大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和47年(行ウ)147号 判決 1975年2月28日

京都府宇治市神明石塚七七番地の七

原告

森惣一

右訴訟代理人弁護士

石川惇三

右訴訟復代理人弁護士

田辺照雄

京都府宇治市大久保町北山一六番地の一

被告

宇治税務署長

前田功

右指定代理人

井上郁夫

右同

樋口正

右同

棚橋満雄

右同

皆瀬武視

主文

被告が原告の昭和四二年分の所得税について昭和四六年二月二六日付でした更正処分のうち、所得税額八三三、二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち、廻少申告加算税額二八、三一五円を超える部分をそれぞれ取消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の、その余を被告の、各負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

被告が原告の昭和四二年分の所得税について昭和四六年二月二六日付でした更正処分のうち、所得税額二六六、九〇〇円を超える部分及び過少申告加算税金八四、五〇〇円の賦課決定処分を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

二  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、農業を営むものであるが、昭和四二年分の所得税につき、課税所得金額を金一、四六二、〇〇〇円、所得税額を金二六六、九〇〇円と申告したところ、被告は、昭和四六年二月二六日付で、原告の昭和四二年分の所得税につき、課税所得金額を金五、七五七、〇〇〇円、所得税額を金一、九五七、〇〇〇円と更正する決定及び過少申告加算税金八四、五〇〇円の賦課決定処分(以下、本件更正処分という。)をした。

2  そこで、原告は、これを不服として、本件更正処分につき異議申立をしたところ、被告はこれを棄却したので、さらに国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は、昭和四七年一〇月三日付で、これを棄却する旨の裁決をした。

3  しかし、本件更正処分には、原告が昭和四二年四、五月頃売却した宇治市神明石塚所在の土地が租税特別措置法(昭和四四年法律第一五号による改正前のもの。以下、旧措置法という。)三八条の六所定の事業用譲渡資産に該当するものであるのに、これに該当しないと誤認した結果原告の所得税額を過大に認定した違法がある。

4  よって、本件更正処分のうち、所得税額二六六、九〇〇円を超える部分及び過少申告加算税金八四、五〇〇円の賦課決定処分の取消を求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1及び2の各事実は認める。

2  同3の事実中、本件更正処分において原告主張の土地が旧措置法三八条の六所定の事業用譲渡資産に該当しないと認定したことは認めるが、その余は争う。

三  被告の主張

1  原告の昭和四二年分の課税所得金額は金五、七五七、〇〇〇円、所得税額は金一、九五七、〇〇〇円、過少申告加算税額は金八四、五〇〇円であって、その算出根拠は次のとおりである。

(一) 事業所得の金額 二〇、〇〇〇円

(二) 雑所得の金額 三〇、〇〇〇円

(三) 譲渡所得の金額 六、一六一、七六五円

原告は、昭和四二年五月一〇日訴外坂井商事有限会社外一社に対して別紙第一目録記載の土地を金二一、四二六、六〇〇円で、同年四月一九日訴外小松潔外一名に対して別紙第二目録記載の土地を金一、二六〇、〇〇〇円で、それぞれ譲渡した。そして、原告は、右各土地(以下、これを一括して本件土地という。)の譲渡が旧措置法三五条所定の居住用財産及び同法三八条の六所定の事業用資産の各買換えの場合に該当するとして、右各法条に基づく特例計算を行ない、右譲渡所得の金額を金一、八六七、四九五円と申告した。

しかし、本件土地の譲渡は、旧措置法三五条所定の居住用財産の買換えの場合には該当するが、本件土地が事業の用に供されていないため同法三八条の六所定の事業用資産に該当せず、右譲渡につき同条の規定は適用されないものである。すなわち、原告は、訴外森伊三男(以下、原告らという。)と共同して昭和三一年一一月五日訴外平田是龍外二名から本件土地を買受けこれを共有していたが、右貸受当初から訴外高谷政次郎外八名(以下、訴外高谷らという。)が本件土地を農耕地として占有耕作していたため、原告が自ら本件土地を耕作し或いは他に賃貸することは不可能な状態にあった。そして、右の状態は、その後原告らと訴外高谷らとの間で本件土地の所有権の帰属をめぐって訴訟が提起され、その訴訟係属中の昭和四二年三月九日に京都簡易裁判所において、原告らから坪当り金三、〇〇〇円の割合による明渡料を訴外高谷らに支払うことにより、訴外高谷らは同月二〇日限り本件土地を原告らに明渡す旨の調停が右両者間に成立するまで継続したのであるから、原告において本件土地をその事業の用に供する余地は全くなかったものである。

そこで、本件土地の譲渡につき、旧措置法三五条の規定のみを適用して、原告の昭和四二年分の譲渡所得の金額を計算すると、その額は次のとおり金六、一六一、七六五円になる。

(1) 本件譲渡資産(本件土地)の

<1> 収入金額 二二、六八六、六〇〇円

<2> 取得価額等 五、二六八、五一〇円

(2) 旧措置法三五条一項による特例計算

<3> 買換資産の取得価額 六、二六四、五六〇円

<4> 譲渡があったとされる部分の収入金額 一六、四二二、〇四〇円

右は、旧措置法施行令二四条四項に基づき、<1>の金額から<3>の価額を差引いたものである。

<5> 譲渡があったとされる部分の取得価額等 三、七九八、五一〇円

右は、旧措置法施行令二四条四項に基づき、<2>の価額に<4>の金額を乗じ、これを<1>の金額で除したものである。

<6> 譲渡益 一二、六二三、五三〇円

右は、旧措置法施行令二四条四項に基づき、<4>の金額から<5>の価額を差引いたものである。

(3) 譲渡所得の特別控除額 三〇〇、〇〇〇円

右は、所得税法三三条四項に基づく特別控除額である。

(4) 譲渡所得の金額 六、一六一、七六五円

右は、所得税法二二条二項二号に基づき、<6>の譲渡益から(3)の特別控除額を差引いたうえ、これを二で除したものである。

(四) 総所得金額 六、二一一、七六五円

右は、(一)ないし(三)の各金額の合計額である。

(五) 所得控除額 四五四、五〇〇円

右は、左記(1)ないし(5)の各金額の合計額である。

(1) 社会保険料控除 二五、〇〇〇円

(2) 損害保険料控除 二、〇〇〇円

(3) 配偶者控除 一四五、〇〇〇円

(4) 扶養控除 一三五、〇〇〇円

(5) 基礎控除 一四七、五〇〇円

(六) 課税所得金額 五、七五七、〇〇〇円

右は、(四)の総所得金額から(五)の所得控除額を差引いたもの(但し、一、〇〇〇円未満の端数は切捨て)である。

(七) 算出所得税額 一、九五九、四五〇円

(八) 源泉徴収税額 二、四〇〇円

(九) 所得税額 一、九五七、〇〇〇円

右は、(七)の金額から(八)の金額を差引いたもの(但し、一、〇〇〇円未満の端数は切捨て)である。

(一〇) 過少申告加算税額 八四、五〇〇円

2  被告は、以上の計算によって算出された金額に基づき本件更正処分をしたものであって、本件更正処分になんらの違法はない。

四  被告の主張に対する原告の答弁

1(一)  被告主張1の(一)(二)の各金額は認める。

(二)  同(三)の事実中、原告が被告主張の頃主張の者に本件土地をその主張の金額で譲渡したこと、原告が右譲渡所得の金額を被告主張のとおり申告したこと、原告らが共同して被告主張の頃本件土地を訴外平田是龍外二名から買受けこれを共有していたこと、右買受当時訴外高谷らが本件土地を農耕地として占有耕作していたこと、原告らと訴外高谷らとの間で本件土地の所有権の帰属をめぐって訴訟が提起され、その訴訟係属中の昭和四二年三月九日に京都簡易裁判所で被告主張のとおりの調停が右両者間に成立したこと、並びに被告主張の譲渡所得金額の計算中<1>ないし<3>の各金額は認めるが、その余の事実は否認する。

原告らは、自ら農耕の用に供する目的で本件土地を買受けたが、右買受当時訴外高谷らが本件土地を農耕地として占有耕作していたため、原告らにおいてこれを農耕の用に供することができなかった。

しかし、前記訴訟係属中の昭和三六年頃から右占有者の一部が本件土地の占有耕作をやめたため、原告らはそのあとを占有して農業の用に使ってきた。

原告らが農業の用に使っていた本件土地の部分は別紙図面記載(赤及び青斜線部分)のとおりであり、各々単独で占有耕作し、原告は、その耕作地で茶の栽培をして毎年収穫を得、これによる昭和三九年及び昭和四〇年度の収益を農業所得として確定申告した。

以上のとおり、本件土地は全体として旧措置法三八条の六所定の事業用資産にあたるものであるから、これにつき同条の規定を適用して原告の昭和四二年分の譲渡所得の金額を計算すると、その額は金一、八六七、四九五円になる。

仮に本件土地の全部が右事業用資産にあたるとはいえないにしても、本件土地のうち原告が単独で農業の用に供してきた右図面記載の土地部分(赤斜線部分)五〇三坪強については、これを右事業用資産と認むべきである。したがって、少なくとも右五〇三坪の譲渡については旧措置法三八条の六が適用されるべきであり、右譲渡価格は一坪当り金一三、四〇〇円であったから、これに基づき原告の昭和四二年分の譲渡所得の金額を計算すると、その額は金三、五六六、七一三円になる。

(三)  同(四)の金額は否認する。

本件土地全部を事業用資産とみた場合の総所得金額は金一、九一七、四九五円であり、仮に本件土地のうち前記五〇三坪のみを事業用資産とみた場合でも、総所得金額は金三、六一六、七一三円にすぎない。

(四)  同(五)の各金額はすべて認める。

(五)  同(六)及び(七)の各金額は否認する。

本件土地全部を事業用資産とみた場合の課税所得金額は金一、四六二、〇〇〇円、算出所得税額は金二六九、三〇〇円であり、仮に本件土地のうち前記五〇三坪のみを事業用資産とみた場合でも課税所得金額は金三、一六一、九四八円、算出所得税額は金八三三、四〇〇円にすぎない。

(六)  同(八)の金額は認める。

(七)  同(九)及び(一〇)の各金額は否認する。

本件土地全部を事業用資産とみた場合の所得税額は原告の申告どおり金二六六、九〇〇円であり、仮に本件土地のうち前記五〇三坪のみを事業用資産とみた場合でも所得税額は金八三一、〇〇〇円にすぎない。

2  したがって、本件更正処分は、いずれにしても、原告の所得税額を過大に認定したもので、違法である。

第三証拠関係

一  原告

甲第一号証、同第二、三号証の各一、二、同第四、五号証、同第六号証の一ないし四、同第七号証の一ないし三を提出。原告本人尋問の結果を援用。乙号各証の成立を認める。

二  被告

乙第一号証、同第二ないし一〇号証の各一、二、同第一一ないし一六号証、同第一七号証の一、二を提出。甲第一号証、同第二、三号証の各一、二、同第七号証の一ないし三の各成立を認め、同第四、五号証、同第六号証の一ないし四の各成立は不知。

理由

一  原告主張の請求原因1及び2の各事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件更正処分の適否について判断する。

1  原告の昭和四二年分の事業所得の金額が金二〇、〇〇〇円、雑所得の金額が金三〇、〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

2  原告が昭和四二年五月一〇日頃訴外坂井商事有限会社外一社に対して別紙第一目録記載の土地を金二一、四二六、六〇〇円で、同年四月一九日頃訴外小松潔外一名に対して別紙第二目録記載の土地を金一、二六〇、〇〇〇円で、それぞれ譲渡したことは、当事者間に争いがない。そして、これら本件土地の譲渡が旧措置法三五条所定の居住用財産の買換えの場合に該当することは、当事者双方に異論のないところであるが、本件土地が同法三八条の六の適用を受くべき事業用資産に該当するかどうかにつき当事者間に争いがあるので、以下この点について検討することとする。

(一)  原告らが共同して昭和三一年一一月五日頃訴外平田是龍外二名から本件土地を買受けこれを共有していたこと、右買受当時訴外高谷らが本件土地を農耕地として占有耕作していたこと、原告らと訴外高谷らとの間で本件土地の所有権の帰属をめぐって訴訟が提起され、その訴訟係属中の昭和四二年三月九日に京都簡易裁判所において、原告らから坪当り金三、〇〇〇円の割合による明渡料を訴外高谷らに支払うことにより訴外高谷らは同月二〇日限り本件土地を原告らに明渡す旨の調停が右両者間に成立したことは、いずれも当事者間に争いがない。

右争いのない事実と、成立に争いのない甲第三号証の二、乙第一号証、同第二ないし一〇号証の各一の一部、同第一一ないし一三号証の各一部、同第一四、一五号証、同第一七号証の一、二、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第四、五号証並びに原告本人尋問の結果を総合すると、本件土地は、もと訴外平田是龍外二名の所有であったが、昭和二三年一一月二三日頃、宇治町農地委員会が定めた自創法による未墾地買収とその売渡計画に基づき、訴外高谷らが同委員会の指示によりそれぞれ割当てられた土地範囲を開墾し、茶園、菜園、麦畑等として耕作していたこと、しかしその後、同委員会の事務の手違いにより、本件土地について右売渡処分のための買収手続さえ履践されずに放置されていることが判明したので、右買収計画等樹立当時農地委員であった原告は、自ら本件土地を前記所有者から買受けてこれを右訴外高谷らに売渡すことにより事態を収拾しようとしたが、訴外高谷らがこれに応じようとしなかったため、やむなく訴外森伊三男と共同して昭和三一年一一月五日頃本件土地を訴外平田是龍外二名から買受けてその旨の所有権移転登記を得たうえ、翌三二年訴外高谷らに対し不法占拠を理由に本件土地の明渡訴訟を京都地方裁判所に提起したところ、訴外高谷らも同三五年原告らに対し、本件土地の所有権を時効取得したとして土地所有権移転登記抹消手続等請求訴訟を同裁判所に提起したこと、右両訴訟は昭和四〇年三月一三日一審判決があり、土地明渡訴訟は原告が敗訴し、登記抹消手続等請求訴訟は訴外高谷らが敗訴したので、双方が控訴したこと、本件土地はもともとやせて収穫に乏しかったうえ、その所有権の帰属をめぐって原告らとの間に右のような長期にわたる紛争が続いたため、その間訴外高谷ら本件土地耕作者は昭和三七年頃から次第にその耕作をやめるようになり、訴外高谷らが植栽していた茶の木も手入れが施されないまま放置されるに至ったこと、このような状況のもとで、原告は曾て茶の栽培に従事したことのある経験を生かし、その頃から、別紙図面記載の土地部分五〇三坪強に植栽されたまま放置されていた右茶の木の新芽を摘み、草刈りをするなどしてその生育を管理するようになり、昭和三九年から昭和四一年にかけて毎年右茶の木から茶を収穫して、昭和三九年と昭和四〇年分の確定申告に際しその販売利益を自己の農業所得として申告したが、昭和四一年は不作で殆んど収益がなかったため、これについての確定申告まではしなかったこと、原告は、引き続き右土地部分で茶の栽培をする意図を有していたが、昭和四二年三月九日京都簡易裁判所において訴外高谷らとの間に前記調停が成立し、これによって訴外高谷らに明渡料を支払う必要が生じたため、前記のとおり本件土地を訴外坂井商事有限会社らに売渡し、右明渡料を捻出するとともに、その売得金で代替土地を購入し、同地上にアパートを建築するなどしたことを認めることができる。

尤も、前記乙第二ないし一〇号証の各一、同第一一ないし一三号証によると、前記宇治町農地委員会の指示により本件の開墾耕作を行なった右訴外高谷らは、大阪国税局係官の文書照会ないし事情聴取に対し、右指示を受けた昭和二三年頃から前記調停成立時まで引き続き同訴外人らが本件土地を耕作し、その間原告が本件土地を耕作した事実はない旨の回答ないし陳述をしている事実が認められるが、右回答ないし陳述は、いずれも単に原告の耕作の事実を否定するのみで、その間の右訴外人らの耕作状況、ことに原告らとの間に前記紛争が生じたのちの本件土地の利用状況等につき何ら具体的な説明がなされていないため、にわかにその真実性を認めがたく、結局右各書証の記載中前記認定に反する部分はたやすく信用しがたいものというほかない。

なお、成立に争いのない乙第一五号証によると、原告は、前記審査手続中大阪国税局係官から事情聴取を受けた際、自己が耕作していたとする土地の範囲につき別紙図面記載の位置と異なる位置を図面によって指示したことが認められるが、他方原告本人尋問の結果によると、原告は、右事情聴取に際し右係官から示された図面と現地の記憶とが一致せず、図面上誤まった指示をしたものであることが認められるので、これをもって前記の認定を左右しうべき証左とすることはできない。

そして、原告が前記認定の土地部分五〇三坪強の範囲を超えてその余の本件土地部分をも耕作していた事実を認めるにたる証拠はない。

以上の認定事実によると、原告は、遅くとも昭和三九年以降、本件土地のうち別紙図面記載の土地部分五〇三坪強に茶の木を栽培し、これによって収穫した茶を販売して農業所得を得ていたのであるから、右土地部分は原告の事業の用に供されていたものというべく、したがって、原告が本件土地を訴外坂井商事有限会社らに売渡したことによる譲渡所得の計算については、右土地部分につき旧措置法三八条の六の規定が適用されるべきものである。

(二)  そこで、右に認定したところに従い、原告の昭和四二年分の譲渡所得の金額を算定する。

本件土地の譲渡による収入金額が金二二、六八六、六〇〇円、その取得価額等が金五、二六八、五一〇円であることは、当事者間に争いがない。

成立に争いのない甲第七号証の一ないし三によると、本件土地の右譲渡価額は一坪当り金一三、四〇〇円(但し、一〇〇円未満の端数は切捨て)であることが認められるから、原告の事業の用に供されていた右土地部分は金六、七四〇、二〇〇円で譲渡されたことになるところ、その譲渡による収入金額は、前記甲第四、五号証並びに弁論の全趣旨によって認められる右土地部分の書換資産の取得価額一一、一七〇、〇〇〇円を下廻ることになるから、旧措置法三八条の六の定めるところにより、その譲渡所得の金額の計算については右土地部分の譲渡がなかったものとして取り扱われることになる。

そこで、本件土地のうち旧措置法三五条の適用を受くべき土地部分の譲渡につき、同法条を適用したうえ、原告の昭和四二年分の譲渡所得の金額を計算すると、その額は次のとおり金三、五七一、六二五円になる。

(1) 右譲渡資産の

<1> 収入金額 一五、九四六、四〇〇円

右は、前記当事者間に争いのない本件土地の譲渡による収入金額二二、六八六、六〇〇円から前記認定の事業用資産たる土地部分の収入金額六、七四〇、二〇〇円を差引いたものである。

<2> 取得価額等 三、六八七、九五七円

右は、前記当事者間に争いのない本件土地の取得価額等五、二六八、五一〇円から前記事業用資産たる土地部分の取得価額等に相当する金額一、五八〇、五五三円を差引いたものである。

(2) 旧措置法三五条一項による特例計算

<3> 買換資産の取得価額 六、二六四、五六〇円

右金額は、当事者間に争いがない。

<4> 譲渡があったとされる部分の収入金額 九、六八一、八四〇円

右は、旧措置法施行令二四条四項に基づき、<1>の金額から<3>の価額を差引いたものである。

<5> 譲渡があったとされる部分の取得価額等 二、二三八、五八九円

右は、旧措置法施行令二四条四項に基づき、<2>の価額に<4>の金額を乗じ、これを<1>の金額で除したものである。

<6> 譲渡益 七、四四三、二五一円

右は、旧措置法施行令二四条四項に基づき、<4>の金額から<5>の価額を差引いたものである。

(3) 譲渡所得の特別控除額 三〇〇、〇〇〇円

右は、所得税法三三条四項に基づく特別控除額である。

(4) 譲渡所得の金額 三、五七一、六二五円

右は、所得税法二二条二項二号に基づき、<6>の譲渡益から(3)の特別控除額を差引いたうえ、これを二で除したものである。

3  そうすると、原告の昭和四二年分の総所得金額は、前記当事者間に争いのない事業所得金額二〇、〇〇〇円、雑所得金額三〇、〇〇〇円及び右認定の譲渡所得の金額三、五七一、六二五円の合計金三、六二一、六二五円である。

4  原告の同年分の所得控除額が金四五四、五〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

そうすると、原告の同年分の課税所得金額は、右認定の総所得金額三、六二一、六二五円から右所得控除額四五四、五〇〇円を差引いた金三、一六七、〇〇〇円(但し、一、〇〇〇円未満の端数は切捨て)であり、これに基づく算出所得税額は金八三五、六〇〇円である。

5  原告の同年分の源泉徴収税額が金二、四〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

そうすると、原告の同年分の所得税額は、右算出所得税額八三五、六〇〇円から右源泉徴収税額二、四〇〇円を差引いた金八三三、二〇〇円であり、その過少申告加算税額は、国税通則法六五条一項に基づき、右認定の所得税額八三三、二〇〇円から前記当事者間に争いのない原告の申告に係る所得税額二六六、九〇〇円を差引いた金額に一〇〇分の五を乗じた金二八、三一五円である。

6  以上のとおり、本件更正処分は、右認定の所得税額及び過少申告加算税額を超える限度において、これを過大に認定した違法があるから、この部分の取消を免れない。

三  よって、原告の被告に対する本訴請求は、右認定の限度において理由があるからこれを認容し、その余は理由なく失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田次郎 裁判官 谷村允裕 裁判官 永田誠一)

第一目録

宇治市神明石塚五四番地の七

一 畑 九〇二平方米

同所五四番地の八

一 畑 一、一二八平方米

同所五四番地の二一

一 畑 九二七平方米

同所五四番地の二二

一 畑 一、四一九平方米

同所五四番地の二三

一 畑 一、〇五九平方米

同所五四番地の二〇

一 山林 一、〇四一平方米

同所五四番地の五〇

一 山林 一五五平方米

同所五四番地の五一

一 山林 三二七平方米

同所五四番地の一一〇

一 山林 一二二平方米

同所五四番地の一一一

一 山林 一九三平方米

同所五四番地の一一二

一 山林 一九九平方米

同所五四番地の一一三

一 山林 五〇七平方米

同所五四番地の一一四

一 山林 二六二平方米

(以上の各土地はいずれも原告と訴外森伊三男の共有であって、原告の持分はそれぞれの土地について二分の一宛である。)

宇治市神明石塚五四番地の一一五

一 山林 一六四平方米

(右土地は原告の単独所有である。)

第二目録

宇治市神明石塚五四番地の一〇五

一 畑 二八六平方米

(右土表は原告と訴外森伊三男の共有であって、原告の持分は二分の一である。)

宇治市神明石塚五四番地の二五

一 山林 九五平方米

(右土地は原告の単独所有である。)

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例