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さいたま家庭裁判所久喜出張所 平成25年(家ロ)501号 決定

主文

本件申立てを却下する。

理由

一  申立ての趣旨

(1)  a家庭裁判所(事件番号〈省略〉)の執行力ある審判書正本に基づき、債務者は、債権者に対し、下記条件で未成年者らを面会させよ。

(ア)  頻度及び日程

二ヶ月に一回。ただし、毎偶数月の第一日曜日とし、当該第一日曜日に面会が実施されなかったときは、その月の第二日曜日とし、当該第一日曜日と第二日曜日のいずれにも面会が実施されなかったときは、その月の第三日曜日とする。

(イ)  時間

債務者が債権者又は債権者が予め指定した者に対し未成年者らを引き渡してから債務者が未成年者らの引渡しを受けるまでの時間を、面会一回につき二時間とする。ただし、債権者の判断により短縮することを妨げない。

(ウ)  面会交流の方法

b県c市内において面会を実施し、債権者は面会交流を支援する第三者を立ち会わせることができる。第三者の立会いに要する費用は、債権者が負担する。債務者は面会に立ち会わない。

(2)  債務者が、本決定の告知を受けた日以降、前項の義務を履行しないときは、債務者は債権者に対し、不履行一回につき二五万円の割合による金員を支払え。

二  基礎となる事実

(1)  債権者及び債務者は、元夫婦であるが、当事者間の長男A(平成一三年○月○日生)及び長女B(平成一五年○月○日生)の各親権者を母として、裁判離婚した。

(2)  債権者は、平成二二年九月二日、子の監護に関する処分の調停(当庁事件番号〈省略〉)を申し立て、未成年者らとの面会を債務者に求めた。

同事件は、平成二三年七月七日、不成立により終了し、審判事件に移行した(当庁事件番号〈省略〉)。審判移行後、家庭裁判所調査官による子の状況等調査を経て、平成二四年一〇月一二日、下記の条件で面会をさせる旨の審判が出された(以下「本件審判」という。)。

(ア)  頻度及び日程

審判確定の日の属する月の翌月から二ヶ月に一回。ただし、毎偶数月の第一日曜日とし、当該第一日曜日に面会が実施されなかったときは、その月の第二日曜日とし、当該第一日曜日と第二日曜日のいずれにも面会が実施されなかったときは、その月の第三日曜日とする。

(イ)  時間

債務者が債権者又は債権者が予め指定した者に対し未成年者らを引き渡してから債務者が未成年者らの引渡しを受けるまでの時間を、面会一回につき二時間とする。ただし、債権者の判断により短縮することを妨げない。

(ウ)  面会交流の方法

b県c市内において面会を実施し、債権者は面会交流を支援する第三者を立ち会わせることができる。第三者の立会いに要する費用は、債権者が負担する。債務者は面会に立ち会わない。

債務者は、本件審判を不服として東京高等裁判所に対し即時抗告をした(同庁事件番号〈省略〉)が、東京高等裁判所は、抗告を棄却し、平成二四年一二月二七日、確定した。

三  当事者の主張

(1)  債権者の主張

ア  平成二五年一月中旬ころ、債権者は、公益社団法人dセンター(以下「dセンター」という。)ファミリー相談室の職員を通じて、債務者に対し面会交流の設定を要求したが、債務者は、上記職員に対し、「実家には来るな、弁護士を通せ」と述べる一方で、どの弁護士に連絡すればいいのか等について回答しなかった。

イ  同年二月一七日、債権者、dセンター職員らと同ファミリー相談室で待機していたが、債務者は未成年者らを連れてこなかった。また、来られないことについて連絡もなかった。

ウ  債権者は、a家庭裁判所に対し、履行勧告を申し出た。

同庁調査官は、同月二六日付履行勧告書を送付した。また、同年三月七日、同庁調査官は、債務者の父に対し、平成二五年四月七日にc市内のdセンターで待っていることを債務者に伝えてほしい旨連絡した。

同日、債権者、dセンター職員らで、同ファミリー相談室にて待機していたが、債務者は未成年者らを連れてこなかった。また、来られないことについて連絡もなかった。

エ  以上によれば、債務者は平成二五年二月以降、債務名義に表示された行為を目的とする債務の履行を一切拒否し、これを不履行している。

そして、債務者の収入、債権者は月一〇万円の養育費を支払っていること、債務者は六年にわたって、強硬に面会交流の設定を拒否していることなどからすれば、強制金の金額は高額に設定する必要がある。

(2)  債務者の主張

ア  平成二五年一月頃、dセンター職員から、実家に電話があり、どのような立場の者か分からないまま、債務者の母が対応した。同人は、債務者に連絡し、二六日に来るといっていた、確認して連絡すると伝えた、感じが悪い人だなどと話した。その翌日、債務者の母が未成年者である当事者間の長女B(以下「長女」という。)に対し、上記職員の連絡先を伝え、連絡しないと来てしまう、などと伝えた。債務者は、連絡先電話番号に電話をかけたが、なかなかつながらず、三日目にようやく連絡が取れた。このとき、実家への連絡はやめてほしい旨述べた。そして、二六日は都合が悪い旨伝えたが、日程の調整がつかず、そのうち会話が聞こえなくなり、電話が切れてしまった。その後も電話をしたがつながらなかった。

イ  数日後、上記職員が自宅に来たと聞いたため、同人に電話をかけ、実家への来訪はやめてほしい、自分への連絡方法は債権者に確認してほしいと伝えると、同人は、債権者と連絡がとれないと話したものの、実家への連絡はしないことを約束した。

しかし、数日後、また同人が実家に赴いたことを聞き、同人に対して苦情を述べ、信用できないと伝えた。

ウ  以後、自分のところには、子らの面会について連絡が来ていない。審判では、面会開始の時間などについては決められていなかったため、開始時間も決まっていないまま、dセンターで債権者と職員が待っていたことは知らなかった。そもそも、審判書では、dセンター職員が子らの送迎をすることになっていた。

エ  債権者と未成年者らが面会することはかまわないと考えているが、未成年者らが、強く拒否している。

三  当裁判所の判断

(1)  本件審判確定後、平成二五年二月、同年四月の二回、債務者が義務を履行すべき時期が到来しているが、いずれも履行されていない。

(2)  債務者は、面会交流の開始時間が決められておらず、また、dセンターで債権者らが、未成年者らとの面会交流に備えて待機していたのを知らなかったと主張する。

まず、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合には、上記審判に基づき監護親に対し、間接強制決定をすることができると解するのが相当である(最判平成二五年三月二八日第一小法廷決定)。

これを本件審判についてみると、面会交流の日時、頻度、面会交流の長さについては主文において明示されており、これらの点の特定には欠けるところはない。

しかしながら、未成年者らの引渡し方法としては、相手方(債務者)が申立人(債権者)又は申立人(債権者)が予め指定した者に対し引き渡すことが定められているのみで、具体的な引渡しの日時、場所等が明示されているものではない。

この点、本件審判は、面会の開始時刻については、状況に応じ、当事者間で協議して定めることを予定したため、債務者がなすべき未成年者らの引渡しの内容を特定していないと認められる。

そうすると、本件審判においては、債務者がすべき給付が十分に特定されているとはいえず、本件審判に基づき間接強制決定をすることはできない。

(3)  なお、債務者は、未成年者らが、面会交流を望んでいないことを理由とするが、本件審判は、未成年者らが債権者との面会に対して拒否的であることをふまえ、その背景に当事者間の深刻な対立関係があったことを指摘し、相手方に対し、未成年者らの債権者に対する嫌忌の感情を緩和すべく尽力することをも求めているから、債務者の不履行を正当化する理由にはならない。

(4)  以上によれば、本件審判に基づき、間接強制決定をすることはできないから、申立ては理由がない。

よって、主文のとおり審判する。

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