京都地方裁判所 平成27年(わ)310号 判決
主文
被告人を懲役4年6か月及び罰金50万円に処する。
未決勾留日数中60日をその懲役刑に算入する。
罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
被告人から金52万円を追徴する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,営利の目的で,みだりに
第1 平成25年11月22日頃,京都市〈以下省略〉付近路上において,A(以下「A」という)に対し,フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する結晶約20グラムを代金26万円で譲り渡した。
第2 同月28日頃,同所付近路上において,Aに対し,フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する結晶約20グラムを代金26万円で譲り渡した。
(証拠) 省略
(累犯前科)
被告人は,平成18年6月12日奈良地方裁判所葛城支部で盗品等有償譲受け,覚せい剤取締法違反の罪により懲役4年10か月及び罰金20万円に処せられ,平成22年7月13日にその懲役刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(乙6)によって認める。
(法令の適用)
罰条
判示第1及び第2の各所為 いずれも覚せい剤取締法41条の2第2項,1項
刑種の選択 判示第1及び第2の各罪につき,いずれも情状により懲役刑及び罰金刑を選択
累犯加重 刑法56条1項,57条(前記前科があるので判示第1及び第2の各罪の懲役刑についてそれぞれ同法14条2項の制限内で再犯の加重)
併合罪の処理
懲役刑につき 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い判示第2の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重)
罰金刑につき 刑法45条前段,48条2項
未決勾留日数の算入 刑法21条(懲役刑に算入)
労役場留置 刑法18条
追徴 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律13条1項前段,11条1項1号(判示第1の犯行により被告人が取得した代金26万円及び第2の犯行により被告人が取得した代金26万円は,それぞれ薬物犯罪収益に該当するが,いずれも既に費消して没収することができないので,その価額を被告人から追徴する)
(量刑の理由)
本件は,覚せい剤密売グループの一員である知人から頼まれて,2回にわたり,営利目的で覚せい剤合計約40グラムを譲り渡した事案である。
被告人は,覚せい剤の密売組織に属する知人に対し,売り捌かれることが分かった上で2回にわたり,合計約40グラムもの多量の覚せい剤を譲渡している。覚せい剤の害悪を広く社会に拡散させかねない悪質な犯行である。
被告人は,前記累犯前科を有し,刑執行終了から3年5か月足らずで本件犯行に及んでいるばかりか,それ以前にも覚せい剤取締法違反又はそれを含む罪で何度も服役している。覚せい剤に対する親和性は極めて強いといわざるを得ず,非難の程度は強い。
恩ある知人から頼まれ仲介者的な立場で本件犯行に及び,利得もほとんどなかった,などという被告人の供述を前提にしても,覚せい剤営利目的譲渡の事案の中では,なお重い部類に属するといえる。
そこで,被告人が罪を認めていることや,内妻が今後の監督を誓っていること等も考慮して,主文の懲役刑を定めるとともに,被告人が得た利益を考え,このような犯罪が経済的に割に合わないものであることを明らかにする趣旨で,主文の罰金刑を定めた。
(求刑 懲役6年及び罰金50万円,主文同旨の追徴)