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京都地方裁判所 昭和43年(ワ)1278号 判決 1970年2月24日

原告

絹川直

外二名

代理人

吉川幸三郎

外二名

被告

今井邦夫

外一名

代理人

柴田耕次

被告

奥美建設こと

奥野剛

主文

一、被告等は、各自、原告絹川直に対し、金二〇万七、五〇〇円およびこれに対する昭和四三年一〇月一二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告絹川直その余の請求を棄却する。

三、原告絹川冶、同絹川美年子の被告等に対する各請求を棄却する。

四、訴訟費用のうち、原告絹川直と被告等との間に生じた分はこれを二分し、その一を同原告の、その余を被告等の各負担とし、原告絹川冶と被告等との間に生じた分は同原告の、原告絹川美年子と被告等との間に生じた分は同原告の、各負担とする。

五、この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実<省略>

理由

一<証拠>を綜合すると、被告今井は、昭和四二年三月一六日午前八時頃、本件自動車を運転し、京都市東山区五条通りと東大路通りとの交差点西方から南方に向い右折し、東山通りを南進しようとした際、同交差点の信号機が東西青信号であり、また同交差点南詰横断歩道の手前(北側)で南行の市電が一時停車していたのを認めながら、漫然時速約三〇粁で右市電の右側方を通過進行したため、折から同交差点南詰横断歩道を東から西へ歩行横断中の原告絹川直(当時七年)に本件自動車の車体後部を接触させて同原告を路上に転倒させ、よつて同原告に加療約一〇日間を要する顔面切創頭部外傷Ⅰ型の傷害を与えた事実を認めうる(右日時場所において、被告今井が本件自動車を原告絹川直に接触させたことは、原告等と被告今井邦夫、同奥野功との間において争いがない。)。

右認定事実からすると、本件事故は、被告今井において、右交差点の信号機が東西青信号であり、また前記横断歩道の手前(北側)で南行の市電が一時停車していたのを認めたのであるから、その前面に横断歩行者のあることを予測して右市電同様、一時停車するか、また徐行して横断者の有無を確認したうえ進行すべき注意義務があるのにこれを怠つた過失に基因することは明らかである。

よつて、被告今井は、原告絹川直に対し、不法行為者として民法第七〇九条に基づき、本件事故により同原告に生じた損害を賠償する責を負う。

二<証拠>によると、被告奥野功の実弟である被告奥野剛は、土木建設を営み、本件自動車を自己の営業のために使用管理していたものであること同被告に自動車運転手として雇用されている被告今井が業務として本件自動車を運転中本件事故を起したものであること

以上の事実を認めうる。

よつて、被告奥野剛は、原告絹川直に対し、本件自動車の運行供用者として自動車損害賠償保障法第三条に基づき、本件事故により同原告に生じた損害を賠償する責を負う。

三本件自動車の登録簿上の所有名義人が被告奥野功であることは、同被告において認めるところである。

よつて、右所有名義から、被告奥野功が本件自動車の所有者であることを推認しうる。右推認に反する<証拠>は採用し難く、他に右推認を左右する証拠はない。そこで同被告は、本件自動車の所有者というべきである。

ところで、被告奥野功が本件自動車の所有者である以上、一般的に本件自動車の運行支配、運行利益が同被告に帰属する筈であるから、同被告が本件事故時において、右運行支配、運行利益を喪失していた等の特段の事情の存在につき、主張、立証のない本件においては同被告は本件自動車の運行供用者であつたというべきである。

よつて、被告奥野功は、原告絹川直に対し、自動車損害賠償保障法第三条に基づき、本件事故により同原告が受けた損害を賠償する責に任ずる。

四本件事故により、原告絹川直が受けた損害は次のとおりである。

(一) <証拠>によると、原告絹川直は本件事故により、治療費金三、〇〇〇円、通院費金三、五〇〇円を要した事実を認めうる。

(二)  原告絹川美年子本人の供述によると、同原告は、本件事故のため、原告絹川直を往診して呉れた医師に対し、謝礼として金一万円相当の物品を贈つた事実を認めうるが、前認定の治療費との均衡を考慮して、うち金一、〇〇〇円が本件事故と因果関係のある謝礼というべきであり、右金一、〇〇〇円をもつて、本件事故による原告絹川直の損害と評価する。

(三)  <証拠>によると、原告絹川直は、前認定の傷害の外、二日ほど三九度近い熱が続いたこと、同原告は、本件事故後、ものにおびえる状態が続き、本件事故による精神的衝撃が甚大であつたこと、同原告の本件事故による切創の痕が右小鼻から上口唇部にかけて約3.5糎残存し、その形状はいわゆる兎唇の手術痕様であるため、その外貌を損じており、右切創痕を整形手術するとして、昭和四四年三月当時、金五万円を要するものであること、以上の事実を認めうる。

右認定事実に、前認定の傷害の程度、本件事故の態様等諸般の事情を併せ考慮すると、原告絹川直の慰藉料は金二〇万円と認めるのが相当である。

(四)  よつて、原告絹川直の本件事故による損害は、右(一)ないし(三)の合計金二〇万七、五〇〇円となる。

五原告絹川美年子(第一回)および同絹川冶各本人の供述によると、右原告両名は、子たる原告絹川直の本件事故による受傷および発熱により多大の心労を続け、またその切創痕により、多大の心痛を受けている事実を認めうるが、いまだ原告絹川直が生命を害された場合にも比肩するかまたは右の場合に比して著しく劣らない程度の苦痛を受けたものとはいい難いから、原告絹川冶、同絹川美年子の被告等に対する慰藉料の請求は失当というべきである。

六してみると、原告絹川直の被告等に対する請求は、被告等に対し、金二〇万七、五〇〇円およびこれに対する本件事故後の昭和四三年一〇月一二日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余の請求部分は理由がないから棄却し、原告絹川冶および同絹川美年子の被告等に対する各請求は、いずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(寒竹剛)

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