大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和44年(人)2号 決定

被拘束者及び請求者

ボール・イ・サイモンこと

ダニー・デイ・デニス

請求者

飯沼二郎

右両名請求者代理人

小野誠之

崎間晶一郎

拘束者

京都地方検察庁検事

細川顕

主文

本件請求を棄却する。

本件手続費用は請求者両名の負担とする。

事実

請求の趣旨及び理由 別紙のとおり。

理由

一、被拘束者は、昭和四四年五月一二日午前一一時三二分頃、京都市左京区吉田下大路四三番地先路上において、京都府警川端警察署吉田巡査派出所巡査野村正美、同田中茂生より職務質問を受けたうえ、右派出所に任意同行を求められて、これに応じ、同日午後三時〇分、同所において、「出入国管理令違反、外国人登録法違反」で緊急逮捕され、同日午後九時、右逮捕状が発布され、右逮捕令状にもとづいて右川端警察署に留置された。

二、請求者両名は、昭和四四年五月一三日午後一一時一〇分、京都地方裁判所に対し、拘束者を川端警察署長として、人身保護請求をなし、右拘束を法律上正当な手続によらない身体の拘束であると主張して、「被拘束者のため拘束者に対し人身保護命令を発行し被拘束者を釈放する。」旨の判決を求めた(当裁判所昭和四四年(人)第一号)。

三、その後、川端警察署長は、昭和四四年五月一四日午後二時、被拘束者に対する外国人登録法違反事件を京都地方検察庁検察官に送致した(細川顕検事係)。しかし、被拘束者は、引続き現在まで、川端警察署に留置されている。

四、そこで、請求者両名は、昭和四四年五月一四日午後七時三〇分、京都地方裁判所に対し、拘束者を京都地方検察庁検事細川顕として、人身保護請求をなし、「被拘束者のため拘束者に対し人身保護命令を発行し被拘束者を釈放する。」旨の判決を求めた(本件)。

五、その後、京都地方裁判所第一民事部は、昭和四四年五月一四日午後八時頃、前記昭和四四年(人)第一号事件について、「右の各身柄拘束手続もしくは処分がその権限なしにされ、又は法令の定める方式若しくは手続に何等の瑕疵が存したものとは認められず、適法になされたことが明らかであつて、本件請求の理由のないことが明白である。」との理由により、「本件請求はこれを棄却する。」旨の決定をした。

六、被拘束者が逮捕令状にもとづいて警察署に留置され、事件を検察官に送致後も、被拘束者が引続き同一警察署に留置されている場合、人身保護法にいう拘束者は終始、警察署長であり、検察官に対する事件送致によつて、検察官が人身保護法にいう拘束者となるものではなく、検察官に対する事件送致後も同一の拘束者による同一の拘束の継続であると解するのが相当である(人身保護規則第三条は、「法及びこの規則において、(中略)、拘束者とは、拘束が官公署、病院等の施設において行れている場合には、その施設の管理者をいい、(後略)」と規定している)。

七、したがつて、本件人身保護請求は、前記昭和四四年(人)第一号事件と重複し、同一拘束に対する二重請求である。

八、本件請求後、京都地方裁判所第一民事部は、前記昭和四四年(人)第一号事件について前記決定した。

九、右第一民事部決定以後、本件拘束が、法律上正当な手続によらない身体の拘束になつた事実は、これを認めえない。

一〇、したがつて、本件請求は、請求の理由のないことが明白である。

一一、よつて、人身保護規則第二一条により本件請求を棄却し、手続費用について人身保護法第一七条を適用し、主文のとおり決定する。(小西勝 山本博文 寒竹剛)

〔請求の趣旨及び原因〕

(京都地裁昭和四四年(人)第一号事件の請求の趣旨及び原因と同じ。ただし、請求の原因一の(2)の末尾の「緊急逮捕され、」と「現在川端署に留置されているところである。」との問に、「その後昭和四四年五月一四日午後三時頃検察官検事細川顕に送致され、」を加える。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例