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京都地方裁判所 平成12年(ワ)1510号 判決

原告 甲野太郎(仮名)

被告 国 ほか1名

代理人 加島康宏 伊藤寿彦 下野恭裕 佐野年英 西野彰記 岸良久雄 山本聖峰 柳昌仁 森口李夫 岩田千香子

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告らは、原告に対し、連帯して、100万円、及びこれに対する被告国については平成9年11月13日から、被告京都府については同月12日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

1  訴訟物

本件は、〈1〉暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成9年法律第70号、同第102号による改正前のもの。以下「暴対法」という。)3条に基づく京都府公安委員会の四代目会津小鉄(以下「訴外団体」という。)に対する平成7年7月20日付け指定処分(以下「平成7年指定処分」という。)、〈2〉同指定処分に係る意見聴取手続、〈3〉同指定処分に関する国家公安委員会の裁決がいずれも違法であり、これらにより、原告固有の名誉等が毀損されたとして、原告が被告らに対して損害賠償を求めた事案である。

2  争いのない事実

(1)  訴外団体は、京都市下京区東高瀬川筋上ノロ上ル岩滝町176番地の1に本拠を置き、原告を家父長とし、その擬制的血縁関係が連鎖する一定の範囲に属する者をもって構成された団体であるが、社団でも財団でもない(なお、四代目会津小鉄という名称は、原告個人を指す場合もあるが、以下においては、訴外団体を示す名称としてのみ用いる。)。

(2)  国会(衆議院・参議院)、国家公安委員会及び警察庁は、被告国の機関である。

(3)  京都府公安委員会及び京都府警察は、被告京都府の機関である。

(4)  国会は、衆参両議院の各地方行政委員会において、別紙記載の附帯決議(以下「附帯決議」という。)をした上、平成3年5月8日、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。以下「旧暴対法」という。)を成立させた(平成3年5月15日公布)。

その後、政府は、平成3年10月25日、旧暴対法の規定に基づき、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行令(平成3年政令第335号。以下「施行令」という。)を制定し、国家公安委員会は、同日、旧暴対法に基づき、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則(平成3年国家公安委員会規則第4号。以下「施行規則」という。)及び暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に基づく聴聞の実施に関する規則(平成3年国家公安委員会規則第5号。以下「聴聞規則」という。)を制定した。

旧暴対法、施行令、施行規則及び聴聞規則の施行期日は、いずれも平成4年3月1日である。

(5)  警察庁は、旧暴対法の施行前の平成4年1月29日、指定方針に関する広報を行い、原告を指定団体として発表した。

(6)  警察庁長官鈴木良一は、平成4年2月26日、全国暴力団対策主管課長会議において、暴力団の間に旧暴対法の指定逃れの動きや抗戦の構えが見えるので円滑な施行に全力を挙げるように訓示した。

(7)  京都府公安委員会は、平成4年4月24日、訴外団体に対し、指定聴聞のための同日付け聴聞通知書(四京公安第506号)を送達した。これに対し、訴外団体は、上記(5)の警察庁の発表は、旧暴対法の施行前に、無権限で行われたものであるところ、同発表に京都府公安委員会も関与しており、これが是正されないまま送達されたものであるから、上記通知書の受領を拒絶すべき正当な理由があるとして受領を拒絶したが、京都府公安委員会は、同日、差置送達をした。

(8)  京都府公安委員会は、平成4年5月21日、上記聴聞を実施し、訴外団体の申し立てた忌避申立てを却下した。

(9)  京都府公安委員会は、上記聴聞手続において、訴外団体が旧暴対法の違憲性について陳述しようとしたところ、その陳述を制限し、聴聞を終結する処分を行った。

(10)  京都府公安委員会は、平成4年7月27日、訴外団体を旧暴対法3条の指定暴力団として指定した(以下「平成4年指定処分」という。)。

(11)  訴外団体は、平成4年指定処分を不服として、平成4年8月3日、国家公安委員会に対して審査請求をしたが、国家公安委員会は、行政不服審査法25条1項ただし書に基づく口頭意見陳述や同法30条に基づく審尋をせず、京都府公安委員会に対し、新たな証拠書類や証拠物等の提出を求めることもしないまま、同年10月29日にその請求を棄却する旨の裁決を行った(以下「平成4年裁決」という。)。

(12)  訴外団体は、平成4年11月4日、京都地方裁判所に対し、平成4年指定処分の効力及び執行の停止を申し立てたが(京都地方裁判所平成4年(行ケ)第10号)、同裁判所は、上記指定処分の有効期間の最終日の5日前である平成7年7月21日、同申立てを却下する旨の決定を行った。

(13)  訴外団体は、平成4年11月4日、京都地方裁判所に平成4年指定処分取消訴訟を提起した(京都地方裁判所平成4年(行ウ)第31号)。

(14)  京都府公安委員会委員長小谷隆一は、平成7年5月26日、上記(13)の訴訟における被告代表者尋問期日に出頭しなかった。

(15)  京都地方裁判所は、平成7年9月29日、上記(13)の指定処分取消請求を棄却する旨の判決を言い渡した。

(16)  訴外団体は、上記の判決につき、大阪高等裁判所に控訴したが(大阪高等裁判所平成7年(行コ)第73号)、同裁判所は、平成8年7月17日、控訴棄却の判決を言い渡した。

(17)  訴外団体は、平成4年11月13日、東京地方裁判所に平成4年裁決処分取消訴訟を提起したが(東京地方裁判所平成4年(行ウ)第203号)、同裁判所は、平成6年3月8日、請求棄却の判決を言い渡した。

(18)  訴外団体は、上記(17)の判決につき、東京高等裁判所に控訴したが(東京高等裁判所平成6年第52号)、同裁判所は、平成6年11月30日、控訴棄却の判決を言い渡した。

(19)  旧暴対法の一部を改正する法律(平成5年法律第41号)が、平成5年5月12日に公布され、同年8月1日から施行され、行政手続法(平成5年法律第88号)の施行に伴う改正として、行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成5年法律第89号)が、平成5年11月12日に公布され、平成6年10月1日から施行された。なお、上記法律10条により、旧暴対法5条の「聴聞」の用語が「意見聴取」に改められた(以下聴聞規則を「意見聴取規則」という。)。

(20)  原告及び訴外団体は、平成7年2月6日、国及び京都府を被告として、上記(5)ないし(11)に関し、京都地方裁判所に損害賠償等請求訴訟を提起した(京都地方裁判所平成7年(ワ)第232号)。

(21)  原告及び訴外団体は、上記(20)の訴訟において、後記平成7年指定処分等につき、不法行為に基づく損害賠償請求の追加的変更を2回申し立てたが、京都地方裁判所は、平成8年7月9日及び平成9年1月10日、上記訴えの追加的変更をいずれも不許可とする決定を行った。

(22)  京都地方裁判所は、平成9年8月22日、訴外団体に対し、上記(20)の損害賠償請求につき当事者能力がないとして、訴えを却下する判決を言い渡した。

(23)  京都府公安委員会は、訴外団体に対し、原告の表示を通称名である「甲野太郎」ではなく、戸籍上の氏名である「乙野次郎」として、平成7年4月29日付け意見聴取書を送達した。

(24)  京都府公安委員会は、同年5月22日、訴外団体に対し、弁護士南出喜久治(以下「南出弁護士」という。)を補佐人とする申出については許可したが、同弁護士を代理人とする申出については不許可とした。

(25)  京都府公安委員会は、平成7年6月1日に実施され、訴外団体の代表たる原告と南出弁護士が出頭した意見聴取手続において、訴外団体が証拠調請求をし、手続の続行を求めたにもかかわらず、意見聴取手続を終結した。

(26)  京都府公安委員会は、平成7年7月20日、訴外団体を暴対法3条の指定暴力団に指定した(以下「平成7年指定処分」といい、暴対法3条に定める暴力団に指定することを「3条指定」という。)。

(27)  訴外団体は、京都府公安委員会による上記指定処分を不服として、平成7年7月27日、国家公安委員会に対して審査請求をしたが、同委員会は、同年10月26日、上記請求を棄却する旨の裁決を行った(以下「平成7年裁決」という。)。

第3争点及びこれに関する当事者の主張

1  本件の争点は、〈1〉法令違反の有無、〈2〉3条指定要件該当性の有無、〈3〉平成7年指定処分に係る意見聴取(以下「平成7年意見聴取」という。)手続の適法性、〈4〉平成7年指定処分の適法性、〈5〉平成7年裁決の適法性、である。

2  争点〈1〉(法令違反の有無)について

(1)  暴対法2条2号及び3条違反について

【原告の主張】

3条指定を受ける暴力団とは、暴対法2条2号及び3条各号のいずれにも該当する場合でなければならないが、平成7年指定処分は、同法2条2号の暴力団に該当する事実を認定せず、同法3条各号の要件に該当する事実のみを認めただけで3条指定しており、同法2条2号及び3条に違反する。

【被告らの主張】

3条指定の要件は暴対法3条各号に定めるものだけであり、他に要件となるものはない。同法2条2号は、その規定の内容から明らかなとおり、暴対法において使用する「暴力団」という用語の定義を定めた規定であって、これが3条指定の要件となるとの主張は、その前提において失当である。また、同法3条各号は、当該団体が、同法2条2号の定義する暴力団に確実に該当するといえるための要件を定めたものであり、同法3条各号の要件をいずれも充足する団体は、当然、同法2条2号の定義するところの暴力団である。

(2)  関係法令制定、運用について

【原告の主張】

ア 暴対法に基づく政令及び国家公安委員会規則の制定及びそれらの運用は、附帯決議に違反し無効である。

イ 内閣も 暴対法3条2号本文の求める「確実性」や「確率」に関する十分な立法資料が存在せず、「政令比率」を決定しうる根拠がないにもかかわらず、施行令を制定した。

【被告らの主張】

ア 政令又は国家公安委員会規則の制定及び運用は、附帯決議に即して、適正妥当に行われているが、仮に附帯決議に違反したとしても、附帯決議に法的効力はないから違法の問題は生じない。

イ 暴対法3条2号は、政令により、暴力団以外の集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率を超えることが確実であるものとして、当該政令で定める集団の人数の区分ごとに、国民の中から任意に抽出したそれぞれの人数の集団のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が当該政令で定める比率以上となる確率が10万分の1以下となる比率を定めるものとしている。ここでいう「国民の中から任意に抽出した集団」とは、特定の団体ないし具体的な人の集団を意味するものではなく、正に国民の中から任意に抽出した人の集まりを意味する。上記規定を受けて、施行令1条は、集団の人数の区分ごとに比率を定めており、同法3条2号の委任に基づき、かつ、委任の範囲内で定められたものであることが明らかであり、これを制定する根拠となる資料があることも明らかである。

3  争点〈2〉(暴対法3条の指定要件該当性の有無)について

(1)  暴対法2条2号の「暴力団」要件について

【原告の主張】

ア 訴外団体は、創始以来、任侠団体であり、暴力団ではない。

イ 訴外団体は、擬制的血縁関係により構成される団体であり、擬制的血縁関係上、会長の子又は弟に当たる者が本家の構成員であって、その子が更に子をもって一家を構えると本家からは分離独立した分家になり、分家の構成員は本家の構成員に含まれないから、傘下組織を含む全体を1個の団体と認定して行った平成7年指定処分には事実誤認がある。

【被告らの主張】

ア 訴外団体は、後記(2)ないし(4)のとおり、暴対法3条各号の各要件をいずれも充足する団体であるから、同法2条2号の定義するところの暴力団である。

イ 分家の長が本家の構成員にとどまり、代表者と直接の擬制的血縁関係を有しない準若中も本家の構成員であることについては原告も認めるところであり、この点と原告の上記主張は、それ自体矛盾したものである。また、後記(3)【被告らの主張】のエの(イ)記載のとおり、訴外団体は、この擬制的血縁関係が連鎖することにより組織が形成されていること、及び、後記(4)【被告らの主張】のイ記載の訴外団体の組織運営の方法からして、訴外団体はその傘下組織を含めて全体として1個の団体と認められる。

(2)  暴対法3条1号の要件(実質目的の要件)について

【原告の主張】

訴外団体の内規をみても、暴対法3条1号の定める目的を有する団体でないことは明らかである。

【被告らの主張】

暴対法3条1号要件が定める目的の存否は、名目上の目的のいかんにかかわらず、訴外団体が実質的な目的として、その構成員において訴外団体の威力を利用することを容認していると認められるか否かであり、仮に、訴外団体が任侠団体を標榜し、その活動の中にこれに沿う活動実態があるとしても、訴外団体について、以下の事実が認められるので、暴対法3条1号の要件に該当する団体であることは明らかである。

ア 暴力団としての威力の存在について

訴外団体は、平成7年指定処分当時、約1300人の構成員を擁し、2府1道1県に勢力を有する暴力団である。訴外団体の多数の構成員が、殺人、傷害、恐喝等の暴力的不法行為等を行っている。すなわち、平成7年4月20日現在で、訴外団体の幹部(施行規則2条に該当する者をいう。以下同じ。)134人のうちの48人が、暴対法別表に掲げる暴力的不法行為等に係る犯罪経歴保有者である。また、訴外団体の構成員は、平成4年指定処分以降平成7年4月20日までに、傷害、恐喝等の刑法犯や覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反等の特別法犯を敢行し、多数検挙されている。

訴外団体は、最近においても他の暴力団と対立抗争を起こしているが、これらの対立抗争においては、構成員がけん銃を相手の暴力団員や相手事務所に向けて発砲するなどの犯罪行為を敢行している。そして、平成4年指定処分以降平成7年4月20日までに、訴外団体の構成員から押収されたけん銃は92丁に上っている。

訴外団体内部においては、暴力的管理が行われている。すなわち、訴外団体の規律、指示等に違反した構成員に対しては、左手小指等の切断、集団リンチが加えられるなどの暴力行為が行われ、これによって規律等の維持が図られている。

訴外団体に関する以上のような事実は、新聞、テレビによる報道等を通じて、他の暴力団員ばかりでなく、一般市民にも広く知られており、訴外団体は暴力的性格を有する団体であるという認識及び印象が社会的に形成されていて、暴力団としての威力が存在している。

イ 訴外団体の構成員が訴外団体の威力を利用して資金獲得行為を行っている実態について

訴外団体の構成員が、訴外団体の暴力団としての威力を利用する方法としては、市民に対しては、訴外団体の名称を告知したり、組事務所への来訪を求めるなどの方法により相手を畏怖、困惑等させている。また、他の暴力団の構成員に対しては、資金獲得活動が競合した場合等に、相手に団体名を告げてこれを断念させたり、相手がこれに応じなかった場合には、けん銃を発砲することなどがあり、これらが発端となって対立抗争事件を惹起している。

このような威力を利用した資金獲得行為(以下「威力利用資金獲得行為」という。)の具体的事例としては、飲食店経営者等からのみかじめ料徴収、ささいなことに因縁をつけての金品要求、工事下請要求、覚せい剤の密売、賭博・ノミ行為等多岐にわたっている。

威力利用資金獲得行為自体が恐喝等の犯罪行為に当たり、又はこれらの行為の過程で傷害、監禁等の犯罪行為を犯したため、警察に検挙された訴外団体の構成員数は、平成4年指定処分以降平成7年4月20日までの間に260人に上っているが、この中には、末端の構成員だけでなく、多数の幹部構成員も含まれている。上記のような犯罪行為の被害者が自ら進んで警察に被害申告、被害相談等を行うことは少なく、むしろ被害申告をしたことによるお礼参りを恐れるなどの理由から、被害者が被害申告等を行わないでいる事例が多く、警察で検挙し得た事件は実際の被害事案のごく一部であると推測される。また、平成4年指定処分の有効期間内において、暴対法9条に違反して暴力的要求行為をしたため、京都府公安委員会等から暴対法に基づく37件の命令を受けている。

ウ 訴外団体がその威力を構成員に利用させ、又は構成員が利用することを容認している実態について

訴外団体は、ヒョウタンの形の代紋を使用しているが、訴外団体が京阪神では有名な暴力団であり、市民にもその代紋が知られていることから、構成員がその代紋を示すことにより、訴外団体が有する暴力団としての威力を示すことができる。訴外団体の構成員は、その所属する傘下組織を通じて代紋を型取ったバッジの交付を受けており、また、訴外団体の名称又は代紋を印刷した名刺を作成している。その他にも、訴外団体の構成員は、訴外団体の構成員であることを告知したり、訴外団体傘下組織の事務所を使用して資金獲得行為のための交渉等を行っている。このような行為のうち犯罪に当たるものがあり、多数の構成員が検挙されているにもかかわらず、訴外団体はその構成員に対し、上記のような行為を行うことを禁止していない。

過去において訴外団体が起こした対立抗争のうちの大半は、その構成員の縄張争いや資金源をめぐるトラブル等が原因となっているが、訴外団体においては、このような対立抗争において、訴外団体の最高幹部が関与したり、複数の傘下組織の構成員が関与するなど、組織的に対応している。

また、このような対立抗争に参加した構成員がそのことによって有罪判決を受け、服役した場合、訴外団体は、その者の服役の間、その家族の面倒を見たり、出所後に放免祝を行ったりしている。

このように、訴外団体は、構成員の資金獲得行為に関して他の暴力団と対立抗争が発生した場合、構成員がこれに参加することを賞揚し又は援助する態度を採っているのであるが、これにより多数の構成員が対立抗争に参加しやすくなり、これを敢行することにより他の暴力団に威力を示し、構成員の資金獲得行為に対する他の暴力団の介入を排除して、構成員の資金獲得行為を容易にしている。

訴外団体は、構成員が犯罪行為に当たる威力利用資金獲得行為を行ったことにより有罪判決を受けた場合であっても、訴外団体の威力を利用したことを理由として破門等の処分を行っておらず、このような者が現在も訴外団体の構成員として活動している。

以上のとおり、訴外団体は、暴力団としての威力を有しており、訴外団体の構成員が上記威力を利用して資金獲得行為を行うことを容認していると認められるので、訴外団体は暴対法3条1号要件に該当する団体である。

(3)  暴対法3条2号の要件(犯罪経歴保有者の比率の要件)について

【原告の主張】

ア 施行令1条には、構成員全員における犯罪経歴保有者比率のみを定めており、幹部構成員におけるそれを定めていない。

イ 施行規則3条2項1号には「最近」というあいまいな概念が用いられており、また、同号の要求する資料には何の限定もないが、これは、犯罪経歴保有者比率の算定の基準日を恣意的に選定し得ることになり、また、根拠や正確性の乏しい主観的文書も意図的に使用することを許容するもので、暴対法3条に違反する。

ウ 犯罪経歴保有者比率の算定の基準日は、同法8条2項2号の解釈上、指定公示日とすべきであり、それより以前の日をもって上記の基準日としたことは違法である。

エ 暴対法3条2号の認定について必要となる集団の人数とその特定、幹部の人数とその特定、犯罪経歴保有者の人数とその特定及び分類種別とその具体的事実等について明らかでないため、訴外団体が同号の要件に該当するとは認められない。

【被告らの主張】

ア 暴対法3条2号は、指定対象暴力団の幹部構成員のうちに占める犯罪経歴保有者の比率又は当該暴力団の全構成員に係る同比率が、暴力団以外の集団一般におけるその集団に係る同比率を超えることが確実であるといえるだけの比率、すなわち、国民の中から任意に抽出した集団に係る犯罪経歴保有者の比率が政令で定める比率以上となる確率が10万分の1以下となる比率を政令で定めることとしている。そして、同号を受けて施行令1条が定める各人数ごとの比率は、指定対象暴力団の幹部構成員のみからなる集団に対しても、当該暴力団の全構成員からなる集団に対しても、適用されるものとして定められた比率である。したがって、上記各集団ごとに定める比率が異ならなければならないということを前提として、施行令1条の違法を主張する原告の上記主張は、失当である。

イ 原告の主張は、上記指摘の点がどのように暴対法3条に違反するというのか明確ではなく、主張自体失当である。

ウ 犯罪経歴保有者比率の算定の基準となる日は、施行規則3条1項において、「法第3条第2号の規定による比率の算定の基準日は、法第5条第2項の規定による公示をする日前30日以内のいずれかの日でなければならない。」と規定されている。同項の趣旨は、3条指定については意見聴取等の事前手続を経ることを要するとされていることから、公安委員会の暴対法3条各号の要件該当性の判断時期と3条指定の時期に時間差が生じることとなるが、暴力団の構成員の人数は日々変動する可能性があるため、意見聴取以前の最新の日を基準日としてその人数を確定させて、暴対法3条2号の要件該当性の判断を行うこととしたものであるから、同項は合理性のある規定である。平成7年指定処分における基準日は平成7年4月20日(以下「平成7年基準日」という。)と定められたが、同基準日は暴対法5条2項の公示日である同年5月1日から前30日以内の日であるから、施行規則3条1項の規定に違反するところはない。なお、上記公示は意見聴取期日を同年5月25日とする旨のものであるが、その後、京都府公安委員会は、当時、訴外団体の代表者であった原告から意見聴取期日の変更の申出を受けて、同月15日、意見聴取期日を同年6月1日とする旨の公示をした。

エ 訴外団体が、平成7年基準日において、暴対法3条2号要件に該当する団体であることは、以下のとおりである。

(ア) 訴外団体の構成員の数について

訴外団体の構成員の総数は、平成7年基準日において、1332人である。

(イ) 訴外団体の階層構成について

訴外団体においては、平成7年基準日において、上位から、会長、総裁、相談役、若頭、本部長、副本部長、小頭、若頭補佐、若中(会長と直接擬制的血縁関係を結んでいる者)、準若中(将来の若中侯補者。傘下組織の構成員でもある。)の地位が定められており、その他の構成員は肩書のない会員の地位にあった。

ところで、訴外団体の組織構成をみると、本部(1次組織)を構成しているのは、上記の会長以下準若中の地位にある者までであるが、本部の傘下に若頭以下若中までの地位にある者(会長の擬制的血縁関係上の子又は弟に当たる者である。)が長となる組織(以下「2次組織」という。)があり、さらにその傘下に2次組織の構成員(2次組織の長の擬制的血縁関係上の子又は弟に当たる者である。準若中の地位を有する者もいる。)が長となる組織(以下「3次組織」という。)がある。上記のように、若頭以下若中の地位までの者は、本部の構成員であるとともに、2次組織の長であることがある(ただし、これらの者の中には2次組織の長となっていない者もいる。)。また、準若中は、本部の構成員であるとともに、通常は2次組織の長と擬制的血縁関係を結ぶことにより、2次組織の構成員ともなっており、更に3次組織の長にもなっていることがある。一方、準若中より下位の構成員は、上記の2次組織又は3次組織のいずれかに、それぞれの組織の長と擬制的血縁関係を結ぶことにより属しており(ただし、一部の2次組織の構成員は、3次組織にも属している場合がある。)、2次組織の構成員と3次組織の構成員の2つの階層に分かれている(擬制的血縁関係上、会長の孫又は甥等に当たる者≪2次組織の構成員≫とひ孫又は甥の子等に当たる者≪3次組織の構成員≫とに分かれている。)。

上記のように、訴外団体においては、会長等の下に、若頭補佐の地位の階層、若中の地位の階層、準若中の地位の階層、2次組織の構成員(1次組織において地位を有する者を除き、3次組織において地位を有する者を含む。以下同じ。)の地位の階層、3次組織の構成員(1次組織及び2次組織において地位を有する者並びに2次組織において地位を有する者を除く。以下同じ。)の地位の階層というように、段階的な階層により組織が構成されている。

上記の各地位にある構成員の人数は、平成7年基準日において、会長及び総裁各1人、相談役4人、若頭、本部長及び副本部長各1人、小頭6人、若頭補佐13人、若中53人、準若中53人、2次組織の構成員963人、3次組織の構成員235人であり、その合計は1332人である。

(ウ) 訴外団体の幹部の範囲及びその人数

平成7年基準日において訴外団体の施行規則2条に該当する幹部は、以下のとおりである。

当時、訴外団体の会長であった原告は、訴外団体を代表する者であり、施行規則2条1号に規定する暴力団を代表する地位にある者に該当する。次に、総裁は、先代当時の代表者であり、訴外団体においては顧問的立場から運営方針の決定に関与している。また、相談役は、顧問的立場にあって、訴外団体の運営方針の決定に関与している。さらに、若頭以下小頭までの者により構成される執行部は、傘下組織の人事を統制し、葬儀等の行事を管理するほか、訴外団体の運営方針等を決定する際に、会長の意思決定に関与し、決定された運営方針等を傘下組織に対して指示するなどしている。したがって、総裁、相談役及び執行部を構成する者は、訴外団体において、施行規則2条2号に規定する運営を支配する地位にある者に該当する。

訴外団体の全構成員の人数を基準に、訴外団体の構成員の人数を上位の階層に属する者から順に合計していくと、平成7年基準日において、上位から準若中の地位の階層までの合計数134人は全構成員の人数1332人の5分の1を超えないが、これに準若中の下位の階層である2次組織の構成員の地位の階層に属する者の人数963人を加えると、合計1097人となり、これは全構成員の人数の5分の1を超えることとなる。したがって、平成7年基準日において、施行規則2条3号に該当する者は、若頭補佐、若中及び準若中であり、その人数は119人である。なお、若頭補佐、若中及び準若中は、その配下に傘下組織を有する場合、その構成員に対し、指示命令することができるのであり、また、傘下組織の長ではなく、他の暴力団員に対して指示命令をすることができない場合であっても、上記若頭補佐等の地位にある者として傘下組織の長の地位にある者と同等の地位に立つ者である。よって、施行規則2条に規定する幹部に該当する者は、訴外団体において会長以下準若中までの地位にある構成員であり、その人数は134人である。

(エ) 訴外団体の幹部のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率

上記(ウ)の訴外団体の幹部のうち、平成7年基準日において、暴対法3条2号に規定する犯罪経歴保有者に該当する者は48人であり、幹部の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率は35.82パーセント(小数点以下第3位四捨五入)である。

(オ) 以上のとおり、平成7年基準日において、訴外団体の幹部構成員134人のうち犯罪経歴保有者の人数48人の占める比率は35.82パーセントであり、これは施行令1条に定める集団の人数が130人から139人の範囲にある場合における犯罪経歴保有者比率6.93パーセントを超えるものであるから、訴外団体は、暴対法3条2号要件に該当する団体である。

(4)  暴対法3条3号の要件(階層的構成の要件)について

【原告の主張】

暴対法3条3号要件は、社団性を前提とするものであるが、訴外団体は、社団ではない。

【被告らの主張】

暴力団の存在自体は暴対法制定以前から社会的事実としてあったものであり、暴対法はこのような社団性を必ずしも備えていない暴力団の構成員による暴力的要求行為等を規制するために制定されたものであるから、3条指定の対象となり得る団体の社団性の有無は問題となる余地はない。

訴外団体が、その代表者等の統制の下に階層的に構成された団体であることは、以下のとおりである。

ア 組織構成

訴外団体は、平成7年指定処分当時、会長、総裁、相談役、若中等、若中等の配下にあって当該若中等と擬制的血縁関係を結んでいる者、更にその者と擬制的血縁関係を結んでいる者により構成されており、会長を頂点とする擬制的血縁関係の連鎖により組織が形成されている。

このうち、会長、総裁、相談役、若中等、準若中が本部の構成員ないし直系の会員とされており、その他の者は、若中等が長となる傘下組織の構成員又はさらにその傘下の準若中等が長となる組織の構成員(傍系の会員と呼ばれる。)となっている。

上記傘下組織は、訴外団体の名称を冠してそれぞれの名称を名乗り、訴外団体の代紋を使用していた。また、訴外団体の内規は、傘下組織の構成員に対しても適用されている。これらの点に照らせば、上記傘下組織は、実質的には訴外団体の内部組織というべきである。

以上のとおり、訴外団体の組織構成は、会長を頂点として、階層的に構成されている暴力団である。

イ 組織運営の方法

(ア) 意思決定・伝達の方法

訴外団体の内規には、その組織運営についての詳細な規定はないが、組員人事、他団体との関係事務の処理、警察に対する対策等組織運営に関する最終的な意思決定は会長が行うこととされている。

会長は、その運営方針の決定に際して、執行部(若頭、本部長、副本部長及び小頭で構成される。)等の意見を参考にすることもある。

このようにして決定された訴外団体の運営方針は、準若中以上の構成員を招集して開催される総会において指示され、さらに、傘下組織の幹部は、総会での指示事項等について、自己の配下組員に対し指示を行ってる。なお、傘下組織に対しては、ファクシミリ等により指示される場合もある。このように、訴外団体の運営方針は、その組織の末端に至る構成員にまで伝達されている。

(イ) 構成員の加入脱退

構成員の加入を認めるかどうかは、傘下組織の長に裁量が認められている。新規加入構成員は、傘下組織の長等と擬制的血縁関係を結び、その傘下組織に属することにより、訴外団体の構成員となる。

傘下組織の構成員の脱退、排除は、執行部の承認を得て、傘下組織の長が破門(団体から追放する処分であるが、後に復帰の可能性を残すもの)、絶縁(当該団体から永久追放する処分)等の処分を科することによりされる。その際には、訴外団体の名称を冠した肩書を入れた傘下組織の長等の名義により、関係暴力団へ破門状、絶縁状等が発送されている。

(ウ) 賞罰、義務

訴外団体においては、傘下組織構成員のうち組織に対して功労の大きい者等を準若中として取り立て、また、訴外団体が関与した対立抗争事件に参加した傘下組織の功労者(対立抗争に参加し、これにより服役した者)に対して、出所後に放免祝を行うこととしている。

一方、構成員は、地位に応じて一定の会費を納入し、割当てにより本部又は傘下組織の事務所当番に従事し、対立抗争の発生に際しては、上位者からの命令に服してこれに参加するなど、会長、傘下組織の長等の指示、命令を遵守する義務を負う。

(エ) 以上のとおり、訴外団体は、その末端の傘下組織の構成員に至るまで、会長又は運営を支配する地位にある者による厳格な統制が及んでいる。

ウ 活動実態

原告は、他の暴力団との間で、縄張争い等を原因として対立抗争を繰り返しているが、対立抗争が発生した場合には、複数の傘下組織構成員が抗争に関与し、対立抗争の終結のための話合いは原告の最高幹部が行うなど、組織的に一体として対応している。

また、原告は、他の暴力団との関係の在り方や構成員の遵守事項等に関する原告の方針を、若中等を通じて、全構成員に指示、命令することにより、1個の組織体としての統制を図っている。

よって、訴外団体は、暴対法3条3号の要件に該当する。

(5)  証明資料の存否

【原告の主張】

京都府公安委員会には、平成7年指定処分に際し、訴外団体の暴対法3条各号の要件該当性を認めるに足りる資料が存在しなかった。

【被告らの主張】

原告の上記主張は全く根拠を欠くものである上、暴対法3条1号、3号要件については、上記主張の点は、本訴において要件の立証がされるか否かの立証上の問題であって、平成7年指定処分の違法事由にはなり得ないから、上記主張は失当である。

また、暴対法3条2号要件については、構成員の把握は、京都府警察等が日常の警察活動を通じて収集した資料に基づいて行ったものであり、上記資料は施行規則3条2項1号所定の資料に該当するものである。また、訴外団体の幹部の犯罪経歴については、暴対法36条4項に基づいて行った検察庁における前科資料の調査結果等に基づき認定したものであり、上記調査の報告書等は施行規則3条2項2号所定の公文書に該当するものである。

(6)  暴対法4条との関係

【原告の主張】

警察庁は、暴対法案の作成に当たり、広域暴力団については指定暴力団の連合体として指定することとしており、訴外団体は警察庁のいう広域暴力団であるから、暴対法に基づき訴外団体を指定するには、暴対法4条によるべきところ、同法3条による平成7年指定処分は、暴対法の適用を誤ったものである。

【被告らの主張】

暴対法4条による指定は、同法3条により指定された暴力団(指定暴力団)を除くものとされ(同法4条柱書)、また、同法4条の規定により指定された指定暴力団連合が同法3条により指定暴力団として指定されたときは、同法4条による指定を取り消さなければならないこととしている(同法8条3項)。以上のことから、暴対法上、同法3条による指定が原則とされていることは明らかである。

ところで、一般の暴力団組織をみると、広域暴力団に限らず、その長と構成員との間に擬制的血縁関係がみられ、更にその構成員が長となって傘下組織を形成するという形で擬制的血縁関係が連鎖することによって、重層的な組織を形成している。この擬制的血縁関係の連鎖による重層的組織に一体性がなく、各組の連合的な集まりにすぎないときは、同法3条による指定をすることはできないが、その組織全体について一体性があり、1個の団体と認められる場合には、その全体について暴対法3条各号の要件の充足性の有無が判断され、これが充足される場合には同条により指定することとなり、同法4条による指定の対象とはならないのである。

訴外団体については、前記のとおり、その傘下組織を含めて全体が一体性のある1個の団体と認められ、かつ、暴対法3条各号の要件を充足する団体であったことから、京都府公安委員会は訴外団体を同法3条により指定したのであり、平成7年指定処分に何ら暴対法の適用の誤りはない。

なお、警察庁は、暴対法制定当時、訴外団体について、暴対法4条による指定を予定していたことはない。

4  争点〈3〉(平成7年意見聴取手続の適法性)について

【原告の主張】

(1) 平成4年指定処分により指定暴力団として指定され、その有効期間中に平成7年指定処分の手続が行われたことは、二重指定手続であり、適正手続を保障する憲法31条に違反する。

(2) 3条指定については、指定の効力の始期を定めることはできず、公示の始期文言は無効であるから、指定の公示がされた平成7年7月20日から同月26日の間は明らかに二重指定であって、憲法13条、31条に違反する。

(3) 訴外団体は、平成7年意見聴取において、南出弁護士を代理人とする代理人選任届出書と委任状を提出したにもかかわらず、平成7年意見聴取の主宰者たる京都府公安委員会は、南出弁護士が代理人として権限を行使することを認めず、いったん受理した代理人選任届出書を原告に返送したが、これは違法であり、また、憲法31条に違反する。

(4) 京都府公安委員会が、意見聴取通知書等において訴外団体代表者の氏名を「甲野太郎」ではなく、「乙野次郎」と表示したことは、氏名の自己決定権を侵害し、憲法13条に違反する。

(5) 京都府公安委員会が、訴外団体の参考人・物件提出要求・鑑定・検証の申出をいずれも却下したことは、憲法13条、31条に違反する。

(6) 京都府公安委員会が、参考人の申出について却下決定を行ったことに対して、訴外団体による釈明にも応じなかったことを理由とした京都府公安委員会の委員全員の忌避の申出を却下したことは、憲法13条、31条に違反する。

(7) 京都府公安委員会が、平成7年意見聴取に代理人として出席した南出弁護士が申し出た意見聴取調書閲覧請求を拒否したことは、同弁護士の代理人たる権利を妨害した違法なものであり、また、上記のとおり同調書の閲覧を拒否したことは、同調書の内容が粉飾された不正確なものであることにほかならず、このような同調書に基づき審理された平成7年意見聴取手続は違法である。

【被告らの主張】

(1) 暴対法3条は、暴力団を指定する要件を定めた規定であるが、いまだ指定されていない暴力団に限って適用されるとの規定は置かれておらず、現に指定されている暴力団にも当然適用される。

暴対法に基づく指定は、同法による規制対象を明確にするための処分であるが、同法は、暴力団員に対する規制の必要性が3年間で消滅することを前提としているわけではなく、その規制の必要性がある以上、継続して指定されることを当然の前提としている。同法は、指定の有効期間を3年間としており、また指定をするためには、意見聴取(同法5条)、確認(同法6条)等の事前手続を経ることとしているから、暴力団員に対する規制を継続して行うには、指定の有効期間中に再度の指定手続を行うことが不可欠である。したがって、暴対法はそのように手続を進めることを当然の前提としていると解される。施行規則5条4号は、これを前提として、現に指定されている暴力団を指定する場合の公示事項を定めている。仮に、原告が主張するように、指定の有効期間を経過しない限り指定ができないこととすると、指定と再度の指定の間に間隙が生じて、その間は暴力団員に対する規制ができず、市民生活の安全と平穏を確保することができないこととなるが、そのような不合理な規制方法を暴対法が規定しているとは到底解し得ないから、原告の主張は失当である。

(2) また、暴対法7条2項は、指定の効力発生について、「公示によってその効力を生ずる」と規定するが、3条指定の附款として始期を定めることを禁ずる趣旨を含むものではない。

原告は、指定処分の附款として始期を定めることができないと主張するが、かかる解釈は不合理である。すなわち、現に指定されている暴力団に同法3条の指定手続はできないとすれば、指定と再度の指定の間に不可避的に間隙が生ずることとなるが、当然その間の暴力団員の行為については同法による規制を及ぼすことができなくなる。前記のとおり、このような解釈は不合理であり、根拠のないものといわなければならないが、一方、このような事態を避けるために、一つの指定の有効期間経過前に再度の指定をすると、前回の指定の効力と再度の指定の効力が一時期重複して生ずることとなるが、指定は暴対法の規制対象を明確にするための処分であって、指定の効力を重複させる必要はない。このように指定の効力を重複させなければ法律の目的が達成できないという制度を暴対法が採っていると解することはできないから、3条指定の附款として始期を定めることは当然許されると解される。

そして、平成7年指定処分における指定の効力は、平成4年指定処分における指定の有効期間が経過する平成7年7月26日の翌日である平成7年7月27日から生ずることとされており、指定の効力が重なることではなく、原告の二重指定という主張は失当である。

(3) 意見聴取規則において、暴対法5条1項の意見聴取にあっては、当事者とは、指定に係る暴力団を代表する者(意見聴取規則1条1号)、代理人とは当事者の委任を受け当事者に代わって意見聴取に出頭し当事者のために意見聴取に関する一切の手続をすることができる者(意見聴取規則1条2号)、補佐人とは意見聴取において当事者又はその代理人が意見を述べ、かつ、有利な証拠を提出することについて当事者又はその代理人を補佐する者(意見聴取規則1条3号)とされていることから明らかなとおり、代理人は当事者が意見聴取に出頭しない場合に当事者に代わって出頭する者であり、他方、補佐人は当事者又はその代理人とともに意見聴取に出頭する者であるから、同一人が意見聴取における代理人と補佐人を兼任することはあり得ない。

このため、京都府公安委員会は、当事者である原告の意向を確認したところ、原告は自ら平成7年意見聴取に出頭する意向であることが判明したため、南出弁護士が意見聴取における代理人として出席することを認める余地がないものと判断して、平成7年意見聴取に同人が補佐人として出席することを許可し、当事者である原告に通知するとともに(〈証拠略〉)、代理人選任届出書については当事者である原告に返還した(〈証拠略〉)。南出弁護士は、平成7年6月1日、平成7年意見聴取において、民事訴訟における代理人は当事者とともに出頭することが認められており補佐人ではなく代理人として出頭したなどと述べたが、主宰者が、意見聴取規則における代理人と補佐人の用語の意義を説明した上で、補佐人として出席を許可していることを説明し、南出弁護士も補佐人との呼び掛けにこたえて意見を述べるなど、自らが補佐人であることを自認していたのである。

以上のとおり、これらの措置に何ら違法はなく、原告の主張には理由がない。

(4) また、京都府公安委員会が、意見聴取通知書等において原告の氏名を「甲野太郎」ではなく「乙野次郎」と表示したのは、意見聴取規則に基づく法的手続において、団体代表者たる個人の同一性を確実に識別し特定する名称として適切と判断したためであって、原告自身「乙野次郎」が原告の戸籍上の氏名であり、「甲野太郎」は通称名であることを認めているのであるから、「乙野次郎」と表示したことに何ら問題はない。

(5) 意見聴取の当事者である原告が、平成7年意見聴取期日前に行った参考人の申出(〈証拠略〉)に係る参考人は、平成7年意見聴取の主宰者たる京都府公安委員会の公安委員全員、前公安委員、平成7年意見聴取期日当時の国家公安委員会委員長、平成7年意見聴取の当事者及び補佐人である。

しかし、意見聴取は、主宰者が当事者の意見を聴取し、証拠を審理する手続であるから、その手続において、主宰者が参考人としての自らの意見を聴取する必要がないことは明らかであり、また、意見聴取の当事者及び補佐人は、当事者又は補佐人として意見聴取において発言することが認められているので(意見聴取規則22条1項)、これに重ねて参考人としての地位を与えて発言させる必要がないこと(意見聴取規則においても、参考人は当事者や補佐人等以外の者とされている。意見聴取規則1条5号《現行》参照)も明らかである。さらに、原告は、上記の参考人に関する「証言の要旨及び立証の要旨」として、暴対法又は意見聴取規則の解釈、平成4年指定取消訴訟の内容、指定要件を認定するための資料が少ないこと、パチンコ営業が賭博であり、個室付浴場業が売春であること、京都府公安委員会が警察の傀儡であること、意見聴取通知書に記載された指定をしようとする理由が具体的でないこと等を挙げており、意見聴取の手続において、これらの事項に関して国家公安委員会委員長等の意見を聴取する必要が全くないことも明らかである。

次に、平成7年意見聴取の期日に、補佐人南出弁護士が申し出た物件提出要求は、平成4年指定取消訴訟の全記録の取寄せを求めるものであるが、これらの記録の内容は京都府公安委員会には明らかな事実であるから、意見聴取の手続において、これらの記録の提出を求める必要がないことは明らかである。また、仮に同補佐人がこれらの書類を証拠とする必要があると考えるのであれば、同補佐人は平成4年指定取消訴訟の訴訟代理人でもあり、当事者である原告は平成4年指定取消訴訟の原告代表者であって、自ら当該訴訟の全記録を提出することができるのであるから、物件提出要求の申出を認めないことは何ら不当なことではない。

また、平成7年意見聴取の期日に、補佐人南出弁護士が申し出た参考人、検証は、パチンコ営業における換金行為が賭博であり、個室付浴場業において売春行為が行われていること、又は警察がパチンコ営業や個室付浴場業からの暴力団排除活動をしていることに関するものであり、平成7年指定処分の適否とは全く関係のない事実を立証しようとするものであることから、平成7年意見聴取においてその証拠調べを行う必要がないことは明白であった。

なお、当事者である原告又は補佐人南出弁護士が提出した証拠書類も、同様の内容が記載された書類であって、意見聴取手続において証拠調べを行う必要がない内容であったが、当事者である原告又は補佐人南出弁護士が提出した証拠がこれに尽きることから、上記証拠書類については、これを受理したにすぎない。

さらに、平成7年意見聴取の期日に、補佐人南出弁護士が申し出た鑑定は、暴対法3条に基づいて現に指定されている暴力団を指定することができるかどうかについて、法律の専門家による鑑定を求めるというものであったが、このような法律的見解については鑑定になじまないから、主宰者たる京都府公安委員会が鑑定の必要がないと判断したことに何ら違法はない。

以上のとおり、京都府公安委員会は、当事者である原告又は補佐人南出弁護士が申し出た証拠調べ(〈証拠略〉)が必要と認められないため、意見聴取規則12条3項に基づき、参考人としての出席を求めない旨を当事者である原告に対して通知し、又は意見聴取規則33条2号に基づいて、補佐人南出弁護士の申出を却下したものであり、これらを違法な措置と解する余地はない。

(6) 原告は、京都府公安委員会が、当事者が事前に申し立てた参考人について却下決定を行ったことに対して、釈明にも応じなかったことを理由とした京都府公安委員会の委員全員の忌避の申出を却下したことは違法であるとも主張するが、上記事由は、意見聴取規則に規定された忌避事由(意見聴取規則5条1項)に該当しないことが明らかであり、主張自体失当である(〈証拠略〉)。

(7) 意見聴取調書は、主宰者の責任において作成する行政機関の内部文書であり、本来何人にもこれを閲覧させる必要のないものである。それにもかかわらず、意見聴取規則37条が、特に当事者又はその代理人による閲覧を認めた趣旨は、当事者又はその代理人は意見聴取に出席して意見を述べ、かつ、意見聴取に係る事実関係に詳しい立場にあることから、これに閲覧を認めることで意見聴取調書作成の適正を担保し、意見聴取の公正さを確保することにある、この趣旨にかんがみれば、同条は当事者又はその代理人以外の者による閲覧を一切認めていないと解するのが相当である。

南出弁護士は、平成7年意見聴取に補佐人として出席した者であるが、意見聴取規則37条は補佐人による閲覧を認めていない。また、南出弁護士が、平成7年意見聴取における当事者でないことはもちろん、代理人でもないことは明らかである。

したがって、京都府公安委員会が、南出弁護士による意見聴取調書の閲覧を拒否したことを違法と解する余地はない(〈証拠略〉)。

また、閲覧の拒否が違法でない以上、その拒否の違法を前提として意見聴取調書の内容を不正確なものとする原告の主張は、その前提を欠き失当である。

5  争点〈4〉(平成7年指定処分の適法性)について

【原告の主張】

(1) 京都府公安委員会委員長小谷隆一が、平成7年5月26日、平成4年指定取消訴訟における被告代表者尋問期日に正当な理由なく出頭しなかったため、訴外団体は、平成4年指定処分の違憲性・違法性を立証する機会を奪われた。平成7年指定処分は、平成4年指定処分と全く同様の指定であって、その違憲性・違法性は共通し、平成4年指定処分の違憲性・違法性が立証されれば、平成7年指定処分の違憲性・違法性も立証し得るから、平成4年指定取消訴訟において訴外団体の防御方法が上記のように妨害された状況下で、平成7年指定処分の手続が進められたことは、憲法32条、13条、31条に違反する。

(2) 京都府公安委員会は、警察を管理する能力も、自らの許認可の実態を認識、判断する能力も有しないものであり、平成7年指定処分は、実質は京都府警察が行ったものである。

京都府公安委員会のみならず、国家公安委員会や他府県の公安委員会も含めて、日本のすべての公安委員会が警察に対する管理能力を喪失し、警察の傀儡及びただの飾り物になっていることは公知の事実である。日本における過去及び現在のいかなる文献を精査しても、公安委員会は独自の判断で警察を十分に管理して、警察の不正を事前に予防したり、又は不正に対して事後に適切な措置を独自に実行したという具体的事例は1つも存在しない。

公安委員会について政府関係情報として存在するのは、「公安委員会は、警察の政治的中立性を保持して、民主的に警察を管理するものである。」という抽象的な教科書的説明のみであって、公安委員会が独自に調査、研究、企画した、具体的な民主的警察管理事例が1つも公表されたこともない。

これに反して、公安委員会は、すべて警察の言いなりになって、多数の許認可の承認をし、行政処分をしているという事実ばかりが公表され存在するのである。結局、日本の公安委員会なるものは、法制度上の建前は警察に対する民主的な管理機関とはされているが、その実態は、その本来的な法定の管理能力を発揮できない不思議な組織に変貌されてしまい、公表された多くの警察不祥事を醸成させた警察の独善性を放任し、これを庇護する警察翼賛機関となってしまっている。ほとんどの公安委員会は、警察問題について全く専門的な知識のない、いわゆる名士であろうと推定され、仮に、法的知識のある委員(弁護士や法学者等)であったとしても、その有益な知識を警察の意向に反する場合には発揮できないほどになっている。これが、公安委員会の実態であり、京都府公安委員会もその例外ではない。

したがって、平成7年指定処分は、暴対法3条に基づく公安委員会の指定処分ではなく、違法である。

【被告らの主張】

(1) 平成7年指定処分と平成4年指定処分とは別個独立の行政処分であり、平成4年指定処分に関する裁判における立証は、平成7年指定処分に関する手続の違憲性・違法性とは無関係である。

したがって、平成7年5月26日、平成4年指定取消訴訟における被告代表者尋問期日に、京都府公安委員会委員長が出頭しないまま、平成7年指定処分の手続が進められたことは憲法32条、13条、31条に違反するとの原告の主張は失当である。

(2) 京都府公安委員会が警察を管理する能力等を有せず、平成7年指定処分が実質は京都府警察が行ったものであることは否認する。

京都府公安委員会が平成7年指定処分を行ったことは、当事者間に争いがない事実であるし、そもそも、京都府公安委員会の能力や平成7年指定処分に関する関与の程度についての原告の主張は、およそ根拠がない上、平成7年指定処分の違法事由となるものでもない。また、平成7年指定処分に当たり京都府公安委員会が判断に用いた資料は、すべて京都府警察本部が収集、作成した資料であり、同事実は本件訴訟において明らかになっているが、これは警察法47条2項の「警視庁及び道府県警察本部は、それぞれ、都道府県公安委員会の管理の下に、都警察及び道府県警察の事務をつかさどり、並びに第38条第4項において準用する第5条第3項の事務について都道府県公安委員会を補佐する」との規定に基づいて適法に行われたものであって、何ら違法とされる余地はない。さらに、京都府公安委員会が、どの程度の時間をかけてどのように指定要件該当性の審議をするかは京都府公安委員会の合理的な裁量にゆだねられており、その態様により平成7年指定処分の適法性が左右されることほない。

6  争点〈5〉(平成7年裁決の適法性)について

【原告の主張】

平成7年裁決は、平成7年審査請求において、平成7年指定処分に係る意見聴取手続の違憲性・違法性、平成7年指定処分の違憲性・違法性が主張されたにもかかわらず、法令の解釈適用を恣意的に誤って、いずれの主張も違憲、違法ではないと判断したものであり、違法である。

【被告らの主張】

国家公安委員会は、法令の合憲性について判断する立場にはなく、この点についての判断を差し控えるとした上で、審査請求人である訴外団体は指定要件に該当しないことについて何ら具体的な主張をするものではなく、訴外団体が傘下組織を含めて全体が一体性のある団体として暴対法3条各号の要件を充足していることが認められ、また、指定手続も適法であるなどと判断した上で当該審査請求を棄却した。そして、平成7年指定処分の適法性等については既に述べたとおりであり、平成7年裁決に何ら違法な点はないから、原告の主張には理由がない。

第4争点に対する判断

1  争点〈1〉(法令違反の有無)について

(1)  暴対法2条2号及び3条違反の主張(第3の2(1))に対する判断

原告は、平成7年指定処分において、暴対法2条2号の認定がされていないから、違法であると主張する。

しかし、暴対法3条各号の要件を充足する団体であれば、当然に同法2条2号に該当するものといえることからすると、同法2条2号の認定をあえて3条該当の認定と別個に行う必要はない。したがって、上記原告の主張は採用できない。

(2)  関係法令制定、運用について(第3の2(2))に対する判断

原告は、施行令及び施行規則が附帯決議に違反したため、施行令及び施行規則が無効である、十分な立法資料が存在しないのに制定されたため、施行令が無効であると主張する。

しかし、附帯決議そのものは法的効力を有しないから、同決議の不遵守は、施行令並びに施行規則の制定及び運用に効果を及ぼすものではないし、また、施行令の制定にあたっては、政府が資料収集及びその選択につき裁量を有することから、政令及び十分な立法資料が存在しないというのみでは施行令及び施行規則を無効とするに足りる事情とはいえない。したがって、上記原告の主張は採用できない。

2  争点〈2〉(暴対法3条の指定要件該当性)について

(1)  前提事実及び〈証拠略〉によれば、以下の事実が認められる。

ア 訴外団体は、明治時代に存在した博徒集団の会津小鉄とは別の団体である。初代の会津小鉄こと上坂仙吉は、明治18年に死亡し、後を継いだ二代目の上場卯之松の没後、そのまま途切れた。訴外団体としての起源は、中島会にさかのぼるものであり、この中島会が、その名称を、昭和35年に二代目中島会、中島連合会、昭和50年に三代目会津小鉄会、昭和61年に四代目会津小鉄会、平成元年に四代目会津小鉄会と変更してきたのが訴外団体の沿革である。

イ 組織構成

(ア) 訴外団体の1次組織ないし3次組織の構成員の総数は、平成7年基準日当時、1332人である。

(イ) 訴外団体の階層構成について

訴外団体においては、平成7年基準日において、上位から順に、訴外団体を代表する会長の原告、顧問的立場で訴外団体の運営方針等の決定に関与する総裁・相談役、訴外団体の運営方針等の決定に関与し、決定された運営方針等を傘下組織に対して指示するなどして執行部を構成する若頭・本部長・副本部長・小頭、若頭補佐、若中、準若中(将来の若中候補者)の地位(以下「会長以下準若中」という。)が定められ、その他の構成員に肩書はなかった。

若頭補佐、若中及び準若中は、その配下に傘下組織を有する場合、その構成員に対し、指示命令することができ、また、傘下組織を有しない場合であっても、傘下組織の長の地位にある者と同等の地位に立っている。

訴外団体の組織構成についてみると、本部(1次組織)を構成しているのは、上記の会長以下準若中の地位にある者までであるが、本部(1次組織)の傘下に若頭以下若中までの地位にある者(会長の擬制的血縁関係上の子又は弟に当たる者である。)が長となる組織(以下「2次組織」という。)があり、さらにその傘下に2次組織の構成員(2次組織の長の擬制的血縁関係上の子又は弟に当たる者である。準若中の地位を有する者もいる。)が長となる組織(以下「3次組織」という。)がある。このように、若頭以下若中の地位までの者は、本部の構成員であるとともに、2次組織の長であることがある。また、準若中は、本部の構成員であるとともに、通常は2次組織の長と擬制的血縁関係を結ぶことにより、2次組織の構成員ともなっており、更に3次組織の長にもなっていることがある。一方、準若中より下位の構成員は、上記の2次組織又は3次組織のいずれかに、それぞれの組織の長と擬制的血縁関係を結ぶことにより属し(ただし、一部の2次組織の構成員は、3次組織にも属している場合がある。)、2次組織の構成員と3次組織の構成員の2つの階層に分かれている(擬制的血縁関係上、会長の孫又は甥等に当たる者《2次組織の構成員》とひ孫又は甥の子等に当たる者《3次組織の構成員》とに分かれている。)。

上記の各地位にある構成員の人数は、平成7年基準日において、会長及び総裁各1人、相談役4人、若頭、本部長及び副本部長各1人、小頭6人、若頭補佐13人、若中53人、準若中53人、2次組織の構成員963人、3次組織の構成員235人であり、その合計は1332人である。

(エ) 訴外団体の会長以下準若中のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率

上記会長以下準若中のうち、平成7年基準日において、暴対法3条2号に規定する犯罪経歴保有者に該当する者は48人(35.82パーセント)である。

ウ 組織運営の方法

(ア) 意思決定・伝達の方法

訴外団体の内規には、その組織運営についての詳細な規定はないが、訴外団体は、その運営方針、他の団体との関係処理等の重要事項については、若頭・本部長・副本部長・小頭で構成される執行部で審議し、会長が最終的な意思決定をし、その他の事項についても、執行部等の意見を参考にするなどして、会長が最終的な意思決定を行うこととされている(なお、内規8条には「総裁、会長の命令は至上たるべし」とある。)。

このようにして決定された事項や会長の指示命令は、毎月開催される総会において、準若中以上の構成員に対して指示され、さらに、これを受け、傘下組織の長が、自己の配下の構成員に対し同様の指示を行っている。このように、訴外団体の運営方針は、3次組織の構成員にまで伝達されている。なお、訴外団体の運営方針は、ファクシミリなどにより、傘下組織に伝達されることもある。

(イ) 構成員の加入脱退

構成員の加入を認めるかどうかは、各傘下組織の長に裁量が認められている。新規加入構成員は、傘下組織の長等と擬制的血縁関係を結び、その傘下組織に属することにより、訴外団体の構成員となる。

傘下組織の構成員の脱退、排除は、執行部の承認を得て、傘下組織の長が破門(団体から追放する処分であるが、後に復帰の可能性を残すもの)、絶縁(当該団体から永久追放する処分)等により、行う。その際には、訴外団体の名称を冠した肩書を入れた傘下組織の長等の名義により、関係暴力団へ破門状、絶縁状等が送付されている。

(ウ) 賞罰、義務等

訴外団体の内規は、1次組織ないし3次組織の構成員に対して適用されている。訴外団体においては、傘下組織構成員のうち組織に対して功労の大きい者等を準若中として取り立て、また、訴外団体が関与した対立抗争事件に参加し、これにより服役した構成員に対して、出所後に放免祝を行い、逆に、私的行為により服役した場合の出所祝いについては認めないこととしている。

また、訴外団体の本部(1次組織)は、準若中以上の構成員から、毎月一定額の上納金(会費)を徴収し、年末の「事始め」等の場合には、別途、金員を徴収し、本部事務所の維持管理費や他団体との義理掛け費用等に充てている。

また、構成員は、割当てにより本部又は傘下組織の事務所当番に従事し、対立抗争の発生に際しては、上位者からの命令に服してこれに参加するなど、会長、傘下組織の長等の指示、命令を遵守する義務を負う。

エ 暴力団としての威力の存在について

訴外団体の多数の構成員が、殺人、傷害、恐喝等の暴力的不法行為等を行っている。すなわち、平成7年基準日当時、会長以下準若中134人のうち48人が、暴対法別表に掲げる暴力的不法行為等に係る犯罪経歴保有者である。また、訴外団体の構成員は、平成4年指定処分以降平成7年基準日までに、傷害、恐喝等の刑法犯や覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反等の特別法犯を敢行し、多数検挙されている。

訴外団体は、他の暴力団と対立抗争を起こしているが、これらの対立抗争においては、構成員がけん銃を相手の暴力団員や相手事務所に向けて発砲するなどの犯罪行為を敢行している。そして、平成4年指定処分以降平成7年基準日までに、訴外団体の1次組織ないし3次組織の構成員から押収されたけん銃が92丁、実包が820個、訴外団体に対する、暴対法に基づく暴力的要求行為に対する中止命令が35件、再発防止命令が2件に上っている。

訴外団体内部においては、暴力的管理が行われている。すなわち、訴外団体の規律、指示等に違反した構成員に対しては、左手小指等の切断、集団リンチが加えられるなどの暴力行為が行われ、これによって規律等の維持が図られている。

訴外団体に関する以上のような事実は、新聞、テレビによる報道等を通じて、他の暴力団員ばかりでなく、一般市民にも広く知られており、訴外団体は暴力的性格を有する団体であるという認識及び印象が社会的に形成されていて、暴力団としての威力が存在している。

オ 訴外団体の構成員が訴外団体の威力を利用して資金獲得行為を行っている実態について

訴外団体の構成員は、市民に対して、訴外団体の名称を告知したり、組事務所への来訪を求めるなどの方法により、訴外団体の暴力団としての威力を利用して相手を畏怖、困惑等させ、資金を獲得している。具体的事例としては、飲食店経営者等からのみかじめ料徴収、ささいなことに因縁をつけての金品要求、工事下請要求、覚せい剤の密売、賭博・ノミ行為等多岐にわたっている。

威力利用資金獲得行為自体が恐喝等の犯罪行為に当たり、又はこれらの行為の過程で傷害、監禁等の犯罪行為を犯したため、警察に検挙された訴外団体の1次組織ないし3次組織の構成員は、平成4年指定処分以降平成7年基準日までの間に260人に上っているが、この中には、末端の構成員だけでなく、多数の幹部構成員も含まれている。

カ 訴外団体が構成員の威力利用資金獲得行為を容認している実態について

訴外団体は、ヒョウタンの形の代紋を使用しているが、訴外団体が京阪神では有名な暴力団であり、市民にもその代紋が知られていることから、構成員がその代紋を示すことにより、訴外団体が有する暴力団としての威力を示すことができる。訴外団体の構成員は、その所属する傘下組織を通じて代紋を型取ったバッジの交付を受けており、また、訴外団体の名称又は代紋を印刷した名刺を作成している。上記のとおり、多数の構成員が検挙されているにもかかわらず、訴外団体は、その構成員に対し、威力利用資金獲得行為を禁止していない。

過去において訴外団体が起こした対立抗争のうちの大半は、その構成員の縄張争いや資金源をめぐるトラブル等が原因となっているが、訴外団体においては、このような対立抗争において、訴外団体の最高幹部が関与したり、複数の傘下組織の構成員が関与するなど、組織的に対応している。

また、このような対立抗争に参加した構成員がそのことによって有罪判決を受け、服役した場合、訴外団体は、その者の服役の間、その家族の面倒を見たり、出所後に放免祝を行ったりしている。

訴外団体は、構成員が犯罪行為に当たる威力利用資金獲得行為を行ったことにより有罪判決を受けた場合であっても、訴外団体の威力を利用したことを理由として破門等の処分を行っておらず、このような者が現在も訴外団体の構成員として活動している。

(2)  判断

ア 暴対法3条1号の要件について

(ア) 上記認定事実によれば、訴外団体は、暴力団としての威力を有しており、訴外団体の構成員が同威力を利用して資金獲得行為をすることを容認していると認められるから、暴対法3条1号の実質目的の要件を充足する団体というべきである。

(イ) 原告は、訴外団体は、創始以来、任侠団体であり暴力団ではないと主張するが、訴外団体の一面のみをいうにすぎず、採用できない。

原告は、訴外団体の内規をみても、暴対法3条1号の実質目的の要件を充足しないと主張するが、内規は、訴外団体の活動実態を知るうえでの一つの資料にすぎず、上記(1)エないしカの認定事実によれば、上記原告の主張は、採用できない。

イ 暴対法3条3号の要件について

(ア) 上記認定事実によれば、訴外団体は、会長を頂点として、1次ないし3次組織により構成され、各傘下組織の運営に関しても、会長が最終的な意思決定をすることとされていると認められるから、訴外団体は、暴対法3条3号の要件も充足する団体というべきである。

(イ) 原告は、分家すれば、本家の構成員に含まれないから、傘下組織を含む全体を1個の団体として認定したのは事実誤認がある、また、暴対法4条による指定をすべきであったと主張する。しかし、上記認定事実によれば、訴外団体は、会長以下3次組織の構成員が直接又は間接的に擬制的血縁関係にあり、この擬制的血縁関係の連鎖により、1次組織から3次組織が形成されていることからすると、1次組織から3次組織を含めて1個の団体を形成しているというべきであるから、上記原告の主張は採用できない。

原告は、暴対法3条3号は、社団性を前提とするところ、訴外団体は、社団ではないと主張するが、同号が社団性を前提とすると解することはできないから、上記原告の主張は採用できない。

ウ 暴対法3条2号の要件について

(ア) 上記認定事実によれば、会長は、訴外団体の代表者たる地位を有することから施行規則2条1号に、総裁・相談役、若頭・本部長・副本部長・小頭は、顧問的立場又は執行部の構成員として、いずれも訴外団体の運営方針の決定に関与し得る地位を有することから施行規則2条2号に該当する。

また、上記認定事実によれば、若頭補佐、若中、準若中は、その傘下組織の構成員に指示命令することができ、又はそれと同等の地位を有すると認められるから、少なくとも、施行規則2条3号後段にいう「これに相当する地位の階層」にあるというべきである。

そして、準若中の下位の階層である2次組織の構成員の地位の階層に属する者の人数963人を、同階層より上位の階層に属する会長以下準若中の人数134人に加えると、合計1097人となる。同人数は、訴外団体の全構成員数1332人の5分の1を超えることとなる。したがって、若頭補佐、若中、準若中の119人が、施行規則2条3号に該当する。

よって、訴外団体において施行規則2条により幹部とされる者は、会長以下準若中までの地位にある構成員である。

また、上記認定事実によれば、平成7年基準日において、上記幹部134人のうち暴対法3条2号の犯罪経歴保有者48人の占める比率は、35.82パーセントであり、施行令1条にいう集団の人数130ないし139人の範囲にある場合における犯罪経歴保有者比率6.93パーセントを超えるものであるから、訴外団体は、暴対法3条2号要件を充足する団体というべきである。

(イ) 原告は、施行令1条は、構成員全員における犯罪経歴保有者比率のみを定め、幹部構成員におけるそれを定めていないと主張する。

しかし、施行令1条は、文言上、幹部構成員を除くとしていないことからすると、幹部構成員における犯罪経歴保有者比率についても定めていると解される。したがって、上記原告の主張は採用できない。

原告は、施行規則3条2項1号には「最近」というあいまいな概念が用いられ、また、同号の要求する資料には何の限定もなく、不正確な文書の利用を許容するから、同号が暴対法3条に違反すると主張する。

しかし、「最近」という文言が、一概にあいまいとはいえないことや、同法3条2号柱書が、国家公安委員会規則に同号の規定による犯罪経歴保有者の比率の算定を委任するにあたり、資料の内容についてまで規定することを求めているとは解されないことから、施行規則において、資料に関する規定が定められたとしても、これが同法3条2項に違反するということにはならない。したがって、上記原告の主張は採用できない。

原告は、暴対法8条2項2号の解釈上、犯罪経歴保有者比率の算定の基準日を指定公示日とすべきであると主張するが、独自の見解であって、採用できない。

原告は、暴対法3条2号の認定について必要となる集団の人数とその特定、幹部の人数とその特定、犯罪経歴保有者の人数とその特定及び分類種別とその具体的事実等が明らかではないため、同号の要件を充足しないと主張するが、上記認定事実に照らし、採用できない。

エ 原告は、京都府公安委員会には、平成7年指定処分に際し、訴外団体の暴対法3条の要件該当性を認めるに足りる資料が存在しなかったと主張する。しかし、同主張それ自体は、平成7年指定処分の違法事由たり得ず、上記のとおり、訴外団体が暴対法3条の要件を充足する団体であると認められることからすると、上記原告の主張は採用できない。

3  争点〈3〉(平成7年意見聴取手続の適法性)について

(1)  原告は、平成7年指定処分の手続が平成4年指定処分の有効期間中に行われ、これは、二重指定手続であり、憲法31条に違反すると主張する。

しかし、3条指定は、暴対法による規制対象を明確にするための処分であり、有効期間後に必要があると認められる場合には、間断なく継続的に指定がされることを予定していると解される。そして、3条指定をするためには、意見聴取(同法5条)、確認(同法6条)等の手続を要し、先行する指定処分の有効期間中に、次の指定処分のための手続を進める必要があるため、同法は、当然に、かかる手続がされることを予定していると解される。また、3条指定は、暴対法による規制対象を明確にするための処分にすぎず、指定処分が重複してされたとしても、これにより、当該暴力団に不利益が生じるとは解し難い。したがって、上記原告の主張は採用できない。

(2)  原告は、3条指定にあたっては、指定の効力の附款として始期を定めることはできず、平成7年指定処分に係る指定が公示された平成7年7月20日から平成4年指定処分の有効期間満期日である同年7月26日までの間は、二重指定であって、憲法13条、31条に違反すると主張する。

しかし、暴対法7条2項は、「公示によってその効力を生ずる」と規定するものの、附款として3条指定の効力の始期を付することを禁止しているものとは解されないから、指定の効力の始期を定めることができないことを前提とする上記原告の主張は採用できない。

(3)  原告は、京都府公安委員会が、平成7年意見聴取において、南出弁護士が代理人として権限を行使することを認めなかったのは違法であると主張する。

しかし、意見聴取規則によれば、代理人とは、当事者の委任を受け当事者に代わって意見聴取に出頭し当事者のために意見聴取に関する一切の手続をすることができる者をいうところ(同規則1条2号)、訴外団体の代表として出頭した原告は、同規則上、当事者とされることから(同規則1条1号)、平成7年意見聴取において、南出弁護士を代理人として認めることはできなかったというべきである。また、南出弁護士は、補佐人として、平成7年意見聴取に出頭していることから、同弁護士が代理人として認められなかったことにより、原告に不利益が生じたとはいえない。したがって、上記原告の主張は採用できない。

(4)  原告は、京都府公安委員会が、意見聴取通知書等に原告の氏名を通称名である「甲野太郎」ではなく、「乙野次郎」と表示したことは、氏名の自己決定権を侵害すると主張する。

しかし、意見聴取通知の送達等の暴対法上の指定に係る手続は、厳格な要件と手続の下に行われなければならないのであり、被指定団体の代表者は、その利益を最もよく代弁するものとして、意見陳述等の役割を担うものであるから(同法5条)、上記代表者の特定については、正確性と確実性が要求される。したがって、少なくとも暴対法上の手続においては、氏名の表示は可能な限り、戸籍名ないし外国人登録原票に登録された氏名によるべきである。

よって、上記原告の主張は採用できない。

(5)  原告は、京都府公安委員会が、参考人、物件提出要求、鑑定、検証の申出をいずれも却下したことは違憲であると主張する。

しかし、平成7年意見聴取手続の主催者である京都府公安委員会は、当事者等からの証拠の申出に対する採否の判断を含め意見聴取手続の進行について裁量を有するから、証拠の申出に対する採否の判断が著しく不当というような場合でない限り、違法とはいえないと解される。そして、上記却下の判断が著しく不当といえるかにつき、具体的な主張もなく、これを認めるに足りる証拠もない。したがって、上記原告の主張は採用できない。

(6)  原告は、京都府公安委員会が、参考人の申出を却下したことについて、釈明にも応じなかったことを理由とした同公安委員会の委員全員の忌避の申出を却下したことは、違憲であると主張する。しかし、上記理由は、忌避事由である意見聴取規則5条1項各号のいずれにも該当せず、上記忌避の申出自体失当であるから、上記原告の主張は採用できない。

(7)  原告は、京都府公安委員会が、南出弁護士による意見聴取調書の閲覧の申出を拒否したのは違法であり、閲覧が拒否されたのは、上記意見聴取調書が粉飾された不正確なものであることにほかならないと主張する。しかし、意見聴取規則37条によれば、意見聴取調書の閲覧をすることができる者は、同規則にいう当事者又は代理人とされ、前記のとおり、南出弁護士が同規則にいう代理人に該当しないことからすると、京都府公安委員会が同弁護士による意見聴取調書の閲覧を拒否したことは正当な措置であるから、上記原告の主張は採用できない。

4  争点〈4〉(平成7年指定処分の適法性)について

(1)  原告は、平成4年指定処分と平成7年指定処分の違憲性・違法性が共通するとし、京都府公安委員会委員長が、平成4年指定取消訴訟における被告代表者尋問期日に出頭せず、違憲性・違法性を立証する機会を奪われ、訴外団体の防御が妨害された状況下において、平成7年指定処分の手続が進められたことは違憲であると主張する。

しかし、平成4年指定処分と平成7年指定処分は別個独立の行政処分であり、上記各指定処分に係る各手続も相互に別個のものであるから、平成4年指定処分と平成7年指定処分の違憲性・違法性も、それぞれ個別に主張立証され、判断されるべきであるから、上記各指定処分の違憲性・違法性が共通することを前提とした原告の主張は採用できない。

(2)  原告は、公安委員会が、過去から現在において、警察を管理する能力もなく、警察の傀儡であることから、平成7年指定処分を実質的に行ったのは、京都府公安委員会ではなく、京都府警察であるから、暴対法3条に違反すると主張する。

しかし、暴対法は、同法制定当時の公安委員会を前提として、3条指定を各都道府県公安委員会に委ねたものといえるから、仮に原告主張のとおり公安委員会に警察を管理する能力がなかったと仮定しても、平成7年指定処分を京都府公安委員会が行った以上、同指定処分が同法3条に違反するということはできない。したがって、公安委員会が警察の傀儡であることを前提とする上記原告の主張は採用できない。

5  争点〈5〉(平成7年裁決について)

原告は、平成7年裁決が、平成7年指定処分及びこれに係る意見聴取手続の違憲性・違法性等が主張されたのにもかかわらず、法令の解釈適用を誤り、上記違憲性・違法性の主張を採用しなかったことは、違法であると主張する。

しかし、上記のとおり、平成7年指定処分及びこれに係る意見聴取手続に違憲性・違法性が認められず、その他に平成7年指定処分に関して違憲性・違法性についての具体的な主張もなく、かつこれを認めるに足りる証拠もない。したがって、上記原告の主張は採用できない。

第4結論

以上のとおりであって、その余を判断するまでもなく、原告の請求は理由がないからいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法67条2項、61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 赤西芳文 本吉弘行 矢作泰幸)

(別紙)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律案に対する附帯決議

衆議院

政府は、本法施行に当たり、次の諸点に留意し、その実効に遺憾なきを期すべきである。

1 暴力団の不法、不当な行為による国民の権利、自由への侵害はいまや放置することができない実情にあることにかんがみ、関係機関の協力を緊密にし、暴力団の壊滅のための総合的かつ有効な対策を確立することに努めるとともに、本法の的確な運用を含めて暴力団の不当行為及び犯罪の摘発、取締りを強化し、その解体と団員の更正を推進すること。

2 本法の運用に当たっては、国民の人権の侵害、事業者の営業の自由を損ねないよう特段の配慮を払うとともに、職権の濫用のないよう十分留意すること。

3 本法に基づく質問権、立入権等については慎重に運用すること。

4 法の精神に基づき、公開による聴聞の原則を遵守し、例外規定の行使については慎重な検討を行うこと。

5 本法が、事業者に対して責務と負担を求めるものではないこと及び事業者に対する援助等は事業者の要望に基づき、任意に行われるものであることに留意すること。

6 都道府県暴力追放運動推進センター等の設置と運営については、国民や事業者の誤解を招くことのないよう十分な配慮を払うこと。

7 警察官の綱紀粛正に努めるとともに、警察官、警察事務職員をはじめとする地方公務員の待遇改善を推進すること。

8 本法施行に伴う政令、国家公安委員会規則及び運用については、国会のしかるべき場において意見を聴くなど、的確な措置を講ずるほか、本法の運用に当たっては、広く国民の意見を反映させるため必要な措置を講ずること。

9 警察庁は、法案の提出に際してはその時期等について改善を図るとともに、立法府の審議権の保証に特段の配慮を払うこと。

右決議する。

参議院

政府は、本法施行に当たり、次の諸点に留意し、その実効に遺憾なきを期すべきである。

1.暴力団の不法、不当な行為による国民の権利、自由への侵害はいまや放置することができない実情にあることにかんがみ、関係機関の協力を緊密にし、暴力団の壊滅のための総合的かつ有効な対策を確立することに努めるとともに、本法の的確な運用を含めて暴力団の犯罪及び不当行為の摘発、取締りを強化し、その解体と団員の更正を推進すること。

2.本法の運用にあたっては、国民の人権を侵害し、事業者の営業の自由を損ねないよう特段の配慮を払うとともに、いやしくも職権が濫用されることのないよう十分留意すること。

3.本法に基づく質問権、立入権等については慎重に運用すること。

4.法の精神に基づき、公開による聴聞の原則を遵守し、例外規定の行使に当たっては慎重な検討を行うこと。

5.本法が、事業者に対して責務と負担を求めるものではないこと及び事業者に対する公安委員会の援助等の措置は事業者の申出に基づき、任意に行われるものであることに留意すること。

6.都道府県暴力追放運動推進センター等の設置と運営については、国民や事業者の誤解を招くことのないよう十分な配慮を払うこと。

7.警察官の綱紀粛正に努めるとともに、警察官、警察事務職員等の待遇改善を推進すること。

8.本法に基づく政令及び国家公務委員会規則並びにその運用については、本委員会に設置される小委員会において意見を聴くなどの措置を講ずるほか、本法の運用に当たっては、広く国民の意見を反映させるため必要な措置を講ずること。

9.警察庁は、法案の提出に当たっては、立法府の審議権を損なうことのないよう、その時期等について改善を図ること。

右決議する。

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