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京都地方裁判所 平成23年(ワ)3544号 判決

原告

株式会社X1(以下「原告会社」という。)

同代表者代表取締役

A 〈他2名〉

原告ら訴訟代理人弁護士

和田敦史

被告

a団体こと Y

被告訴訟代理人弁護士

人西智之

主文

一  被告は、原告らに対し、自ら又は第三者を通じて、下記の行為をしてはならない。

(1)  別紙対象地目録一所在の原告会社ビルの正面玄関を中心とする半径一〇〇〇m以内並びに別紙対象地目録二所在の原告X2及び原告X3の自宅の入口の門を中心とする半径一〇〇〇m以内において、街頭宣伝車で徘徊し、演説し又は音楽を流すなどして原告会社の業務並びに原告X2及び原告X3の生活の平穏を妨害する一切の行為

(2)  原告会社の役員及び従業員並びに原告X2、原告X3及び同居の親族に対し、原告らの委任した代理人弁護士を介することなく、面会又は架電等の方法で、直接交渉を要求する行為

(3)  別紙対象地目録二所在の原告X2及び原告X3の自宅入口の門を中心とする半径二〇〇m以内において、徘徊し、見張り、つきまとい又は待ち伏せをする行為

(4)  別紙対象地目録三記載の土地において、外部から視認し得る状態で、自己の政治団体名等を表示する文字板又は看板等を設置し、街頭宣伝車を駐車するなどして、原告X2及び原告X3に対し、自己の存在を示す行為

二  被告は、原告X2及び原告X3に対し、それぞれ一〇〇万円及びこれに対する平成二三年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は、主文二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

本件は、原告らが、被告による原告会社並びに原告X2及び原告X3の自宅(以下「原告ら自宅」という。)付近における街頭宣伝活動(以下「街宣活動」という。)等が、原告らの人格権を侵害し、それが今後も継続されるおそれがあるなどと主張して、被告に対し、①人格権に基づく差止請求として、一定範囲における街宣活動の禁止等を求めるとともに、②不法行為に基づく損害賠償請求として、原告X2及び原告X3に対し、それぞれ一〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日(平成二三年一〇月二七日)の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める事案である。

一  前提事実(争いのない事実並びに各項に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実)

(1)  当事者

ア 原告会社は、遊技場(パチンコ店等)の経営等を目的とする株式会社であり、同社の代表取締役Aは、原告X2及び原告X3の子であって、同人らと同居している。

イ 原告X2は、原告会社の創業者である。

ウ 原告X3は、原告会社の取締役であり、原告X2の妻である。

エ 被告は、a団体の名称で、政治活動を行っている。

(2)  事実経過等

ア 平成四年に原告X3が購入した不動産の代金支払をめぐって、原告X3と、売主であるB及び仲介業者の代表者であるCとの間に、紛争が生じた。

イ 被告は、平成一七年六月以降、B及びCの意を受けて、別紙対象地目録一に所在する原告会社ビル及び別紙対象地目録二に所在する原告ら自宅を対象とし、街宣活動を行った(以下「平成一七年の街宣活動」という。)。その態様は、街頭宣伝車(以下「街宣車」という。)から大音量で軍歌を鳴らし、「我々は悪徳企業に抗議する会である。世の中には悪い企業はたくさんあるが、この企業は特にひどい。土地の収奪、いかがわしい組織への資金提供、行政との金品を提供しての癒着、特にひどいのは脱税、市民の義務を果たさず、ひたすら裏金を積み上げている。我々はこれを許さない。首を洗って待っていろ。オーナーに言っておけ。なめんなよ。」などと演説する、といったものであった。

ウ 原告会社及び原告X2は、同年七月二六日付けで、被告及びCを恐喝未遂で告訴した(甲二〇)。

エ 同年八月三日、原告X2及び原告X3の申立てにより、被告が、原告ら自宅の入口の門から半径一〇〇〇m以内の範囲の地域を徘徊し、街宣車による演説等を行うことを禁止する旨の仮処分決定がされた(甲五)。

オ 被告は、平成一八年六月一八日、京都地方裁判所において、原告X2及び原告会社に対する恐喝未遂により、懲役二年四月の実刑判決を受け(同年一二月六日確定)、受刑した(甲二一)。

カ 被告は、平成二三年七月二〇日、原告ら自宅北側の別紙対象地目録三記載の土地(以下「本件土地」という。)上に設置された構造物の南側壁面に、「a団体本部事務所建設予定地」と表示した看板(以下「本件看板」という。)を設置するとともに、同月二一日、原告会社ビルや原告ら自宅を訪問し、同日以降、本件土地上に街宣車を複数台駐車し、街宣活動等の拠点としている(甲一七。なお、原告会社ビル、原告ら自宅及び本件土地の位置関係は別紙地図のとおりである。)。

キ 平成二三年一〇月三日、原告らの申立てにより、被告が、主文一の(1)及び(2)と同旨の行為を禁止する旨の仮処分決定がされた(甲二五。以下「本件仮処分決定」という。)。

ク その後、被告は、本件仮処分決定に反する街宣活動等を行っていない。

二  争点

(1)  被告の街宣活動等により原告らの権利が侵害されたか

(2)  人格権侵害に基づく被告の街宣活動等の差止めの可否

(3)  損害額

三  争点に関する当事者の主張

(1)  争点(1)(被告の街宣活動等により原告らの権利が侵害されたか)について

【原告らの主張】

ア 被告は、原告ら及び原告会社の従業員に対し、別紙街宣活動等に関する事実経過表の「原告らの主張」欄のとおり、街宣活動等を行った(以下、本件看板の設置等本件土地を街宣活動の拠点とする行為と併せて「本件各街宣活動等」という。)。

イ 被告は、本件各街宣活動等の中で、原告らの名誉を直接的に毀損する言動等は行っていないが、本件各街宣活動等は、原告らに対する平成一七年の街宣活動と一連のものと評価すべきであるところ、被告の本件各街宣活動等により、原告らは、以下のとおり、人格権の一つとしての平穏な生活を営む権利を侵害された。

(ア) 原告会社は、被告の本件各街宣活動等により、業務に直接的な支障を受け、従業員の不安が高まっているだけでなく、本件看板の設置や街宣車の通行による周辺の異様な状況について、過去の経緯を知る取引先等から報告を求められるなど、原告会社及びその創業者である原告X2の信用を失墜しかねない状況となっている。

(イ) 原告X2は、被告が本件各街宣活動等を行ったことにより、不眠が続き、現在うつ病の診断を受け通院加療中である。

(ウ) 原告X3は、平成一七年の街宣活動の際にも、ストレスから不眠症や胃炎を発病したが、被告が本件各街宣活動等を行ったことにより、過去の経験と相まって、強い不安に陥り、現在ほとんど外出できない状態になっている。

ウ 被告は、後記【被告の主張】ウのとおり主張するが、以下の事情から、本件各街宣活動等は、純粋な政治的目的で行われているものではなく、原告らに対する威圧的行為を継続することにより何らかの不当な利益を得ようとする目的又は過去の事件で原告らが刑事告訴したことに対する報復といった原告らに対する害意をもってなされているものである。

(ア) 被告が平成二三年三月に提出した政治団体収支報告書によると、これまで街宣車による活動のために他人の土地を借りていた形跡がなく、本件土地を必要とする理由がない。しかも、被告の活動拠点である事務所所在地は京都市b区であり、本件土地は地理的に相当離れている。

また、街宣車のうち一台は、平成二三年八月一〇日に購入されたものであり、明らかに原告らに対する街宣活動のためである。

(イ) 被告が原告会社ビルに送付した「通達書」には、被告の街宣活動が、原告会社の営業に関連していることを示唆する表現が含まれている。

(ウ) 本件看板には、「事務所建設予定地」と記載されているが、本件土地の借地契約は、契約期間が一年間、地代が月額三万円であり、当該借地契約が建物所有を目的とするものでないことは明白であって、本件看板の掲示は、原告らに対し被告の存在を示す目的で行ったものである。

(エ) 本件土地の賃貸人とされるD(以下「D」という。)から、原告ら代理人に対し、本件土地を七〇〇〇万円という法外な値段で売却したい旨の申出があったこと、その際、Dが、被告の立ち退きについては責任をもって早急に実現する、上記代金のうち一〇〇〇万円については何者かに支払う旨述べたことからすると、本件各街宣活動等は、Dと被告が意を通じ、不動産売却による利益を得る目的でなされていることが推認できる。

【被告の主張】

ア 本件各街宣活動等の事実経過に関する被告の主張は、別紙街宣活動等に関する事実経過表の「被告の主張」欄のとおりである。

イ 被告が、街宣活動の中で、原告らの名誉を直接的に毀損する言動等は行っていないことは認め、被告の本件各街宣活動等により、原告らの人格権を侵害されたことは否認ないし争う。原告X3の、平成一七年の街宣活動の際の状況については不知。

ウ 被告は、表現の自由としての政治活動を行う目的で、本件土地に街宣車を駐車し、そこから街宣活動に出ているが、以下のとおり、原告らに害意を持っているわけではない。

(ア) 被告は、政治活動を行う本拠となる場所を探していたところ、平成二三年六月ころ、古くからの知人であるDから、売ってもよい土地があると聞かされ、本件土地を将来的には買い受ける前提で借り受けた。

(イ) 被告が原告会社ビルに送付した「通達書」の記載内容は、あくまでも震災に心を痛め、節電を呼びかけ、国民一体となって復興したいとの純粋な思いからのものであり、特段原告会社に関連させたものではない。

(ウ) (ア)のとおり、本件土地を将来的には買い受ける前提で借り受けたため、一年ごとの賃貸借契約とし、更新の際に賃借料の見直しや購入の見通しなどの協議をすることにしたものである。

(エ) Dが、原告ら代理人に対し、本件土地の売却を持ちかけたことについて、被告は全く関知していない。

(2)  争点(2)(人格権侵害に基づく被告の街宣活動等の差止めの可否)について

【原告らの主張】

表現の自由・政治活動の自由も、公共の福祉による制約を受けるところ、本件各街宣活動等は、原告らに、様々な態様でつきまとい、監視し、威圧するものであり、原告らが受けた精神的苦痛・不安は極めて大きいものがある。また、被告代理人が、本件仮処分決定を争う旨述べ、同決定の後も、本件看板が掲示されているなど、被告は、原告らに対する威圧的な行動を継続する意思を示している。よって、人格権に基づく妨害排除請求として、請求一記載の行為の禁止が認められるべきである。

なお、被告は、本件土地が、過去の恐喝行為の被害者の自宅に極めて近接していることを知った上で本件土地の利用を開始したものであり、本訴請求の認容により不測の損害を受けるものではない。これまでの経緯、被告の行為態様、原告らの被害状況等を総合的に衡量すれば、本訴請求の認容により被告が受ける不利益は、必要最小限の制約というべきである。

【被告の主張】

原告らの請求一は、被告の、表現の自由の一つである政治活動の自由を不当に制限するものであり、また、将来的には購入する目的で借り受けた土地の使用をも不当に制限するものであって、許されない。

(3)  争点(3)(損害額)について

【原告らの主張】

本件各街宣活動等は、原告らの人格権を侵害する不法行為である。このような被告の行為により、原告X2及び原告X3は長期間精神的苦痛を受けており、これに対する慰謝料としては、それぞれ一〇〇万円を下らない。

【被告の主張】

争う。

第三当裁判所の判断

一  争点(1)(被告の街宣活動等による原告らの人格権侵害の有無)について

(1)  原告らは、本件各街宣活動等が、原告らに対する害意をもってなされたものである旨主張し、被告はこれを否認する。

そこで検討するに、証拠(甲三、一三、一五、一六、二九、三〇、三二、三九、四二、四五、証人D、証人E、原告会社代表者本人、被告本人)によれば、①被告は、平成一七年の街宣活動等により、被告X3が精神的に参ってしまい、通院した事実を知っていたこと、②被告は、Dが本件土地の所有者であると知り(実際には、Dが平成二一年二月五日まで代表取締役を務めていた有限会社cが、別紙対象地目録三のうち○番地を所有している。)、被告からDに対し、「この辺に借りたい」、「この辺で探してる」旨を言って本件土地の賃貸借を申し込んだこと、③Dは、本件土地を被告に売るという話をしたことはなく、また、本件土地に被告の事務所の建設を容認する意思もなかったが(なお、被告も、借地のまま建物を建てる話はなかった旨述べている。)、被告から頼まれて、平成二四年三月二一日、原告ら代理人に対し、電話で、本件土地を被告が購入するという話があった旨を言ったこと、④被告は、被告事務所の所在地(京都市b区〈以下省略〉)には、被告の政治団体名を表示する看板を掲げていないこと、⑤上記被告事務所の所在地と本件土地との間の距離は約九・二kmであること、⑥原告会社は、被告による本件各街宣活動等の開始後、防犯カメラや騒音レコーダーを新たに設置したこと、⑦原告会社に対し、取引先等から、本件各街宣活動等に関する問い合わせがなされたこと、⑧原告会社の社員等は、平成一七年の街宣活動を認識していることから、被告による本件各街宣活動等により精神的な負担を覚えたり、離職や休職を考えたりする者がいること、⑨原告X2は、本件各街宣活動等によりうつ病に罹患し、原告X3は外出困難な状況にあること、以上の事実が認められ、これに反する被告の陳述書(乙五)及び被告本人尋問の結果は、採用することができない。これらの事実に、前記前提事実を併せみれば、被告は、平成一七年六月以降、原告会社ビル及び原告ら自宅に対し街宣活動を行い、これに関連して、原告らから告訴や仮処分の申立てを受け(前提事実(2)イ、ウ、エ)、また、原告X3が精神的に参って通院した事実を知りながら(上記①)、わざわざ、被告事務所から約九・二kmも離れ(上記⑤)、かつ、原告ら自宅の真向かいにある本件土地の賃貸借を自らDに申込み(上記②)、本件土地上に被告事務所を建設する目途もないのに(なお、被告は、愛媛県d市にある実家の土地を売って本件土地購入の資金にするつもりであった旨述べるが〔被告本人〕、これを裏付ける証拠を何ら提出しない。)、「a団体本部事務所建設予定地」と記載され、また被告事務所にも設置されていないような自らの存在を示す看板を原告ら自宅に向けて掲げ(前提事実(2)カ、上記③、④)、自ら原告会社ビルや原告ら自宅を訪問した上、本件土地上に街宣車を複数台駐車し、街宣活動等の拠点としている(前提事実(2)カ)のであるから、被告は、意図的に、平成一七年の街宣活動の標的となった原告らに対し、再び街宣活動等を行ったといえ、これによって、原告会社の通常の業務を妨げるとともに原告会社及びその創業者である原告X2の信用を毀損し、かつ、原告X2及び原告X3の平穏な生活を営む権利を侵害した(上記⑥~⑨)と認められる。

(2)  これに対し、被告は、原告会社ビルや原告ら自宅を訪れたのは、原告らに挨拶し、他意のないことを伝えたいという思いから菓子折りを持って訪問した旨主張する。しかし、(1)で説示のとおり、被告に「他意がない」とは到底認められず、むしろ、原告会社ビルや原告ら自宅の訪問は、本件看板の設置と同様、原告らに対し自らの存在を示す意図があったと推認されるのであり(被告が菓子折りを持参していたとしても、この推認に何ら影響を及ぼすものではない。)、被告の主張は採用し難い。

また、被告は、街宣活動の中で、原告らの名誉を直接的に毀損する言動等は行っておらず、被告が原告会社に送付した「通達書」の記載内容は、あくまでも震災に心を痛め、節電を呼びかけ、国民一体となって復興したいとの純粋な思いからのものであり、特段原告会社に関連させたものではないと主張するが、平成一七年の街宣活動の存在を踏まえれば、被告が自らの存在を示しつつ原告ら自宅の目の前に街宣活動等の拠点を構え、再び原告会社ビル及び原告ら自宅付近を街宣車で走行し、街宣活動を行うこと自体が、原告らの業務を妨害し、平穏な生活を営む権利を侵害するものであって(被告も、恐喝未遂被告事件の公判廷において、「右翼が来たら、街宣車が来たら、一般人の相手の気持ちになって考えたら、やっぱり、怖かったんかなあとも、そこらは、自分で、今になって分かります。」と述べている〔甲三四〕。)、街宣活動中の言動や原告会社に送付した書面の内容が、直接原告らの名誉等を毀損するものでなければ、原告らの権利を侵害しないなどとは到底いうことができない。

二  争点(2)(人格権侵害に基づく被告の街宣活動等の差止めの可否)について

(1)  自然人の信用や平穏な生活を営む権利といったいわゆる人格権が街宣活動等により著しく侵害され、かつ将来も侵害されるおそれがある場合には、行為者に対し、人格権に基づく妨害排除として、侵害行為の差止めを求めることができると解される。また、法人も、その正常な業務を妨害又は信用を棄損され、かつ将来も侵害されるおそれがある場合には、自然人と同様に、侵害行為の差止めを求めることができると解するのが相当である。

(2)  被告は、原告ら自宅の真向かいにある本件土地上の構造物に、被告事務所にも設置されていないような自らの存在を示す看板を原告ら自宅に向けて掲げ、本件土地上に街宣車を複数台駐車し、街宣活動等の拠点としていることは前述(一(1))のとおりであり、また、平成二三年八月一五日から同年九月一三日までの被告による街宣活動等の経過は別表のとおりと認められ(甲一二、一三、一五、一六、証人E)、これによると、ほぼ連日、複数回にわたり、本件土地に街宣車を出入庫させ、その際に軍歌を鳴らすなどの街宣活動に及んでいることが明らかである。これらの事実に加え、被告による平成一七年の街宣活動の存在を併せみれば、原告らの人格権等の侵害の程度は著しいものといえる。

加えて、被告は、本件仮処分決定以降、これに反する街宣活動等は行っていないが(ただし、本件仮処分決定に反しない地域における街宣活動は行っているから〔被告本人〕、原告ら自宅の目の前に街宣活動等の拠点を構え、街宣車の出入りを行っていることは従前と同様である。)、本件訴え提起後も本件看板の設置は継続し(本件口頭弁論終結日現在は設置されていないが、これはDが撤去したものであり、被告が自ら撤去したものではない〔被告本人〕。)、また、平成一七年の街宣活動に関し仮処分を受け、あまつさえ、実刑判決を受けていながら(前提事実(2)エ、オ)、本件各街宣活動等に及んでいること、被告は、本件土地に被告事務所を設置する予定であるとの主張を維持していることからすれば、原告らの人格権等が将来も侵害されるおそれが高いと認められる。

したがって、原告らは、被告に対し、原告らの人格権等による妨害排除請求権に基づき、被告による請求一記載の行為の禁止を求めることができるというべきである。

(2)  これに対し、被告は、原告らの請求一は、被告の、表現の自由の一つである政治活動の自由を不当に制限するものであり、また、将来的には購入する目的で借り受けた土地の使用をも不当に制限するものであって、許されない旨主張する。

被告が「政治活動の自由を不当に制限するもの」というのは、請求一(1)・(4)のことと解されるが、被告は、原告らに対し、平成一七年の街宣活動を行い、これに関し、請求一(1)とほぼ同旨の行為を仮処分で禁止され、かつ、実刑判決を受けた経験がありながら(前提事実二(2)イ、エ、オ)、意図的に、本件各街宣活動等を行ったものであるから(前記一(1))、請求一(1)・(4)の範囲内では、もはや被告の街宣活動等は政治活動の自由として許容される範囲を逸脱したものといえる。また、被告が、本件土地を「将来的には購入する目的で借り受けた」と認め難い(前記一(1))上、被告は過去の経緯がありながら意図的に本件土地を借りたのであるから、被告による本件土地の使用が請求一の範囲内で制限されることが不当とはいい得ない。被告の主張は採用することができない。

三  争点(3)(損害額)について

一、二において説示したとおり、被告が行った本件各街宣活動等は、原告らの人格権等を侵害するものであり、原告らに対する不法行為を構成することは明らかである。

そして、被告による街宣活動等の態様、内容など本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すれば、原告X2及び原告X3が被った精神的損害に対し被告が賠償すべき慰謝料の額は、それぞれ一〇〇万円と認められる。

四  結論

以上の次第で、原告らの請求は理由があるから認容する。なお、主文一項に対する仮執行宣言については、相当でないからこれを付さないこととする。

(裁判長裁判官 瀧華聡之 裁判官 奥野寿則 大寄悦加)

別紙 対象地目録〈省略〉

別紙 街宣活動等に関する事実経過表〈省略〉

別紙 地図〈省略〉

別表(街宣活動等経過)〈省略〉

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