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京都地方裁判所 平成6年(わ)1302号 判決

(被告人の表示)

氏名 石橋平和

生年月日

昭和一三年五月一二日

本籍

京都府相楽郡精華町大字祝薗小字大池八番一一番合地

住居

右同所

職業

会社役員

法人の名称 丸石商事株式会社

本店の所在地

京都府相楽郡精華町大字山田小字下川原一四番地三

代表者の住所

京都府相楽郡精華町大字祝薗小字大池八番一一番合地

代表者の氏名

石橋平和

主文

被告人石橋平和を懲役二年に、被告人丸石商事株式会社を罰金五〇〇〇万円に処する。

被告人石橋平和に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(認定した犯罪事実)

被告人丸石商事株式会社は、京都府相楽郡精華町大字山田小字下川原一四番地三に本店を置き、不動産の売買及び仲介、ゴルフ練習場経営等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人石橋平和は、同社の代表取締役として同社の業務全般を統括している者であるが、

第一  中井靖郎は長女中井康恵の委任を受け同女らと共有していた山林を同社に売却するとともに自己の及び同女の代理人として同女の税務申告手続を行った者であり、岡田勇は同社が行った不動産売買において真実は売買当事者でないのに売買当事者としての名義貸をするなどしていた者であるところ、被告人石橋平和は、右中井靖郎、岡田と共謀の上、

一  右中井靖郎が右中井康恵らと共有していた京都府相楽郡精華町大字乾谷小字徳所一三一番、同町大字柘榴小字徳所一六番二の山林を同社に売却したことに関し、右中井靖郎の所得税を免れようと企て、真実の買主は同社であるのにあたかも買主が右岡田であるかのように仮装するとともに売買価格を圧縮した虚偽の内容の売買契約書を作成するなどの方法により、右売却に係る所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一二日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所轄宇治税務署において、同税務署長に対し、右中井靖郎の平成三年分の実際の総所得金額が五二七万五七九二円で、分離長期譲渡所得金額が四億一七八五万三三四九円であったにもかかわらず、同年分の総所得金額が五二七万五七九二円で、分離長期譲渡所得金額が三億二四六六万五四八七円で、これに対する所得税額が七九〇四万九九〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億二三四万六九〇〇円との差額二三二九万七〇〇〇円を免れ、

二  右中井康恵が右中井靖郎らと共有していた右山林を同社に売却したことに関し、右中井康恵の所得税を免れようと企て、一と同様の方法により、右売却に係る所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、所轄同税務署において、同税務署長に対し、右中井康恵の平成三年分の実際の総所得金額が八四万九〇七一円で、分離長期譲渡所得金額が三億六〇四一万七二九九円であったにもかかわらず、同年分の総所得金額が八四万九〇七一円で、分離長期譲渡所得金額が二億六七二二万九四三七円で、これに対する所得税額が六四八〇万七二〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額八八一〇万四二〇〇円との差額二三二九万七〇〇〇円を免れ

第二  被告人石橋平和は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、被告人会社が行った不動産売買を右岡田が行ったかのように仮装して不動産譲渡益の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  平成二年九月一日から平成三年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が五〇九二万九九〇八円の欠損で、課税土地譲渡利益金額が一億六三八八万三〇〇〇円であったにもかかわらず、平成三年一〇月三一日、所轄同税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一億三二八一万八二七五円の欠損で、課税土地譲渡利益金額が四九六二万一〇〇〇円で、これに対する法人税額が九一二万六一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同事業年度の正規の法人税額四三四〇万四七〇〇円との差額三四二七万八六〇〇円を免れ

二  平成三年九月一日から平成四年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が六一四〇万八七五六円で、課税土地譲渡利益金額が三億二六九三万二〇〇〇円であったにもかかわらず、平成四年一〇月三〇日、所轄同税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が零円で、課税土地譲渡利益全額が一億五六六七万円で、これに対する法人税額が二五九八万九二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同事業年度の正規の法人税額九九三三万五八〇〇円との差額七三三四万六六〇〇円を免れ、

三  平成四年九月一日から平成五年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が二億三〇一七万四七八三円で、課税土地譲渡利益金額が二億八九〇四万三〇〇〇円であったにもかかわらず、平成五年一一月一日、所轄同税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が零円で、課税土地譲渡利益金額が六一〇六万三〇〇〇円で、これに対する法人税額が二一〇六万四五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同事業年度の正規の法人税額一億六九一二万五八〇〇円との差額一億四八〇六万一三〇〇円を免れた。

(証拠)(括弧内の算用数字は記録中の証拠等関係カード(書証分)の検察官請求番号を示す。)

判示事実全部について

一 被告人判示第二の事実の関係では被告人会社代表者兼被告人石橋平和の公判供述

一 被告人(判示第二の事実の関係では被告人会社代表者兼被告人)石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(172、174、175、181、201)、検察官調書(209)、陳述書(証拠等関係カード(書証分)の弁護人請求番号47)

一 証人岡田勇の公判供述

一 黒坂敏夫(113から115まで)、藪下秋生(116、127、130、131)の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一 藪下秋生の検察官調書(133、134)

一 電話聴取書(5)

一 査察官調査書(21、45、61、62、64、66、103、105、107)

一 登記簿謄本(60)

判示第一、第二の一、二の事実について

一 被告人(判示第二の事実の関係では被告人会社代表者兼被告人)石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(177)、検察官調書(208)

一 中井靖郎の大蔵事務官に対する質問てん末書(137から140まで、142、145)、検察官調書(146、147)

一 藪下秋夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(121)、検察官調書(135)

一 査察官調査書(6から9まで、13、14、28、80)

判示第一、第二の二の事実について

一 藪下秋夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(125)

一 査察官調査書(32、43、85)

判示第一の事実全部について

一 分離前相被告人中井靖郎、同岡田勇の各公判供述

一 査察官調査書(10から12まで)

判示第一の一の事実について

一 証明書(1)

一 脱税額計算書(3)

一 「修正申告書写の提出について」と題する書面(17)

判示第一の二の事実について

一 中井康恵の大蔵事務官に対する質問てん末書(15、16)

一 証明書(2)

一 脱税額計算書(4)

一 「修正申告書写の提出について」と題する書面(18)

判示第二の事実全部について

一 被告人会社代表者石橋平和の公判供述

一 被告人会社代表者兼被告人石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(173、176、180、182から185まで、187、190から199まで、202から205まで)、検察官調書(207)

一 中谷真和の大蔵事務官に対する質問てん末辞意(100)、検察官調書(101)

一 査察官調査書(46、47、63、67から69まで、73、104、106、108、109)

一 証明書(48)

一 「修正申告書写の提出について」と題する書面(112)

判示第二の一、二の事実について

一 被告人会社代表者兼被告人石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(179)

一 中野隆雄(92)、中川恭一(93)、有山武揚(94)、藪下秋夫(120、122)の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一 査察官調査書(27、29、65、79、81、111)

判示第二の一の事実について

一 被告会社代表者兼被告人石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(200)

一 今来博幸(88)、井上健二こと柴田珠一(89)、岩井正一(91)、藪下秋夫(118、119、132)の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一 井上健二こと柴田珠一の検察官調書(90)

一 査察官調査書(22から26まで、35から37まで、71、76から78まで)

一 証明書(54)

一 脱税額計算書(57)

判示第二の二、三の事実について

一 稲葉清(98)、藪下秋夫(126)の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一 査察官調査書(33、34、72、86)

判示第二の二の事実について

一 被告人会社代表者兼被告人石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(188、189)

一 中井靖郎の大蔵事務官に対する質問てん末書(141)、検察官調書(148)

一 中山泰樹(95)、中井正一(96)、西村千畝(97)、藪下秋夫(123、124、129)の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一 査察官調査書(30、31、38から42まで、70、82から84まで)

一 証明書(55)

一 脱税額計算書(58)

判示第二の三の事実について

一 被告人会社代表者兼被告人石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(186)

一 中谷真和(99)、小林直正(102)、藪下秋夫(117、128)の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一 査察官調査書(44、74、87、110)

一 証明書(56)

一 脱税額計算書(59)

(法令の適用)

一  罰条

1  判示第一の一、二の各行為(被告人石橋平和について)

いずれも刑法(平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前のもの。以下同じ)六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項(判示第一の二の行為については、更に同法二四四条一項)

2  判示第二の一から三までの各行為(被告人石橋平和及び被告人会社について)

いずれも法人税法一五九条一項(被告人会社については、更に同法一六四条一項、一五九条二項)

二  刑種の選択(被告人石橋平和について)

いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告人石橋平和について刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の三の罪の刑に加重)

2  被告人会社について刑法四五条前段、四八条第二項

四  刑の執行猶予(被告人石橋平和について)

刑法二五条一項

(検察官浦文計出席)

(求刑 被告人石橋平和に対し懲役二年、被告人会社に対し罰金七〇〇〇万円)

(裁判官 山口裕之)

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