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京都地方裁判所 平成12年(ワ)1902号 判決

主文

1  被告株式会社日栄は原告甲に対し金61万7012円,同乙,同丙及び同丁に対し各金20万5670円並びにこれらに対する平成12年7月29日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

2  原告らのその余の各請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用はこれを6分し,その5を原告らの負担とし,その1を被告の負担とする。

4  この判決第1項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

被告は原告甲に対し金388万6490円,同乙,同丙及び同丁に対し各金129万5496円並びにこれらに対する平成12年7月29日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

1  前提事実〔争いがないか,証拠(甲1の1ないし7,甲2,3,4の1ないし3,乙2の2,乙31及び32の各1,2,乙33,34及び35の各1,2)及び弁論の全趣旨によって明らかに認められる〕

(1)  当事者

ア 被告は,商業手形の割引及び資金の貸付等を目的とする株式会社である。

イ 亡戊(以下「戊」という)は,己製作所の名で鉄工所を経営していたが,平成12年8月9日死亡した。その相続人は,妻である原告甲,養女である原告乙,子である原告丙及び同丁であり,その法定相続分は,原告甲が2分の1,その余の原告らが各6分の1である。

(2)  戊は,平成3年8月13日被告との間で,貸付極度額を1000万円とする手形貸付取引約定書(以下「本件取引契約書」という)を交わし,そのころ訴外日本信用保証株式会社(以下「日本信用」という)との間で,信用保証委託契約書を交わし,以後,被告から継続的に金銭の貸し付けを受けた。

(3)  被告の戊に対する貸付は,別表3の1,2記載のとおり,平成3年8月13日から平成12年3月3日まで,都合93回にわたり実行された(以下,個別の貸付を表示するときは,同表の番号にしたがって「本件1貸付」等という)が,その方式は次のとおりである。

ア 平成10年6月までの方式(本件1ないし84貸付,以下「利息天引方式」という)

(ア) 戊は,被告に対し,戊振出にかかる,貸金の弁済期限を支払期日とし,貸付額を額面金額とする約束手形を交付して,金銭の貸付を申し込む。被告は,貸付額から調査料,取立料及び支払期日までの利息(以下「利息等」という)並びに日本信用が受け取るべき手数料及び保証料(以下「保証料等」という)を控除した残金を戊に直接交付するか,戊の当座預金口座に振り込んで貸付を実行する。〔ただし,平成10年4月から6月までに実行された貸付(本件81ないし84貸付)においては,被告は,控除額を利息等及び保証料等の合計額の一部とし,残額については,別途貸付期間の中間の日を支払期日とし,残額を額面金額とする約束手形を戊に振り出させ,これを取り立てることによってその支払を受けた。〕

(イ) 被告は,上記約束手形を支払期日に支払場所に呈示し,手形金を取り立てることによって貸付の弁済を受ける。

(ウ) 戊が上記約束手形を決済できない場合,その支払期日前に戊は被告に対し,新たな貸付を申し込み,その弁済期限を支払期日,貸付額を額面金額とする約束手形を被告に交付する。その場合の貸付申込額は,決済するべき手形の額面金額と同額であることが多いが,決済資金の一部を他で準備できるときは,上記額面金額よりも少額である場合があるし,他に資金需要があるときは,上記額面金額よりも多額である場合もある。被告は,(ア)と同様に利息等及び保証料等を控除した残金を被告の当座預金口座に振り込んで貸付を実行する。

イ 平成10年7月以降の方式(本件85ないし93貸付,以下「利息後取り方式」という)

(ア) 戊は,被告に対し,戊振出にかかる,貸金の弁済期限を支払期日とし,貸付額を額面金額とする約束手形(以下「元本手形」という)及び弁済期限までの利息等及び保証料等の合計額を額面金額とし,貸金の弁済期限を支払期日とする小切手(弁済期限までの期間を複数の期間に分け,その各期間の利息等及び保証料等の合計額を額面金額とし,その期間の末日を支払期限とする複数枚の小切手の場合もある。以下「利息小切手」という)を交付して,金銭の貸し付けを申し込む。被告は,貸付額を戊に直接交付するか,戊の預金口座に振り込んで貸付を実行する。ただし,被告は,平成11年9月以降に実行された貸付(本件91ないし93貸付)においては,貸付当日に,戊から現金で保証料の一部又は全部の支払を受けた。

(イ) 被告は,利息小切手を取り立てることにより,利息等及び保証料等の支払を受ける。

(ウ) 被告は,元本手形を支払期日に支払場所に呈示し,手形金の支払を受けることによって元本の返済を受ける。

2  当事者の主張

(1)  原告ら

ア 被告の戊に対する多数回の貸付のうち,以前の貸付金の弁済日に新たな貸付が順次なされているものを一つのグループとすると,戊に対する各貸付は全部で13のグループに分けられる。

イ 被告の戊に対する貸付は,実質的には各グループ毎に一個の貸付である。すなわち,当初,手形の額面金額の貸付が実行され,その当日に額面金額と戊への現実の交付額との差額が弁済され,その後の手形の期日毎に,決済された旧手形の額面金額と戊が新手形を被告に交付したことによって被告から戊へ現実に交付された金額との差額金が弁済されたのである。また,新手形の額面金額が旧手形の額面金額よりも増加している場合は,その増加金額が貸し増しされたのである。

ウ グループ毎に利息制限法超過利息(保証料等もこれに含まれる)を順次元本に充当すると,その結果は別表一のとおりであり,Aグループは287万4509円の過払い,Bグループ(C,Dグループを合体している)は381万0688円の過払い,Eグループ(Fグループを合体している)は216万3569円の過払い,Gグループ(H,Iグループを合体している)の残額は38万6697円,Jグループは4万3988円の過払い,Kグループは3万5604円の過払い,Lグループの残額は83万7580円,Mグループは6万8899円の過払いとなる。

エ 戊は,本訴状の送達をもって被告に対し,前項の過払い額(A,B,E,J,K,M各グループ)合計899万7257円の不当利得返還請求権を自働債権とし,前項の残額(G,L各グループ)合計122万4277円の返還債務を受働債権とし,対当額で相殺する旨の意思表示をした。

オ よって,原告らは被告に対し,前項の不当利得返還請求権の相殺後の残額777万2980円を法定相続分にしたがって取得したので,それぞれが取得した債権額及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年7月29日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(2)  被告

ア 被告の戊に対する本件各貸付は,それぞれが独立した貸付であり,利息制限法にしたがって再計算したことによる過払金は,それぞれが独立の不当利得となる。

イ 被告が再計算した結果は別表二記載のとおりであり(保証料等は利息には含まれない),これによれば,被告の戊に対する貸付金残額は962万5637円,過払金合計は653万4877円,未収利息が37万5277円であり,平成12年4月25日の時点で相殺計算すると,戊の被告に対する不当利得返還請求権は消滅し,なお被告の戊に対する貸金が346万6037円残存していることになる。

3  争点と争点についての当事者の主張

(1)  本件各貸付は,それぞれが別個の貸付か,それとも原告らが主張するグループ毎に一個の貸付か

ア 原告ら

(ア) 原告らは,前回の貸付の支払期日に次の貸付がなされる関係にある貸付を1つのグループとしている。借り増し,分割,統合等があるため,貸付金額は一定ではない。

(イ) 本件各貸付は,それぞれ別個の貸付であるかのような形式をとっている。しかしながら,原告らが主張するグループ毎に,新たな借入は前回の借入金を弁済するための借入であって,実質的にはグループ毎に一個の貸付であるというべきである。

(ウ) したがって,利息制限法超過利息は,当然,そのグループ内の残債務の支払にその都度充当されることになる。

イ 被告

次のとおり,本件各貸付は,1回1回が独立した金銭消費貸借である。

(ア) 貸付金は,その都度,戊の当座預金口座に振り込まれる。その後旧手形が決済されるまでの間は,両貸付が併存しているのであって,両者が同一であるはずがない。

(イ) 被告からの貸付金は,これによって「当座預金」として成立し,その後,戊がこれをどのように処分するかは戊の自由であって,被告においてこれに関与できない。したがって,新規の貸付金が旧手形の決済に利用されず,旧手形及び新手形の双方が不渡になること(以下「ダブル不渡」という)もある。また,旧手形が決済された場合であっても,新たな貸付金は戊の一般財産に混入し,その一般財産によって旧手形の決済がなされるのであるから,新規の貸付金によって旧手形が決済されるという対応関係があるものでもない。

(ウ) 本件取引契約書には,「手形面記載の満期日に元金(手形金額)を一括返済」と記載されており,このことから,戊と被告との間で,その取引は1回1回で終了するとの合意があったことが窺える。

(エ) 各貸付が行われる度にその貸付にかかる利率が決定され,被告は,これを記載した貸付明細書を作成して戊に交付してきた。

(2)  利息制限法の制限を超過する過払金の充当方法

ア 原告ら

本件各貸付は,グループ毎に1個の貸付であるから,過払金は,グループ内の他の貸付に順次充当される。

イ 被告

本件各貸付は,それぞれ別個の貸付である。そして,過払金が他の貸付金に当然充当されることはなく,原告らは,これを不当利得として返還請求ができるにすぎない。

(3)  日本信用に支払われた保証料及び事務手数料が利息制限法3条所定のいわゆる「みなし利息」に該当するか。

ア 原告ら

(ア) 日本信用は,次の事実に照らすと,実質的に見て被告の一部門というべきである。

a 日本信用は,被告の100%子会社である。

b 日本信用の業務内容は,被告の顧客が被告から借入をする際に,顧客から保証料と事務手数料を徴収して信用保証をすることだけである。

c 被告の役員3名が日本信用の役員を兼任している。

(イ) そうすると,日本信用が保証料及び事務手数料を徴収することは,実質的に被告がこれを徴収することと同じである。

イ 被告

(ア) 次の事実に照らすと,日本信用が実質的に被告の一部門であるとの評価は当たらない。

a 日本信用は,信用保証委託契約事務を被告に委託しているが,その事務代行委託料として被告に対し,信用保証委託契約締結1件につき1000円を支払っている。

b 被告は,借主から徴収した保証料等を日本信用に支払っている。これは日本信用の収入となり,日本信用は,独自に税務申告をしている。

c 日本信用は,被告に対する代位弁済後,独自に回収業務を行い,その回収によっても利益を上げている。

d 日本信用は,京都に本店を置き,全国に7つの支店を有している。地方の支店では,被告の店舗内のスペースを使用している場合があるが,その場合は,被告との間で正式に賃貸借契約を締結している。

e 日本信用は,平成10年度において,被告に対し,総額523億円を代位弁済している。代位弁済後,借主に求償権を行使しているが,その回収状況は,50%強である。回収が不可能な場合は,債権放棄手続をとって償却している。

(イ) そうすると,保証料及び事務手数料は「債権者」が受ける金銭ではないから,利息制限法3条のいわゆる「みなし利息」に当たらない。

(4)  貸付金の振込手数料は,戊及び被告のいずれが負担するべきか。

ア 原告ら

被告が負担するべきである。よって,被告が振込手数料名目で天引した金銭についても,みなし利息に含めるべきである。

イ 被告

戊が負担するべきであって,みなし利息には含まれない。原告及び戊間で平成11年9月3日に作成された手形・小切手郵送契約書(乙3の2)には,その旨の明文がある(2条但し書き)。上記契約書作成以前でも,被告から振込手数料を控除した金銭が振り込まれているのに対し,戊から何らの異議の申出がなかったことに鑑み,これを戊が負担することについて黙示の合意があったと認めるべきである。

第3争点に対する判断

1  本件各貸付は,それぞれが別個の貸付か,それとも原告が主張するグループ毎に一個の貸付か(争点(1))

(1)  弁論の全趣旨によると、被告と戊は,戊が旧手形の支払期日(旧貸付の弁済期日)の数日前に原則として同じ額面金額の新しい手形を被告に交付し、被告は、原則として支払期日当日に、新手形の額面金額からみなし利息等を控除した金額を戊の当座預金口座に振り込み、戊が右控除額に相当する金額(旧手形を決済するための不足金額)を捻出して右当座預金口座に入金し、これらを併せて旧手形が決済されるという方法で取引を繰り返していたものであり、戊が被告からの振込金を自己の用途に使えるのは、各グループの最初の借入の時及び貸増をした時の貸増額だけであったことが認められ、これらの事実によれば、本件取引の実態は、グループ毎に、戊が利息を支払って期限の延期を繰り返していたにすぎないと見る余地がないではない。

(2)  しかしながら、他方,証拠(乙9の1,2)及び弁論の全趣旨によると、被告の戊に対する手形貸付は,その都度貸付額,利率,支払期日等が決められること,新手形の額面金額からみなし利息等を控除した金銭が現実に戊の当座預金口座に振り込まれること、右振込金は旧手形の決済に利用されることが予定されているとはいえ、戊がこれを引き出して他の用途に充てることも可能であること、したがって被告は、常にダブル不渡の危険を負担しているし,現実に同様の方法で実行された他の顧客に対する貸付においては,ダブル不渡りが発生した事例も相当数存在すること等の事実が認められ、そうであれば、これを期限の延期とみることはできず、被告が戊の口座に金銭を振り込む毎に新たな金銭消費貸借契約が成立するというべきである。すなわち、原告らが主張するように,グループ毎に一個の貸付とみることはできず、それぞれが別個の貸付と判断せざるを得ない。

2  利息制限法の制限を超過する過払金の充当方法(争点(2))

(1)  本件各手形を決済したとき、戊は、常にその手形にかかる貸付のみならず、複数の貸金返還債務を負担していた。しかし、その手形を決済する方法による弁済は、その手形にかかる貸付の返済に充当することを指定していると解するべきであるから、まずその貸付金に充当されることになる(民法488条1項)。

(2)  上記充当後の過払金は,他の貸付金に充当されることなく,戊に不当利得返還請求権が発生するにすぎないと解するべきである。弁済金の充当に関する民法488条ないし491条の規定は,弁済者が複数の債権に対して弁済する意思を有している場合には適用があるが,その意思が認められない本件においては適用がないと解するのが相当である。

3  日本信用に支払われた保証料及び事務手数料が利息制限法3条所定の「みなし利息」に該当するか。(争点(3))

(1)  一般に,金融業者ないし金融機関(以下「金融業者等」という)が顧客に金銭を貸し付けるに際し,営業政策として,特定の第三者(以下「保証会社」という)の保証を受けることを貸付の条件としている場合は,その保証会社と金融業者等との間の資本面,営業面,人事面における結びつきが希薄である等,保証会社について金融業者等に準じた扱いをすることを不当とする特段の事情が認められない限り,顧客が保証会社に対して支払う保証料等の金銭は,利息制限法3条にいう「債権者の受ける元本以外の金銭」に当たり,同法但し書きにいう「契約の締結及び債務の弁済の費用」に当たらない限り,これを利息とみなすのが相当である。

(2)  なるほど,金融業者等と保証会社は法主体が異なり,保証会社は,厳密には「債権者」に当たらない。しかしながら,金融業者等が保証会社の保証を受けることを貸付の条件としている場合,一般に金融業者等と保証会社は包括的,継続的な契約関係にあり,資本面でも,営業面でも,人事面でも密接な関係にある上,金融業者等が保証会社の保証を貸付の条件としている限り,顧客としては,保証料等の支払は,利息と同様に,金銭を借り入れるために必要不可欠な支出であること,顧客が保証会社に保証料等を支払うことによって,金融業者等は,顧客の支払が滞ったときに保証会社から支払を受けることができるのであって,顧客が保証会社と保証委託契約を締結し,保証会社に保証料等を支払うことによって利益を受けるのは,主として金融業者等であること等の諸事情を考慮すると,上記の場合に顧客が保証会社に支払う保証料等を,いわば「債権者側」が受ける金銭として,「債権者の受ける元本以外の金銭」に準じて扱って妨げないものと解するのが相当である。

(3)  次に実質的に考察する。金融業者等が,保証会社の保証を受けさせることなく貸付を実行し,貸し倒れの危険を全面的に負担する対価として借主から高い利息を徴求するか,保証会社の保証を受けさせることによって危険を保証会社に肩代わりさせて低利で貸付を実行するかは,その金融業者の営業政策に関わる問題である。他方,顧客としては,前者の場合には,高い利息を徴求され,後者の場合は,利息は低くなるものの,別途保証料の支払を負担することとなるが,いずれも貸付を受けるために必要な支出であることに違いはない。しかるに,前者の場合は,高い利息全額に利息制限法の規制が及ぶのに,後者の場合には,低い利息にしか同法の規制が及ばないというのでは,その不均衡は甚だしいと言わなければならない。また,上記のように解さないと,金融業者等は,子会社として信用保証会社を設立し,顧客がその信用保証会社と保証委託契約を締結することを貸付の条件とし,その信用保証会社に多額の保証料を得させることによって,容易に利息制限法を潜脱することが可能となる。

(4)  多くの金融機関では,被告のように,いわゆる子会社として信用保証会社を設立し,これに保証をさせて融資を実行している(公知の事実である)が,従前,その保証料が利息制限法3条の「みなし利息」に当たるか否かが問題となった事例があったことを,当裁判所は,寡聞にして知らない。しかし,そのような事例がなかったとしても,それは,金融機関においては,貸主である金融機関が受け取る利息等と信用保証会社が受け取る保証料等を合算しても,利息制限法の規制金利を超過しなかったためであると推察でき,上記解釈を妨げるものではない。

(5)  本件においてこれを見るに,後記証拠及び弁論の全趣旨によると次の事実が認められ,その事実によれば,被告は,顧客に対して営業政策として日本信用の保証を受けさせることを貸付の条件としており,他方,上記特段の事情を認めるに足る証拠はなく,かえって,被告は日本信用と資本面でも営業面でも人事面でも密接な関係があることが認められるから,日本信用が受け取る保証料及び手数料は,みなし利息に当たると解するのが相当である。

ア 被告は,顧客と手形貸付取引契約を締結する場合,顧客に対し,例外なく,日本信用との間で信用保証委託契約を締結することを求めている〔乙4,7〕。

イ 日本信用は,平成3年5月に設立された被告の100パーセント子会社である。日本信用の業務は,被告の顧客が被告から借入をする際に,顧客から保証料と事務手数料を徴して信用保証をすること及び代位弁済後の回収業務をすることだけである。平成12年3月31日において,被告の役員3名が日本信用の役員を兼務している(甲5の1ないし3,乙6)。

4  貸付金の振込手数料は,戊及び被告のいずれが負担するべきか(争点(4))

被告が顧客の当座預金口座に貸付金を振り込むために要する振込料は,顧客と被告との間の諾成的消費貸借契約(被告と顧客との間で借入条件が合意に達し,顧客が合意内容に沿った手形を被告に交付することによって成立すると解せられる)に基づく被告の貸付義務の履行に要する費用である。そうすると,特段の合意のない限り,これは被告が負担すべきものというべきである。

ところで,証拠(乙3の2)によると,被告と戊が平成11年9月3日付で作成した手形・小切手郵送契約書には,貸付金の振込手数料を戊が負担する旨の特約があることが認められるから,振込手数料は,同契約書作成以前は被告が負担するべきであり,以後は戊が負担するべきである。したがって,振込手数料名義の天引額は,同契約書作成前はみなし利息となり,作成後はみなし利息とならない。

5  以上の判断を前提に,本件各貸付の現在高を計算すると,別紙三の1,2のとおりとなり,これをまとめると次のとおりである。

(1)  利息天引方式で行われた貸付(別表三の1)については960万1503円が過払であって,これが被告の不当利得となる。

(2)  利息後取り方式で行われた貸付(別表三の2)については,85ないし89の貸付が過払であり,その合計は148万2751円である。90ないし93の貸付の平成12年7月28日(本件訴状の送達日であり,戊の相殺の意思表示が到達した日である)における現在高は,元本が914万0133円,利息が71万0097円(合計985万0230円)である。

6  そうすると,戊がした相殺の結果,戊の被告に対する不当利得返還請求権が123万4024円残存したことになる。原告らはこれを相続分に従って取得したから,その取得額は,原告甲が61万7012円,その余の原告らが各20万5670円である(1円未満切り捨て)。

7  よって,主文のとおり判決する。

(裁判官 井戸謙一)

(別表1ないし3省略)

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