分の法人税につき同年八月一日別表一の1の(一)のとおり確定申告し、同事業年度分の会社臨時特別税につき申告しなかったところ、被告は昭和五一年六月三〇日付で、法人税につき別表一の1の(二)のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに会社臨時特別税につき別表一の2のとおりの決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をした(以下、右法人税についての更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を「本件更正等」、右会社臨時特別税についての決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を「本件決定等」、両者を合わせて「本件各処分」という。)。原告は同年八月二七日本件各処分につき国税不服審判所長に審査請求をしたが、同所長は昭和五三年三月二七日付でこれを棄却する旨の裁決をなし、そのころ裁決書が原告に送達された。

2  しかし、本件各処分は、事実関係を誤認し、原告の正当な会計原則に基づく経理処理を否認し、結果として過大かつ過酷なものであって、取消されるべきである。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実のうち、原告が本件事業年度において不動産賃貸業を主たる営業としていたことは否認し、その余は認める。

2  同2の主張は争う。

三  被告の主張

1  本件更正等の適法性について

被告が行なった本件更正等の課税根拠は次のとおりであって、いずれも国税に関する法律の規定に従って行なったものであり、適法である。

(一) 所得金額に加算すべき金額について

原告の本件事業年度の所得金額は、原告が提出した確定申告書記載の所得金額九〇七三万二一三三円に、以下の各金額を加算した五億一二七三万六八五〇円である(別表一の1の(二)参照)。

(1) 買換資産圧縮引当金繰入損の否認

二億五四九三万四一五七円

買換資産特別勘定繰入損の否認

一億六二〇二万五〇〇五円

(イ) 原告は京都市土地開発公社(以下「公社」という。)に対し、昭和四九年三月二六日付土地売買契約書により、別表二の<2>欄記載の土地のうち「公社へ譲渡」と記載のある土地(合計実測面積一万三二二八・一九平方メートル、以下「本件譲渡資産」という。)を代金八億〇〇三〇万五四九五円で譲渡した。

(ロ) そして、原告は右譲渡代金の一部四億八九三一万七〇〇〇円をもって、本件事業年度中に藤正建設工業株式会社ほかから代替資産として京都市伏見区淀下津町一四一番ほか一六筆の土地(以下「本件代替資産」という。)を取得し、租税特別措置法(昭和五〇年法律第一六号による改正前のもの、以下「措置法」という。)六四条一項に定めるところにより計算した差益割合(五二・一パーセント)を取得価額に乗じて計算した金額二億五四九三万四一五七円を引当金勘定に繰入れる方法により経理し、所得金額の計算上損金の額に算入した。

(ハ) 次に、原告は、譲渡代金八億〇〇三〇万五四九五円から本件代替資産の取得価額四億八九三一万七〇〇〇円を差し引いた残額三億一〇九八万八四九五円に、措置法六四条の二第一項に定めるところにより計算した差益割合(五二・一パーセント)を乗じて計算した金額一億六二〇二万五〇〇五円を特別勘定に経理し、所得金額の計算上損金の額に算入した。

(ニ) しかし、措置法六四条一項及び六四条の二第一項の規定は、同法六四条四項及び六四条の二第五項により、確定申告書等に損金算入に関する申告の記載があり、かつ、その損金の額に算入される金額の計算に関する明細書(以下「明細書」という。)及び大蔵省令で定める公共事業施行者から交付を受けた当該資産の買取り等があったことを証する書類(以下「収用証明書」という。)の添付がある場合に限り適用されることになっているところ、原告が被告に提出した本件事業年度分の確定申告書には、損金算入に関する申告の記載及び明細書の添付はあるけれども、収用証明書は添付されておらず、現在にいたるも提出されていない。

(ホ) 措置法六四条一項及び六四条の二第一項は、その適用について譲渡資産が法人税法二条二一号に規定するたな卸資産に該当するものである場合を除外しているところ、本件譲渡資産は以下に述べる理由によりたな卸資産に該当すると認められるので、措置法六四条一項及び六四条の二第一項の規定の適用はない。

<1> 原告は、本件譲渡資産を含む関戸市太郎ほかから買受けた土地(別表二の<1>欄記載の土地、合計実測面積二万三九六一・一四平方メートル、以下「本件土地」という。)について、分譲住宅の建設事業を計画し、昭和四八年二月二〇日付で京都市長に対し開発計画事前協議願を提出し、次いで、本件土地のうち本件譲渡資産を除いた残りの土地を含む一万一六〇六・八〇平方メートルの土地について、昭和四九年二月二七日付で京都市長に対し開発行為許可申請書を提出して同月二八日付許可通知書により開発行為の許可を受けているが、このいずれにも開発目的は「分譲住宅用」と記載されている。

<2> 原告は、本件譲渡の直前事業年度(以下「直前事業年度」という。)末(昭和四八年五月三一日)現在の貸借対照表に、本件土地を土地商品勘定(たな卸資産)として計上している。

<3> 本件譲渡資産を公社を通じて買受けた京都市長は、当該資産が不動産業者の所有地でたな卸資産であると判断して収用証明書を発行せず、土地収用法による収用を前提とする正規の買取り手続によらずに、通常の売買契約によりこれを買受けたとしている。

<4> 原告は、前記のとおり本件譲渡資産を昭和四九年三月二六日に八億円余で売却したが、本件譲渡資産の取得価額は三億七八四八万円余であるから(後記(2)参照)、右土地の取得時期をいずれに解しても極めて短期の保有期間を経て、取得価額の約二倍超で売却したことになるが、これは、当時いかに地価の変動が激しかった時期であったとはいえ、原告が公社との売却交渉に際し買受価格の値上げを強く迫ったことを窺わせるものであると同時に、右買受けが収用権を背景としたいわば半強制的なものではなく、通常の商取引であったことを示している。

<5> 原告が昭和四八年六月五日付会計処理により土地商品勘定から固定資産である土地勘定へ振替経理した京都市伏見区竹田中川原町六一番及び同段川原町三三番の土地は、同月二〇日付不動産売買契約書により株式会社第一物産へ売渡されている。

<6> 同じく土地勘定へ振替経理した京都市伏見区淀下津町二四六番、同池上町一五〇番一、同区竹田段川原町二三番一の土地については、固定資産としての利用を前提とした事業計画もなく、現状のままで放置されている。

<7> 原告は、本件代替資産についても同様に固定資産として土地勘定に計上しているが、分譲住宅建設を目的とした開発申請許可を受けた後も、右許可に対する変更申請書を提出していない。

(2) 売上原価過大計上額

四五八万九一九五円

原告は、本件譲渡資産の売上原価の計算において、次のとおり誤って計算して申告した。

すなわち、本件譲渡資産は、原告が直前事業年度において、本件土地を買取り手数料等を含めて六億七一八九万六〇〇〇円で取得し、そのうち一万三二二八・一九平方メートルを分筆して造成のうえ公社へ譲渡したものであるから、土地代三億七〇九三万二六〇〇円(取得した全面積二万三九六一・一四平方メートルに対する譲渡面積一万三二二八・一九平方メートルの割合により按分して算出)に造成費七五五万円を加えた合計三億七八四八万二六〇〇円が本件譲渡資産の売上原価となるところ、原告はこれを三億八三〇七万一七九五円として損金に計上したので、その差額四五八万九一九五円を過大に計上したこととなる。

(3) 退職給与引当金超過額

二五万九四八一円

原告は、直前事業年度分の修正申告において、退職給与引当金超過額二八万五四〇八円を利益の額に加算して申告した。

そして、本件事業年度分の確定申告で右超過額を利益の額から減算し、また、損金の額に計上した退職給与引当金の損金算入額のうち、法人税法五五条により計算した退職給与引当金超過額二万五九二七円を利益の額に加算して申告した。

しかし、本件事業年度分確定申告書の右減算及び加算は、次のとおり計算を誤っている。

すなわち、本件事業年度分の申告に際して、直前事業年度分の利益の額に加算した退職給与引当金超過額二八万五四〇八円を本件事業年度の利益の額から減算するのは、本件事業年度の確定した決算に当該超過額を雑収入または損金算入額の戻し入れとして受け入れていることを前提として、そうであれば本件事業年度で再び当該超過額が利益の額に含まれ二重課税となるので、これを排除するための税務申告調整であるところ、原告は本件事業年度の確定決算において当該超過額を受け入れしていないので、右金額を利益の額から減算することはできない。

さらに、法令の規定により本件事業年度分の退職給与引当金の繰入限度額を計算したところ、右繰入限度額は五六万九九一〇円となり、原告の繰入額五六万九九一〇円は右限度額以内で超過額はないので、原告が二万五九二七円を所得金額に加算したのは誤りである。

よって被告は、右加算金額及び減算金額の誤りの額を通算して、二五万九四八一円を算出した。

(4) 交際費等の損金不算入額

一九万六八七九円

原告は、本件事業年度において支出した接待交際費四三七万一八七九円について、確定申告書において措置法六二条の計算を行なわずに申告した。

そこで、被告は右接待交際費をもとにして同条の計算を行なったところ、交際費等の損金算入限度額は四一七万五〇〇〇円となり、限度超過額一九万六八七九円が交際費等の損金不算入額となる。

(二) 土地譲渡利益金額について

課税土地譲渡利益金額

三億八三八四万九〇〇〇円

原告は、本件事業年度分の確定申告書において、土地譲渡損失金は生じているが、土地譲渡利益金はないものとして申告した。

しかし、本件譲渡資産の取得日は次のとおり昭和四八年五月一日または昭和四九年三月八日であり、措置法六三条及び同法附則(昭和四八年法律第一六号附則、以下同じ。)一四条一号ハに該当し、いかなる意味においても右附則規定に掲げる施行日である昭和四八年四月二一日以前ということはありえないので、原告は措置法六三条の規定する土地重課の適用を免れうるものではなく、同条の計算によれば、土地譲渡利益金額は三億八三八四万九〇〇〇円となる。

したがって、本件更正等における課税土地譲渡利益金額三億七七六八万九〇〇〇円は、右土地譲渡利益金額の範囲内であり適法である。

(1) 土地取得時期について

(イ) 原告は、関戸市太郎ほかからいずれも昭和四七年一〇月一四日付不動産売買契約書により、別表二の<1>欄記載のとおり本件土地を取得し、これを分筆したうえ、そのうち本件譲渡資産を同表<2>欄記載のとおり譲渡したが、右売買契約書によれば、所有権移転日についての特約条項はなく、その第二条によって登記期日を昭和四八年四月末日とし、当日買主は残代金を支払い、同時に売主から目的物件の引渡しを受けるものとされ、原告は同表<1>欄記載のとおり売買代金を支払い、同年五月一日に目的物件の引渡しを受けた。

(ロ) ところで、土地の取得日とは土地の所有権を取得した日であり、一般に物権の変動時期は民法上契約当事者の意思によるべきであるが、その具体的な時期については個々の事象に則して当事者の意思内容を判断しなければならない。

しかして、所有権の変動時期を売買契約締結日とすることは、一般の取引慣行に反するうえ、契約当事者の意思にも背反し、全く現実と遊離する。なぜなら、一般に売買契約当事者の所有権移転に関する意思は、代金支払いと目的物の引渡しとが同時履行の関係にあり、たとえ明示の意思表示がなくても、代金支払いと同時に目的物の所有権も売主から買主へ移転するものと判断され、また、目的物の引渡しがあれば、代金支払いの有無に関係なく所有権が移転するのは、売主が買主に対する同時履行の抗弁権を放棄したものとみられるからである。したがって、前記移転意思を以上のように解することが、売買契約に内在する双務有償性の原則からも、契約当事者の各々の給付を相互に対価的な均衡を保つように処理すべき要求にも合致し、また、契約当事者の通常の意思内容にも合致する。

(ハ) また、一般に売買契約における目的物件の所有権移転時期については、代金の完済、所有権移転登記手続の完了まで所有権を買主に移転しない趣旨の契約のときは、常に売買契約と同時に買主に所有権が移転するものと解さなければならないものではない(最高裁昭和三八年五月三一日判決、民集一七巻四号五八八頁)。

しかして、本件土地の売買契約の内容を検討するに、前記(イ)のとおり第二条によれば目的物件の引渡しと売買代金の完済とが同時履行の関係にあり、また、第三条によって目的物件は何ら権利設定の無いものとし既に設定されている場合には一切を抹消して完全な所有権を買主に移転することとされ、所有権の移転が将来行なわれることを前提としたものである。

したがって、本件土地の所有権移転時期は、買主である原告が代金を完済し、本件土地の引渡しを受けた時とみるのが、契約当事者の意思内容に合致する。

(ニ) さらに、一般に租税は担税力のある者に負担させるのが原則であるところ、課税の対象となる所得は、実現した所得でなければ担税力が伴わないので、実現した所得をもってその対象としており、信用経済を基盤とする現在の経済社会において、一般的には商品等が金銭または金銭等価物に転換した時期をもって、収益実現の時として所得を計算している。仮に物権変動時期を契約締結時とするならば、売主は売買代金を受領していないのが通常であるから、未実現利益に対して課税されることになり、不合理な結果となる。

(ホ) また、本件土地の売買契約についての次に述べる具体的事実関係に照らしても、本件譲渡資産の所有権取得時期は、原告が売主に対して代金を完済して、目的物の引渡しを受けた時とすべきである。

<1> 本件土地の登記をみると、原告は、仮登記原因である売買予約の日について、契約締結日をもってすることが可能であるにもかかわらず、代金完済日である昭和四八年五月一日に売買予約が成立したとして登記しているのであるから、原告自ら代金完済日にはじめて本件土地の所有権移転請求権が発生したものと認識していたことは明らかである。

<2> 本件土地の売主である関戸市太郎らは、売買により生じた譲渡利益につき、売買代金授受日の属する昭和四八年分の所得として、昭和四九年三月に所轄税務署あて確定申告をしている。

<3> 原告は、関戸市太郎らから買入れ、公社へ譲渡した本件譲渡資産の売却代金をもって、本件代替資産を買入れたが、右代替資産買入れの会計処理については、売買契約を締結した昭和四八年一二月二八日をその取得日とせず、代金完済日である昭和四九年三月二九日を土地取得日として経理している。

<4> 本件土地はすべて農地(市街化区域)であり、売買契約のみでは土地の所有権が移転しないことは農地法上からも明白である。

仮に原告が売買契約の対象としたものが土地の引渡請求権としても、当該権利の取得日について、土地取得日と別異に解すべき理由はない。すなわち、一般に転用未許可農地の所有権引渡請求権の売買は、農地の転用許可を停止条件とする請求権の売買にすぎないから、代金完済と引換えに不動産権利証等の交付を受けることにより、はじめて事実上の土地所有権を取得したものと認識されている。原告も同様の認識のもとに右請求権を取得し、それをもって土地の取得として経理し、農地転用による官公署への届出以前に、学校用地として公社への売却交渉に応じている。

(ヘ) 本件土地は右にみたとおり農地であるが、農地の転用あるいは移転については、農地法所定の許可または届出を効力発生要件としているから、農地を目的物件とした売買契約における所有権移転時期は右許可日または届出日である。本件土地の農地転用及び移転にかかる届出日は昭和四九年三月八日であるから、右意味からすれば、同日が本件土地の取得日となる。

(2) 土地譲渡利益金額の計算について

措置法六三条の計算によると、次のとおりとなる。

譲渡代金 八億〇〇三〇万五四九五円

(前記(一)の(1)の(イ)参照)

譲渡原価 三億七八四八万二六〇〇円

(前記(一)の(2)参照)

法定負債利子 二〇七七万九二九三円

(措置法施行令三八条の四第六項)

法定の販売費及び一般管理費 一三八五万二八六二円

(措置法施行令三八条の四第六項)

譲渡代金から譲渡原価、法定負債利子、法定の販売費及び一般管理費を差し引いた金額三億八七一九万〇七四〇円が土地譲渡利益金額となる。

ところが、一方原告が申告した土地譲渡損失金額は三三四万〇九七三円であるので、右金額から損失金額を控除した三億八三八四万九〇〇〇円が課税土地譲渡利益金額となる。

(三) 過少申告加算税の賦課決定処分について

本件事業年度分の更正処分に伴い、右更正による法人税額と原告の確定申告書の法人税額との増差税額に対して、国税通則法六五条一項の過少申告加算税一二一五万七五〇〇円を賦課決定した。

2  本件決定等の適法性について

被告が行なった本件決定等に係る課税標準及びその課税根拠は次のとおりであり、適法である。

(一) 会社臨時特別税額の決定処分について

原告は本件事業年度分の会社臨時特別税申告書の提出をしなかったので、別表一の2のとおり算出した会社臨時特別税額五〇万五六〇〇円の決定処分をした(会社臨時特別税法-昭和四九年三月三〇日法律第一一号)。

(二) 無申告加算税の賦課決定処分について

右会社臨時特別税額に対して国税通則法六六条の無申告加算税五万〇五〇〇円を賦課決定した。

四  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張1の(一)の(1)のうち、(イ)ないし(ハ)の事実は認め、(ニ)の事実は否認し、(ホ)の主張は争う。

原告は本件事業年度分の確定申告書に甲第五及び第六号証の各証明書一通を添付した。右書面はいずれも土地収用法三条に規定する資産の買取りを証明するものであり、措置法六四条四項及び六四条の二第五項所定の収用証明書とみるべき書面である。本件譲渡資産の売却は、通常の売買でなく、収用権発動を背後に持ち、売渡しを拒否すれば収用対象物件となることを主な理由として、やむをえず売却に応じたものである。

本件譲渡資産はたな卸資産ではなく、固定資産である。原告は、昭和四八年六月五日の取締役会における営業方針の変更決議により、本件譲渡資産を含む原告所有の土地を固定資産として取扱うこととし、爾来その計画を着々と実行し、多数の賃貸住宅を建築した。また、右営業方針の変更に伴い、既に京都市長に提出している分譲目的の住宅開発行為許可申請については、手続を簡易迅速に行なうため、右申請に対する諸官庁の許可を受けた後、申請目的を分譲から賃貸に変更することにした。株式会社第一物産へ譲渡した土地については、右会社が原告と同系の会社であり、原告が右会社から資金融通を受けたことから、その譲渡担保として提供したものであって、真実の売買ではない。

2  同1の(一)の(2)ないし(4)の主張は認める。

3  同1の(二)のうち、原告が、関戸市太郎ほかからいずれも昭和四七年一〇月一四日付不動産売買契約書により、別表二の<1>欄記載のとおり本件土地を取得し、これを分筆したうえ、そのうち本件譲渡資産を同表<2>欄記載のとおり譲渡したこと、原告が同表<1>欄記載のとおり売買代金を支払ったことは認め、原告が昭和四八年五月一日本件土地の引渡しを受けたとの点は否認し、その余の主張は争う。

本件譲渡資産の取得日は、本件土地の売買契約締結日である昭和四七年一〇月一四日である。原告は、右売買契約締結と同時に物件の引渡しを受け、直ちに大忠測量設計事務所に依頼して立入調査及び造成工事を開始している。原告は、本件土地の売買契約締結に際し、市販されている定型の売買契約書を使用して売買代金と手付金額を確認したにすぎず、その他残代金支払時期や引渡しについては別途口頭で約定しており、これらを右契約書の記載に依拠して判断するのは誤りである。

また、措置法六三条は法人の土地ころがしによる暴利を阻止する政策立法であるから、その解釈にあたってはある程度流動性をもって解釈すべきであり、この点はいわゆる政策的減税立法の適用が厳格に解釈すべきであるのと対蹠的であって、政策的重課立法は緩やかに、また、疑わしきは課税せずの原理の全面適用が要請される。このため、現場の行政指導は契約日を取得時期としており、本件更正等の段階でも本件土地の一部(売主小沢栄太郎、三六三平方メートル)について代金の半分以上を支払った昭和四八年一月三一日を取得日とみ、別の取扱いでは代金の三分の一以上を支払った時とするものもあって、税務行政の取扱いは区々である。このように、従前の行政指導による経理の継続性の原則を尊重し、信義則を守る立場からいっても、本件土地の売買契約締結日をもって本件譲渡資産の取得日とするのが正当である。しかも、原告は、相当以前から大阪国税局長に対し契約日をもって土地取得日とする会計処理基準の届出書を提出し、これに基づき継続的に計上処理しており、右の取扱いについて否認されたことはない。本件についてのみその取扱いを否認することは、合理的会計慣行と継続性の尊重を建前とする法人税法制上許されない。

本件土地は形式上農地であるため、農地法による転用許可の手続を履践せざるをえなかったものであるが、実質的には買受当時既に宅地化しており、農地であることを前提として取得日を論ずることも間違っている。

以上のとおり、原告が本件譲渡資産を取得したのは、措置法附則一四条規定に掲げる施行日である昭和四八年四月二一日以前であるから、措置法六三条の適用はない。

なお、措置法六三条の適用を前提とすれば、土地譲渡利益金額の計算についての計算根拠及び譲渡利益の額が被告の主張のとおりであることは認める。

4  同1の(三)の主張は争う。

5  同2の主張はいずれも争う。原告の主張によれば、計算上所得金額が年五億円を超えないことになるから、会社臨時特別税は課されない。

五  被告の再反論

1  収用証明書の添付について

原告が本件事業年度分の法人税確定申告書に添付した書面は乙第三九号証の証明書であって、甲第五及び第六号証の各証明書ではない。

しかして、右乙第三九号証の証明書の内容は単に本件譲渡資産を買受けた旨を証明するにすぎないものであり、また、右証明書の発行者は事業施行者である京都市長ではないから、収用証明書となりうるものでない。

2  本件譲渡資産のたな卸資産性について

原告が本件土地のうち本件譲渡資産を除いた残地について賃貸目的の住宅開発行為許可申請書(開発行為の変更)を提出したのは、分譲目的の開発行為の許可日から二年半余を経過した後の昭和五一年一〇月一五日であるが、真に本件土地の利用目的が原告主張の取締役会決議により変更されたのであれば、賃貸計画の早期実現に向けての準備がなされなければならないはずである。

しかも、右残地上に後に建設された原告のいう賃貸住宅はいずれも短期間内に当初の賃借人に売却されており、右住宅が当初から賃貸を目的としたものであったとは認め難い。

株式会社第一物産へ譲渡した土地について原告は当該振替伝票では通常の売買として会計処理しており、売買契約書にも「担保に供する」旨の文言はなく、通常の売買契約によるものであって、右譲渡が売買であることは明らかである。

3  本件譲渡資産の取得日について

原告が本件土地の売買契約締結と同時に測量及び造成をしたとしても、法律上の権利関係とは直接関係がない。なお、本件土地は、前述したとおり農地(市街化区域)であるから、転用届が受理されるまでは農地の形質変更が認められない。本件土地の地目はいずれも農地であり、しかも右売買契約締結当時稲が生育していた状態であって、名目のみの農地とはいえない。

また、原告が大阪国税局長に提出した会計処理基準届出書には土地仕入高計上の基準ないし土地取得の時期について何らの記載も存しない。しかも、原告の右会計処理においても、売買契約締結日をもって土地取得日としていないものもあり(三1(二)(1)(ホ)<3>参照)、必ずしも一貫していない。

第三証拠

一  原告

1  甲第一ないし第八号証

2  証人平倉正雄、同西田治、同扇武夫

3  乙第八号証の一、二の成立は不知、その余の乙号各証の成立は認める。

二  被告

1  乙第一ないし第七号証、第八号証の一、二、第九ないし第三九号証

2  甲第一ないし第四号証の成立は不知、その余の甲号各証の成立は認める。

理由

一  請求原因1の事実は、原告が本件事業年度において不動産賃貸業を主たる営業としていたとの点を除き、当事者間に争いがない。

二  本件事業年度分法人税について

1  原告申告の所得金額に加算すべき金額等

(一)  売上原価過大計上額四五八万九一九五円、退職給与引当金超過額二五万九四八一円、交際費等の損金不算入額一九万六八七九円(別表一の1の(二)の(2)の<3>ないし<5>)がいずれも原告申告の所得金額九〇七三万二一三三円に加算すべき金額であることは当事者間に争いがない。

(二)  買換資産圧縮引当金繰入損及び買換資産特別勘定繰入損(別表一の1の(二)の(2)の<1>及び<2>)

原告が公社に対し昭和四九年三月二六日付土地売買契約書により本件譲渡資産を代金八億〇〇三〇万五四九五円で譲渡したこと、原告が、右譲渡代金の一部四憶八九三一万七〇〇〇円をもって本件事業年度中に本件代替資産を取得し、措置法六四条一項による引当金勘定として二億五四九三万四一五七円を、同法六四条の二第一項による特別勘定として一億六二〇二万五〇〇五円をそれぞれ損金の額に算入したことは当事者間に争いがない。

そこで、本件譲渡資産の譲渡による所得金額の計算において、措置法六四条一項、六四条の二第一項の規定を適用すべきものか否かについて検討する。

ところで、同法六四条四項は、「(六四条)第一項の規定は、確定申告書等に同項の規定により損金の額に算入される金額の損金算入に関する申告の記載があり、かつ、当該確定申告書等にその損金の額に算入される金額の計算に関する明細書その他大蔵省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。」と定め、同法六四条の二第五項も、同条一項の規定により損金の額に算入する場合について、右六四条四項の規定を準用している。

したがって、措置法六四条一項、六四条の二第一項の規定は、右に定める記載及び書類の添付がある場合に限って適用されるものであって、右のような手続的要件の充足がない場合には、その実体的な要件の有無を問うまでもなく、これの適用を受けえないものと解さざるをえない。

もっとも、同法六四条五項は、「税務署長は、前項の記載又は添付がない確定申告書等の提出があった場合においても、その記載又は添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類並びに同項の明細書及び大蔵省令で定める書類の提出があった場合に限り、第一項の規定を適用することができる。」と定め、同法六四条の二第五項も同様この規定を準用し、追完の余地を残しているのであるが、その場合でも所定の記載または書類の提出は不可欠の要件であることが明らかである。

被告は、原告提出の確定申告書には右大蔵省令で定める収用証明書の添付がなく、現在にいたるも提出されていない旨主張するので、この点について考察するに、成立に争いのない甲第五号証、乙第三九号証によれば、公社は原告から本件譲渡資産を京都市立中学校用地として買受けたものであることが認められるので、本件における右大蔵省令で定める書類とは、措置法施行規則二二条の二第四項一号、一四条六項三号イ及び二号により、事業の施行者である京都市の、本件譲渡資産が土地収用法三条二一号の規定に該当するものに関する事業に必要なもの(京都市立中学校用地)として収用できる資産に該当する旨を証する書類で、京都市に代わってこれらの買取りをする公社の名称及び所在地の記載があるものでなければならないこととなる。

しかして、成立に争いのない乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、右に該当する書類として原告の確定申告書に添付されたものは、乙第三九号証の証明書であると認められるが、右証明書は、公社が、本件譲渡資産を京都市立中学校用地として原告から買受けたことを証明するものにすぎず、事業の施行者である京都市が発行した書類ではない。また、本件訴訟において原告が提出した甲第五号証の証明書は、公社が、本件譲渡資産を土地収用法三条に該当する京都市立中学校用地として原告から買受けたことを証明するものにすぎず、同じく甲第六号証の証明書も、京都市教育委員会が、原告の協力により本件譲渡資産を京都市立中学校用地として確保できた経緯等を証明するものにすぎず、いずれも事業施行者である京都市の発行にかかるものではない(なお、原告は確定申告書に右二通の証明書を添付した旨主張するが、甲第五号証の証明書が確定申告書に添付されていたとの証拠はなく、また、甲第六号証の証明書が確定申告書に添付されたとの点については、これに副う証人西田治の証言は措信し難く、他に右証明書が確定申告書に添付されたとの事実を認めるに足りる証拠はない。)。しかも、成立に争いのない乙第五号証、乙第一二号証によれば、京都市においては、本件譲渡資産の取得は不動産業者の所有地でたな卸資産に該当するものを買受けたのであるから、事業の施行者として大蔵省令に定める書類を発行すべき場合にあたらないとして、あえてこれの発行を行なっていないことが認められ、これに照らせば、右三通の証明書がいずれも前記大蔵省令に定める書類に該当しないことは明らかである。

以上のとおり、原告の確定申告書には必要とされる添付書類の添付がなく、また、その後においても提出されていないものといわざるをえないのであるから、結局、本件においては、措置法六四条一項、六四条の二第一項の特例適用のための実体的要件を充足するか否かを検討するまでもなく、これの適用はないといわなければならない。

そうすると、原告が損金に算入した買換資産圧縮引当金繰入損二億五四九三万四一五七円及び買換資産特別勘定繰入損一億六二〇二万五〇〇五円について、被告がいずれもこれを否認したことは相当であり、これを原告申告の所得金額に加算すべきである。

(三)  以上によれば、原告の本件事業年度における所得金額は五億一二七三万六八五〇円となり、これに対する法人税額が二億〇三五三万九二六〇円となることは計算上明らかである。

2  土地譲渡利益金額等

(一)  原告は、本件譲渡資産の取得日は措置法附則一四条規定に掲げる施行日である昭和四八年四月二一日以前であるので、措置法六三条に規定する土地重課の適用はない旨主張するから、まず、本件譲渡資産の取得日について判断する。

原告が、関戸市太郎ほかからいずれも昭和四七年一〇月一四日付不動産売買契約書により別表二の<1>欄記載のとおり本件土地を取得し、これを分筆したうえ、そのうち本件譲渡資産を同表<2>欄記載のとおり譲渡したこと、原告が同表<1>欄記載のとおり売買代金を支払ったことは当事者間に争いがない。

右争いのない事実と成立に争いのない乙第二二ないし第三五号証並びに弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。

すなわち、原告は、昭和四七年一〇月一四日、関戸市太郎らとの間で本件土地を別表二の<1>欄記載の売買代金で買受ける旨の売買契約を締結し、同日その一割を手付金として支払い、右売買契約において、所有権移転登記申請日を昭和四八年四月末日とし、同日原告は登記完了と同時に残代金を支払い、同時に本件土地の引渡しを受ける旨を約した。右売買代金の支払状況は別表二の<1>欄記載のとおりであり、昭和四八年五月一日代金が完済され、同月七日本件土地について同月一日売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記がなされた。その後、本件土地は別表二の<2>欄記載のとおり分筆され、うち本件譲渡資産について、昭和四九年二月一五日、関戸市太郎らから京都府知事に対し、農地法五条一項三号に基づき、譲受人を原告とし、所有権移転時期はその届出の受理通知書受領時とする農地転用届出がなされ、同年三月八日これが受理されてその効力が生じ、同月一二日付で受理通知書が発せられた。同月一六日または同月二二日本件譲渡資産について原告に対し同月一三日売買を原因とする所有権移転本登記がなされた。以上のとおり認められる。

ところで、措置法六三条一項一号にいう土地の取得の日がいつであるかを定めた規定は税法上存しないが、これを私法上の概念である所有権を取得した日と別異に解すべき合理的な根拠は見出し難いので、これをもって取得の日というべきである。そして、農地については、農地法三条または五条による知事の許可または届出がなければ所有権移転の効力が生じないのであるから、右許可または届出のあった日をもって取得の日と解すべきである。

本件土地の地目は前掲乙第二二ないし第二七号証によればいずれも田または畑であり、その分筆後の一部である本件譲渡資産について前記のとおり農地転用届出がなされたものであるが、原告は、本件土地は実質的には買受当時既に宅地化していたと主張する。しかし、証人扇武夫の証言及びこれにより真正に成立したと認める甲第七号証によれば、昭和四七年一〇月一四日の売買契約締結時本件土地には稲が生育していた状態であり、本件譲渡資産に土砂を搬入し、盛土工事を開始したのは昭和四九年三月二〇日以後であることが認められ、また、前掲乙第三〇ないし第三五号証によっても、本件譲渡資産の農地転用届出当時の現況はその表示どおり田または畑であったことが認められ、本件土地が分筆後本件譲渡資産として農地転用届出がなされるまでに既に宅地化されていたと認めるに足りる証拠はない。

そうすると、原告が農地である本件譲渡資産の所有権を取得したのは、前記認定の事実によれば、関戸市太郎らが農地転用届出において所有権移転の時期とした受理通知書受領日であるというべきであり、右受理通知書が昭和四九年三月一二日に発せられたこと及び原告に対する所有権移転本登記の登記原因が同月一三日売買であることからみて、右同月一三日ころが受理通知書受領日であると推認され、そのころ、原告は本件譲渡資産の所有権を取得したこととなり、これが本件譲渡資産の取得の日であると解さざるをえない。

原告は、措置法六三条にいう取得日について税務行政の取扱いは区々であり、従前の行政指導による経理の継続性の尊重及び信義則上、本件土地の売買契約締結日をもって取得日とすべき旨主張する。

ところで、措置法基本通達六三(一)-四(昭和五一年三月四日改正)は、「土地等を取得した日とは、当該土地等の引渡しを受けた日をいうものとする。ただし、引渡しの日に関し特約がある場合を除き、当該土地等の売買代金の支払額(手付金を含む。)の合計額がその売買代金の三〇パーセント以上になった日(その日が売買契約締結の日前である場合には、その締結の日)以後引渡しまでの間の一定の日をもって法人がその取得の日としているときは、これを認める。」とし、同通達六三(一)-五は、「引渡しの日に関し特約がある場合」について、「単に代金完済後所有権の移転または引渡しを行なう旨の条件が付されていてもここにいう特約がある場合には該当しない」とし、同通達六三(一)-七は、「転用未許可農地の価値が反映している契約上の権利で現実に取引の対象とされているもの」も措置法六三条一項一号に規定する土地の上に存する権利に含むとし、「この場合において、当該転用未許可農地の権利に係る土地を取得するに至ったときは、当該土地は、当該権利の取得の日から引続き有していたものとして取扱う。」とする(なお、ここでいう「当該権利の取得の日」とは、先の通達六三(一)-四の「土地等を取得した日」の規定に従うことはいうまでもない。)。そして、前掲乙第一号証によれば、本件更正等は、本件土地のうち売主小沢栄太郎の三六三平方メートルの土地について、右各通達に依拠して売買代金の半額以上の支払いをなした昭和四八年一月三一日をもって取得日とし、措置法六三条の適用から除外していることが認められる。

そうすると、税務行政においては右各通達に従って統一した取扱いをしているものと認められるが、これによっても売買契約締結日を直ちに取得日とするものではなく、また、売買代金の支払額(手付金を含む。)の合計額が昭和四八年四月二一日以前にその売買代金の三〇パーセント以上となったのは、本件土地において右売主小沢栄太郎の土地を除いて他に存在しない。

もっとも、原告は、売買契約締結と同時に本件土地の引渡しを受け、直ちに立入調査及び造成工事を開始したと主張するのであるが、立入調査の開始をもって引渡しがあったとすることはできず、本件譲渡資産について造成工事が開始されたのは、先にみたとおり昭和四九年三月二〇日以降というべきであるから、原告が昭和四八年四月二一日以前に本件土地の引渡しを受けたとの事実を認めることはできない。むしろ、先にみたとおり、右売買契約において原告は代金完済と同時に本件土地の引渡しを受けるものとされ、昭和四八年五月一日に代金が完済されたこと、本件土地の原告に対する所有権移転請求権仮登記の原因が同日の売買予約とされていることに照らし、原告は同日本件土地の登記権利証等登記手続に必要な書類を受領するとともに本件土地の引渡しを受けたとみるのが相当である。

そうすると、前記各通達によっても、売主小沢栄太郎の土地を除き本件土地を昭和四八年四月二一日以前に取得したということはできない。そして、本件更正等における課税土地譲渡利益金額三億七七六八万九〇〇〇円は、右売主小沢栄太郎の土地を除いた本件譲渡資産の譲渡にかかるものといえるから、前記各通達の適否を論ずるまでもなく、従前の行政指導による経理の継続性及び信義則を根拠として売買契約締結日が取得日であるとする原告の前記主張は採用することができない。

また、原告は、大阪国税局長に対し契約日をもって土地取得日とする会計処理基準の届出書を提出し、これに基づき継続的に計上処理してきた旨主張するが、成立に争いのない乙第三七号証によれば、原告は右届出をもって土地売上高計上の時期を売買契約効力発生の日としていることが認められるものの、これには土地仕入高計上の時期についての届出はなく、成立に争いのない乙第九及び第一〇号証によれば、原告は本件代替資産について代金完済日をもって取得したものと経理していることが認められるので、これによれば、原告は継続的に契約日を取得日として計上処理しているものとはいえず、原告の右主張は前提を欠くものであって、採用しえない。

(二)  以上のとおり、原告が本件譲渡資産を取得したのは措置法附則一四条規定に掲げる施行日である昭和四八年四月二一日以後であるから、原告は本件譲渡資産の譲渡について措置法六三条の適用を受けるものといわなければならない。

そして、右適用のあることを前提とした土地譲渡利益金額についての計算根拠及び譲渡利益の額が被告の主張1の(二)の(2)のとおりであることは当事者間に争いがないので、これによれば原告の本件事業年度における土地譲渡利益金額は三億八三八四万九〇〇〇円となり、本件更正等における金額はその範囲内であるから、適法なものというべきである。

仮に前記各通達の基準によった場合も、前述したとおり、土地譲渡利益金額は本件更正等における土地譲渡利益金額三億七七六八万九〇〇〇円となるので、本件更正等が適法であることに変わりはない。

3  過少申告加算税額

以上みてきたところによれば、本件更正等の課税所得金額、課税土地譲渡利益金額の認定に違法はなく、課税留保金額については、原告が別表一の1の(一)の(7)のとおり申告したのに対し、本件更正等はこれを零円としたものであるから、原告に何ら不利益を課したものではなく、控除所得税額についても、本件更正等は原告の申告額のとおりとしたものであって(別表一の1の(9))、これらを基礎に算出した過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

三  本件事業年度分会社臨時特別税について

既に認定したとおり、原告の本件事業年度における法人税課税所得金額は五億一二七三万六八五〇円、これに対する法人税額は二億〇三五三万九二六〇円であり、成立に争いのない甲第八号証によれば原告の本件事業年度末資本金額は七〇〇〇万円であることが認められるが、この二〇パーセント相当額は五億円を下廻ることとなり、結局、右算出法人税額、法人税課税所得金額及びこのうち五億円を超過する金額によって課税標準法人税額を算出すれば別表一の2の(8)のとおり五〇五万六〇〇〇円となることは明らかであり、これに基づく本件決定等に違法な点はない。

四  以上の次第で、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田坂友男 裁判官 小田耕治 裁判官 森高重久)

別表一

1 法人税

<省略>

2 会社臨時特別税

<省略>

別表二

<省略>

(注) 所在地はすべて京都市伏見区内である。

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