京都地方裁判所 平成13年(ワ)2129号 判決
主文
1 被告は原告に対し,金3351万1659円及びこれに対する平成11年8月20日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨
第2争いのない事実
1 信用保証委託契約の締結
(1) 原告は,平成10年4月22日,被告との間で,①被告が京都中央信用金庫(以下「中信」という。)から1000万円を借り受けるについて,原告において利息・損害金を含め信用保証協会法に基づく保証を行う,②被告は,原告が同保証に基づき中信に代位弁済したときは,弁済額及びこれに対する弁済日の翌日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による損害金を支払うとの内容の信用保証委託契約(以下「第1委託契約」という。)を締結した。
(2) 原告は,平成10年8月18日,被告との間で,①被告が京都信用金庫(以下「京信」という。)から1500万円を借り受けるについて,原告において利息・損害金を含め信用保証協会法に基づく保証を行う,②被告は,原告が同保証に基づき京信に代位弁済したときは,弁済額及びこれに対する弁済日の翌日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による損害金を支払うとの内容の信用保証委託契約(以下「第2委託契約」という。)を締結した。
(3) 原告は,平成11年3月19日,被告との間で,①被告が中信から1000万円を借り受けるについて,原告において利息・損害金を含め信用保証協会法に基づく保証を行う,②被告は,原告が同保証に基づき中信に代位弁済したときは,弁済額及びこれに対する弁済日の翌日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による損害金を支払うとの内容の信用保証委託契約(以下「第3委託契約」という。)を締結した。
2 金銭消費貸借契約の締結及び原告の保証
(1) 中信は,平成10年4月30日,平成8年7月10日付信用金庫取引約定書に基づき,被告に対し,1000万円を,利息・年2パーセント(年365日の日割計算),返済条件・元金につき平成10年6月から平成17年5月まで毎月10日限り11万9000円ずつ計80回の返済(ただし,最終回は12万3000円),利息につき,借入日を第1回とし,以後毎月10日に翌月分を前払する,期限の利益の喪失・被告が手形交換所の取引停止処分を受けたときとの約定で貸し渡し(以下「第1貸付」という。),原告は,平成10年4月22日,第1貸付について,第1委託契約に基づき,信用保証書を発行することにより保証をした。
(2) 京信は,平成10年8月25日,平成6年5月31日付信用金庫取引約定書に基づき,被告に対し,1500万円を,利息・年3.25パーセント(年365日の日割計算),返済条件・元金につき振出手形満期日(平成11年8月17日)返済,利息につき,借入日を第1回とし,以後1か月ごとに翌月分を前払する,期限の利益の喪失・被告が手形交換所の取引停止処分を受けたときとの約定で貸し渡し(以下「第2貸付」という。),原告は,平成10年8月18日,第2貸付について,第2委託契約に基づき,信用保証書を発行することにより保証をした。
(3) 中信は,平成11年3月26日,同日付信用金庫取引約定書に基づき,被告に対し,1000万円を,利息・年2.825パーセント(年365日の日割計算),返済条件・元金につき平成11年4月から平成16年3月まで毎月末日限り16万7000円ずつ計60回の返済(ただし,最終回は14万7000円),利息につき,借入日を第1回とし,以後毎月末日に翌月分を前払する,期限の利益の喪失・被告が手形交換所の取引停止処分を受けたときとの約定で貸し渡し(以下「第3貸付」という。),原告は,平成11年3月19日,第3貸付について,第3委託契約に基づき,信用保証書を発行することにより保証をした。
3 代位弁済
被告は,平成11年6月10日,第1回目の手形不渡を出し,同年6月30日,第2回目の手形不渡を出して,同年7月5日,銀行取引停止処分を受けた。
原告は,平成11年8月19日,以下のとおり代位弁済し,求償権を取得した。
第1貸付 元金 857万2000円 利息 7242円
第2貸付 元金 1500万円 利息 6万7940円
第3貸付 元金 983万3000円 利息 3万1477円
4 会社解散と清算結了登記
平成11年6月18日,被告の臨時株主総会が開催され,会社解散と清算人選任を決議した。
被告については,平成12年3月31日,清算結了登記がされた。
第3請求の概要と争点
原告は被告に対し,求償金3351万1659円及びこれに対する代位弁済の日の翌日である平成11年8月20日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による約定遅延損害金の支払を請求。
争点は,清算結了により被告が消滅したか否かである。
第4争点に関する当事者の主張
1 被告の主張
(1) 被告は,第1回の手形不渡を出した平成11年6月10日の直後に,取引先である債権者26社に,別紙の資料を送付し,その合意を得ながら,同月18日に臨時株主総会を開催し,会社解散と清算人選任を決議した。その間,中信や京信の担当者から連絡が入り,被告代表者において,別紙の資料の内容を口頭で説明した。その後清算手続が開始してからは,中信の担当者とはほとんど連絡を取る機会がなかったが,京信の担当者とは平成11年12月初めころまで連絡を取る機会があった。
(2) その後,被告代表者が平成13年2月23日,京都地方裁判所に自己破産の申立をしたところ,その申立後に,被告の債権者の1人から,社内処理を行うために被告について清算結了の登記をしてほしい旨の要請があり,それに基づき清算結了登記がされたのである。
(3) 被告には債権者に弁済すべき会社資産はなく,被告の現務はないのであって,このような場合には,最判昭和36年12月14日民集15巻11号2813頁の趣旨は妥当しない。
2 原告の主張
(1) 原告に対しては,清算事務遂行について何らの連絡もされたことはなく,本件の求償債権が残っている以上,被告の清算事務は結了していない。
(2) 知れたる債権者に対する債務の弁済という現務が終了しない以上,被告の清算手続は実体法的に終了していない。このことは,株式会社につき債務超過のおそれのある場合清算人に特別清算の申立を義務づける商法431条2項の趣旨からも裏付けられるものである。
第5争点に対する判断
会社の清算事務は,会社のすべての権利義務を処理することを要するのであり,会社の債務が消滅しない状態で,清算事務が終了したとはいえないというべきである。株式会社につき債務超過のおそれのある場合には清算人に特別清算の申立が義務づけられるのであって(商法431条2項),これがされない以上,清算人の重要な事務が未了であるということもできる。
よって,被告は,結了登記の存在にもかかわらず未だ消滅したものということはできず,原告の請求は理由がある。
(裁判官 本吉弘行)