京都地方裁判所 平成16年(ワ)443号 判決
京都府●●●
原告
●●●
上記訴訟代理人弁護士
功刀正彦
東京都●●●
被告
中央ネット●●●
主文
1 被告は,原告に対し,70万円及び,内金4万5000円に対する平成14年5月24日から,内金6万円に対する平成14年5月30日から,内金8万円に対する平成14年6月10日から,内金9万5000円に対する平成14年6月26日から,内金9万円に対する平成14年7月11日から,内金9万円に対する平成14年7月29日から,内金2万円に対する平成14年8月19日から,内金2万円に対する平成14年9月6日から,内金9万円に対する平成14年9月25日から,内金11万円に対する平成16年3月8日から,支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し,その2を被告の,その余を原告の各負担とする。
4 この判決は1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は原告に対し,94万円及び,内金4万5000円に対する平成14年5月24日から,内金6万円に対する平成14年5月30日から,内金8万円に対する平成14年6月10日から,内金9万5000円に対する平成14年6月26日から,内金9万円に対する平成14年7月11日から,内金9万円に対する平成14年7月29日から,内金2万円に対する平成14年8月19日から,内金2万円に対する平成14年9月6日から,内金9万円に対する平成14年9月25日から,内金35万円に対する平成16年3月8日から,支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2当事者の主張
1 請求原因
(一) 被告は,原告に対し,平成14年5月17日,1週間で66・66パーセント(年利約3400パーセント)の高金利の約定で,2万7000円を貸し付け,その元利金の弁済と称して,同年5月24日に4万5000円を脅し取り,その後も同様に出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)5条2項に違反する高利の貸付金の弁済として,同月30日に6万円(同月24日,4万3000円貸付),同年6月10日に8万円(5月30日,5万8000円貸付),6月26日に9万500円(同月13日,6万8000円貸付),同年7月11日に9万円(6月26日,6万8000円貸付),同月29日に9万円(同月11日,6万8000円貸付),同年8月19日に2万円(7月30日,6万8000円貸付),同年9月6日に2万円(同上),同月25日に9万円(同上)を脅し取った。
(二) 被告は,上記のとおり出資法により刑事罰の定められた違法な貸付行為をし,かつ,昼夜にわたり原告の自宅,夫の勤務先,実家に脅迫的な電話して,上記返済を強要したものであり,民法709条の不法行為責任が成立する。
(三) 損害
(1) 民法708条に照らして,原告は貸付金の返還義務を負うものではないから,原告が返済した金額全額が損害となる。
(2) 慰謝料 20万円
原告は,前記のとおり被告による脅迫を受けた結果,夫からは家を追い出され,自殺することを考えるまで精神的に追いつめられたものであって,慰謝料は20万円が相当である。
(3) 弁護士費用 15万円
(四) よって,原告は被告に対し,上記損害額と,各弁済金については交付した日から,慰謝料及び弁護士費用については訴状送達の日(平成16年3月7日)の翌日から,支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
(一) 請求原因事実は全て不知。
(二) 被告は中央ネットを経営しておらず,上記貸付をしていないし,取り立てに関与していない。
第3判断
1 請求原因(一),(二)について,甲1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,原告は,中央ネットから,原告主張のとおりの高利で貸付を受け,原告の自宅,夫の勤務先などに脅迫的な電話を受けた結果,上記の返済を強要されたことが認められ,これに反する証拠はない。以上によれば,上記貸付は出資法5条2項(3項)に違反し,また,取立行為自体も違法なものであって,民法709条の不法行為を構成するというべきである。
被告は,中央ネットを経営する者ではなく,上記貸付などに関与していないと主張し,乙1,被告本人には,闇金融の者から依頼されて,利用目的も知らないまま,自己の名義で銀行口座を開設するなどしたにすぎない旨の,上記主張に沿う供述記載及び供述がある。しかしながら,上記供述などはあいまい,かつ不自然であって,すぐには措信できず,少なくとも,自己の名義が高利で貸付がなされる闇金融の取引に利用されることは知っていたはずであるといわざるを得ない。そうであれば,被告は上記違法な貸付や取立に加担したものとして,民法719条の共同不法行為が成立し,原告が被った損害を賠償する義務があるというべきである。
2 請求原因(三)について
(一) 上記のとおり,原告は,支払金額合計59万円の損害を被ったと認められる。
(二) 原告は,被告による脅迫的取立を受けた結果,夫からは家を追い出され,自殺することを考えるまで精神的に追いつめられた(弁論の全趣旨)ものであって,本件の経緯などの一切の事情も考慮すると,その精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は5万円が相当である。
(三) 弁護士費用
上記認容額,本件訴訟の難易,その他の事情を考慮すると,弁護士費用は6万円が相当と認める。
(四) 合計 70万円
第4以上によれば,原告の本件請求は上記の限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。よって主文のとおり判決する。
(裁判官 松本久)