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京都地方裁判所 昭和41年(ワ)1107号 判決 1969年3月11日

原告

木本あつ子

代理人

久世勝一

被告

近藤秀麿

代理人

藤田玖平

田坂幹守

主文

本件手形判決(昭和四一年(手ワ)第三四五号約束手形金請求事件、昭和四一年一〇月三一日判決言渡)を取消す。

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一、申立てた裁判

1  原告  本件手形判決を認可する。

2  被告  主文同旨

二、主張

1  原告

(一)  原告主張の請求原因事実は、本件手形判決事実記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

(二)  被告主張の抗弁事実中、(三)の(1)の事実は認めるが、その余の事実は争う。

2  被告

(一)  原告主張の請求原因事実は認める。

(二)  抗弁

吉田産業株式会社取締役吉田忠義は、吉田産業株式会社の代理人として、原告に対し、本件手形の割引の仲介を依頼し、割引を受けることができないときは返還を受ける約定の下に、本件手形を交付した。

従つて、原告は、手形割引の仲介者として、本件手形を預つた者にすぎず、本件手形の権利者ではない。

(三)  仮定抗弁

(1) 原告は、吉田産業株式会社に対する家具代金債権の支払のため、本件手形の裏書譲を受けたものである。

(2) 被告は、吉田産業株式会社代表取締役吉田峯之助に対し、本件手形の割引を依頼し、本件手形を交付したが、未だ割引金を受取つていない。

(3) 被告代理人小林正之は、原告の本件手形取得の直前、原告の電話による質問に対し、「被告は、吉田産業株式会社代表取締役吉田峯之助に対し、本件手形の割引を依頼し、本件手形を交付したが、その割引金を受取つていないから、被告は、本件手形の支払をすることができない。」と答えた。

(4) 従つて、原告は、被告を害すること知つて本件手形を取得したものである。

三、証拠<省略>

理由

原告が、被告の振出した左記約束手形一通(本件手形)を所持していることは、被告の認めるところである。

金額 二〇〇万円

支払期日 昭和四一年五月一七日

支払地 京都市

支払場所 株式会社三和銀行京都駅前支店

振出地 東京都目黒区

振出日 昭和四一年三月一〇日

振出人 近衛秀麿(被告)

受取人、第一裏書(白地式)人

吉田産業株式会社

従つて、原告は、手形法第一六条により適法の所持人と推定される。

よつて、被告主張の抗弁について判断する。

<証拠>によれば、被告近衛秀麿は、昭和四二年二月二一日、吉田産業株式会社代表取締役吉田峯之助に対し、本件手形の割引を依頼し、本件手形を交付したこと、原告木本あつ子は、昭和三八年、吉田産業株式会社に対し、代金三八〇万円相当の椅子とテーブルとを売渡し、その代金が未払となつていたところ、吉田産業株式会社取締役吉田忠義は、吉田産業株式会社の代理人として、昭和四一年三月末頃、原告に対し、本件手形の割引の仲介を依頼し、割引を受けることができたときは、吉田産業株式会社は割引金の半分を前記代金債務の弁済として原告に支払い、割引を受けることができないときは、原告は本件手形を吉田産業株式会社に返還する約定の下に、本件手形を交付したこと、従つて、原告は、割引仲介者として、本件手形を預かつた者にすぎず、本件手形の権利者でないこと、原告は、本件手形の割引を受けることでできないのに、本件手形を、吉田産業株式会社に返還せず、吉田産業株式会社に対する前記代金債権の回収手段として、本件手形を押えていること、以上の事実を認めうる。原告本人の供述(第一、二回)のうち、上記認定に反する部分は採用し難い。

上記認定によれば、原告は、本件手形の形式的所持人資格を有するにすぎず、手形権利者でない。

よつて、民事訴訟法第四五七条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(小西勝)

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