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京都地方裁判所 平成10年(ワ)861号 判決 1999年11月25日

原告

甲野太郎

右訴訟代理人弁護士

小林務

右同

中村和雄

右同

大脇美保

右同

遠藤達也

被告

株式会社京都銀行

右代表者代表取締役

秋元満

右訴訟代理人弁護士

森川清一

右同

吉永透

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  請求

被告は,原告に対し,960万1526円及びこれに対する平成9年7月1日(退職日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

二  事案の概要

本件は,原告が被告に対し,労働契約に基づき,平成8年1月から平成9年5月までの未払時間外勤務手当205万0763円及びこれと同額の付加金の支払を求めると共に,被告の幹部らから嫌がらせと昇進差別を受けて退職を余儀なくされたとして,民法709条又は715条に基づき,慰謝料500万円及び弁護士費用50万円の支払を求めた事案である(なお,弁論終結後,3回にわたって和解期日を重ねたが,和解成立に至らなかった。)。

1  争いのない事実

(一)  原告は,平成4年5月1日被告に入行し,府庁前支店に配置され,外国為替事務(以下「外為事務」という。)を担当し,平成6年8月1日九条支店に転勤し,外為事務を担当すると共に,貸付係の業務(融資業務)をも担当し,平成7年7月1日紫野支店に転勤し,平成9年6月30日退職した。

(二)  被告の就業規則では,始業時刻は午前8時35分,終業時刻は週初,週末及び月末の各営業日が午後5時35分,それ以外の日が午後5時であり,休憩時間は午前11時から午後2時までの間において60分間業務に支障のないよう交替して取るものとされている。

(三)  仮に原告が平成8年1月から平成9年5月までの間に別紙<2>ないし<18><<4>~<18>略>記載のとおり時間外勤務をしたとすれば,その時間外勤務手当の計算関係は別紙<1>記載のとおりであるから,未払時間外勤務手当の合計は205万0763円となる。

2  争点

(一)  被告は,原告に対し,時間外勤務手当の支払義務を負うか。すなわち,原告は,平成8年1月から平成9年5月までの間,別紙<2>ないし<18>記載のとおり時間外勤務をしたかどうか。

原告は,(1) 就業規則上,始業時刻は午前8時35分とされているが,それより前に男子従業員全員が出勤して金庫を開扉し,開店の準備作業が行われていた外,少なくとも毎週月曜日と木曜日には午前8時30分ころから午前9時ころまで朝礼が行われ,毎週水曜日には午前8時ないし8時10分ころから融得会議が行われており,(2) 就業規則上,午前11時から午後2時までの間において60分間休憩時間を取ることが認められていたが,実際には,原則として外出が禁止されており,30分に満たない時間しか休憩することができず,(3) 就業規則上,終業時刻は午後5時又は午後5時35分とされていたが,その後も残業しており,従業員の平均退行時間は午後8時過ぎころであった,と主張している。

これに対し,被告は,(1) 従業員2名が金庫を開扉してキャビネット類を運び出し,当日の処理案件を仕分け整理して各担当者に配布していたのであり,男子従業員全員で搬出するよう指示したことはなく,朝礼は,午前8時30分ころからではなく,金銭出納係4名の準備完了後に行っており,融得会議は,開始時刻の定めのない自発的なものであり,被告が原告に同会議への出席を強制したことはなく,また,原告の担当業務は午前8時35分から午前9時までの25分間で十分に執務の準備が可能なものであり,(2) 昼の休憩時間を30分しか認めないような労務管理はしておらず,(3) 原告は,主として外為事務を担当しており,その仕事量は外交担当の従業員と比べて少なく,終業時刻を過ぎても仕事をしなければならないほど多忙ではなかった,と反論している。

(二)  被告及びその幹部らは,原告に対して原告の主張する不法行為に及んだか。これによって原告が被った損害の額はいくらか。

原告は,被告が原告その他の従業員に日常的に違法な時間外労働を強制し,時間外勤務手当の支給については実残業時間のごく一部しか認めなかったので,平成7年6月ころ上司の課長にその改善を申し入れたが,逆に支店長らから部下が上司にクレームを付けたとして非難された外,同年7月1日付で九条支店から紫野支店に配転となり,平成7年8月に係長に昇進するはずであったが,これを見送られるなど,被告の幹部らから嫌がらせと昇進差別を受け,退職を余儀なくされ,多大の精神的苦痛を被ったので,これに対する慰謝料は500万円が相当であり,更に,原告は,本件訴訟の提起及び追行を弁護士に委任せざるを得なかったので,弁護士費用として50万円を要した,と主張している。

これに対し,被告は,(1) かねてより最終退行時刻の月平均を午後7時台前半とするように全店舗で業務内容を見直し,各従業員が効率的な仕事をして早帰りが実行できるよう勧めていた外,午前8時以前の店舗への立入りを原則として禁止するなど,できる限り時間外勤務をさせないよう努めてきた,(2) 原告が平成7年6月ころ課長から注意されて口論となったとき,残業問題等の改善の申入れはなかったし,その後の紫野支店への転勤は,原告の希望と被告の人事配置の都合によるものであり,同年10月1日時点で原告と同期扱いの同僚34名中17名が係長に昇進した際,原告を係長に昇進させなかったのは,対人関係が苦手で協調性の乏しい原告に部下を掌握させ指導育成させることに不安があったからであり,また,原告が退職を希望したときには,当時の支店長が慰留に努めており,原告を退職に追い込んだことはない,と反論している。

(三)  原告の付加金請求権は,2年の除斥期間が経過したことによって消滅したか。

被告は,仮に被告が時間外勤務手当の支払を怠ったとしても,違反のあった時から2年の除斥期間が経過したので,原告の付加金請求権は消滅したと主張している。

これに対し,原告は,被告に対する付加金請求権の除斥期間は被告の悪質性が明らかになった本件訴え提起時から起算すべきであって,除斥期間は問題とならないし,仮にこれが問題となるとしても,除斥期間が経過したのは一部についてのみであると反論している。

三  争点に対する判断

1  争点(一)について

(一)  証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によると,大要,次の事実を認めることができる。なお,原告の供述中,右認定に反する部分は,他の関係証拠に照らして採用することができない。

(1) 原告は,平成4年5月1日被告に雇用され,府庁前支店や九条支店で外為事務を担当し,更に,平成7年7月から紫野支店で外為事務を担当していたものであり,同支店において午前9時の開店までに済まさなければならない仕事量は,始業時刻である午前8時35分から午前9時までの間に十分済ませることができる程度であり,また,平成9年1月には,支店長に提出する自己開発ノートに仕事の量は適当であるなどと記載した。

(2) また,原告は,自己開発ノートで人事部役席との面談を希望し,平成9年4月2日と同月10日の2回にわたり,人事部次長小林正幸(以下「小林」という。)と面談し,時間外勤務手当について労働基準法に違反していること,上司にクレームを付けたことが原因で昇進が遅れたことを訴えたが,その際,原告自身の仕事が忙しく,始業時刻前や終業時刻後に仕事をしなければならないという苦情を述べたことはなかった。

(3) 内海進(以下「内海」という。)は,平成6年6月29日から平成8年3月31日まで紫野支店の支店長を務め,その間,始業時刻前にいわゆる融得会議を行っていたが,自主的なもので,欠席しても制裁はなく,時間外勤務には当たらないものと認識しており,また,午後7時を過ぎてもかなりの人数の男子従業員が残り,いわゆる持ち帰り残業もあったが,自主申告がない限り時間外勤務とは扱わなかった。

(4) 高木幾久雄(以下「高木」という。)は,平成8年4月1日から平成10年9月末日まで紫野支店の支店長を務め,着任後しばらくしてから,午前8時までは営業室に入らないことと,金庫開扉時刻も午前8時15分以降とすることを指示した外,支店長が残っていても気にせずに退行し,また仕事をできるだけ持ち帰らないよう指示したが,時間外勤務については自主申告に任せていた。

(5) 紫野支店では,重要な書類や物品を約17,8個のキャビネットに収納して地下1階の金庫に保管し,開店前に,同金庫を開扉してキャビネットを運び出し,これをリフトに乗せて1階に上げ,各担当者が開店の準備をしており,その準備完了まで約25分を要したが,右搬出作業を行っていたのは,男子従業員2名から4,5名程度であり,男子従業員全員で右搬出作業をすることはなく,そのように指示されたこともなかった。

(6) また,紫野支店では,平成8年4月当時は毎日朝礼が行われており,高木が支店長に着任してしばらくしてからは,月初めと月曜及び木曜にだけ朝礼が行われるようになったが,その朝礼は,金庫が開扉され開店の準備が完了した後で,基本的には始業時刻の午前8時35分ころから約10分間,長くても午前9時の開店の1,2分前までの間,従業員全員が集まった1階の営業室で行われていた。

(7) 更に,紫野支店では,2階の会議室に営業関係の課長と男子従業員が集まり,融資先の状況等を報告して情報を交換するため,週1回の割合で始業時刻前にいわゆる融得会議が行われ,平成9年5月の同会議ついてはすべて労働時間として扱われた上,人事部長作成の平成10年3月26日付「時間管理の徹底について」と題する書面では,自主参加形式であっても業務であるので,時間外勤務手当の支給対象として厳正に管理するよう記載されていた。

(8) 高木は,いわゆる融得会議のうち平成9年4月以前のものについては,自発的な会議と認識していたこともあって厳格に管理しておらず,毎週水曜日に時間を決めて必ず開催していたわけではなく,会議録もない上,手持案件がなければ必ずしも出席な(ママ)くても差し支えなく,出席者が固定していなかったため,何日に何時から何時まで誰が出席して開催されたかが明らかでなく,結局,時間外勤務として扱わなかった。

(9) 被告は,従業員は午前11時から午後2時までの間に60分間業務に支障のないよう交替して休憩時間を取るものとしていたが,顧客の来訪や電話があった場合,担当者しか分からないこともあるので,昼休みにも連絡が取れるようにするため,従業員が各支店から外出できるのは,予め行先を届け出て承認された場合に限っており,紫野支店でも,従業員は,基本的に同支店2階の食堂を利用するなどして適宜休憩を取っていた。

(二)  右に認定した事実の外,後記2(一)(1)及び(2)の事実をも考慮し,平成8年1月から平成9年5月までの間の被告の紫野支店の状況を検討すると,次の諸点を指摘することができる。

(1) 地下1階の金庫内のキャビネットに重要な書類や物品を保管し,始業時刻前に同金庫を開扉してキャビネットを運び出し,開店の準備をしていたので,少なくとも同金庫を開扉してキャビネットを運び出す仕事に従事した従業員については,その時間が労働時間に含まれるといわなければならないが,すべての従業員にとって同金庫の開扉時刻が労働時間の起算点になるとはいえない上,原告が右仕事に従事したかどうかは明らかでなく,また,原告の仕事量は,午前8時35分から午前9時までの間に開店の準備を済ませることができる程度のものであったのであるから,金庫の開扉時刻に関する原告の主張は採用することができない。

(2) 朝礼が1階の営業室で行われ,これには従業員全員が出席しており,出席するかどうかが従業員の判断に委ねられていたとは考え難く,その内容も,一般的に業務に関する連絡や訓示等であったと推測されるので,従業員には朝礼への出席が義務付けられており,朝礼に出席した時間は労働時間に含まれるということができるが,朝礼が行われた時間は,金庫が開扉され開店の準備が完了した後であり,基本的には始業時刻の午前8時35分ころからであったと認められ,始業時刻前に朝礼が行われていたと認めるべき的確な証拠はないので,結局,始業時刻前に朝礼が行われていたとの原告の主張を採用することはできない。

(3) いわゆる融得会議は,2階の会議室に営業関係の課長と男子従業員が集まり,融資先の状況等を報告して情報を交換するため,週1回の割合で行われていたものであり,同会議の内容に照らし,一応従業員の自主性に任されていたとしても,それは手持案件がないときは出席するに及ばないという程度のものであり,そうでないときは出席が義務付けられていたとみることができ,同会議に要した時間は労働時間に含まれるというべきであり,実際に平成9年5月の同会議についてはすべて労働時間として扱われたが,同年4月以前の同会議の実施状況については,実施された日にちや時間,原告の出席の有無を確認するための的確な証拠がないといわざるを得ない。

(4) 昼の休憩時間については,従業員が支店から外出できるのは行先を届け出て承認された場合に限られていたが,それは顧客が来店したときや顧客から電話があったときの便宜のためであり,被告が従業員に労務を遂行すべき職務上の義務を課していたとはいえず,もし従業員が顧客の来訪や電話に対応したとしても,労働から解放されて自由に利用できる時間が60分間は保障されていたといえるので,原告の主張,すなわち,休憩時間は長くても30分間であって,残りの30分間は労働時間に含まれる旨の主張を採用することはできない。

(5) 被告では以前から従業員の早帰りを推進し,退行時刻が遅くとも午後7時台前半となるよう努めており,実際にも多数の男子従業員が午後7時以降も支店内に残って仕事をしていた上,いわゆる持ち帰り残業も行われていたことが窺われるが,他方において,仕事をしていないのに付き合いで支店内に残っている者がいた外,原告については,その経験や仕事の量,小林に対する訴えの内容等に照らし,終業時刻後も仕事をしなければならなかったとは認め難いので,結局,仮に従業員の平均退行時刻が午後7時を過ぎていたとしても,原告について終業時刻後の時間外勤務を認めるのは困難である。

(三)  右(二)で検討したとおりであるから,従業員の時間外勤務が自主申告に任されているなど,被告の労働時間の管理や時間外勤務の取扱に不明朗な点があることは否定できないとしても,原告が別紙<2>ないし<18>記載のとおり時間外勤務をしたと認めるには証拠が不十分であるといわざるを得ず,被告が原告に対して時間外勤務手当の支払義務を負うということはできない。

2  争点(二)について

(一)  証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によると,大要,次の事実を認めることができる。なお,原告の供述中,右認定に反する部分は,他の関係証拠に照らして採用することができない。

(1) 被告は,以前から早帰り運動をやっており,「グッバイ・セブン」と名付けた運動月間を設け,全店舗で最終退行時刻の月平均を午後7時台前半とするように業務内容を見直し,各従業員が効率的な仕事をして早帰りを実行できるように勧めており,一方,被告の従業員組合も,統一早帰り運動の推進を柱に時間外労働の縮減に取り組むことなどを中心として,総労働時間の短縮に向けての要請をしてきた。

(2) 被告では,人事部長から各部店長に対して再三「時間管理の徹底について」と題する書面を発し,出勤時刻につき,原則として午前8時以前の店舗への立入りを禁止し,金庫開扉時刻を午前8時35分以降とし,早朝会議についても,その必要性を十分検討すると共に,極力就業時間内で実施することとし,退行時刻は,遅くとも午後7時台前半となるよう徹底し,いわゆる付き合い残業のないようにすることなどを指示してきた。

(3) 原告は,九条支店の労務管理が不当であるとして不満を抱いていたところ,同支店において,顧客を怒らせたのに謝罪しなかったことなどがある外,平成7年6月ころ,課長代理から原告が仕事を部下に押し付けたとして注意され,これに反抗し,更に当時の営業課長森誠一とも口論となったが,その際,仕事が終わっても帰りにくい雰囲気があるという話はしたものの,残業問題について改善の申入れをしたわけではなかった。

(4) 原告は,支店長に対して転勤を願い出たことに加え,紫野支店において外為事務の担当者が負傷して入院したため,同支店から人事部に後任を依頼していたこともあり,同支店に転勤となったものであるが,その転勤の際に,当時の同支店長内海が原告を激励するため「役席に付くためには紫野支店で1,2年ぜひ頑張るように」と話したのを,1,2年は昇進できないと言われたものと受け取った。

(5) 被告は,平成7年10月1日の時点で原告と同期扱いの同僚34名のうち17名を係長に昇進させたが,その際,原告については,外為事務には何も問題がなかったものの,九条支店での顧客への対応,上司や部下との人間関係等に照らし,対人関係が苦手で協調性が乏しいものと判断し,そのような原告を係長に昇進させ,部下を掌握させて指導育成させることに危惧の念を抱いたため,原告の係長への昇進を見送った。

(6) 原告は,九条支店の上司と衝突し,これが原因で紫野支店に転勤となり,しかも係長に昇進できず,真面目に仕事をしても不当な人事の扱いによって原告の努力が評価されないと思い,平成8年10月ころから退職を考え始め,平成9年1月,自己開発ノートに,労務管理面での扱いについて上司にクレームを付けたことによって人事面でペナルティを課すのは不当な取扱である旨記載し,右1(一)(2)のとおり小林と面談したが,原告の思い込みが激しいのではないかなどと言われ,退職の意思を固めた。

(7) 高木は,男子行員から退職したいとの申出を受けたときは,一般に,一時期の感情に左右されて軽率な退職をしないよう配慮し,妻帯者の場合には配偶者とも会って,家庭内でも退職について話し合ったのか,退職の意思は固いのかどうかを確認してきたものであり,平成9年5月22日原告から退職の申出があったときも,同月26日,原告の妻と会い,原告が熟慮して退職の決意を固めたことなどを聞き,翻意を促すのは無理であると判断した。

(二)  右に認定した事実によると,被告は,原則として午前8時以前の店舗への立入りを禁止し,各従業員が効率的な仕事をして早帰りを実行できるように勧めるなど,できるだけ時間外勤務をさせないよう努めていたものの,その一方で,右1(三)のとおり,被告の労働時間の管理や時間外勤務の取扱に不明朗な点があったことも否定できないのであるが,いずれにせよ,原告が労働条件の改善を申し入れたことが原因で,上司から非難されたり昇進を見送られたりしたとは認め難く,退職を余儀なくされたともいえないので,結局,被告及びその幹部らが原告に対する不法行為に及んだと認めることはできない。

3(ママ) 結論

以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないので棄却を免れないというべきである。

(口頭弁論の終結の日平成11年7月15日)

(裁判官 河田充規)

別紙 <1> 支払い実績 実際労働による請求額

<省略>

<2> 1996(H8)1月

<省略>

<3> 1996(H8)2月

<省略>

<4>~<18><略>

<19>-1~2

実際労働による正当要求額の算定明細(H8/1~H9/5)

(算定方法についての説明)

1. 早朝

就業規則によれば午前8時35分が始業時刻である。

従って実際の就労時刻から同始業時刻までを時間外労働とすることを目標とした。金庫の開庫時刻を就労開始時刻としているものが圧倒的に多いが厳密には金庫開庫時刻より以前に労働は開始されており算定時間の始期としては正確ではない。客観的に開庫行為が支店幹部による労働開始の絶対的な意思表示であることなどから手帳にこの時刻を記録したものである。

なお,カッコ書きによる(8:05)という時刻は男子行員の全員がいずれの時期においても,遅くともかつ間違いなく労働を開始していた時刻であることからこの時刻を勤務開始時間とみなし,原告が記録を行なっていない場合に採用したみなし時刻である。

会議とあるのは原告が出席した早朝会議のことであるが,原告が記録したもののみ記載しており,すべて記録されているのではない。

2. 昼休み

就業規則によれば1時間の昼休みが認められている。

従って実際の休憩時間と1時間との差額を時間外労働とした。

カッコ書きによる(30分)という時間は原告による記録のない場合にみなし休憩時刻として採用したものである。実際には原告の平均休憩時間は30分をはるかに下回るものであったが,30分程度の休憩時間をとっていた記録も散見されることから,この最長である時間を採用した。

3. 定時後

就業規則によれば週初・週末(一般に月・金曜日)および月末営業日は午後5時35分,それ以外の日は午後5時が定時とされている。

そしてその後,10分の休憩が付与された後は時間外勤務の扱いになるとされている。

要求による算定の始期は午後5時ないし同5時35分であり終期は原告が仕事を終え,自己の席を立ち去る時刻である。

10分間の休憩が考慮されていないのは永年被告の間ではこの時刻が休憩時刻として扱われることはなく全行員が就労体制にあり,労働法の規定に照らしてもその体が休憩時間とはおおよそかけ離れていることからその実質を考慮した。

(カッコ書き)による時刻は原告に就労時刻終了の記録がない場合支店平均退行時刻を採用したものである。

日にちをマルで囲んでいる日は定時が午後5時35分の日である。

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