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京都地方裁判所 平成19年(行ウ)2号 判決

平成19年(行ウ)第2号 処分取消請求事件(以下「第1事件」という。)

平成19年(行ウ)第7号 懲戒免職処分取消請求事件(以下「第2事件」という。)

平成20年(行ウ)第17号 損害賠償命令処分取消請求事件(以下「第3事件」という。)

平成20年(行ウ)第18号 処分取消請求事件(以下「第4事件」という。)

平成20年(行ウ)第19号 損害賠償命令処分取消請求事件(以下「第5事件」という。)

主文

1  京都市長が原告A1に対して平成20年4月9日にした損害賠償命令処分のうち,1万8400円並びにうち4600円に対する平成15年6月14日から,うち4600円に対する平成16年4月29日から,うち4600円に対する同年11月9日から及びうち4600円に対する平成17年1月31日から各支払済みまで年5分の割合(年365日の日割計算)による金員の賠償を命ずる部分を取り消す。

2  京都市長が原告A2に対して平成20年4月9日にした損害賠償命令処分のうち,1万4800円並びにうち4600円に対する平成15年4月25日から,うち4600円に対する同年8月12日から,うち4600円に対する平成16年11月10日から及びうち1000円に対する平成17年12月14日から各支払済みまで年5分の割合(年365日の日割計算)による金員の賠償を命ずる部分を取り消す。

3  京都市長が原告A3に対して平成19年2月13日にした懲戒免職処分及び平成20年4月9日にした損害賠償命令処分をいずれも取り消す。

4  原告A1及び原告A2のその余の請求をいずれも棄却する。

5  訴訟費用は,原告A1に生じた費用の10分の7と被告に生じた費用の30分の7を原告A1の負担とし,原告A2に生じた費用の5分の3と被告に生じた費用の5分の1を原告A2の負担とし,その余は被告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  第1事件

(1)  京都市長が平成18年8月22日に原告A1に対してした懲戒免職処分を取り消す。

(2)  京都市長が平成18年8月22日に原告A2に対してした懲戒免職処分を取り消す。

2  第2事件

京都市長が平成19年2月13日に原告に対してした懲戒免職処分を取り消す。

3  第3事件

京都市長が平成20年4月9日に原告に対してした損害賠償命令処分を取り消す。

4  第4事件

京都市長が平成20年4月9日に原告に対してした損害賠償命令処分を取り消す。

5  第5事件

京都市長が平成20年4月9日に原告に対してした損害賠償命令処分を取り消す。

第2事案の概要

1  紛争の概要

(1)  第1事件及び第2事件

原告A1,原告A2及び原告A3(以下,原告A1,原告A2及び原告A3を「原告ら」という。)は,被告の環境局(なお,当初は清掃局であり,平成10年4月から環境局に変更された。以下,これらを併せて「環境局」という。)に勤務し,市民美化センター(なお,平成10年3月までは特別清掃事務所,同年4月から平成14年3月までは環境美化センターであった。以下,これらを併せて「センター」という。)において犬,猫等の死体の収集業務を担当していたところ,一般廃棄物処理手数料(以下「手数料」という。)を着服したなどとして懲戒免職処分を受けたが,着服の事実はないなどとして同処分の取消を求めた(原告A1及び原告A2につき第1事件,原告A3につき第2事件)。

(2)  第3事件,第4事件及び第5事件

原告らは,前記収集業務に関し,手数料を着服したなどとして損害賠償命令処分を受けたが,着服の事実はないなどとして同処分の取消を求めた(原告A2につき第3事件,原告A1につき第4事件,原告A3につき第5事件)。

2  争いのない事実等(なお,以下,証拠については,異なる内容の証拠で同一の証拠番号が付されているものについてのみ,事件番号を付して特定することとする。)

(1)  原告A1は平成9年10月から,原告A2は平成6年5月から,それぞれ被告の環境局に勤務し,センターで犬,猫等の死体の収集業務を担当していた。

原告A3は,平成4年2月から被告の環境局に勤務し,平成11年から平成16年5月1日まで,センターで犬,猫等の死体の収集業務を担当していた。

(2)  平成18年8月22日,被告から原告A1及び原告A2に対し,それぞれ懲戒免職処分がされた。

懲戒免職処分の処分理由は,原告A1については,死獣収集処理票(収集のための出庫前に作成されるもので,2枚複写になっており,うち1枚はセンターに残される。以下「複写処理票」という。)を破棄する,複写処理票を有料扱いから無料扱いに改ざんする,あるいは,複写処理票を破棄し,無料扱いの死獣・汚物・収集処理票(収集のための出庫後に作成されるもの。以下「車載処理票」という。なお,複写処理票,車載処理票をまとめて単に「処理票」ということがある。)を偽造することにより,平成15年から平成18年5月までの間に少なくとも3万3700円を横領した,原告A2については,複写処理票を有料扱いから無料扱いに改ざんする,あるいは,複写処理票を破棄し,無料扱いの車載処理票を偽造することにより,平成15年から平成18年5月までの間に少なくとも2万1900円を横領したこととされている(甲3,4)。

(3)  原告A1及び原告A2は京都市人事委員会に対して不服申立てをしたが,京都市人事委員会は,平成18年11月6日,申立人らは単純労務職員であり,不服申立てが不適法であるとして却下する旨の決定をした(甲5,6)。

(4)  平成19年2月13日,被告から原告A3に対し,懲戒免職処分がされた。

懲戒免職処分の処分理由は,原告A3が複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いに改ざんする,又は,車載処理票を無料扱いに偽造することにより,平成15年から平成16年5月1日までの間に少なくとも3万2200円を横領したこととされている。(甲8)

(5)  原告A1及び原告A2は,着服の事実を認める書面(自供書)を直筆により作成したが,後に撤回の申し出をした。

(6)  原告A3は,勤務先の上司らから事情を聴かれた際,着服の事実はない旨主張した。

(7)  京都市監査委員から,原告らに対し,「市長から要求のあった死獣処理手数料に係る職員の賠償責任に関する監査の実施に伴う関係人への事情聴取について」と題する書面が送付された。京都市監査委員によって事情聴取日が設定され,個別に事情聴取が行われた。

原告らは,この事情聴取において,手数料を着服した事実は存在しない旨主張した。

(8)  原告らに対して,平成20年4月9日付けで地方自治法243条の2第3項に基づき損害賠償命令処分がされた。

賠償命令額は,原告A1において3万2200円及び各収集日から支払済みに至るまで年5分の遅延損害金を加えた額,原告A2において1万9400円及び各収集日から支払済みに至るまで年5分の遅延損害金を加えた額,原告A3において13万3800円及び各収集日から支払済みに至るまで年5分の遅延損害金を加えた額とされた。(甲24,26,29)

3  争点

本件の争点は,原告らが手数料を着服したか否かである。

(1)  原告ら

ア 被告は,下記のとおり,原告らの着服を認定したとするが,次のとおり着服の事実は存在しない。

(ア) 原告A1

A B1宅について

B1宅に収集に行ったのは事実であるが,回数については失念している。B1宅における着服を認めたとされる原告A1に対する事情聴取及び原告A1作成の自供書は信用できない。

B B2宅について

B2宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。また,原告A1は,B2の顔すら知らない。猫は,家の外に置かれていた。B2宅における着服を認めたとされる原告A1に対する事情聴取及び原告A1作成の自供書は信用できない。

C B3宅について

B3宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。猫は,家の外に置かれていた。

D B4宅について

B4宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。犬は,家の外に置かれていた。

E B5宅について

B5宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。猫は,家の外に置かれていた。

F B6宅について

B6宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。猫は,家の外に置かれていた。

G B7宅について

着服の事実はない。

H B8宅について

B8宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。猫は,家の外に置かれていた。

I B9宅について

B9宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。猫は,家の外に置かれていた。

J 賀茂女子学生会館について

賀茂女子学生会館に収集に行ったのは事実であるが,C1から5000円の金銭を受領したことはない。収集に行った際,猫は寮の前に置かれていた。

K B10宅について

B10宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。猫は,家の外に置かれていた。

L B11宅について

B11宅に収集に行ったのは事実であるが,手数料を受領した事実はない。猫は,家の外に置かれていた。

(イ) 原告A2

A B1宅について

日付け不詳の着服については否認する。原告A2に対する事情聴取及び原告A2作成の自供書は信用性がない。平成17年2月5日の着服については,同日に死獣を収集したこと,無料扱いの車載処理票を作成したこと及びセンターに入金しなかったことは認めるが,飼い犬であったこと,B1との面談,4600円の受領及び着服は否認する。

B B12宅について

被告主張のころ,猫の死体を収集したこと,無料扱いの複写処理票を使用したこと及びセンターに入金しなかったことは認めるが,飼い猫であったこと,B12との面談,4600円の受領及び着服は否認する。

C B13宅について

被告主張のころ,猫の死体を収集したこと,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いにしたこと及びセンターに入金しなかったことは認めるが,B13との面談,4600円の受領及び着服は否認する。飼い猫であったか否かは不明である。

D B14宅について

被告主張のころ,野良猫の死体を収集したこと,無料扱いの車載処理票を作成したこと及びセンターに入金しなかったことは認めるが,B14との面談,3500円の受領及び着服等は否認する。

E B15宅について

被告主張のころ,B15の向かいの男性から猫の死体を収集したこと及び被告に手数料は収入されていないことは認めるが,ペットであること,4600円の受領,複写処理票の取扱いが有料から無料に変更されていること及び着服は否認する。

F B16宅について

被告主張のころ,猫の死体を収集したこと,無料扱いの車載処理票を作成したこと及びセンターに入金しなかったことは認めるが,猫がペットであったこと,1000円の受領及び着服は否認する。

(ウ) 原告A3

A B17宅について

B17宅に収集に行った事実はない。

B B18宅について

B18宅に収集に行った事実はない。

C B19宅について

B19宅に収集に行った事実はない。

D B20宅について

B20宅に収集に行った事実はない。

E B21宅について

B21宅に収集に行ったかどうか記憶がはっきりしない。

F B22宅について

B22宅に収集に行った事実はない。

G B23宅について

B23宅に収集に行ったかどうか記憶がはっきりしない。

H B24宅について

必ずしもB24宅に収集に行った記憶がないが,仮に収集に行っていたとしても,着服の事実は存在しない。

I B25宅について

B25宅で収集した日は平成15年9月26日であり,同月10日の収集を前提に有料の収集であったと考えることはできない。

J B26宅について

B26宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

K B27宅について

B27宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

L B28宅について

B28宅に収集に行ったか否かの記憶があいまいであるが,収集に行っていない可能性が高い。

M B29宅について

B29宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

N B30宅について

B30宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

O B31宅について

B31宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

P B32宅について

B32宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

Q B33宅について

B33宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

R B34宅について

記憶があいまいであるが,処理票の記載から手数料を受け取ったとは考えられない。

S B35宅について

B35宅に赴いた記憶がない。後日,住宅地図を頼りに同所に赴いたが,初めて行った場所であり,帰り道も迷ってしまったほどである。収集に行っていない。

T B36宅について

平成16年2月16日の収集が,B36の平成19年1月23日付け調査票の収集(有料収集だったとするもの。)と同一か疑問がある。

U B37宅について

記憶があいまいであるが,手数料を受け取りながら領収書を渡さなかったことはなく,収集に行っていない可能性がある。

V B38宅について

B38宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

W B39宅について

B39宅に赴いた記憶がなく,収集に行っていないと思われる。

X B40宅について

平成16年3月13日の収集が無料の収集であった可能性がある。B40宅に赴いた記憶はない。

Y B41宅について

無料の収集である。収集に行ったか否かは記憶がない。

Z B42宅について

B42宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

a B43宅について

B43宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

b B44宅について

B44宅に赴いた記憶があるが,事情を聴くと野良猫だったことから,無料扱いとし,手数料は受領していない。

c B45宅について

B45宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

d B46宅について

B46宅に収集に行った記憶がなく,収集に行っていない。

e B47宅について

収集に行った記憶がなく,1人で収集に行くことはない。収集に行っていない。

イ 原告らは,手数料の着服等をしていない。原告A1及び原告A2については,処分説明書に記載されている事実を認めたかのような書面が作成されているが,これは勤務先の上司らから事情を聴かれた際,記憶喚起が不十分な状態だったため,そのような書面が作成されたにすぎない。その後,着服等の事実は存在しない旨主張し,上記書面の撤回を求めたが,全く聞き入れてもらえなかった。

原告A3について,当初は,B17宅,B18宅,B21宅,B22宅,B23宅に収集に行ったとしながら,後に否定するなどしているが,これは同原告が代理人と現地に赴いた結果,自分が訪問した経験がないことがわかったからである。

ウ(ア) 本件の懲戒免職処分の根拠事実の存在は厳格な証明を経ておらず,違法である。

(イ) 懲戒免職処分後に判明した事実の存在によって過去の懲戒免職処分を正当化することはできない。各懲戒免職処分の適法性判断は,被告が原告らに説明した処分根拠事実の存否で決するべきである。

(2)  被告

ア 被告が認定した事実は以下のとおりである。

(ア) 原告A1について

A B1宅における着服

平成16年から平成17年ころに2回にわたり(日付け不詳),B1宅(京都市a区b町c番地のd)に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として合計9200円を現金で受領したが,当該手数料を着服した。

なお,方法については,原告A1及びB1の双方の記憶があいまいであり,かつ,B1は多数の収集依頼をしていることから特定できない。

B B2宅における着服

平成17年9月10日に,B2宅(京都市e区f町g番地)に同人が飼っていた猫の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いに改ざんすることにより,当該手数料を着服した。

C B3宅における着服

平成15年10月30日に,B3宅(京都市h区i町j番地のk。ただし,車載処理票では同区l町m-nと記載されている。)に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成することにより,当該手数料を着服した。

D B4宅における着服

平成16年11月29日に,B4宅(京都市o区pq番地のr)に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの複写処理票を利用して,当該手数料を着服した。

E B5宅における着服

平成16年11月22日に,B5宅(京都市o区s町t番地のu。ただし,車載処理票では同区v町と記載されている。)に同人が飼っていた猫の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成することにより,当該手数料を着服した。

F B6宅における着服

平成17年10月24日に,B6宅(京都市a区b町w番地のx)に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成することにより,当該手数料を着服した。

G B7宅における着服

原告A1が取扱者となっている無料扱いの車載処理票について,収集先のB7(京都市o区y町z番地のa')に確認したところ,1500円を現金で支払ったとの供述が得られたために,原告A1による着服の可能性が高いと判断し,処分理由の1つとした。

しかし,原告A1に対する懲戒免職処分後,事件の全容を解明するために調査を進める中で,センターの別の職員がB7宅に収集に行き,手数料を徴収している事実が確認されたため,原告A1によるB7宅における着服の事実はないことが判明した。

H B8宅における着服

B8は平成15年6月ころにペットの猫の手数料として4600円を収集員に支払ったと供述しているが,原告A1が同月14日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

I B9宅における着服

B9は,平成16年11月ころにペットの猫の手数料として4600円を収集員に支払ったと供述しているが,原告A1が同月9日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

J 賀茂女子学生会館における着服

賀茂女子学生会館のC1は,平成17年3月ころにえさを与えていた野良猫の手数料として5000円を収集員に支払ったと供述しているが,原告A1が同月15日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

K B10宅における着服

B10はこれまで4回ペットの猫の収集を依頼し,そのたびに手数料として4600円を収集員に支払ったと供述しているが,原告A1が平成16年4月29日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

L B11宅における着服

B11は平成17年冬ころにペットの猫の手数料(金額は覚えていない。)を収集員に支払ったと供述しているが,原告A1が同年1月31日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

(イ) 原告A2について

A B1宅における着服

平成17年2月5日及び日付不詳の2回にわたり,B1宅に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として合計9200円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成すること等により,当該手数料を着服した。

B B12宅における着服

平成16年11月10日に,B12宅(京都市a区b'町c'番地)に同人が飼っていた猫の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの複写処理票を利用して,当該手数料を着服した。

C B13宅における着服

平成15年8月12日に,B13宅(京都市d'区e'町f'番地)に同人が飼っていた猫の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いに改ざんすることにより,当該手数料を着服した。

D B14宅における着服又は詐取

平成17年2月15日に,B14宅(京都市h区g'町h'番地)に同人が収集を依頼した野良猫の死体の収集に赴き,その際に同人から3500円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成することにより,当該金員を着服又は詐取した。

E B15宅における着服

B15は平成15年4月ころにペットの猫の手数料として4600円を向かいに住んでいるC2を通じて収集員に支払ったと供述している。そして,C2も,日時は覚えていないが,B15から依頼を受けて,手数料を収集員に支払ったと供述している。しかし,原告A2が同月25日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

F B16宅における着服

B16は平成17年12月14日にペットの猫の手数料として1000円を収集員に支払ったと供述しているが,原告A2が同日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

この1000円については,手数料として着服したと評価されるのに加えて,差額の3600円を徴収しなかったことは背任に相当するものであり,いずれも懲戒免職処分に相当する行為であることには違いないものである。

(ウ) 原告A3について

A B17宅における着服

平成16年5月1日にB17宅(京都市i'区j'町k'番地)に同人が飼っていたハムスターの死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成することにより,当該手数料を着服した。

B B18宅における着服

平成15年12月25日に,B18宅(京都市l'区m'町n'番地)に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いに改ざんすることにより,当該手数料を着服した。

C B19宅における着服

平成16年1月20日に,B19宅(京都市l'区o'町p'番地のq')に同人が飼っていた猫の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いに改ざんすることにより,当該手数料を着服した。

D B20宅における着服

平成16年3月31日に,B20宅(京都市r'区s'町t'番地)に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成することにより,当該手数料を着服した。

E B21宅における着服

平成16年3月22日に,B21宅(京都市h区u'町v'番地のw')に同人が飼っていた猫の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いに改ざんすることにより,当該手数料を着服した。

F B22宅における着服

平成16年2月9日に,B22宅(京都市x'区y'z'番地のa")に同人が飼っていた犬の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いに改ざんすることにより,当該手数料を着服した。

G B23宅における着服

平成16年3月29日に,B23宅(京都市r'区b"町c"番地のd")に同人が飼っていた猫の死体の収集に赴き,その際に同人から手数料として4600円を現金で受領したが,無料扱いの車載処理票を作成することにより,当該手数料を着服した。

H B24宅における着服

B24は平成15年4月ころにペットの猫の手数料として3000円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月14日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

I B25宅における着服

B25は平成15年9月10日にペットの犬の手数料として5000円(正規の手数料額の4600円と近い金額であり,おつりをチップとして受け取らなかったか,おつりを受け取ったことを忘れている等の事情と思われる。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月26日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

J B26宅における着服

B26は平成15年9月にペットの犬の手数料として8000円(正規の手数料との差額はチップとして支払われたと思われる。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月29日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

K B27宅における着服

B27は平成15年12月ころにペットの犬の手数料として5000円程度(正規の手数料額の4600円と近い金額であり,正規の手数料を支払ったと思われる。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月16日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されている上,種類も犬から猫に変更されており,被告に手数料は収入されていない。

L B28宅における着服

B28は平成15年12月26日にペットの犬の手数料として2000円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

M B29宅における着服

B29は平成16年1月2日にペットの犬の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月4日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されている上,種類も犬から猫に変更されており,被告に手数料は収入されていない。

N B30宅における着服

B30は平成16年1月11日にペットの猫の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月12日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

O B31宅における着服

B31は平成16年1月ころにペットの犬の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月16日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

P B32宅における着服

B32は平成19年1月よりも2~3年前にペットのハムスターの手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が平成16年1月30日に取り扱った複写処理票では種類をハムスターから猫に変更した上で無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

Q B33宅における着服

B33は平成16年2月9日にペットの犬の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

R B34宅における着服

B34は時期は不明であるがペットの犬の手数料(金額は覚えていないと述べているが,正規の手数料である4600円であったと推認される。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が平成16年2月9日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

S B35宅における着服

B35は平成16年2月14日にペットの犬の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

T B36宅における着服

B36は平成16年2月16日にペットの犬の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

U B37宅における着服

B37は平成16年3月ころにペットの猫の手数料として5000円(正規の手数料額の4600円と近い金額であり,おつりをチップとして受け取らなかったか,おつりを受け取ったことを忘れている等の事情と思われる。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月4日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

V B38宅における着服

B38は平成16年3月9日又は同月10日にペットの犬の手数料(金額については明確な記憶がなく「5000円とかきりのいい数でした。」と述べており,少なくとも正規の手数料である4600円以上であったと推認される。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月9日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

W B39宅における着服

B39は平成16年3月ころにペットの猫の手数料として3500円程度(金額については明確な記憶を有していないが,正規の金額以外の金額を支払ったと認めるべき事情もないことから,正規の手数料である4600円を支払ったと推認される。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月11日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

X B40宅における着服

B40は平成16年3月にペットの猫の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月13日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

Y B41宅における着服

B41は時期は不明であるがペットの猫の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が平成16年3月22日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

Z B42宅における着服

B42は平成16年3月にペットの犬の手数料として5000円程度(正規の手数料額の4600円と近い金額であり,正規の手数料を支払ったと思われる。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月23日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

a B43宅における着服

B43は平成16年3月ころにペットの犬の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月27日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

b B44宅における着服

B44は平成16年3月にペットの猫の手数料(金額については明確な記憶を有していないが,正規の金額以外の金額を支払ったと認めるべき事情もないことから,正規の手数料である4600円を支払ったと推認される。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月27日に取り扱った複写処理票では有料から無料に取扱いが変更されており,被告に手数料は収入されていない。

c B45宅における着服

B45は平成16年3月28日にペットの犬の手数料として4600円を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同月29日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

d B46宅における着服

B46は時期は覚えていないがペットの犬の手数料(金額については明確な記憶を有していないが,正規の金額以外の金額を支払ったと認めるべき事情もないことから,正規の手数料である4600円を支払ったと推認される。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が平成16年4月19日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

e B47宅における着服

B47は平成16年4月28日にペットの猫の手数料(金額については明確な記憶を有していないが,正規の金額以外の金額を支払ったと認めるべき事情もないことから,正規の手数料である4600円を支払ったと推認される。)を収集員に支払ったと述べているが,原告A3が同日に取り扱った車載処理票では無料扱いとされており,被告に手数料は収入されていない。

イ 原告A1は,平成9年10月1日以降,原告A2は,平成6年5月1日以降,原告A3は,平成11年5月1日以降,センターに勤務し,市民から収集の依頼のあった死獣を収集し,分任出納員の職務を命ぜられて収集時に手数料(1体につき4600円)を徴収する業務に従事していた。

原告らが担当した業務について平成18年度に被告が実施した調査の結果,市民が手数料を支払った事実が確認できたにもかかわらず,手数料が収入されていない案件が原告A1について12件(上記ア(ア)Gを除いたもの),原告A2について7件,原告A3について31件あり,原告らが手数料を着服していたことが判明した。

このことから,被告は,平成18年8月22日付けで原告A1及び原告A2を懲戒免職処分とした。なお,原告A1について上記ア(ア)H~Lの案件,原告A2について上記ア(イ)E及びFの案件については,懲戒免職処分の対象としていなかった案件であるが,上記のような供述が得られたことから判断して,原告らが複数の機会に手数料の着服を行っていたことは明らかであり,このことからも処分が相当であったことは明らかである。

被告は,原告A3について,少なくとも7件(上記ア(ウ)A~G)を懲戒処分事由として,平成19年2月13日付けで懲戒免職処分とした。

また,原告らの着服行為により,被告に損害が生じていると考えられることから,京都市長は,原告A1については上記の12件に対して,原告A2については上記のうち6件(ア(イ)Dを除いたもの)に対して,原告A3については上記の31件に対して,地方自治法243条の2第3項に基づき,京都市監査委員に対し,その事実があるかどうかを監査し,賠償責任の有無及び賠償額を決定することを求めた。

京都市監査委員は,監査の結果,原告A1に対して7件(上記ア(ア)B,D,H~L)について,原告A2に対して5件(上記ア(イ)A(平成17年2月15日分)~C,E,F)について,原告A3に対して30件(上記ア(ウ)Aを除いたもの)について,それぞれ着服の事実を確認し,原告らに賠償責任があることを認めた。なお,原告A3について京都市監査委員が賠償責任を認めなかった1件(上記ア(ウ)A)については,原告A3が着服した当時,分任出納員の職になかったため監査対象でないことを理由とするものであり,この件については,被告から原告A3に対し,別途民法の不法行為に基づき損害賠償請求を行っており,原告A3が着服したことを否定するものではない。

これを受け,京都市長は,原告らに対し,損害賠償命令処分をした。

ウ(ア) 確かに,本件の処分根拠事実については,数年前の事案もあり,市民の記憶が一部不確かな点があったり,調査を継続する中で当初の認定とは異なる事実が判明したものもあったが,本件では,少なくとも原告らが手数料を着服した事実については十分な立証がなされていると思料する。

なお,本件の懲戒事由の悪質性等からすれば,仮に被告の主張が全面的に認められない場合であっても,たとえ1件でも手数料着服の事実が認定されれば,懲戒免職処分相当であるというべきである。

(イ) 本件における処分理由は,前記争いのない事実のとおりであり,当初判明分のみならず,その後の追加調査による追加判明分についても当てはまるものである。

確かに,懲戒免職処分時においては,追加判明分の詳細は判明していなかったものである。しかしながら,処分時までに調査対象世帯の第一次電話調査が完了し,当初判明分以外にも着服の可能性のある案件が複数あることは既に判明していたものである。

被告としては,着服の全容は分からなくとも,手数料を着服した事実は分かっている職員をすべての着服の事実が明らかになるまで何らの処分もせずにそのまま放置することは市民の理解が得られるものではなく,また,そのような職員を公務に就かせることもできないことから,調査途中ではあったが,懲戒免職処分に踏み切ったものである。

そのため,処分説明書にも,その時点で判明していた事案が全体の一部であることを明らかにしているのである。

したがって,本件では,処分後の追加調査で判明した案件を訴訟の対象に加えて論じたとしても,いわゆる処分理由の追加に当たらない。

仮に,追加判明分を処分根拠事実として主張することが処分理由の追加に当たるとしても,本件については,処分当時,当初判明分以外にも確定的ではないが他に着服の案件があることは被告において認識していたものである。

また,本件の懲戒免職処分は,処分時には当初判明分以外にも着服の案件が複数存在する可能性があることを前提として,労働者の反復継続する多数の非違行為をまとめて懲戒の対象としているものであり,本件で追加調査により更に着服の事実が判明したことは,具体的事実として未だ懲戒権者に判明していなかった同種の行為が後に明らかになった場合に該当する。

したがって,懲戒後に判明した事実についても懲戒免職処分の有効性を判断する根拠とすることができる。

第3当裁判所の判断

1  前記争いのない事実及び証拠(甲39,第1事件及び第3事件甲32,第1事件及び第4事件甲32,34,35,乙1~5,7,9~11,34,37,76,77,119~121,280,証人D1,証人D2,証人D3,証人D4,原告A1,原告A2,原告A3)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

(1)  当事者等

ア 原告A1は,昭和33年3月14日生まれで,昭和59年5月1日に被告にごみ収集員として採用され,平成9年10月1日から環境局のセンターに配属され,懲戒免職処分当時はセンターに配属されていた。

イ 原告A2は,昭和28年8月7日生まれで,昭和48年6月1日に被告にごみ収集員として採用され,平成6年5月1日から環境局のセンターに配属され,懲戒免職処分当時は,センターに配属されていた。

ウ 原告A3は,昭和33年2月24日生まれで,平成4年2月1日にごみ収集員として被告に採用され,平成11年5月1日からセンターに配属され,懲戒免職処分当時は,環境局左京まち美化事務所に配属されていた。

(2)  センターの組織,人員構成等

ア センターでは,所長,次長の外,管理係長,業務係長,環境美化係長,車両管理係長の4名の係長が置かれ,それぞれの係長の下に職員が配置されていた。

死獣の収集及び運搬に関する業務については,環境美化係長の担当とされており,その下に2名の作業長,5名の死獣収集担当者,1名の事務担当者及び1名の運転者が配置されていた。

イ 平成15年度から平成18年度までにおける作業長及び死獣収集担当者の氏名は下記のとおりである。

平成15年度 作業長 D4

D5

死獣収集担当者 原告A2

D6

原告A1

D7

原告A3

平成16年度 作業長 D5

D8

死獣収集担当者 原告A2

D6

原告A1

D7

D9

平成17年度 作業長 D10

D8

死獣収集担当者 原告A2

D6

原告A1

D7

D11

平成18年度 作業長 D10

D8

死獣収集担当者 原告A2

D6

原告A1

D7

D11

(3)  原告らの業務等

ア 本件の懲戒免職処分の対象となった平成15年から平成18年にかけての原告らの業務内容は,市民から収集の依頼のあった死獣を収集し,収集時に手数料(一体につき4600円)を徴収するというものである。ただし,所有者のいない死獣(いわゆる野良犬や野良猫等)については,手数料は徴収しない扱いとなっていた。

イ 原告らの従事していた業務のおおまかな流れは,以下のとおりである。

(ア) 収集を依頼する市民から電話により収集申込みを受ける。

その際に,依頼者の住所,氏名,電話番号,死獣の種類(犬,猫など)を確認し,2部複写の複写処理票を作成する。このとき飼い主の有無を確認し,有料又は無料収集の判断を行う。

(イ) 午前10時~10時30分に,各収集員は,複写処理票の2枚目と目的地の住宅地図を持って収集車でセンターを出庫し,収集申込先に向かう(いったんセンターに戻った後に再度収集に行く場合もある。)。

収集車は,被告が委託している民間業者の運転手が運転し,当該運転手と被告の職員の収集員の計2名が乗車している。

収集ルートは,方面別に東・西・南の3コースに分かれており,収集員が収集に行くコースはローテーションで毎日変更される。したがって,収集依頼の電話を受けた者と実際に収集に向かう者とが同じになるとは限らない。

なお,複写処理票の1枚目については,収集員の行き先を確認するために収集中はセンターに残していたが,収集員がセンターに戻った後は破棄していた。

(ウ) 出庫後にセンターに追加で収集依頼があった場合は,センターから収集に出ている収集員に携帯電話での依頼者の住所,氏名,電話番号,死獣の種類,有料・無料区分の連絡をすることになっており,連絡を受けた収集員が現場で単票の車載処理票を作成する。

(エ) 収集申込先を訪問して死獣を収集し,有料の場合(野良でない場合)には,手数料として1体につき4600円を現金で徴収して,領収書を交付する。その間,運転手は原則として車で待機する。

なお,領収書と原符が2部複写となっており,領収書は市民に交付するが,原符が領収調書のつづりとして残されることになっている。

(オ) センターに帰所した後,作業日報を作成し,上司に報告してから,徴収した手数料,領収調書のつづり,処理票を事務担当の係へ引き渡す。

このとき,事務職員は,領収調書につづられている原符と手数料とが一致していることを確認する。

(カ) 事務職員は,その日に使用した領収書の枚数と徴収した手数料の金額を収納金日計報告書にまとめ,センター管理係長を経て,センター所長の確認を受ける。

(キ) 収集した死獣は,所定の保管場所に収納され,翌日以降にまとめて市営斎場に持ち込まれる。

ウ 原告らの徴収していた手数料は,地方自治法227条及び京都市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例35条1項の規定に基づき徴収する一般廃棄物手数料である。原告らは,収入役の補助職員である分任出納員に命じられ,公金を現金収納する権限が与えられていた。

エ 収集員の間では,その繁忙等によって,自分の担当していないコースを担当することがあった。この場合,本来の担当の収集員が処理票を作成することがあり,実際には収集に行っていないにもかかわらず,収集に行ったような体裁の処理票となることがあった。

オ 市民によっては,野良猫の無料収集において金銭を渡したり,有料収集において手数料よりも多額の金額を渡す者もいた。この場合,収集員はチップとしてこれを受け取り,受け取ったチップの扱いについて取り決めはなかった。

(4)  懲戒免職処分に至る経緯

ア 平成18年5月12日,収集申込者のB5からセンターに「収集の際に手数料を支払ったのに領収書の発行がなかったのはおかしいのではないか。」との問合せがあった。調査したところ,当該日に収集した無料扱いの複写処理票及び車載処理票各1枚が見つかった。

イ 同月13日,センター所長のD1が,当該案件について収集したD11とD7から事情聴取をしたところ,D11は,「1匹は有料で,もう1匹は無料であったが,有料分について領収書を切らずに手数料を持って帰ってきた。」との説明があったため,本人が保管していた現金を回収し,問合せがあったB5に対して謝罪すると共に領収書を交付した。

ウ 同年6月下旬に,上記問合せを契機として,センターにおいて平成18年度の処理票について全件調査を実施したところ,有料から無料に取扱いが変更されている複写処理票が17件あった。そこで,同年7月3日,D11とD7からの事情聴取が行われた。

エ 同月に平成17年度分の処理票全件について調査を実施したところ,有料から無料に取扱いが変更されている複写処理票が154件存在することが判明した。

オ 平成18年7月29日から同年8月2日にかけてセンターの関係職員全員の事情聴取が行われた。その結果,同年7月29日にD11とD7が手数料着服の事実を認めた。

カ その後,下記のとおり,原告らに対する事情聴取が行われ,原告A1及び原告A2は,当初,手数料着服の事実を認めた。

キ 被告は,同年7月29日から,被告において保存していた平成15年度以降の処理票3万7296件のうち,有料から無料に取扱いが変更されている複写処理票及び無料扱いの車載処理票その他不備のある処理票の合計3869件について,収集先の市民に対して電話で手数料支払の有無を確認した。

ク 平成18年8月7日から同月17日にかけて,D11,D7,原告A1及び原告A2の供述した案件に係る収集先と上記電話調査の結果手数料を支払ったと回答した市民のうち数件の市民宅を訪問し,より詳細な事情を確認した。

ケ 上記調査結果において,原告A3が取り扱った案件の中に,処理票上は無料扱いとなっており,被告に手数料が収入されていないが,市民が手数料を支払ったと述べているものがあることから,同月19日に原告A3を呼び出して,事情を聴いた。

その際,原告A3は,当該案件(平成16年4月28日のB47宅及び同年1月20日のB19宅)について収集に行ったこと及び処理票を無料扱いとして処理したことは認めたが,手数料を着服したことについては否定し,その旨を陳述書(乙55)として作成した。同陳述書には,「状況的に見て,着服したと思われることは理解できますが,市民からの証言があっても,私は着服をしていません。ですが,市民の証言に対して,手数料を受け取っていないことについて,合理的な反論はできません。」との記載がある。

コ 上記調査結果を基に,D11,D7,原告A1及び原告A2の合計4名に対して,平成18年8月22日に懲戒免職処分が発令された。

原告A3については,手数料を着服した事実を強く否定したことから,その時点では処分を見送り,継続して調査を続けることとした。

サ 懲戒免職処分を受けた上記4名については,同年9月19日に,京都府南警察署に業務上横領罪容疑で告発し,同年11月24日に京都府南警察署から京都地方検察庁に書類送検となった。

シ 京都地方検察庁検察官検事E1は,同年12月11日,原告A1,原告A2を不起訴処分とした。処分理由は,起訴猶予であった。

ス 被告は,原告A3が取り扱った案件のうち,収集先の市民が手数料を支払ったと述べている案件について,市民宅を訪問するなどの調査を行った。

被告は,原告A3が手数料を横領していた疑いが強くなったと判断し,平成19年2月2日,原告A3に対する2度目の事情聴取を行った。

セ 被告は,原告A3が,手数料を着服していたことが明らかであると判断し,同月13日,原告A3ともう1名の職員に対して懲戒免職処分が発令された。

(5)  原告A1に対する聴取

ア 平成18年7月30日,原告A1に対する事情聴取が行われた。原告A1は,京都市a区のe"団地のB12宅での収集に際し,2回にわたり,複写処理票を有料から無料に書き換え,あるいは,無料の車載処理票を作成し,受け取った手数料4600円を運転手と折半して着服したことを認め,同旨の自供書(乙5)を作成した。

イ 引き続き同年8月1日にも事情聴取が行われ,原告A1は,新たに京都市e区f"のB2宅での収集に際し,複写処理票を有料から無料に書き換え,受け取った手数料4600円を運転手と折半して着服したことを認め,同旨の自供書(乙7)を作成した。

また,原告A1は,このとき,B12宅と言ったのは,a区のB1宅の記憶違いである旨述べた。

ウ 原告A1は,同月17日,これまで2回の事情聴取で話した内容は,すべて嘘だったと主張し,嘘を言わないとその場から帰してもらえないと思ったと述べた。

(6)  原告A2に対する聴取

ア 同年7月30日,原告A2に対する事情聴取が行われた。原告A2は,京都市a区b町のB1宅の犬の収集の際に,2回にわたり,複写処理票を有料から無料に書き換え,受け取った手数料4600円を運転手と折半して着服したことを認め,同旨の自供書(乙10)を作成した。

原告A2は,同年8月2日の事情聴取の際も,この事実を認めた。

イ 原告A2は,同月7日及び同月17日,着服を否認し,いったん着服を認めたのは,同年7月30日は飲酒をしており,早く家に帰りたかったからだと述べた。

(7)  懲戒の認定規準

被告は,平成14年10月から「京都市職員の懲戒処分に関する指針」を定めているところ,同指針には,「公金又は公物を横領し,窃取し又は詐取した職員は,免職とする。」との定めがある。

(8)  京都市長は,原告A1については上記のB1宅(日付け不詳の2件),B2宅,B3宅,B4宅,B5宅,B6宅,B8宅,B9宅,賀茂女子学生会館,B10宅,B11宅への各着服に対して,原告A2については上記のB1宅(日付け不詳と平成17年2月5日の2件),B12宅,B13宅,B15宅,B16宅への各着服に対して,原告A3についてはB17宅,B18宅,B19宅,B20宅,B21宅,B22宅,B23宅,B24宅,B25宅,B26宅,B27宅,B28宅,B29宅,B30宅,B31宅,B32宅,B33宅,B34宅,B35宅,B36宅,B37宅,B38宅,B39宅,B40宅,B41宅,B42宅,B43宅,B44宅,B45宅,B46宅,B47宅の各着服に対して,地方自治法243条の2第3項に基づき,京都市監査委員に対し,その事実があるかどうかを監査し,賠償責任の有無及び賠償額を決定することを求めた。

京都市監査委員は,監査の結果,原告A1に対し,B2宅(収集日平成17年9月10日,亡失額4600円),B4宅(収集日平成16年11月29日,亡失額4600円),B8宅(収集日平成15年6月14日,亡失額4600円),B9宅(収集日平成16年11月9日,亡失額4600円),賀茂女子学生会館(収集日平成17年3月15日,亡失額4600円),B10宅(収集日平成16年4月29日,亡失額4600円),B11宅(収集日平成17年1月31日,亡失額4600円)について,原告A2に対し,B1宅(収集日平成17年2月5日,亡失額4600円),B12宅(収集日平成16年11月10日,亡失額4600円),B13宅(収集日平成15年8月12日,亡失額4600円),B15宅(収集日平成15年4月25日,亡失額4600円),B16宅(収集日平成17年12月14日,亡失額1000円)について,原告A3に対し,B18宅(収集日平成15年12月25日,亡失額4600円),B19宅(収集日平成16年1月20日,亡失額4600円),B20宅(収集日平成16年3月31日,亡失額4600円),B21宅(収集日平成16年3月22日,亡失額4600円),B22宅(収集日平成16年2月9日,亡失額4600円),B23宅(収集日平成16年3月29日,亡失額4600円),B24宅(収集日平成15年4月14日,亡失額3000円),B25宅(収集日平成15年9月26日,亡失額4600円),B26宅(収集日平成15年9月29日,亡失額4600円),B27宅(収集日平成15年12月16日,亡失額4600円),B28宅(収集日平成15年12月26日,亡失額2000円),B29宅(収集日平成16年1月4日,亡失額4600円),B30宅(収集日平成16年1月12日,亡失額4600円),B31宅(収集日平成16年1月16日,亡失額4600円),B32宅(収集日平成16年1月30日,亡失額4600円),B33宅(収集日平成16年2月9日,亡失額4600円),B34宅(収集日平成16年2月9日,亡失額4600円),B35宅(収集日平成16年2月14日,亡失額4600円),B36宅(収集日平成16年2月16日,亡失額4600円),B37宅(収集日平成16年3月4日,亡失額4600円),B38宅(収集日平成16年3月9日,亡失額4600円),B39宅(収集日平成16年3月11日,亡失額4600円),B40宅(収集日平成16年3月13日,亡失額4600円),B41宅(収集日平成16年3月22日,亡失額4600円),B42宅(収集日平成16年3月23日,亡失額4600円),B43宅(収集日平成16年3月27日,亡失額4600円),B44宅(収集日平成16年3月27日,亡失額4600円),B45宅(収集日平成16年3月29日,亡失額4600円),B46宅(収集日平成16年4月19日,亡失額4600円),B47宅(収集日平成16年4月28日,亡失額4600円)について,それぞれ着服の事実を確認し,原告らについて,上記亡失額及び収集日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の賠償責任があることを認めた。(乙121)

2  原告A1及び原告A2の事情聴取及び自供書における自白の信用性

(1)  原告A1及び原告A2は,事情聴取要旨が正確性を欠くとした上で,事情聴取及び自供書作成の経緯についてそれぞれ次のとおり主張し,原告A1及び原告A2の本人尋問の結果,第1事件及び第4事件甲第32号証並びに第1事件及び第3事件甲第32号証の記載にもこれに沿う部分がある。

ア 原告A1

平成18年7月30日の事情聴取の際,D12からD11と同じようなことをしていないかと尋ねられ,そのようなことはしていないと回答したが,更に何度も尋ねられ,また,この事情聴取にはそれまで話をしたことのない上司に囲まれて萎縮していたことから,「やっていないが,やっていないと主張しても信用してもらえない。」「早く事情聴取を終えるためにはやったというしかない。」と考えるに至り,e"団地内に収集に行った際,領収書を発行せずに手数料をもらったという虚偽の話をした。そして,これ以降は虚偽の話とつじつまを合わせるような話をしていき,その後に自供書(乙5)が作成された。これは,既に被告の環境局の職員によって作成されていた書面を見せられ,これを転記するように言われた結果,作成されたものである。同書面の文章が長かったことから,一部を割愛して作成した。

その後,自宅待機を命じられていたが,同年8月1日,再び来るようにとの連絡が入り,飲酒をしている旨答えたが,とにかく来るようにと言われたため出向いた。「懲戒免職は覚悟している。」と言ったことはない。「あなた方は私を懲戒免職にしたいだけなんでしょ。」と言ったものである。「C3」のフルネームは知らない。住宅地図を示されながら,D12から,「この前の件はC3さんと違うか。」と言われて,そうだったかもしれないと回答したにすぎない。D12から京都市e区f"部分の住宅地図を見せられ,この中で行ったところはないかと尋ねられたが,B2宅に行ったことは覚えていたので,そう答えた。手数料の授受については,もらったかもらっていないか覚えていないと答えたところ,D12から「もらっていないと言い切れるか。」と追いつめるような質問をされたので,もらっていたかもしれないと回答した。このような事情聴取が行われた後に再び自供書(乙7)が作成された。これも既に被告の環境局職員の手によって作成されていた書面を見せられ,これを転記するように言われた結果作成されたものである。同書面の文章が長かったことから,一部を割愛して作成した。

イ 原告A2

自供書(乙10)は,平成18年7月30日の1回目の事情聴取の最終時点で被告の環境局職員がワープロ打ちした書面を示し,別の用紙に転記して署名捺印するように求め,当該ワープロ書面記載のとおり書き写して作成されたものである。1回目の事情聴取のときには,休日であり,午前中から酒を飲んでいて気分が悪く,また,それまで会話をしたこともない上司らに囲まれて緊張萎縮していたし,今も聴取の内容について明確な記憶がない。この聴取に当たっては,自分の行為についてではなく,同僚収集員のD11の着服の件を尋ねられると想定していた。環境局職員の指示に従わないと帰宅できないと思い,意味を吟味しないまま文書を書き写し,署名押印して自供書を作成した。

1回目の事情聴取の後に自宅待機を命じられたので,事情聴取での自らの供述が事実に反し,誤解されていると判断し,同年8月2日の2回目の事情聴取では,自供書について「何を書いたか分からないから,書面を見せてほしい。書いたものを取り消したい。」と撤回を申し入れたが,相手にされなかった。この聴取では,B1宅での出来事に関する聴取はほとんどなかった。

その翌日にもD1に電話で同様の申入れをし,自供書の撤回のため環境局担当者との面談の手配を求めたが,この要請は「多忙」との理由で受け入れられなかった。その後,同月7日及び同月17日にも処分対象事実を否認した。同日の聴取では,環境局職員らに対し,何度も処理票を見せてほしいと頼んだが,職員らが見せることはなかった。

(2)  しかしながら,証拠(第1事件及び第3事件甲32,第1事件及び第4事件甲32,34,乙6,8,9,11~14,280,281,証人D1,証人D2,証人D3,証人D13,証人D4,原告A1,原告A2)及び弁論の全趣旨によれば,原告A1及び原告A2の事情聴取要旨については,事情聴取の場で職員がノートに筆記した内容を基にパソコンで摘録を作成し,すぐに事情聴取を行った複数の者によって,記載内容にもれや誤りがないかを確認して完成したものであり(なお,事情聴取の内容はテープ等に録音していない。),その内容も極めて詳細な上,原告A1や原告A2が否認した部分や自白を撤回した部分なども記載したものであり,その信用性は高いものと認めることができるところ,この事情聴取要旨によれば,原告A1においても,原告A2においても,特に職員から自白を強要されたり,誘導を受けたりしたような事実はうかがわれない。また,事情聴取中には,適宜休憩を取らせるなど,被聴取者の体調や心理面に対する配慮がなされているものである。

なにより,原告らの上司に当たるセンターの作業長のD4は,原告A1の事情聴取の前日の平成18年7月29日,D1から,「D11とD7が手数料の横領を認めている。D11はg"山の収集で手数料を受け取りながら,領収書を発行せず手数料を着服したと認めている。収集員ほか全員が同じようなことをしていると話している。」と聞き,原告A1に架電し,着服の事実等を確認した上,「D11のことを尋ねられると思うが,D11は横領を認めているのだから,仲間を売るなどと思わなくてよい。D11が一筆書くまでなかなか帰してもらえなかったらしいから,知っていることを認めてさっさと署名して帰ったらよい。」と言い,原告A2にもこれを伝えるよう話しており,原告A2も原告A1からD4の話を聞いているのであり,このような助言を受けた原告A1及び原告A2があえて虚偽の自白をするとは考えがたいといわざるを得ない。

原告A1及び原告A2が虚偽の自白をするに至った理由やその経緯についても,これが横領という重大な事実についてのものであることにかんがみれば,あまりに不自然・不合理というべきものである。なお,原告A1は,D4が,事情聴取に合わせて答えておけばよい,任せておけなどと言ったので,虚偽の自白をしたとも供述するが,D4の証言とも合致せず,信用できない。

以上によれば,原告A1及び原告A2の上記主張は採用できず,原告A1及び原告A2の事情聴取における自白は,当時の心境をありのままに語ったものであると認めることができる。確かに,その供述内容には客観証拠とやや整合しない点等もあるが,細部については記憶違いをしていたことも十分考えられるのであり,自白の信用性自体に影響を与えるものではない。

そして,事情聴取の結果作成された原告A1及び原告A2の自供書は,事情聴取終了後,被告の環境局職員がその供述内容の要点をとりまとめた書面をパソコンで作成し,その内容を読み聞かせて確認し,その書面を自供書に直筆で転記したものであり,前記事情聴取における自白の内容を正確に記載したものということができる。原告A2が知らない漢字が記載されている点についても,自供書が以上の経緯によって作成されたことにかんがみれば,不自然ではない。

よって,原告A1及び原告A2の事情聴取及び自供書における自白は信用することができるというべきである。

なお,原告らは,原告A3の陳述書(乙55)についても,既に被告の環境局の職員によって作成されていた書面を見せられ,これを転記するように言われた結果作成されたもので信用できないと主張するが,事情聴取摘録(乙54,56,72)及び陳述書の作成経緯は前記原告A1及び原告A2の自供書と同様であるし,前記自供書と異なり,原告A3の陳述書は,着服の事実を否認するものであるから,なおさら自己の自由な意思により作成されたものと推認できる。

3  そこで,次に,原告らについて,被告主張の着服の事実が認められるかについて個別に検討することにする。

(1)  原告A1

ア B1宅における着服の有無

原告A1がB1宅に死獣収集に行ったことは当事者間に争いがないところ(もっとも,原告A1は,回数については失念していると主張している。),証拠(乙15,78,証人D13,原告A1)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月7日,被告の環境局地球環境政策部環境総務課担当課長のD13とまち美化推進課担当課長のD14の訪問での聴取において,B1は,コンクールに出す犬をたくさん育てているので,これまで何度かセンターに収集を依頼したことがあるが,手数料は必ずその場で収集員に現金で支払ってきた,領収書もいつももらっていたと述べ,平成19年11月27日及び同年12月4日の2回にわたる被告の環境局循環型社会推進部まち美化推進課担当課長のD15の電話での聴取において,前に1回言ったことについては確信を持っており,思い込みではないと述べたこと,原告A1自身が,事情聴取や自供書において,着服の事実を自認していたことが認められ,以上によれば,原告A1が,日付け不詳の2度にわたり,B1宅において手数料合計9200円を着服したと認めることができる。

イ B2宅における着服の有無

原告A1がB2宅に死獣収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(乙16~19,53,証人B2,証人D3,原告A1)及び弁論の全趣旨によれば,平成17年9月10日にB2宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて無(料)に丸印が付されており(なお,その色は複写用のカーボンの色ではなく,収集前に変更されたとは考えにくい。),手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年8月8日,被告の環境局循環型社会推進部まち美化推進課課長補佐のD3とまち美化推進課主任(当時)のD16の訪問での聴取において,B2は,猫をたくさん飼っており,これまで数多くセンターに収集を依頼しているが,手数料は,収集のたびに必ず4600円を収集員に支払っている,領収書はもらったり,もらわなかったりであると述べたこと,平成19年12月5日付け調査票において,B2は,収集日は覚えていないが,ペットの猫の収集を依頼したことがある,手数料4600円を支払った,領収書はもらった(現在は残っていない),3回ほど領収書をもらっていないこともあるとしていること,この点については,証人尋問においても,領収書をもらわなかった回数を2回とするほかは,一貫していること,原告A1も,日付けは若干齟齬するものの,事情聴取や自供書において,着服の事実を自認していたことが認められ,以上によれば,原告A1が,平成17年9月10日,B2宅において手数料4600円を着服したと認めることができる。

ウ B3宅における着服の有無

原告A1がB3宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(甲18,第1事件及び第4事件甲32,乙16,20,21,53)及び弁論の全趣旨によれば,平成15年10月30日にB3宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月5日付け陳述書において,B3は,センターに平成15年10月30日も含めて3回,犬の手数料として4600円を支払った,領収書はもらっていたが,いらないと言ったこともあるとしていること,しかしながら,他方で平成19年8月18日,原告A1の訪問での聴取において,B3は,平成15年10月30日には犬の収集を依頼したことはないと述べ,平成19年8月24日付け陳述書にも同旨の記載のあることが認められる。

同月18日の原告A1の訪問での聴取内容及び同月24日付け陳述書は,B3が飼い犬の治療をした獣医に治療記録を確認してもらった上で日付けを確認したものであり,その内容は正確で信用性が高いというべきであり,以上によれば,原告A1のB3宅における着服の事実を認めることはできない。

エ B4宅における着服の有無

原告A1がB4宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(乙16,22,23,53,79,証人D13)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年11月29日にB4宅で死獣収集(犬)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて無(料)に丸印が付されており(なお,その色は複写されたカーボンの色であり,収集前に記載されたと考えられる。),手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年8月12日,D13の訪問での聴取において,B4は,平成16年11月ころに飼い犬が死んだのでセンターに収集を依頼したことがあり,収集の際に手数料も支払った,領収書については手元に残っていないと述べたこと,平成19年11月27日,D15の電話での聴取において,B4の妻は,前回述べたことがすべてであり,ペットを無料で収集してもらうことは絶対になく,決められたとおり手数料を支払ったと述べたことが認められ,以上によれば,原告A1が,平成16年11月29日,B4宅において手数料4600円を着服したと認めることができる。

オ B5宅における着服の有無

原告A1がB5宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(甲19,第1事件及び第4事件甲32,乙16,24,25,53)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年11月22日にB5宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月14日付け陳述書において,B5は,飼っていた猫が死んだので,平成16年11月22日にセンターに収集を依頼した,手数料4600円を現金で支払った,領収書をもらっているとしていること,しかしながら,他方で平成19年8月18日,原告A1の訪問での聴取において,B5は,平成16年11月22日に収集を依頼したか,その収集が有料扱いだったか無料扱いだったか,よく覚えていないとし,領収書についても,手数料を支払ったときに領収書をもらわなかったことが2度あるが,その収集員は,原告A1とは背丈が明らかに違うと述べ,平成19年8月23日付け陳述書にも同旨の記載のあることが認められ,以上によれば,原告A1のB5宅における着服の事実を認めることはできない。

カ B6宅における着服の有無

原告A1がB6宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(甲10,12,第1事件及び第4事件甲32,乙16,26,27,53,80)及び弁論の全趣旨によれば,平成17年10月24日にB6宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月15日付け陳述書において,B6は,センターにこれまで3回収集を依頼したことがあり,3回のうち2回が犬で,1回がハムスターだった,平成17年10月24日,犬1匹を引き取ってもらった,収集に来てもらう都度,毎回必ず手数料4600円を現金で支払っている,領収書をもらったかどうかは覚えていないとしていること,しかしながら,他方で平成19年7月8日,原告ら代理人の訪問での聴取において,B6は,今まで4回ほど収集に来てもらったが,最初の3回は有料だった,最後に収集に来てもらったのは平成17年10月24日だったが,この日は,車の下で飼っていない猫が死んでいたので,センターに連絡して無料で引き取ってもらったと述べ,平成19年7月8日付け陳述書にも同旨の記載のあること,平成19年12月5日,被告の総務局監察室監察係長のD17の電話での聴取において,B6は,具体的にそれぞれの収集日を覚えているわけではなく,収集の前後関係などから平成17年に収集を依頼したのが野良猫だったと思うと述べたことが認められる。

以上によれば,B6の記憶にはあいまいな部分がある上,平成17年10月24日の収集については,これが野良猫であった可能性が否定できないといわざるを得ず,原告A1のB6宅における着服の事実を認めることはできない。

キ B7宅における着服の有無

懲戒免職処分の理由の1つとなっている原告A1のB7宅における着服について,同事実がないことは当事者間に争いがない。

ク B8宅における着服の有無

原告A1がB8宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第4事件甲31,乙38,39,53,証人B8,原告A1)及び弁論の全趣旨によれば,平成15年6月14日にB8宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,無(料)に丸印が付されており(なお,その色は複写用のカーボンの色ではなく,収集前に記載されたとは考えにくい。),手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があり,住所欄に死獣が箱に入れられていることを表す「箱入」との記載があること(「箱入」あるいは後記の「ネコハコ」の記載について,確かに,無料収集の意味で記載する収集員もいたことはうかがえるが,すべての収集員がこのような意味で記載していたことまでは認められない。),被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月19日付け調査票において,B8は,平成15年6月ころ,ペットの猫の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,平成15年から平成16年の6~7月ころに野良猫を手数料を支払って収集してもらった,領収書はもらっていないとしていること,平成20年7月29日,原告ら代理人の電話での聴取において,B8は,平成15年6月にペットの猫が死亡し,手数料を支払い,領収書を受け取った,同居の母C4は猫好きでよく野良猫の死体を見つけると被告に電話をしていた,調査票を書いた記憶がないと述べたこと,証人尋問において,B8は,平成15年6月の収集で領収書をもらったと証言し,また,猫の引取り自体を母親に任せることもあり,同一性識別のために出廷した原告A1を含む6人について,収集員はもっと年をとっており,60歳の退職前くらいであった,非常に年をとっていて印象に残っていると証言したことが認められる。

以上によれば,B8のいう有料の収集が平成15年6月14日とは別の日の収集であった可能性を否定できず,原告A1の着服の事実を認めることはできない。

ケ B9宅における着服の有無

原告A1がB9宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第4事件甲31,乙40,41,53,81)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年11月9日にB9宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月14日付け調査票において,B9は,平成16年11月ころ,ペットの猫の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない)としていること,平成19年12月4日付け陳述書において,B9は,センターにこれまでにペットの猫2回と野良猫1回の合計3回,収集を依頼しており,ペットの猫については,平成16年11月ころとその1年後くらいに依頼したものであり,手数料は2回とも支払った,領収書はもらったように記憶しているが,手元には残っていない,野良猫を無料で依頼したのは,最近(今年の春か去年)であるとしていること,しかしながら,平成20年7月26日,原告ら代理人の電話での聴取において,B9の妻C5は,前記調査票や陳述書は自らが書いたものであり,猫の収集依頼をしたのは自分である,猫の収集はもう1回野良猫の収集を無料で依頼したのを思い出した,時期は平成16年11月かどうかは覚えていないが,平成18年春よりも前のことであると述べたことが認められる。

以上によれば,平成16年11月9日の収集がペットの猫の収集であった可能性はないとはいえないものの,野良猫の収集であった可能性も否定できず,原告A1の着服の事実を認めることはできない。

コ 賀茂女子学生会館における着服の有無

原告A1が賀茂女子学生会館に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第4事件甲31,乙42,43,53)及び弁論の全趣旨によれば,平成17年3月15日に賀茂女子学生会館で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて無(料)に丸印が付されており(なお,その色は複写用のカーボンの色ではなく,収集前に変更されたとは考えにくい。),手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月5日付け調査票において,C1は,平成17年3月,えさを与えていた野良犬又は野良猫の収集を依頼した,手数料5000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成20年7月31日,原告ら代理人の電話での聴取において,C1の妹C6もこれと矛盾のない話をしていたことが認められ,以上によれば,原告A1が,平成17年3月15日,賀茂女子学生会館において5000円のうちの手数料4600円を着服したと認めることができる。

サ B10宅における着服の有無

原告A1がB10宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第4事件甲31,乙44,45,53,82)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年4月29日にB10宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月7日付け調査票において,B10は,収集日は覚えていないが,ペットの猫4回(1回目白黒,2回目黒,3回目白黒,4回目黒茶)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない)とし,平成19年12月12日付け陳述書においても,これまでセンターに飼っていた猫の収集を合計で5回依頼したことがある,手数料はいつも4600円を支払った,領収書はもらったと思うが,残っていない,その他に,近所で死んでいた野良猫の収集を2回依頼し,無料で収集してもらったが,4~5年以上も前のことであるとしていること,しかしながら,平成20年7月30日,原告ら代理人の電話聴取において,B10は,近所には野良猫が多く,これまでに3回ほど野良猫の死体収集を依頼したことがあるが,そのうち2回は,前記陳述書には4~5年以上も前のこととあるらしいが,時期ははっきり覚えていない,3~4年以上前のことの可能性もあり,平成16年4月29日に収集依頼しているのであれば,これが野良猫の収集依頼だった可能性もあると述べたことが認められる。

以上によれば,平成16年4月29日の収集が,飼い猫の収集だったか,野良猫の収集だったか不明といわざるを得ず,原告A1の着服の事実を認めることはできない。

シ B11宅における着服の有無

原告A1がB11宅に収集に行ったことは当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第4事件甲31,乙46,47,53)及び弁論の全趣旨によれば,平成17年1月31日にB11宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成18年12月13日付け調査票において,B11は,平成17年冬ころ,ペットの猫(黒とら)の収集を依頼した,金額は覚えていないが,手数料をその場で収集員に支払った,領収書をもらったかどうかは覚えていないとしていること,しかしながら,平成20年7月31日,原告ら代理人の電話での聴取において,B11は,ペットの犬の死体をセンターに持参したことが1回ある,もう1回犬を預けたが,持参したか収集に来てもらったかは覚えていない,これまでに近所で死んでいた野良猫の収集を電話で頼んだことが2回ある,そのうちの1回が平成17年1月31日かもしれないが,正確な記憶ではない,この2回のうち,どちらかで外に出て死獣の入った箱を渡している,収集員に会ったときには,人に物事を頼んだ以上は,金銭を渡していると思うが金額は覚えていないと述べ,さらに,平成20年8月5日,ペットの猫の収集を依頼したことはない,600円という細かい金員を渡していないと思うと述べたことが認められる。

以上によれば,平成17年1月31日の収集が無料であった可能性も否定できず,原告A1の着服の事実を認めることはできない。

(2)  原告A2

ア B1宅における着服の有無

原告A2が平成17年2月5日に収集に行ったこと,無料扱いの車載処理票を作成したこと及びセンターに入金しなかったことは当事者間に争いがないところ,証拠(乙15,30,78,証人D13,証人D18,原告A2)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月7日,D13とD14の訪問での聴取において,B1は,これまで収集を依頼したときには毎回必ず手数料を支払ってきたと述べ,同年9月17日,被告の環境局循環型社会推進部長のD18及びまち美化推進課職員のD19らの訪問での聴取においても,平成17年2月上旬にグレースという名前のコリー犬の収集を依頼したことがあり,収集員に4600円の手数料を支払ったとし,これまで無料で収集を依頼したことはないと述べ,同人の同日の記憶はかなり詳細なものであったこと,平成19年11月27日及び同年12月4日のD15の電話での聴取において,B1は,前に1回言ったことについては確信をもっており,思い込みではない,平成17年2月に死んだグレースという名前の犬については,警察に何度も聞かれ,調書も作成されたように記憶に間違いはない,収集車は西の方に走り去ったなどと述べたこと,原告A2自身が事情聴取や自供書において,B1宅の収集に関し,2度にわたる着服の事実を自認していたことが認められ,以上の事実によれば,原告A2が,平成17年2月5日及び日付け不詳の2度にわたり,B1宅において着服したと認めることができる。

イ B12宅における着服の有無

被告A2が平成16年11月10日ころにB12宅に収集に行ったこと,無料扱いの複写処理票を使用したこと及びセンターに入金しなかったことは当事者間に争いがないところ,証拠(甲10,13,17,第1事件及び第3事件甲32,乙32,原告A2)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月8日,被告の環境局地球環境政策部環境総務課担当係長のD20の訪問での聴取において,B12は,手数料は,収集のたびに毎回必ずその場で収集員に現金で支払っていると述べたこと,しかしながら,平成19年7月8日の原告ら代理人の訪問での聴取において,B12は,手数料は必ず渡しているし,領収書ももらっている,猫を無断で自宅に捨てに来る者もおり,誰かが自分の名前を使って被告に電話して,死んだ猫を自宅の前に置いておく人がいるかもしれない,聴取に同行していた原告A2を見て,よく覚えていないと述べ,同日付け陳述書にも同旨の記載のあること,また,同日の原告ら代理人の聴取において,B12の子で同居のC7は,今までで一度だけ無料で収集してもらったことがあり,このときは家の前のフェンス越しに猫の遺体を渡したが,収集員に猫が死んでいた様子を説明したところ,それであれば無料扱いにするので手数料は受け取れないと言われ,結局,手数料を渡さなかったと述べ,同月13日付け陳述書にも同旨の記載のあるほか,原告A2はどこかで見たような気がするとの記載もあることが認められる。

以上によれば,平成16年11月10日の収集がC7の依頼によるものである可能性も否定できず,原告A2の着服の事実を認めることはできない。

ウ B13宅における着服の有無

原告A2が平成15年8月12日ころにB13宅において猫の死体を収集したこと,複写処理票の記載を有料扱いから無料扱いにしたこと及びセンターに入金しなかったことは当事者間に争いがないところ,証拠(甲16,第1事件及び第3事件甲31,32,第1事件及び第4事件甲34,乙33,34,83,121,証人D4,原告A2)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年12月11日付け陳述書において,B13は,平成15年8月12日,センターに猫の収集を依頼し,4600円を支払った,領収書をもらったかどうかは覚えていないとしていること,しかしながら,平成19年6月27日,原告ら代理人の電話での聴取において,B13は,被告の職員に署名した文書を渡したことはあるが,その内容は覚えていない,猫の引取り依頼をしたときに,収集員に金銭を支払ったかどうか,収集員に会ったかも記憶がはっきりしないなどと述べたこと,同年11月29日,被告の環境局環境企画部環境総務課主任のD21の訪問での聴取において,B13は,センターに電話したことは覚えているが,そのときのやりとりまでは覚えていない,収集の際は猫を箱に入れておいたところ,収集員が2人で来て持って帰った,その際に立ち会って手数料を支払った,手数料が4600円だったかは覚えていないと述べ,平成20年8月26日,原告ら代理人の電話での聴取において,何年も前のことであり,猫の引取りを頼んだとき,猫の入った箱を収集員に会って渡したか,手数料を支払ったか,はっきりした記憶はない,そのように被告の職員にも話したなどと述べたこと,原告A2は,処理票に記載された町名に誤りがあり,同じ地図上であったために誤った場所に収集に赴いた後,受付者との連絡で正しい収集先に向かった,B13宅において応答がなく,仕方なく無料扱いに変更したと弁解しているところ,これは受付者のD4の証言や同人の陳述書の記載とも矛盾しないことが認められる。

以上によれば,平成18年12月11日付け陳述書の内容の信用性については疑いが残るものといわざるを得ず,原告A2の着服の事実を認めることはできない。

エ B14宅における着服の有無

原告A2が平成17年2月15日ころに野良猫の死体を収集したこと,無料扱いの車載処理票を作成したこと及びセンターに入金しなかったことについては当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第3事件甲32,乙36,原告A2)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月12日,D20の訪問での聴取において,B14は,近所の風呂屋の前で弱っていた野良猫を自宅に持ち帰ったが,一晩経つと死んでしまったので,近所の人に相談したところ,被告に電話をすれば無料で引き取ってもらえると言われ,センターに電話して行き倒れの猫である旨伝えると,手数料3500円が必要と言われた,収集員に3500円とジュースを渡した,日時は正確に覚えていないが,大変寒い時期であった旨述べたことが認められる。

前記B14から聴取したとされる内容は詳細なものであり,不自然・不合理な点はなく,また,ことさら作為を認めることもできない。

この点,原告A2は電話に出たのが自分ではないとする。確かに,本件では車載処理票が作成されているが,仮に原告A2が電話に出ていないとしても,前記認定のとおり3500円を受け取っており,着服ないし詐取の意思がなかったということはできない。金額が高額であることからしても,これがチップであったと解することもできない。

以上によれば,原告A2が平成17年2月15日,B14宅において手数料3500円を着服(ないし詐取)したと認めることができる。

オ B15宅における着服の有無

原告A2が平成15年4月25日ころにB15の向かいの男性から猫の死体を収集したこと及び被告に手数料は収入されていないことは当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第3事件甲31,32,乙48~50,84,85)及び弁論の全趣旨によれば,同日にB15宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,無(料)に丸印が付されており,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A2の印影があること,住所欄に死獣が箱に入れられていることを表す「箱入」との記載があること,平成18年12月5日付け調査票において,B15は,平成15年4月ころ,ペットの猫(茶トラ,ミケ,白)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,時間的に留守になるので向かいのC2に依頼したとしていること,平成18年12月5日付け調査票において,C2は,収集日は覚えていないが,ペットの猫の収集を依頼し,手数料5000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成19年12月12日付け陳述書において,B15は,平成15年4月ころに飼っていた猫が3匹ほど続いて死んだので,そのころの収集であれば,野良猫ではなく,飼っていた猫だと思う,有料での収集の際は,いつもC2に猫の入った箱と手数料を預けていた,手数料は封筒に5000円を入れていた,おつりはチップとして収集員に渡すように言っていた,領収書については,C2にいらないと言っていたので,ほとんどもらっていないとしていること,平成19年12月12日付け陳述書において,C2は,B15に代わって,猫が入った箱と手数料を預かって収集員に渡したことが何回かある,手数料は5000円を封筒に入れて預かっているので,そのまま渡しておつりは受け取っていない,領収書については,収集員に入らないと言っているが,出す人と出さない人がいた,いつごろかということについては分からないとしていること,しかしながら,平成20年7月31日,原告ら代理人の電話での聴取において,B15は,ここ17~8年間,猫をたくさん飼っている,平成15年春ころ,3~4か月の間に3匹の飼い猫が死んだことがあった,同年4月25日に引き取ってもらったかどうか,そのときの猫が飼い猫だったか,車にひかれた猫だったかは覚えていない,飼い猫の場合には,封筒に5000円ほどを入れてC2に預けていたが,野良猫の場合には無料なので金銭を預けたことはないと述べ,他方,C2の妻C8は,B15は飼い猫も野良猫も箱に詰めて預けていくが,野良猫の場合には,「これはノラちゃんやで。」と断りを入れ,このときには金銭の入った封筒を預けられることはなかったと述べ,C2も,B15から預かった猫を被告に引き取ってもらうとき,箱に金銭入りの封筒があるときもないときもあり,平成15年4月25日に猫の収集があったかどうか,そのときに猫の箱に封筒が添えられていたかどうかは覚えていないと述べたことが認められ,以上によれば,同日の収集が野良猫の収集であった可能性も否定できず,原告A2の着服の事実を認めることはできない。

カ B16宅における着服の有無

原告A2が平成17年12月14日ころに猫の死体を収集したこと,無料扱いの車載処理票を作成したこと,センターに入金しなかったことは当事者間に争いがないところ,証拠(第1事件及び第3事件甲31,32,乙51,86)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年12月7日付け調査票において,B16は,平成17年12月14日,ペットの猫の収集を依頼した,手数料1000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,このことは日記に記載があるとしていること,平成19年12月12日付け陳述書において,B16は,これまでセンターに猫の収集を何回も依頼している,平成17年12月14日は自分が対応した,日記に書いてあるので間違いない,収集の際にはいつも手数料を払っているので,そのときも収集員に手数料を払おうとしたところ,「あなたの家はいつも収集してもらっているので,ただにしてあげる。」と言われた,そこでお茶でも飲んでくださいと言って,1000円を渡したとしていること,しかしながら,平成20年8月1日,原告ら代理人の電話での聴取において,B16は,平成17年12月14日に猫の死体を家の近くの路上で被告の収集員に引き渡し,1000円を渡したことは日記に書いていた,そのころ,野良猫も含め,家には15~16匹の猫がいた,いつも猫の死体を箱に詰め,被告に電話していたのは妻であり,その日も妻が電話をし,妻に言われて外で猫の入った箱と金銭を渡そうとすると,収集員が「今日は結構です。」と言って受け取らなかったので,「お茶でも飲んで。」と言って1000円を渡した,猫が飼い猫だったのか,野良猫だったのかは分からないと述べたことが認められ,以上によれば,同日の収集は野良猫の無料の収集であった可能性があるといわざるを得ず,原告A2の着服の事実を認めることはできない。

(3)  原告A3

ア B24宅における着服の有無

証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,乙122,123,174~176,177の1~19,178,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,原告A3は本人尋問において平成15年4月14日にB24宅を訪問したことを認める供述をしており,陳述書(甲39)にも同旨の記載があること,同日にB24宅(いこい荘)で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月24日付け調査票において,B24は,平成15年4月ころ,ペットの猫の収集を依頼した,手数料3000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,しかしながら,平成20年8月2日,原告ら代理人の電話での聴取において,B24は,これまで5~6回,被告に「家で猫が死んだ。」とか,「外で猫が死んでいた。」と電話して引き取ってもらった,電話したとき,「飼い猫か野良猫か。」との質問もなく,「お金を払ってください。」と言われたこともなかった,これまでの5~6回のうち,引取りに来た職員に3000円ほどを払ってくれと言われて,支払ったことが2~3回ある,2~3回はただのときがあった,これまで3000円か無料なので,平成15年4月のときは,手数料を支払わなかったときのことだと思うと述べたことが認められる。

以上によれば,B24宅における収集は無料であった可能性が否定できず,原告A3の着服の事実を認めることができない。

イ B25宅における着服の有無

証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,乙121,124,125,179,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,原告A3は本人尋問において平成15年9月26日にB25宅を訪問したことを認める供述をしており,陳述書(甲39)にも同旨の記載があること,同月10日の原告A3の担当は東コースであること,同月26日にB25宅(h")で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に轢死であることを示す「ベチャ」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月19日付け調査票において,B25は,平成15年9月10日,ペットの犬(アラスカンマラミュート)の収集を依頼した,手数料5000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない)としていること,平成15年8月から同年10月までの間に,B25宅から死獣を収集した処理票は他に見つからなかったこと,しかしながら,平成20年8月1日,原告ら代理人の電話での聴取において,B25は,ペットの犬の収集をしてもらった日は平成15年9月10日である,i",j"への旅行に出発する前日に犬が死亡し,出発当日に引き取ってもらった,手元の旅行時の写真の日付が9月11日なので,収集日が9月10日であることは間違いない,店(h"本店)では5~6人の従業員が交替でいつも2~3人が店員として働いている,これらの誰かが通報したかもしれないし,第三者が死体を発見して場所として「k"正面のh"」と告げたかもしれないと述べたことが認められる。

以上によれば,平成15年9月26日のB25宅における収集は無料であった可能性が否定できず,原告A3の着服の事実を認めることができない。

ウ 原告A3が収集に行ったことを否定している各市民宅における着服の有無

(ア) B17宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B17宅の収集について,収集の連絡を受けた際,D7が自宅に用事があると言っていたことを思い出し,D7の自宅の近所であるB17宅の応援を頼んだとの記載がある。

また,証拠(甲15,20,第2事件及び第5事件甲35,乙57,58,71,73,103,104の1~8,105~108,278,279)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年5月1日の原告A3の担当は西コース,D7の担当は東コースで,B17宅は西コースの収集先であること,D7が事務所に戻った時刻が午後2時であるのに対し,原告A3が戻った時間は午後2時20分であること,B17宅は収集の境界線からは遠い場所にあること,同日にB17宅で死獣収集(ハムスター)を行った旨の車載処理票があること,同票の手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,原告A3の名前のある同日の死獣収集日報,処理票等があること,原告A3担当分の死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数はほぼ一致している(もっとも,処理票の1枚は取扱者がD7となっている。)こと,原告A3は同日付けで左京まち美化事務所勤務を命じられていること,平成18年8月9日,D16とD21の訪問での聴取において,B17は,以前飼っていたハムスターが死んで,家庭ごみとして捨てるわけにもいかないと思い,センターに電話をして,引取りに来てもらった,その場で収集員に4600円を支払った,その際に「新たに買うよりも高くつくなあ。」との話をした,領収書をもらったかどうかについては覚えていない,収集に来た職員がどの職員か特定はできないと述べたこと,平成19年1月10日付け陳述書において,B17は,飼っていたハムスターが死んだので平成16年5月1日にセンターに収集してもらった,収集に来てもらったときに手数料として4600円を支払った,領収書をもらったかどうかは覚えていないとしていること,平成19年7月17日,原告ら代理人の訪問での聴取において,B17は,前記陳述書を提出したことは覚えている,聴取に同行していた原告A3を見たことがあるかどうかは分からない,ハムスターを預けた者かどうかは分からない,2~3年前に脳梗塞を患ったことがあり,記憶がはっきりしないと述べ,同年11月27日,D16とD21の訪問での聴取において,脳梗塞にかかったのは事実であるが,その影響で記憶があいまいになっているということは全くなく,当時,ハムスターの収集を依頼したことや手数料を支払ったことははっきりと覚えている,ハムスターは1匹しか飼ったことがないと述べたことが認められる。

(イ) B18宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B18宅の収集について,収集件数が多く,時間がかかったため,南コースを担当していたD7に行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(甲10,第2事件及び第5事件甲35,乙59,60,71,87,88,89の1~11,90,190,191,283,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成15年12月25日の原告A3の担当は西コース,D7の担当は南コースで,B18宅は西コースの収集先であること,B18宅は同日の南コースの収集先のいずれからも大きく離れており,B18宅よりも南コースに近い西コースの収集先が他に複数あったこと,もっとも,B18宅はD7宅の近くにあること,同日にB18宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,無(料)に丸印が付されており,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,原告A3担当分の死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数は一致していること,平成19年1月10日付け陳述書において,B18は,平成15年12月26日,センターに死んだ犬(シベリアンハスキー)を収集してもらった,2人で来たので手数料4600円の外にたばこ代として2000円を支払った,領収書はもらったような気がするが,はっきりとは覚えていないとしていること,平成19年7月8日,原告ら代理人の訪問での聴取において,B18及びC9は,平成15年12月が最後の収集依頼だった,これまで手数料は支払っているし,たばこ代も2000円程度渡している,聴取に同行していた原告A3を見て,平成15年12月に来た収集員とは顔が違う,もう少し年配で背が低く,少し太めであったと述べたこと,原告A3も,B18,C9についても,B18宅についても覚えがなく,全く印象がないと述べたことが認められる。

(ウ) B19宅

原告A3の本人尋問の結果及び陳述書(甲39)には,原告A3が,B19宅の収集について,当日は収集件数が多く,時間がかかったため,D6かD7に代わりに行ってもらったとの供述及び記載がある。

証拠(甲10,11,第2事件及び第5事件甲35,乙61,62,71,91,92,93の1~12,94,212,213,286,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年1月20日の原告A3の担当は西コース,D6の担当は東コース,D7の担当は南コースで,B19宅は西コースの収集先であること,原告A3は,B19宅と同じ町内の有料収集に行っていること,B19宅は収集の境界線からはやや離れていること,同日にB19宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,無(料)に丸印が付されており,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,原告A3担当分の死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数は一致していること,平成19年1月10日付け陳述書において,B19は,平成16年1月20日,センターに死んだ猫を収集してもらった,正確な金額までは覚えていないが,手数料を支払った,そのとき「領収書はいりますか。」と尋ねられ,必要がなかったのでもらわなかったとしていること,原告ら代理人の平成19年7月8日の訪問での聴取及び同月10日の電話での聴取において,B19は,収集員が,猫の遺体に対して深々と礼をして拝むなど,非常に大事に扱ってくれた,数珠を手に持っていた,B19自身がエホバの証人を信仰していることから数珠をして拝まれることに違和感を感じたこともあり,そのときの様子はよく覚えている,手数料は支払ったが,領収書はもらっていない,聴取に同行していた原告A3を見て,この人ではないと思う,もっと年配で,色黒であり,顔,特に目の印象が異なる,被告の職員が事情を聴きに来たとき,男性の上半身の写真を数枚見せられたが,よく分からず,消去法でこの人かなと写真を示したなどと述べたこと,原告A3も,B19についても,B19宅についても覚えがないと述べていること,原告A3が収集の際に手首に数珠をしたことはないことが認められる。

(エ) B20宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B20宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB20宅から離れた場所にいたため,D6かD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(甲10,第2事件及び第5事件甲35,乙63,64,71,95,96,97の1~11,98,266,267,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月31日の原告A3の担当は西コース,D6の担当は東コース,D7の担当は南コースで,B20宅は西コースの収集先だったこと,B20宅は他の西コースの収集先と近接した場所にあること,同日にB20宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に,猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,「ム」「スミ」の筆跡は原告A3のものであること,被告に手数料は収入されていないこと,原告A3担当分の死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数は一致していること,平成19年1月10日付け陳述書において,B20は,平成16年3月31日,センターに死んだ犬を収集してもらった,手数料は4000円くらいで,封筒に入れて支払ったと思うが,はっきりとは覚えていない,領収書をもらったかどうかは覚えていないとしていること,平成19年7月8日,原告ら代理人の訪問での聴取において,C10は,収集員は,丁寧に拝み,非常に大事に扱ってくれた,手首に数珠を架けていた,手数料は支払ったが,領収書はもらったかどうか覚えていない,聴取に同行していた原告A3を見て,よく覚えていないと述べていること,原告A3も,C10についても,B20宅についても覚えがないと述べていること,原告A3が収集の際に手首に数珠をしたことがないことが認められる。

(オ) B21宅

陳述書(甲39)には,原告A3は,B21宅の収集について,平成16年3月22日は東コースを担当していたが,既に事務所近くまで帰ってきていたため,西コースを担当していたD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

証拠(第2事件及び第5事件甲35,乙65,66,71,74,75の1~5,109~111,112の1~14,113,252,253,証人B21,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月22日の原告A3の担当は東コース,D7の担当は西コースであり,B21宅は東コースの収集先であること,B21宅の所在地は他の収集先と近接した場所にあること,B21宅は収集の境界線から遠い場所にあること,同日にB21宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)の丸印が消去されて,無(料)に丸印が付されており,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,原告A3担当分の死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数は一致していること,平成19年1月22日付け調査票において,B21は,平成16年3月22日,ペットの猫(雑,オス)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとし,平成19年6月27日付け陳述書において,飼っていたペットの猫が死んだので,平成16年3月22日,センターに収集してもらった,収集に来てもらったときに手数料4600円を支払ったが,領収書はもらっていない,同日の収集のときだけは手数料を支払った後,領収書をもらおうと思っていたのに,すぐに職員が帰ってしまったので,領収書がもらえなかったのを覚えているとしていること,実際にも,B21はこの日の領収書を保管していないこと,平成19年12月19日,D17とD21の訪問での聴取において,B21は,仕事や家庭上の支払についてはメモを残すので平成16年3月22日の収集を特定できたと述べたこと,証人尋問において,B21は同旨の証言をしたが,同一性識別のために出廷した原告A3を含む6人のうちから原告A3を特定できなかったこと,本人尋問において,原告A3もB21を見た記憶がないと供述したことが認められる。

(カ) B22宅

原告A3の本人尋問の結果及び陳述書(甲39)には,原告A3が,B22宅の収集について,当日は収集件数が多く,また,収集依頼の連絡があった際,事務所に待機していたD6が収集に出かけるということであったため,D6に依頼した,D6の自宅がl"であり,D6が自宅に用事があると言っていたため依頼したとの供述及び記載がある。

また,証拠(甲10,39,第2事件及び第5事件甲35,乙67,68,71,99,100,101の1~15,102,219,220,287,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年2月9日の原告A3の担当は南コース,D6は応援であり,B22宅は南コースの収集先であったこと,当時のD6の自宅は,当日,D6が担当した収集先の付近にあり,また,当該収集先の周辺には,B22宅よりも近い南コースの収集先が複数存在していたこと,当日,原告A3は,午後2時15分に事務所に戻っており,D6は午後3時に出庫し,午後4時に入庫していること,この間のD6の収集件数は作業日報上1件のみであること,同日にB22宅で死獣収集(犬)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)の丸印が消去されて,無(料)に丸印が付されており,手数料欄の「4600円」が消去されて,無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,原告A3担当分の死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数は一致していること,平成19年1月23日付け調査票において,B22は,平成16年2月9日,ペットの犬の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成19年7月8日,原告ら代理人の訪問での聴取において,B22らは,10年以上飼っていたヨークシャーテリアであり,思い入れがあった,平成16年2月9日,3人で見送ったが,収集員は非常に丁寧だった,手数料は払っており,寸志も渡している,聴取に同行していた原告A3を見て,B22らは,違う人のように見える,もう少し年配であった,めがねを掛けていたと思うなどと述べたこと,原告A3も,B22やB22宅に覚えがなく,収集の際の記憶もないなどと述べたことが認められる。

(キ) B23宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B23宅の収集について,当日,西コースを担当しており,収集の連絡を受けたことは確かであるが,東コースの人にヘルプを頼んだ可能性が高いとの記載がある。

証拠(第2事件及び第5事件甲35,乙69~71,114~116,117の1~17,118,264,265,証人B23,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月29日の原告A3の担当は西コース,D6の担当は東コースであり,B23宅は西コースの収集先であったこと,B23宅の周りに原告A3の担当収集先は複数存在していたこと,同日にB23宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,「ム」「スミ」の筆跡は原告A3のものであること,被告に手数料は収入されていないこと,原告A3担当分の死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数は一致していること,平成19年1月24日付け調査票において,B23(ないしB23の妻)は,平成16年3月ころ,ペットの猫(ヒマラヤン,16年飼っていた)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,別に3000円支払ったとしていること,平成19年12月6日,D16の訪問での聴取において,B23は,センターに収集を依頼したのはペットの猫の1度だけであり,野良猫の収集を依頼したことはない,収集日は特定できないと述べたこと,証人尋問において,収集に来た人の身長,体格,年齢としてB23が証言した内容が原告A3のものと概ね一致したものの,同一性の識別証言を得る目的で当日在廷させた原告A3を含む6人の人から原告A3を特定できなかったこと,当時の状況についてもあいまいな証言にとどまったこと,本人尋問において,原告A3もB23を見た記憶がないと供述したことが認められる。

(ク) B26宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B26宅の収集について,平成15年9月29日は収集件数が多く,また,収集範囲も広かったため,南コースを担当していたD6に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,34,乙126,127,180~182,183の1~17,184)及び弁論の全趣旨によれば,同日の原告A3の担当は東コース,D6の担当は南コースであり,B26宅は東コースの収集先であったこと,B26宅は同日の南コースの収集先のいずれからも大きく離れており,B26宅よりも南コースに近い東コースの収集先が他に多数あったこと,同日にB26宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月19日付け調査票において,B26は,平成15年9月,ペットの犬(キャバリヤ,メス,茶白)の収集を依頼した,手数料8000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成20年8月1日,原告ら代理人の電話での聴取において,B26は,調査票については,被告の職員に対し,記憶がはっきりしないので記録にしないでほしいと伝えた,飼い犬が死んだときに被告に収集依頼をしたこと,最後が平成15年9月であることは間違いないこと,そのころ,猫も飼っており,飼い猫が死んだときや路上で猫の死骸を見つけたときは被告に収集依頼をしている,野良猫が路上で死んでいるときは無料扱いになることは知っており,今でも年に3回程度,野良猫の収集依頼をしている,平成15年9月29日に飼い犬の収集を頼んだ日に,野良猫の収集依頼をしたことはないと思う,収集員は身長の低い,小太りの人だったと思うと述べ,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,聴取に同行していた原告A3を見て,収集に来ていた人はこの人とは全然違う,もっと年がいっていたし,もっと太っていた,背丈は低かったと述べたこと,原告A3もB26宅に来たことがないと述べ,また,B26宅への道のりも分からなかったこと,B26宅の車載処理票は,原告A3が作成した他の処理票と比較すると,収集先を分かりやすくするために原告A3が記載している「A-1」「D-1」などの表記がないことが認められる。

(ケ) B27宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B27宅の収集について,平成15年12月16日の収集に時間がかかったため,東コースを担当していたD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,乙128,129,185~187,188の1~15,189,282,283,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成15年12月16日の原告A3の担当は西コース,D7の担当は東コースであり,B27宅は西コースの収集先であったこと,B27宅は東コースから大きく離れた場所にあり,B27宅よりも東コースに近い収集先が複数あること,B27宅の付近にある自然幼稚園の収集の複写処理票の取扱者名は原告A3であること,同日にB27宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて,無(料)に丸印が付されており,「犬」が消去されて「猫」と記載されていること,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B27は,平成15年12月ころ,ペットの犬(シェルティー,20kg前後)の収集を依頼した,手数料5000いくらをその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,大きさによって金額が変わる,中型犬なので5000いくらと言われた,高いと思った記憶があるとしていること,平成20年7月26日,原告ら代理人の電話での聴取において,B27は,書類は市職員が書いた,収集員の顔も覚えていない,時期も覚えていないと述べたことが認められる。

(コ) B28宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B28宅の収集について,同日は南コースを担当したがB28宅に行った記憶がないこと等を理由に収集したのは自分ではないとの記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,乙130~132,192~194,195の1~9,196)及び弁論の全趣旨によれば,平成15年12月26日の原告A3の担当は南コース,D7の担当は東コース,原告A2の担当は西コースであり,B28宅は南コースの収集先であったこと,B28宅は南コースの中ほどに位置しており,他のコースからは大きく離れていること,同日にB28宅で死獣収集(犬)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて,無(料)に丸印が付されていること,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B28は,平成15年12月26日にペットの犬の収集を依頼した,手数料2000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,収集員はやさしい感じの茶色の毛髪の若い人だったとし,平成19年12月4日付け陳述書において,センターに平成15年11月28日と同年12月26日の2回,収集を依頼した,ペットのつがいの犬で,11月28日はメスの犬,12月26日はオスの犬だった,娘がかわいがっており,ひと月の間に2匹も相次いで死んだので記憶に残っている,手数料は1回目は4600円を支払って領収書をもらい,2回目は,気の毒なのでまけてあげると言われて,喜んで2000円を支払ったが,領収書はもらわなかった,収集員は,茶色の毛髪の若い,丁寧でやさしい感じの人だったとしていること,平成20年7月28日,原告ら代理人の電話での聴取において,B28は,実際に2回目の犬を収集員に渡したのは娘であると述べ,同年8月26日,娘は犬を預けた職員が茶色の毛髪で20歳代の若い人だったと話していると述べたこと,原告A3はB28宅を訪問した記憶がなく,茶色の毛髪にしたこともなく,平成15年当時は40歳代だったことが認められる。

(サ) B29宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B29宅の収集について,平成16年1月4日は応援で収集していたが,東コースを担当していたD7の件数が少なかったため,同人に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,34,乙133,134,197~199,200の1~10,201,284)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年1月4日の原告A3の担当は応援,D7の担当は東コースであり,B29宅は西コースの収集先であったこと,同日は収集件数が多く,通常3組であるところ4組が収集に出ていること,B29宅の付近の収集先の複数の処理票の取扱者名が原告A3であること,同日にB29宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて,無(料)に丸印が付され,「犬」が消去されて「猫」と記載されていること,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月25日付け調査票において,B29は,平成16年1月2日にペットの犬の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成20年8月2日,原告ら代理人の電話での聴取において,B29は,これまで犬の死体の引取りを頼んだのは1回だけであり,1月2日に被告に引取り依頼の電話をし,引き取ってもらって,金銭を支払ったとし,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,B29は,聴取に同行していたA3を見て,こんな人は見たことがない,収集に来た人はこんなに細くはなく,ぼてっとした感じであり,こんな若い感じの人ではなかったと述べたこと,原告A3も,来ていれば覚えているはずであるが来た記憶がないと述べたことが認められる。

(シ) B30宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B30宅の収集について,平成16年1月12日は東コースを担当したが,遠方に行く必要があったことから,出発する時点で事務所に応援を依頼したとの記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,34,乙135,136,202~204,205の1~6,206,285)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年1月12日の原告A3の担当は東コース,原告A1のコースは西コース,原告A2のコースは南コースであり,B30宅は東コースの収集先であること,同日の原告A3の担当収集件数は7件であり,午後1時30分に事務所に帰ってきていること,B30宅も他の収集先から大きく離れた場所にあるわけではないこと,同日にB30宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて,無(料)に丸印が付されており,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B30は,平成16年1月11日にペットの猫の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない)としていること,平成20年8月2日,原告ら代理人の電話での聴取において,B30の妻C11は,平成16年1月に初めて飼った猫が死に,被告に引き取ってもらった,5000円を出し,おつりと領収書をもらったと述べ,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,B30は,聴取に同行した原告A3を見て,はっきりとは覚えていないが,収集員とは違うように思う,もっと肉付きがよく,ふっくらとした感じであった,丁寧にしてもらった印象が強いと述べたこと,原告A3も,B30宅には来たことがないと思うと述べたことが認められる。

(ス) B31宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B31宅の収集について,B31宅の所在地から,同日,東コースを担当していた原告A3自身が行ったことはないとの記載がある。

証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,34,乙137,138,207~209,210の1~8,211)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年1月16日の原告A3の担当は東コース,D7の担当は西コース,原告A1の担当は南コースであり,B31宅は南コースの収集先であったこと,同日にB31宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて,無(料)に丸印が付されており,「犬」が消去されて「猫」と記載されていること,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A1の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,確認欄の「スミ」との記載は原告A3の記載方法であること,平成18年12月6日付け調査票において,B31は,平成16年1月ころにペットの犬の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない)としていること,平成20年8月2日,原告ら代理人の電話での聴取において,B31は,平成16年1月ころ,飼い犬の死体を引き渡したのは自分であり,4600円を支払い,領収書をもらった,収集員の顔は覚えていないが,「何年飼っていたのですか。」と尋ねられ,「うちできちんと対応します」と言われたと述べ,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,聴取に同行していた原告A3を見て,あまりよく覚えていないが,収集に来たときの人とは思えない,背丈は自分より少し低かった,おとなしそうな感じだったと述べたこと,原告A3も,B31宅には来たことがないと述べたことが認められる。

(セ) B32宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B32宅の収集について,平成16年1月30日は収集件数が多かったため,東コースを担当していたD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,34,乙139,140,214~216,217の1~8,218)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年1月30日の原告A3の担当は西コース,D7の担当は東コースであり,B32宅は西コースの収集先であったこと,B32宅よりも東コースに近い収集先が複数存在していること,同日の原告A3の収集件数はB32宅を含めても10件であり,実際に午後1時45分に事務所に戻ってきていること,同日にB32宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,無(料)に丸印が付されており,ハムスターが消去されて猫と記載されていること,種類欄及び手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B32は,2~3年前にハムスターの収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書は市販のものをもらった(現在は持っていない)としていること,平成20年8月4日,原告ら代理人の電話での聴取において,B32は,平成2年ころから犬,猫やハムスターが死ぬと被告に収集を頼んできた,平成16年1月28日にはペットのハムスターが死に,手数料を支払い,手書きの領収書をもらったと述べ,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,聴取に同行していた原告A3を見て,この人とは初めて会う気がする,収集に来た人は背が170cm以上の人であった,見上げて話をした覚えがあると述べたこと,原告A3も,B32宅に来た記憶がないと述べていることが認められる。

(ソ) B33宅

原告A3の本人尋問の結果及び陳述書(甲39)には,原告A3は,B33宅の収集について,平成16年2月9日は収集件数が多く,また,収集依頼の連絡があった際,事務所に待機していたD6が収集に出かけるということであったため,D6に依頼した,D6の自宅がl"であり,D6が自宅に用事があると言っていたため依頼したとの供述及び記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,乙141,142,219,220,287,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年2月9日の原告A3の担当は南コース,D6の担当はなく,B33宅は南コースの収集先であったこと,当時のD6の自宅は,当日,D6が担当した収集先の付近にあり,また,当該収集先の周辺には,B33宅よりも近い南コースの収集先が複数存在していたこと,当日,原告A3は,午後2時15分に事務所に戻っており,D6は午後3時に出庫し,午後4時に入庫していること,この間のD6の収集件数は作業日報上1件のみであること,同日にB33宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月26日付け調査票において,B33は,平成16年2月9日にペットの犬(マルチーズ,オス)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成20年8月2日,原告ら代理人の電話での聴取において,B33は,平成16年2月8日に飼っていた犬が死に,翌日,被告に電話をして,その日に引き取ってもらった,収集員は親切で優しい感じの人で,50歳から60歳くらいの小柄な人だった,犬の死で動転していたので他の特徴は覚えていないと述べたことが認められる。

(タ) B34宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B34宅の収集について,収集に出発した後に連絡があったが,平成16年2月9日の収集件数が多かったことから,西コースを担当していたD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(甲39,第2事件及び第5事件甲31,乙143~145,219,220,287,証人B34,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成19年2月9日の原告A3の担当は南コース,D7の担当は西コースであり,B34宅は南コースの収集先であったこと,同日,D7が担当した収集先は広範囲にわたっていること,同日にB34宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と無料を表す「ム」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B34は,収集日は覚えていないがペットの犬の収集を依頼した,金額は覚えていないが手数料をその場で収集員に支払った,領収書をもらったか覚えていないとし,平成19年12月4日付け陳述書において,センターに死獣収集を1度だけ依頼したことがある,ペットの犬で白の雑種だった,みかんの段ボール箱に入れて収集してもらった,収集時期は正確には記憶していない,収集の際,まけてもらったという記憶はなく,手数料は収集員に支払った,金額がいくらだったかとか領収書をもらったかといった細かなことまでは覚えていないとしていること,平成20年8月4日,原告ら代理人の電話での聴取において,B34は,これまでにペットの犬の死体を1度だけ被告に預けた,冬だと思う,金銭を支払ったと思うが,金額や領収書の授受は覚えていない,収集員の顔も覚えていないと述べたこと,証人尋問において,B34は,領収書をもらったと証言し,また,収集員は60歳代で,白髪が交じっているとし,当日出廷した原告A3を含む6人とは雰囲気が違う旨証言したこと,本人尋問において,原告A3もB34を見た記憶がないと供述したことが認められる。

(チ) B35宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B35宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB35宅から離れた場所にいたため,D6かD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙146,147,221~223,224の1~7,225)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年2月14日の原告A3の担当は南コース,D6の担当は東コース,D7の担当は西コースであり,B35宅は南コースの収集先であったこと,B35宅は,同日,原告A3が担当した他の収集先と大きくは離れておらず,原告A3が担当した収集先も広範囲にわたっていないこと,他方,D6及びD7の収集先は広範囲にわたっていたこと,同日にB35宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と無料を表す「ム」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月24日付け調査票において,B35は,平成16年2月14日にペットの犬(雑種中型犬,名前クロ)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成20年8月5日,原告ら代理人の電話での聴取において,B35の妻C12は,夫と共にペットの犬を引き渡した,そのときのことは調査票のとおりである,収集員は親切な対応をしていたと述べたことが認められる。

(ツ) B36宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B36宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB36宅から離れた場所におり,同日の収集件数も多かったため,D7かD6に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙148,149,226~228,229の1~17,230)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年2月16日の原告A3の担当は西コース,D7の担当は東コース,D6の担当は南コースであり,B36宅は西コースの収集先であったこと,同日にB36宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と無料を表す「ム」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,同票の「ム」「スミ」の筆跡は原告A3のものであること,同日の他の車載処理票に比し,住所の記載が詳細であること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B36は,平成16年2月16日に同月15日死んだペットの犬(雑種,10kg程)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない),2人で来て背の低い方の人に手数料を渡したとしていること,平成20年8月5日,原告ら代理人の電話での聴取において,B36の妻C13は,飼い犬が死亡した日は15日だった,今から3年か4年前のことだと思うが,何年であるかは定かではない,B36は平成16年というが記憶は定かではない,金銭は払ったが金額は覚えていない,領収書はもらった,B36が店の前で車にはねられて死んでいた野良猫の引取りを依頼したことがあり,金銭は払っていない,これがいつの出来事かは思い出せないと述べたことが認められる。

(テ) B37宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B37宅の収集について,収集場所の関係で,B37宅を含むi'区m"方面の2件を,南コースを担当していたD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙150,151,231~233,234の1~6,235)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月4日の原告A3の担当は西コース,D7の担当は南コースであり,B37宅は西コースであったこと,同日の原告A3の担当収集件数は7件であること,B37宅は西コースの中でも奥の方に位置していること,同日の南コースの収集先が広範囲にわたっていたこと,同日にB37宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて無(料)に丸印が付されており,猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と記載されていること,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B37は,平成16年3月ころ,ペットの猫(雑種,まだら)の収集を依頼した,手数料5000円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,元々野良猫だったが,えさをやって世話をしていたとしていること,平成20年8月5日,原告ら代理人の電話での聴取において,B37は,調査票記載のとおりの記憶である,領収書をもらわなかったことははっきり覚えている,収集員の顔は覚えていないと述べたことが認められる。

(ト) B38宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B38宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB38宅から離れた場所にいたため,東コースを担当していたD6に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,33,34,乙152,153,236~238,239の1~6,240)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月9日の原告A3の担当は西コース,D6の担当は東コースであり,B38宅は西コースの収集先であったこと,B38宅は西コースと東コースの境界線からは大きく離れた場所に位置していること,同日にB38宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と無料を表す「ム」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月25日付け調査票において,B38は,平成16年3月9日か同月10日にペットの犬(M,ダックス)の収集を依頼した,5000円とか切りのいい金額の手数料をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,死んだ犬を見て,「いい犬ですね。高かったでしょ。」と言われ,大変腹が立ったとしていること,平成20年8月5日,原告ら代理人の電話での聴取において,B38の母C14は,犬を飼ったのも,死体を被告に引き取ってもらったのも初めてのことだった,引き渡したときの様子は調査票記載のとおりである,収集員の顔は覚えていない,電話のそばにいた息子は「50歳から60歳くらいの170cm弱の身長の人」と言っていると述べたこと,同年9月11日の原告ら代理人の訪問での聴取において,B38は,上記「いい犬ですね。高かったでしょ。」の発言は運転手がした,収集員は,聴取に同行していた原告A3よりも身長が高く,白髪のある人で,もっと年齢が上の人だったと思う,礼儀正しい人だったという印象がある,原告A3を今まで見たという記憶はないと述べたこと,原告A3は,B38宅を訪問したこともB38に会ったこともない,自分の身長は約160cmであると述べたことが認められる。

(ナ) B39宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B39宅の収集について,収集の連絡を受けた際に既に事務所の近くまで帰ってきていたため別の人に行ってもらった,平成16年3月ころにB39宅近所に用事があったD7にB39宅への収集の応援を依頼したことがあるとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙154,155,241~243,244の1~6,245,246)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月11日の原告A3の担当は東コース,D7の担当は西コースであり,B39宅は東コースの収集先であったこと,同日の西コース及び南コースの収集先は東コースと比較して広範囲にわたっていること,原告A3が事務所に戻った時刻は午後1時10分であるのに対し,西コース担当のD7は午後1時45分,南コース担当の原告A1は午後1時50分であること,原告A3担当の追加収集分の複写処理票があること,同日にB39宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と無料を表す「ム」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,「ム」「スミ」の筆跡は原告A3のものであること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月19日付け調査票において,B39は,平成16年3月ころにペットの猫(メス,日本ネコ)の収集を依頼した,手数料3500円くらいをその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成20年8月6日及び同月8日,原告ら代理人の電話での聴取において,B39は,飼い猫の死体を被告に預けたのは昨年の正月に1匹とそのときから2年ほど前に1匹の2回だけである,野良猫の死体収集を依頼したことはない,収集員の顔は覚えていないが,作業服のようなものを着た50歳くらいの小柄な優しい感じの人という印象だったと述べたことが認められる。

(ニ) B40宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B40宅の収集について,平成16年3月13日は土曜日で全体的な件数が少なかったため,x'区を回り,o方面の3件は別の人に行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙156,157,247~249,250の1~8,251,証人B40,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月13日の原告A3の担当は南コース,原告A1の担当は東コース,原告A2の担当は西コースであり,B40宅は南コースの収集先であったこと,同日にB40宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて無(料)に丸印が付されていること,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月19日付け調査票において,B40は,平成16年3月にペットの猫(オス,白黒)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない)としていること,平成20年8月6日,原告ら代理人の電話での聴取において,B40は,20年ほど前から猫の死体収集を被告に頼んでいる,犬の収集を頼んだこともあった,来宅した収集員にいつもこれは野良猫だけどかわいそうなので手数料を払うと話していた,手数料を受け取らなかったことが1回くらいあった,近所の路上で野良猫が死んでいるのを発見したときや近所の人が知らせてくれたときにも,収集依頼を3回ほどしたことがある,このときは無料扱いだった,収集依頼をした最後の猫は「ノンチャン」で白黒のオスだった,大変寒い時期で,3~4年前の冬だと思うが,平成16年3月13日かどうかは分からない,収集に来た人の顔は覚えていないが,定年間際のような年配の人だったと思うと述べ,平成20年8月7日,原告ら代理人の電話での聴取において,野良猫は無料と言われて収集員が手数料を受け取らなかったのが「ノンチャン」のときのことか,その前の野良猫のときのことか思い出せなかったと述べたこと,証人尋問において,B40は,手数料を支払ったか領収書をもらったかも思い出せないと証言し,収集員は50歳過ぎくらいに見え,同一性の識別証言を得る目的で当日在廷させた原告A3を含む6人の人から原告A3を特定できなかったこと,本人尋問において,原告A3もB40を見た記憶がないと供述したことが認められる。

(ヌ) B41宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B41宅の収集について,収集の連絡の際に,B41宅から離れた場所にいたため,西コースを担当していたD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲32,乙158,159,252,253,原告A3)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月22日の原告A3の担当は東コース,D7の担当は西コースであり,B41宅は東コースの収集先であったこと,D7が事務所に戻ってきた時刻は午後3時45分であるのに対し,原告A3が事務所に戻ってきた時間は午後2時50分であること,B41宅が他の収集先と近接しており,また,当日,原告A3が西コースの収集先も一部担当していたこと,同日にB41宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と無料を表す「ム」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月22日付け調査票において,B41は,収集日は覚えていないがペットの猫の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書をもらったか覚えていないとしていること,平成20年9月10日,原告ら代理人の電話での聴取において,B41は,母が猫好きで野良猫にえさを与えていた,長く居着いた猫も,えさをやっていないような野良猫も区別せず,供養と言って,被告に引き取ってもらっていた,数年に1回くらいの割合で猫の引取りを頼んだと思うが,いつ引取りを頼んだかの年月の記憶はない,平成16年3月に引取り依頼をしたかどうかの記憶はない,調査票を提出したことの記憶もない,手数料は払っていた,領収書をもらったこともあるし,収集員が「領収書,いりますか。」と言うので,いらないと断ったこともあった,職員の顔は全く覚えていないと述べたことが認められる。

(ネ) B42宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B42宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB42宅から離れた場所にいたため,南コースを担当していたD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,34,乙160,161,254~256,257の1~9,258)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月23日の原告A3の担当は西コース,D7の担当は南コースであり,B42宅は西コースの収集先であったこと,西コースの他の収集先の所在地にかんがみれば,B42宅は立ち寄るのが困難な場所とまではいえないこと,当日,原告A3は午後2時に事務所に戻っているが,D7は午後2時30分に戻っていること,同日にB42宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」と無料を表す「ム」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,同日の他の車載処理票に比し,住所の記載が詳細であること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月25日付け調査票において,B42は,平成16年3月にペットの犬の収集を依頼した,手数料5000円くらいをその場で収集員に支払った,領収書はもらっていないとしていること,平成20年8月6日,原告ら代理人の電話での聴取において,B42の妻のC15は,死獣を被告に引き渡したのも,調査票を記入したのも自分である,これまで被告に犬猫の死体を引き取ってもらったのは3回で,昨年,野良猫を無料で収集してもらった外に,飼い犬チョビと飼っていた子猫が各1回で,平成16年3月の収集は飼い犬チョビの収集だと思う,飼い犬のときも飼い猫のときも手数料を支払ったが,猫のときは犬のときよりも安かった,収集員は,顔ははっきり覚えていないが,黒っぽい服で黒縁の眼鏡をし,手に数珠を持っていた,優しそうな印象で40~50歳代くらいだったと述べ,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,聴取に同行していた原告A3を見て,この人と会うのは初めてのように思う,収集に来た人は背が高かった,眼鏡をかけていたし,数珠もしていたと述べたことが認められる。

(ノ) B43宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B43宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB43宅から離れた場所にいたことから,D7かD6に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,34,乙162,163,259~261,262の1~6,263,288)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月27日の原告A3の担当は東コース,D7の担当は西コース,D6の担当は南コースであり,B43宅は東コースの収集先であったこと,B43宅が東コースの他の収集先から大きく離れた場所にあるとはいえないこと,同日にB43宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,「ム」「スミ」の筆跡は原告A3のものであること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B43は,平成16年3月ころペットの犬(雑種)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書をもらった(現在は持っていない),いつもお礼として500円を渡すが,そのときはしなかったとしていること,平成20年8月6日,原告ら代理人の電話での聴取において,B43は,ここ10年ほどの間に,被告に猫と犬を各1回引き取ってもらった,娘が置いていった猫を2~3年前に,我が家に16~17年前からいた犬を猫の引取りの1年前に引き取ってもらった,2回とも春先のことで4600円を支払い,領収書をもらった,これまで野良猫は好かないので,その引取り依頼をしたことはない,今から3~4年前に犬の収集に来た人の印象は残っている,対応が丁寧で,犬の死体を丁寧に扱い,ポケットから数珠を出してお経を読むようなことをし,犬を車に入れてからも両手を合わせて拝んでいた,そのときの収集員は夫と同じくらいの身長(165cm)で,ころっとした体つきの60歳近い人で,眼鏡をして髪の毛が薄かったように思う,その1年後に猫の引取りに来た人は,黒い服を着た若い人で,事務的に引き取っていったと述べ,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,聴取に同行していた原告A3を見て,収集員は,この人とは違うように思う,収集員は,この人よりも年が上であったと思う,顔つきもこの人のようにやんちゃそうな顔ではなく,温厚そうな顔だったと述べたことが認められる。

(ハ) B44宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B44宅の収集について,当日は東コースを担当していたが,収集に時間がかかったため,D7かD6に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙164,165,259~261,288)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月27日の原告A3の担当は東コース,D7の担当は西コース,D6の担当は南コースであり,B44宅は東コースの収集先であったこと,B44宅は東コースのうち,事務所や他のコースから最も遠い場所に位置していること,原告A3の入庫時間は他の収集員よりも50分ほど遅かったこと,同日にB44宅で死獣収集(猫)を行った旨の複写処理票があること,同票の種類欄は,有(料)に付されていた丸印が消去されて無(料)に丸印が付されていること,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月22日付け調査票において,B44は,平成16年3月にペットの猫(オス,トラネコ)の収集を依頼した,金額は覚えていないが,手数料をその場で収集員に支払った,領収書をもらったか覚えていないとしていること,平成20年8月6日,原告ら代理人の電話での聴取において,B44の妻は,夫も私も猫が嫌いであり,猫を家の中に入れたことはないが,子供が時々家の庭に入ってくる猫に対してえさをやっており,この猫が敷地内で死んでいたときに被告に電話をし,死体を引き渡して手数料を支払った,今までに家の庭かすぐ外で死んでいた猫の引取りを依頼したことが2回ある,1回は2年前のことで,もう1回はそれよりも前のことである,引渡の時期は分からない,野良猫が無料とは知らなかったので,2回とも手数料を支払ったが,金額は分からない,領収書はもらったと思うが,発見できなかった,収集員の顔は覚えていないと述べたことが認められる。

(ヒ) B45宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B45宅の収集について,収集の連絡を受けた際に,B45宅から離れた場所におり,当日の収集件数も多かったため,D6かD7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙166,167,264,265)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年3月29日の原告A3の担当は西コース,D6の担当は東コース,D7の担当は南コースであり,B45宅は西コースの収集先であったこと,B45宅が他の収集先から大きく離れた場所にあるとはいえないこと,同日にB45宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月23日付け調査票において,B45は,平成16年3月28日にペットの犬(マルチーズ)の収集を依頼した,手数料4600円をその場で収集員に支払った,領収書はもらっていない,収集員は,60歳前後の人で,親切な人だったとしていること,平成20年8月7日,原告ら代理人の電話での聴取において,B45は,これまで被告にペットの死体引取りを依頼したのは10年以上前の猫と平成16年3月の犬だけであり,犬の収集は調査票記載のとおりである,収集員は,被告が火葬するとの説明をし,犬を積んだ車に向かって手を合わせて拝み,親切な人との印象がある,体つきは大きい人ではなく,60歳前後の人だった,顔は覚えていないと述べたことが認められる。

(フ) B46宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B46宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB46宅から離れた場所にいたため,D7に代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,乙168~170,173,268~270,271の1~10,272)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年4月19日の原告A3の担当は東コース,D7の担当は西コースであり,B46宅は東コースの収集先であったこと,東コースの他の収集先の所在地にかんがみれば,B46宅が他の収集先から大きく離れた場所にあるとはいえないこと,当日,原告A3が午後2時30分に事務所に戻っている一方で,D7は午後3時に戻っていること,同日にB46宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月26日付け調査票において,B46は,収集日は覚えていないがペットの犬(柴犬)の収集を依頼した,金額は覚えていないが,手数料をその場で収集員に支払った,領収書をもらったかは覚えていない,みかん箱ほどの段ボール箱に入れて依頼したように思うが,はっきりしたことは覚えていないとし,同年12月12日付け陳述書において,以前から常に番犬を1匹飼っているが死ぬとその都度センターに収集を依頼してきた,手数料については,金額は覚えていないが,その都度支払っている,最近依頼したのは,平成16年4月だと思う,無料の野良犬や野良猫の収集を依頼したことはないとしていること,平成20年7月28日,原告ら代理人の電話での聴取において,B46の夫のC16は,犬が死亡すると収集を依頼してきた,飼い犬の死体収集が有料とは知らなかった,ただ,人に物事を頼むのに無料で頼まないから,いくらかの金銭を支払っていると思う,収集員に手渡したか,箱の中に入れておいたかは分からない,手数料を支払ったかは覚えていない,陳述書の取下げ,取消を申し入れたいと思っていると述べたこと,同月31日,D17と被告の環境局服務監理課長のD22の訪問での聴取において,B46は,犬の収集を依頼したが,その際の詳細については全く覚えていないと述べたことが認められる。

(ヘ) B47宅

陳述書(甲39)には,原告A3が,B47宅の収集について,収集の連絡を受けた際にB47宅から離れた場所にいたため,誰かに代わりに行ってもらったとの記載がある。

また,証拠(第2事件及び第5事件甲31,34,乙171,172,273~275,276の1~10,277)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年4月28日の原告A3の担当は南コース,原告A1の担当は東コース,原告A2の担当は西コースであり,B47宅は南コースの収集先であったこと,B47宅は,他のコースの収集先から離れた場所に存在すること,同日にB47宅で死獣収集(猫)を行った旨の車載処理票があること,同票の種類欄に猫が箱に入れられていることを表す「ネコハコ」,手数料欄に無料を表す「ム」,取扱者欄に原告A3の記載があること,「ム」「スミ」の筆跡は原告A3のものであること,同日の他の車載処理票に比し,住所の記載が詳細であること,被告に手数料は収入されていないこと,平成19年1月19日付け調査票において,B47は,平成16年4月28日にペットの猫(トラ)の収集を依頼した,金額は覚えていないが,手数料をその場で収集員に支払った,領収書はもらった(現在は持っていない)としていること,平成20年8月6日,原告ら代理人の電話での聴取において,B47の妻のC17は,今までに猫の収集を依頼したのは1回だけである,18年飼っていたトラ猫だった,収集の日は平成16年4月28日で手数料は5000円を封筒に入れて準備しておいた,手数料を超える400円はチップとして渡したかもしれない,収集に来た人はとても親切な人で,猫を拝んでもらった,小柄,中肉中背,40歳から50歳くらいまでの人だったと述べ,平成20年8月31日,原告ら代理人の訪問での聴取において,聴取に同行していた原告A3を見て,収集に来た人と似ているような気もするが,もう少し年配だったような気がする,当時でだいたい50歳くらいだったと思う,収集には黄色の車で1人で来ていたようである,背広のような感じのものを着ていたと述べたこと,原告A3は,この家に来たことがないと述べたことが認められる。

以上のとおり認められるところ,確かに,収集先の位置関係,原告A3と他の収集員の繁忙の度合い,処理票の取扱者名や筆跡等からして,原告A3が他の収集員に収集を代わってもらったと考えるのはやや不自然と思われる収集先もないではない(例えば,上記(ウ)(オ)(カ)(ク)(ケ)(コ)(セ)(ソ)(テ)(ト)(ナ)(ヌ)(ヘ))。

しかしながら,原告A3らは収集に当たっては自動車を利用しているところ,本件の収集先はいずれも京都市内にとどまる上,交通量や交通規制等も明らかではない状況の下で,収集先の位置関係が原告A3の収集の事実を必ずしも決定づけるものではない。

原告A3と他の収集員の繁忙の度合いについても,原告A3が収集に行ったかどうかと直接関連するものではない。

むしろ,前記のとおり,多数の市民が,当時の収集員について原告A3と明らかに異なる特徴を挙げたり,原告A3を見て,当時の収集員は原告A3とは違うと発言している(例えば,上記(ウ)(カ)(ク)(コ)(セ)(ト))。

処理票についても,実際に収集に行った収集員ではない収集員がこれを記載する場合もあるというのであるし,これらの取扱者欄の記載に合わせることで死獣収集日報の収集件数,処理票数,最後尾の処理票の裏面の収集件数が一致することもあり得る。多数の市民が原告A3の訪問を否定していることからも,少なくとも,原告A3において,このような処理が決して例外的なものではなかったことがうかがわれるのであり,処理票の取扱者名や筆跡等を絶対視することもできない(なお,原告A3の主張によると,原告A3が着服したのでなければ,D7かD6が着服したことになるはずの事案も多いところ,着服で懲戒免職処分を受けたD7が自己名の処理票で着服をした割合に比べて,原告A3から収集を依頼され原告A3名の処理票でD7が代わりに収集した場合の着服の割合が極端に多くなるような資料でもあれば,処理票の記載を前提にした認定も不可能ではないといえようが,本件でそのような資料は提出されていない。)。

とりわけ,原告A3は,当初から一貫して着服の事実を否定している。確かに,陳述書(乙55)において,収集に行った事実を認めていた訪問先も存するが(上記(ウ)(ヘ)),いずれも収集先市民が収集員が原告A3と異なる,あるいは違う印象であると発言していることが認められる。数年前の収集について,処理票の取扱者欄の記載等から単純に原告A3が収集の事実を認めた可能性は十分にあるといえ,同陳述書の記載のみによって,訪問の事実を認めることもできない。

また,本件訴訟において,原告A3が,当初は収集に行ったとしながら,後に否定するなどした市民宅もあるが,これは代理人と現地に赴いた結果,自分が訪問した経験がないことがわかったからというのであって,その理由は不合理なものとはいえないし,本件の収集が数年も前のものであり,この間,多数の収集を行っていたであろうことからすれば,誤認・混同が生じていたとしても必ずしも不自然ではない。

そうすると,上記原告A3の本人尋問における供述及び陳述書(甲39)の記載の信用性を否定することはできないものというべきである。

確かに,原告A3は,当初,市民の供述に対して,手数料を受け取っていないことについて,合理的な反論はできないと述べたり,陳述書(乙55)にその旨記載したりしているが,このことをもって,原告A3が手数料着服の事実を暗に認めたともいえない。

以上によれば,原告A3が収集に行った事実を認めることはできないから,着服の事実も認めることはできない。

4  まとめ

(1)  以上によれば,原告A1については,日付け不詳の2度にわたり,B1宅において手数料合計9200円を着服した事実,平成17年9月10日,B2宅において手数料4600円を着服した事実,平成16年11月29日,B4宅において手数料4600円を着服した事実,平成17年3月15日,賀茂女子学生会館において手数料4600円を着服した事実が認められ,原告A2については,原告A2が,平成17年2月5日及び日付け不詳の2度にわたり,B1宅において着服した事実,平成17年2月15日,B14宅において手数料3500円を着服(ないし詐取)した事実を認めることができるが,その余の着服等の事実を認めることはできない。

他方,原告A3については,すべての件について着服の事実を認めることができない。

(2)  そうすると,原告A1及び原告A2について,懲戒免職処分において当初対象としていた着服の事実の一部が認められ,懲戒の認定規準に照らして,原告A1及び原告A2の懲戒免職処分は不当とはいえない。上記のように着服の事実が認められる以上,懲戒免職処分の根拠事実の存在につき,厳格な証明を経ていないという原告らの主張は当たらない。

他方,原告A3については,すべての件について着服の事実が認められないから,懲戒免職処分は不相当であり,これを取り消すのが相当である。

(3)  また,原告A1に対する損害賠償命令処分のうち,1万8400円並びにうち4600円に対する平成15年6月14日から,うち4600円に対する平成16年4月29日から,うち4600円に対する同年11月9日から及びうち4600円に対する平成17年1月31日から各支払済みまで年5分の割合(年365日の日割計算)による金員の賠償を命ずる部分,原告A2に対する損害賠償命令処分のうち,1万4800円並びにうち4600円に対する平成15年4月25日から,うち4600円に対する同年8月12日から,うち4600円に対する平成16年11月10日から及びうち1000円に対する平成17年12月14日から各支払済みまで年5分の割合(年365日の日割計算)による金員の賠償を命ずる部分及び原告A3に対する損害賠償命令処分は理由がないから,これを取り消すのが相当である。

(4)  よって,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 瀧華聡之 裁判官 佐野義孝 裁判官 梶山太郎)

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