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京都地方裁判所 平成24年(ワ)1447号 判決

主文

1  京都地方裁判所平成23年(ケ)第115号担保不動産競売事件につき、新たな配当表調製のために、平成24年4月27日に作成された配当表中の被告の項のうち、

(1)  損害金については475万7928円を、元金については1976万8839円を、合計については2452万6767円をそれぞれ超える部分

(2)  配当実施額等のうち差引額については2355万9893円を超える部分

をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

京都地方裁判所平成23年(ケ)第115号担保不動産競売事件において平成24年4月27日に作成された配当表のうち、

(1)  被告の債権額を表示した部分につき「損害金」欄に675万9189円とあるのを475万7928円に、「元金」欄に2717万8118円とあるのを1976万8839円に及び「合計」欄に3393万7307円とあるのを2452万6767円に

(2)  被告に対する「配当実施額等」欄のうちの「差引額」欄に3297万0433円とあるのを2452万6767円に

それぞれ変更する。

第2事案の概要

1  事案の要旨

本件は、後記の不動産(本件不動産)につき、被告の申立てにより開始された京都地方裁判所平成23年(ケ)第115号担保不動産競売事件において、平成24年4月27日に作成された配当表(本件配当表)につき、債務者兼所有者である原告が異議を述べ、本件配当表中の被告の債権額及び被告への配当実施額の変更を求める事案である。

2  前提となる事実(いずれも当事者間に争いがないか、積極的には争わない。)

(1)  原・被告間の貸金契約

被告は、原告との間で、次の各金銭消費貸借契約を締結した。

ア 平成19年5月25日付け金銭消費貸借契約(以下「貸金①」という。)

元金200万円、弁済期定めず、利息年5%、損害金定めず。

イ 平成19年11月12日付け金銭消費貸借契約(以下「貸金②」という。)

元金3600万円、平成19年12月以降毎月12日に利息返済、利息年15%、損害金年21.9%。

ウ 平成20年2月8日付け金銭消費貸借契約(以下「貸金③」という。)

元金300万円、平成20年3月以降毎月10日に利息返済、利息年14.6%、損害金年21.3%。

エ 平成20年3月14日付け金銭消費貸借契約(以下「貸金④」という。)

元金400万円、平成20年4月以降毎月14日に利息返済、利息年14.6%、損害金年21%。

オ 平成21年1月23日付け金銭消費貸借契約(以下「貸金⑤」という。)

元金37万円、弁済期定めず、利息・損害金定めず。

(2)  被告の担保権設定

被告は、いずれも、貸金①ないし⑤を被担保債権として、原告所有の各不動産につき、後記ア、イのとおり根抵当権を設定した。

ア 平成19年4月18日設定の根抵当権

(担保不動産)

甲賀市〈以下省略〉(1983m2)、〈省略〉(2238m2)及び〈省略〉(1983m2)の各山林3筆並びに同市〈省略〉所在の鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建事務所・ゴルフ練習場(家屋番号〈省略〉、床面積1階687.49m2・2階581.10m2、附属建物:軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺平家建物置、床面積27.58m2)の合計4筆(以下、これらの不動産を併せて「前件不動産」という。)

(債権の範囲)

金銭消費貸借取引等

(極度額)

7000万円

(登記)

大津地方法務局甲賀支局平成21年1月23日受付第950号(平成19年4月18日受付第4586号ないし第4589号による仮登記の本登記)

イ 平成21年7月3日設定の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)

(担保不動産)

城陽市〈以下省略〉(5117m2)、〈省略〉(2968m2)、〈省略〉(2638m2)の各山林三筆(以下、これらを併せて「本件不動産」という。)

(債権の範囲)

金銭消費貸借取引等

(極度額)

5000万円

(登記)

京都地方法務局宇治支局平成21年7月3日受付第10101号

(3)  平成19年設定の根抵当権の実行手続(前件競売手続)など

ア 被告は、平成21年3月23日、大津地方裁判所に対し、前記の平成19年4月18日設定の根抵当権に基づき、前件不動産につき担保不動産競売手続を申し立て、同裁判所は同月26日、その開始決定をした(同裁判所平成21年(ケ)第91号。以下、これによる競売手続を「前件競売手続」という。)。

イ 前件競売手続においては、平成22年2月4日付けで、その担保不動産の売却代金3888万8800円のうち、手続費用(94万0437円)及び公債権への配当分(55万6000円)以外の全額(3739万2363円)を被告に配当する旨の配当表(甲4、乙6。以下「前件配当表」という。)が作成された。

なお、同配当表には、被告の提出した債権計算書(甲3)に基づき、その請求債権として、元金4537万円(貸金①ないし⑤の元金合計額)、利息72万1052円、損害金1107万0150円が計上された。

ウ 原告は、貸金①ないし⑤が存在しない、当該根抵当権が設定された事実はないと主張して、前記配当表に異議を述べ、配当異議の訴えを提起した(大津地方裁判所平成22年(ワ)第130号。以下「前件訴訟」という。なお、同訴訟には、担保不動産の後順位抵当権者が同様の主張に基づき提起した配当異議の訴えも併合して審理された。)。

前件訴訟の提起により、前記配当表に基づく原告への配当金3739万2363円が供託された。

前件訴訟については、平成22年12月24日に原告の請求を棄却する判決が言い渡され(乙4)、平成23年1月11日の経過により、これが確定した。

エ 被告は、平成23年2月3日、前記供託金及び供託利息(8225円)の合計3740万0588円を受領した。

(4)  平成21年設定の根抵当権の実行手続(本件競売手続)

ア 被告は、平成23年3月ころ、京都地方裁判所に対し、本件根抵当権に基づき、本件不動産につき担保不動産競売手続を申し立て、同裁判所は同月9日、その開始決定をした(同裁判所平成23年(ケ)第115号。以下、この競売手続を「本件競売手続」という。)。

イ 本件競売手続においては、平成24年4月27日付けで、その担保不動産の売却代金3490万円から現金支払額を控除した3373万8000円のうち、手続費用(76万7567円)及び公債権への配当分(18万0500円)以外の全額(3297万0433円)を被告に配当する旨の配当表が作成された(甲1。別紙の配当表。以下「本件配当表」という。)。

なお、本件配当表には、被告の提出した債権計算書(甲2)に基づき、その請求債権として、元金2717万8118円(貸金①ないし⑤の残元金合計額)、損害金675万9189円が計上された。

3  争点及び当事者の主張

(1)  争点

被告が、前件競売手続における配当実施額につき、その配当期日(平成22年2月4日)における債権額に基づき弁済充当すべきか、あるいは、その受領日(平成23年2月3日)における債権額に基づき弁済充当することができるか。

(2)  原告の主張

ア 前件競売手続における被告への配当額は、配当異議訴訟の確定により、前件配当表のとおり確定した。したがって、被告は、前件競売手続において受領した配当金を、前件配当表に記載されたとおり、その配当期日における債権額に基づいて弁済充当することができるに過ぎない。

これによれば、前件配当手続において被告が受領した配当金は、前件配当表に記載されたとおり、まず、利息(72万1052円)及び損害金(1107万0150円)の弁済にそれぞれ充当され、その残額はいずれも0円となる。次に元金分として2560万1161円が弁済充当されることになるが、法定充当に従いその全部が貸金②の元金に充当されるから、その残額は、1039万8839円となる。

すなわち、本件競売手続において被告が請求することのできる債権額のうち、貸金②に関する部分は、残元金が1039万8839円であり、これに対する被告の請求する平成23年2月4日から平成24年4月27日まで約定の年21.9%の割合により生じた遅延損害金が279万3792円となる(原告の平成24年6月27日付け準備書面記載の計算結果をそのまま引用した。)。

以上によれば、本件配当表のうち、被告の債権額は誤りであって、正しくは、元金1976万8839円、損害金475万7928円の合計2452万6767円であり、また、被告に対する配当実施額等のうち差引額も、正しくは2452万6767円となるから、本件配当表は、前記のとおり変更されるべきである。

イ 被告は、前件配当手続における配当金を、その配当期日以後の損害金の弁済に充当することができると主張する。

しかし、不動産競売手続において配当期日に配当表が呈示されたときは、債務者において不当な異議を申し立てるなど特段の事情がない限り、債務者が配当期日後の履行遅滞の責めを負うことはないから、当該配当手続において受領した配当金を配当期日以後に生じた損害金の弁済に充当することはできない。

配当異議訴訟の帰結によって追加配当が実施されることがあるが、この場合も、当初の配当期日における債権額が基準となるのであって、その後に生じた遅延損害金に対する配当は認められない。こうした点からも、被告の前記主張に理由がないことは明らかである。

なお、前記のとおり解したとしても、後にされた本件競売手続において、被告が、その債権として前件競売手続における配当期日後の損害金を計上することを妨げることにはならない。

ウ 被告は、また、前件訴訟が原告の不当な異議権の行使によるもので、原告が配当期日後の遅滞の責めを負うべき特段の事情があると主張する。

しかし、前記特段の事情のある場合とは、配当要求する債権者が常に真実の債権者であるとは限らない以上、これを争う必要がある場合には債務者が異議の申立てをする必要があることを考慮すると、限定的に解するのが相当である。

前件配当手続においても、貸金債務の存在に争いがあったことから原告が配当異議を申し立てたのであって、これが不当な申立てであるということはできない。

したがって、前件配当手続において、原告が配当期日後の損害金支払義務を負うことはない。

(3)  被告の主張

ア 不動産競売手続において債権者が本旨に従った弁済を受けたといえるのは、現実に配当金を受領した時点である。配当異議訴訟の提起などにより債権者が現実に配当金を受領するのが配当期日よりも遅くなった場合に、弁済の効果を配当日に遡及させる旨の規定は存在しない。したがって、債権者は、配当金を実際に受領した時点の債権額で、法定充当の方法によりこれを弁済に充当することが認められる。

配当異議訴訟において配当表が確定することとなるが、これは、配当の基準として配当期日における時点での債権額が確定されるにすぎず、実体法上の債権額を確定するものではないから、配当金をその後に生じた損害金の弁済に充当することを妨げるものではない。

また、配当異議訴訟の提起を受けて配当金は供託されるが、これは執行供託であって、弁済の効力はないから、遅延損害金の発生を停止しない。

これによれば、本件においても、被告が前件配当手続における配当金を受領した平成23年2月3日時点で、それまでに生じた損害金を含め、これを法定充当することができるものと解するのが相当である。

イ 不動産競売手続において配当期日に配当表が呈示された場合には、これにつき裁判所が第三者として弁済の提供をした場合に準じた効力を認める余地もある。

しかし、前件訴訟は、原告の不当な主張に基づく訴訟であり、原告の完全な敗訴に終わっていることからも、これが原告による異議権の濫用的な行使であることは明らかである。他方、被告には、何ら責めに帰すべき事由はなく、応訴を余儀なくされ、しかも配当金の受領が1年遅れたことによりその間の運用益を喪失している。これらからすると、前件訴訟は、原告の責めに帰すべき不当な訴訟である。

本件は、このように不当な異議権の行使があった場合であるから、前件競売手続における配当期日に配当表が呈示されたとしても、これが弁済の提供に準じるものと認めることはできず、原告は、履行遅滞の責めを負うこととなる。

ウ 前件配当手続における被告への配当金を、平成23年2月3日時点における被告の原告に対する債権額にしたがって法定充当した結果は、次表のとおりとなる。

(平成23年2月3日時点における債権額及び配当金の充当額、残額)

債権額

配当金充当額

残額

(元金)

貸金①分

200万円

0円

200万円

貸金②分

3600万円

1560万0207円

2039万9793円

貸金③分

300万円

0円

300万円

貸金④分

400万円

0円

400万円

貸金⑤分

37万円

0円

37万円

(利息)

貸金①~⑤分

72万1052円

72万1052円

0円

(損害金)

貸金①分

19万0136円

19万0136円

0円

H21.3.11~H23.2.3、年5%

貸金②分

1756万0800円

1756万0800円

0円

H20.11.13~H23.2.3、年21.9%

貸金③分

142万6808円

142万6808円

0円

H20.11.11~H23.2.3、年21.3%

貸金④分

186万6410円

186万6410円

0円

H20.11.15~H23.2.3、年21%

貸金⑤分

3万5175円

3万5175円

0円

H21.3.11~H23.2.3、年5%

エ したがって、本件競売手続において被告が請求することができる債権額は、残元金合計2976万9793円、これに対する平成23年2月4日から平成24年4月27日までに生じた損害金合計745万7030円となる(両者の合計額は3722万6823円)。

なお、本件競売手続において被告の提出した債権計算書は、残元金合計2717万8118円、損害金合計675万9189円としており(両者の合計額は3393万7307円)、計算に誤りがあるが、被告の債権額を過小に計上したものであるから、被告が本件競売手続において届出債権額の範囲で配当を受けることに問題はない。

オ 以上によれば、本件配当表の被告の債権額及び被告への配当額の記載に誤りはなく、原告の配当異議には理由がない。

第3判断

1  原告と被告との間で貸金①ないし⑤の金銭消費貸借契約が締結されたこと及び被告がこれらの貸金債権を被担保債権として平成19年に前件不動産につき、平成21年に本件不動産につきそれぞれ根抵当権を設定したことは、それぞれ、前記前提となる事実でみたとおりである。

2  また、前件競売手続における担保不動産(前件不動産)の売却代金額が3888万8800円であったこと、前件配当手続において作成された配当表(前件配当表)には、被告の提出した債権計算書に基づき、その債権額が元金4537万円、利息72万1052円及び損害金1107万0150円と記載され、また、前記売却代金から手続費用(94万0437円)及び公債権への配当(55万6000円)以外の全額(3739万2363円)が被告に配当されるべきものとして記載されたこと、前件配当表については、原告及び他の債権者から異議の申立てがあり、配当異議訴訟が提起されたものの(前件訴訟)、平成23年1月11日の経過によりその請求をいずれも棄却する旨の判決が確定したこと、これを受けて被告が同年2月3日に供託されていた前記配当表に基づく配当実施額3739万2363円及び供託利息8285円を受領したことも、それぞれ、前記前提となる事実でみたとおりである。

3  さらに、本件競売手続において、担保不動産(本件不動産)の売却代金額が3490万円であったこと、本件配当表には、被告の提出した債権計算書に基づき、その債権額が元金2717万8118円、損害金675万9189円と記載され、また、前記売却代金から現金支払額を控除した3373万8000円のうち、手続費用(76万7567円)及び公債権への配当分(18万0500円)以外の全額(3297万0433円)が被告に配当すべきものとして、被告への差引配当額が3297万0433円と記載されたことも、前記前提となる事実でみたとおりである。

4  争点(1)について

(1)  原告は、前件競売手続において実施された配当によれば、本件配当表に記載された被告の債権額には誤りがあり、被告に対する配当実施額等の額にも誤りがあると主張する。

これに対し、被告は、前件競売手続において受領した配当金については、その受領日までの損害金の弁済にも充てることができると主張し、前件訴訟は原告の不当な異議権の行使であったことを考慮しても、前記主張が認められるべきであって、本件競売手続において被告が提出した計算書には、一部誤りがあるものの、結果としてこれに基づき作成された本件配当表に誤りはないと主張する。

そこで、前件競売手続における配当実施額につき、その配当期日以後に生じた損害金の弁済に充当することができるかについて検討する。

(2)  執行裁判所は、担保不動産競売手続につき、配当期日において、配当等を受ける各債権者について、その債権の元本及び利息その他の附帯の債権の額、執行費用の額並びに配当の順位及び額を定め、これを配当表に記載する(民事執行法188条、85条1項、6項)。

その準備として、裁判所書記官は、各債権者に、その債権の元本及び配当期日までの利息その他の附帯の債権の額などを記載した計算書(債権計算書)の提出を催告することとされており(民事執行規則173条、60条)、これに基づいて、各債権者の債権につき元本額及び利息その他の附帯の債権の額が配当表に記載されることとなる。

また、債権計算書の提出に当たっては、申立債権者は、申立ての際の請求債権を拡張することは許されず、新たに競売等の申立てをする必要があると解されている。

そして、配当表が確定したときは、執行裁判所は、配当表に基づいて、配当を実施することとされており(同法188条、84条1項)、配当金の受領により債権者に対する関係では担保不動産競売手続が終了することとなる。

(3)  以上にみたような民事執行手続の定めによれば、担保不動産競売手続における配当手続は、執行裁判所がその職責において遂行するものであって、同裁判所がその定める配当表に基づき、配当期日を基準日として行うものとして定められている。執行裁判所が定めた配当表には、これに記載されたとおりに配当の順位及び額が決定されるという点において、裁判としての性質があるものといえる。

そして、このように執行裁判所が行う配当手続において債権者が配当金を受領することによって、その受領の限度で当該債権について給付の実現に至る行為が完了したといえることからすると、その時点において実体法上も弁済の効果が当然に生じ、当該債権は法定充当により確定的に消滅すると解するのが相当である(最二判昭和62年12月18日・民集41巻8号1592頁における判示は、配当手続による債権の消滅の効果について、このように理解することを前提としているものと解することができる。)。そして、配当異議の申出等により、配当の額に相当する金銭が裁判所書記官により供託された場合にも(民事執行法188条、91条1項)、これにより執行裁判所が行うべき当該債権について給付の実現に至る行為が完了したといえることからすると、その時点において前記の債権消滅の効果が生じたものと解することができる。

以上によれば、担保不動産競売手続における配当手続において債権者が受領した配当金については、これを債権者が当該配当期日以後に生じた附帯債権の弁済に充当することが認められていると解することはできない。

(4)  また、民事執行手続において配当等の額が供託され、その後いわゆる追加配当がされる場合(民事執行法92条)には、債権者が現実に配当金を受領すべき時期が当初の配当期日と異なることとなる。

しかし、この場合においても、追加配当は、当初の配当と一体となるもので、当初の配当の際に存した債権につき後に追加的な配当をするものであると理解されていることや、供託金額は、当初の配当期日において当該債権者が受けるべき金額をもって定められており、この供託金を当初の配当期日から追加配当期日までの間に生じた附帯債権に充当することを民事執行法が予定しているとは解されないこと、また、仮にそのような扱いを認めたとすれば、例えば債務者が配当異議訴訟を提起した場合、その被告たる債権者がこれを長く争えば争うほど、債務者が勝訴しても供託金の大部分が他の債権者の追加配当期日までの附帯債権に充当されてしまうという不合理な結果を生じることなどから、その配当の基準となる各債権者の債権額は、当初の配当の際の債権額によるべきであると解するのが相当である。

こうした点からも、前記(3)の判断が合理的であるといえる。

(5)  なお、債務者による配当異議の申出などによって債権者が配当期日に配当金を現実に受領することができない場合には、債権者が不利益を受ける可能性がある。しかし、こうした事態は、当該配当期日以後に生じた事由によるものであるから、先にみたとおり、これにより生じた遅延損害金の請求を認めるなどの方法により当該配当手続においてその救済を図ることはできないものの、債務者による不当な異議の申出などにより前記事態が生じたなどの事情がある場合には、債権者は、債務者に対して、これにより生じた損害の賠償を別途請求することができるものと解するのが相当である。

被告は、前件訴訟が原告の異議権の濫用によるものであり、原告が前件競売手続における配当期日以後も遅滞の責めを免れないとして、前件競売手続における被告への配当金を被告が現実に配当金を受領した日までの損害金の弁済に充てることができると主張する。しかし、前記のとおり、仮に原告による前件訴訟の提起が不当なものであったとしても、これは当該配当手続外での解決を図るべき問題と解するのが相当であるから、前件訴訟の提起が不当であったか否かを判断するまでもなく、その主張を採用することはできない。

(6)  以上のとおりであって、本件においても、先にみたとおり、前件競売手続における配当期日において被告が受領すべき配当の額が供託されたことにより、その時点において、被告の原告に対する貸金①ないし⑤の債権につき法定充当に従った弁済がされたものとみることとなる。これに反し、前件競売手続により被告が受領した配当金につき、供託された配当金を受領した日までの附帯債権の弁済に充てることができるとする被告の主張には理由がない。

5  本件配当表の取消について

(1)  前記に説示したところによれば、被告の原告に対する貸金①ないし⑤による各債権については、前件競売手続による配当(被告への配当実施額3739万2363円)により、うち72万1052円が利息分に、うち1107万0150円が損害金分に充当され(利息、損害金ともその残額は0円となる。)、その残額である2560万1161円が債務者である原告のため最も利益が多い貸金②の元金の弁済に充当されることとなるのであって(その残額は1039万8839円となる。)、これによる結果は、次表のとおりとなる。

なお、被告が、前件競売手続における配当金を受領するに当たり、供託利息8225円を受領したことは先にみたとおりであるが、前記のとおり供託の時点で弁済の効果が生じるものと解するのが相当であり、供託利息はその後に生じたものであるから、その扱いについては、前記の配当金の弁済充当とは別に検討するのが相当である。

前件競売手続の

配当時の債権額

配当金等充当額

残額

(元金・合計4537万円)

貸金①分

200万円

0円

200万円

貸金②分

3600万円

2560万9386円

1039万8839円

貸金③分

300万円

0円

300万円

貸金④分

400万円

0円

400万円

貸金⑤分

37万円

0円

37万円

(利息・合計72万1052円)

貸金①~⑤分

72万1052円

72万1052円

0円

(損害金・合計1107万0150円)

貸金①分

8万4657円

8万4657円

0円

H21.3.11~H22.1.13、年5%

貸金②分

922万3200円

922万3200円

0円

H20.11.13~H22.1.13、年21.9%

貸金③分

76万8550円

76万8550円

0円

H20.11.11~H22.1.13、年21.3%

貸金④分

97万8082円

97万8082円

0円

H20.11.15~H22.1.13、年21%

貸金⑤分

1万5661円

1万5661円

0円

H21.3.11~H22.1.13、年5%

(2)  原告が本件の異議事由として主張するのは、先にみたとおり、本件競売手続において被告が請求できる貸金②の元本額が1039万8839円、これについて被告の請求する起算日である平成23年2月4日から平成24年4月27日までに生じた約定の年21.9%の割合による遅延損害金が279万3792円であるというものである。他方、先にみた前件競売手続における配当後の貸金②の残元金が原告の前記主張額のとおりであると認められる。

(3)  これによれば、原告の前記主張には理由があり、本件配当表は変更を免れない。そこで、本件配当表のうち、被告の債権額を表示した部分につき、原告の請求する範囲内である、損害金額につき475万7928円を超える部分、元金額につき1976万8839円を超える部分、合計額につき2452万6767円を超える部分をそれぞれ取り消すこととする。

原告は、本件において、本件配当表中の前記各記載部分の変更を請求するが、被告への配当が変更されることとなる結果、これを前提として他の債権者のためにも配当表を変更しなければならないことになるから(民事執行法92条2項)、その請求は、前記のとおりの取消を求めるものと解するのが相当である。

また、原告は、本件配当表のうち、被告に対する配当実施額等のうち現金分を控除した差引額につき、これを2452万6767円と変更するよう請求するが、これについても同様にその取消を求めるものと解するのが相当であり、また、前記金額が被告に対する配当等実施額のうち現金分を考慮しない違算による結果であると認められ、これを差し引いた2355万9893円が正しい金額であると認められることからすると、結局、この点に関する原告の請求は、2355万9893円を超える部分の取消を求めるものと解することができる。

第4結論

よって、原告の請求は、前記の各取消を求めるものとして理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 井川真志)

(別紙)配当表〈省略〉

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