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さいたま地方裁判所川越支部 平成26年(ワ)510号 判決

原告

同訴訟代理人弁護士

伊須慎一郎

鴨田譲

被告

T株式会社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

河本毅

上松信雄

水野奈也

本多芳樹

被告

株式会社F

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

中山慈夫

男澤才樹

増田陳彦

高仲幸雄

中山達夫

池邊祐子

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  被告らは、原告に対し、連帯して、300万円及びこれに対する平成26年7月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

第2事案の概要等

1事案の概要

原告は、平成24年3月頃、被告株式会社F(以下「被告F」という。)に派遣スタッフとして登録して日雇派遣労働者として稼働し、同年9月頃から、被告T株式会社(以下「被告T」という。)に派遣されて就労し、同年10月からは、被告Fによる職業紹介を受け、被告Tに雇用されて就労していた。

本件は、原告が、①被告らは、日雇派遣及び日々職業紹介という形式で原告を労働者として供給しており、職業安定法(以下「職安法」という。)44条に違反する、②被告らは、かかる違反行為である日雇派遣及び日々職業紹介により、原告が受けるべき賃金から労働基準法(以下「労基法」という。)6条に違反する中間搾取をした、③被告らは、かかる違反行為である日雇派遣及び日々職業紹介を通じて、一貫して、原告を労働契約法17条2項に違反する日雇いという不安定雇用の地位に置いた、④被告らは、かかる違反行為である日雇派遣及び日々職業紹介を通じて、原告の給与から振込手数料を控除し、労基法24条1項の賃金全額払の原則に違反した、⑤被告らは、かかる違反行為である日雇派遣及び日々職業紹介だけでなく、被告Tが人員を確保するために、さらに職安法44条に違反して原告を待機させ、また、待機していた原告に対して、被告Tで就労できるとの期待を不当に抱かせながら、就労できない場合にその機会を奪った、⑥原告は、被告Fと被告Tにおける過重な労働により、両前腕部に傷害を負ったが、これは被告らが安全配慮義務を怠ったためであるなどとして、被告Fと被告Tは、共同して上記①から⑥の行為に及び、原告はこれらにより精神的苦痛を被ったと主張し、また、被告Fについては、⑦原告は、被告Fから派遣されて平成24年6月から8月頃、A社などで就労したが、被告Fは、原告と派遣契約を締結したにもかかわらず、これを一方的にキャンセルしたり、派遣先の場所や業務内容について誤った情報を提供するなどし、⑧原告は、平成24年11月頃、被告Tにおいて、待機していたにもかかわらず就労できなかったことについて苦情を申し立てたところ、被告Fは、原告に対し、意図的に仕事を紹介しなかったこと等の嫌がらせを行い、原告は、被告Fの上記⑦、⑧の行為により精神的苦痛を被ったと主張して、被告らに対し、民法709条、719条1項に基づき、連帯して、慰謝料300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(争いのない事実及び後掲各証拠により容易に認定される事実)

(1)  被告Fは、一般労働者派遣事業、特定労働者派遣事業、有料職業紹介事業などを目的とする株式会社である。

(2)  被告Tは、倉庫業、物品の仕分け、梱包、包装及び発送業務の請負などを目的とする株式会社である。

(3)  原告は、平成24年3月18日(以下、年月日について特に記載がない場合には、平成24年のことである。)、被告Fとの間で、派遣社員として登録をした。

(4)  ア 原告は、6月5日午前11時頃、被告Fとの間で、就業日を同月6日、就業時間を午前9時から午後6時まで(うち休憩1時間30分)、就業場所をA社のKセンターとし、時給を800円、業務内容を倉庫内での仕分・梱包業務などとする労働契約を締結した(書証略)。

被告Fの担当者は、同日午後4時42分、原告に対し、上記業務について、「大変申し訳ありませんが、キャンセルの連絡を受け、ご紹介ができません。」、「一度お電話させていただきましたが、お出にならなかったため、メールでご連絡いたしました。」、「大変申し訳ないのですが、キャストポータルより、ご検索の程、よろしくお願い致します。」とのメールを送信した(書証略)。

イ  原告は、同月14日午前10時頃、被告Fとの間で、就業日を同月16日、就業時間を午前9時から午後6時まで、就業場所をA社のKセンターとし、時給を800円、業務内容を倉庫内での仕分・梱包業務などとする労働契約を締結した(書証略)。

被告Fの担当者は、同月15日午後4時31分、原告に対し、「時間帯の変更がございます。」、「電話にでられなかったため、メールでご伝達させていただきます。」として、就業時間を午前9時30分から午後6時30分に変更する旨のメールを送信した(書証略)。

ウ  原告は、7月2日午後2時頃、被告Fとの間で、就業日を同月3日、就業時間を午前9時30分から午後6時30分まで(うち休憩1時間30分)、就業場所をA社のKセンターとし、時給を800円、業務内容を倉庫内での仕分・梱包業務とする労働契約を締結した(書証略)。

被告Fの担当者は、同日午後5時26分、原告に対し、上記業務について、「すみません、明日のA社はキャンセルとのことです。」、「他のお仕事のご案内をさせていただきますので、ご連絡ください。」とのメールを送信した(書証略)。

(5)ア  原告は、8月16日午前7時頃、被告Fとの間で、就業日を同月17日、就業時間を午前9時15分から午後6時45分まで(うち休憩時間1時間15分)、就業場所をG社のHセンターとし、時給を830円、業務内容を郵便物の仕分け作業とする労働契約を締結した(書証略)。

被告Fの担当者は、同月16日午前11時頃、原告に対し、上記業務について、「大変申し訳ありませんが、キャンセルの連絡を受け、ご紹介が出来なくなりました。」、「大変恐縮ですが、再度検索またはお電話をお願い致します。」とのメールを送信した(書証略)。

イ  原告は、8月16日午後10時頃、被告Fとの間で、就業日を同月18日、就業時間を午前9時15分から午後6時45分まで(うち休憩時間1時間15分)、就業場所をG社のHセンターとし、時給を830円、業務内容を郵便物の仕分け作業とする労働契約を締結した(書証略)。

被告Fの担当者は、同月17日午後5時頃、原告に対し、上記業務について、「大変申し訳ありません。明日のお仕事が、キャンセルとなってしまいました。」、「現在、代わりのお仕事をご用意しております。メールをご覧になられましたら、お手数ですがお電話ください。」とのメールを送信した(書証略)。

ウ  被告Fの担当者は、8月24日午後0時57分、原告に対し、同月25日の仕事が決定したとのメールを送信した。当該仕事は、就業日を同月25日、就業時間を午前9時30分から午後5時30分、時給を800円、業務内容を倉庫内での仕分・梱包業務とするものであった。(書証略)

就業場所はG社のHセンターであった。

被告Fの担当者は、同月24日午後1時11分、原告に対し、上記就業時間を午前9時30分から午後6時30分に変更し、それに伴い集合時間が午前8時45分になる旨のメールを送信した(書証略)。

エ  原告は、8月25日午後2時頃、被告Fとの間で、就業日を同月26日、就業時間を午前9時30分から午後5時30分、就業場所をG社のHセンター、時給を800円、業務内容を倉庫内での仕分・梱包業務とする労働契約を締結した(書証略)。

被告Fの担当者は、同日午後5時41分、原告に対し、「お仕事の時間が9:30~17:30となっておりましたが、9:30~17:00までにお時間の修正が必要となりました。変更となってしまい、大変申し訳ございません。変更後のお時間でご対応が出来ない方は、お手数ではございますが、お電話にてご連絡下さい。」上記就業時間を短縮変更する旨のメールを送信した(書証略)。

(6)  原告は、9月5日午後8時15分頃、被告Fとの間で、就業日を同月6日、就業時間を午前9時から午後6時、派遣先事業所名をO社のU工場、就業場所をB郡C町とし、時給を850円、業務内容を紙パックの開梱等とする労働契約を締結した(書証略)。

(7)  原告は、9月9日午後4時頃、被告Fとの間で、就業日を同月10日、就業時間を午前8時30分から午後5時、就業場所をE社K支店とし、時給を800円、業務内容を倉庫内での仕分・梱包とする労働契約を締結した。被告Fの担当者は、原告に対し、件名を「F選考結果(お仕事決定)のご連絡」とするメールを送信したが、当該メールには、「お仕事内容、募集条件名」として、「小さな部品の整理、仕分け作業?」と記載されていた。また、被告Fの担当者は、原告に対し、件名を「労働条件通知書」とするメールを送信したが、当該メールには、「就業場所名小さな部品の整理、仕分け作業①」と記載されていた。

原告は、同月10日、被告Fの派遣社員として、E社で仕分け整理等の作業を行った(具体的な作業内容については争いがある。)。(書証略)

(8)  被告Fの担当者は、9月19日午後11時25分、原告に対し、G社での就業に関して、待ち合わせ時間を午前8時から午前8時20分に変更する旨のメールを送信した(書証略)。

(9)  原告は、平成24年9月から、被告Fの派遣社員として、被告TのVセンター(以下単に「センター」という。)において、印刷物の結束、ピッキング等の作業に従事した。

(10)  原告は、10月2日、3日、5日、12日、16日から19日、22日から26日、29日から31日、11月2日、5日、被告Fの職業紹介を受けて、被告Tとの間で、午前9時から午後5時又は6時まで、センターにおいて、印刷物の封入、検品、梱包作業に従事することを内容とする労働契約を締結し、センターにおいて就労した。また、後述するとおり、原告は、11月6日にもセンターにおいて就労した。原告の10月以降のセンターにおける就労日数は、合計19日間であった。

原告は、10月中旬頃、被告Tの社員から、カレンダーの仕分けをするように指示され、カレンダーの仕分け作業に従事した。(書証略)

(11)  原告は、10月15日、11月6日及び7日、被告Fとの間で、午前8時20分から午前9時20分までの間、原告が被告Tのセンター内の食堂において現場待機すること及び被告Fが待機時間分として1時間の時給額(一律1000円)を支払うことを内容とする労働契約をそれぞれ締結した。

被告Fが提示した仕事内容は、「募集条件名【現場待機】Lの現場」、「就業区分スポット」、「職種区分工場内(組立・加工)」、「【賃金】時給1000円」、「募集コメント待機のまま終了しても¥1000+往復電車賃のお支払い♪」、「実作業は、印刷加工物の封入・検品・梱包等」などというものであった。

被告Fの担当者は、上記各契約を締結した際、件名を「労働条件通知書」とするメールを送信した。当該メールには、「就業場所名【現場待機】Lの現場」、「【従事すべき事務の内容】業務内容工場内(組立・加工)業務、業務詳細【仕事内容】Lの倉庫にて欠勤の対応(入った場合には印刷加工物の封入・検品・梱包等)【付随業務】欠勤や増員が発生した場合には指定の作業に入っていただきます。」などと記載されていた。

原告は、11月6日、上記現場待機の上、被告Tとの間で、午前9時から午後5時まで、センターにおいて、印刷物の封入、検品、梱包作業に従事することを内容とする労働契約を締結し、就労した。

原告は、同月7日にも現場待機したが、被告Tのセンターにおいて就労することはなかった。(書証略)

(12)  原告は、11月7日、被告Fのコールセンターに電話をし、担当者に対し、原告が待機していたにもかかわらず、遅刻した者が被告Tに採用された旨申告した。

被告Fの担当者は、11月8日午後4時29分、「昨日の件でご連絡をさせて頂いておりますが、ご連絡が取れないようですので、メールにて失礼致します。」「昨日はX様(原告)のご要望に添えず申し訳ありませんでした。しかるべき対応を当社も取りたいと考えております。このままでは何も解決出来ないので、ご都合のよろしい時にご連絡ください。お待ちしております。」とのメールを送信した。

被告Fの担当者は、同日午後6時54分、件名を「お知らせ」とし、「現在、弊社(被告F)との問題が解決していない状態でいらっしゃいますので、ご案内を中止させていただいております。問題点をクリアし、X様(原告)にもご納得の上、ご就業いただけるよう努めさせて頂きます。」とのメールを送信した。

原告は、11月9日を就業日とする仕事に応募していたが、被告Fの担当者は、同月8日午後7時01分、「11月09日のお仕事へのご応募ありがとうございました。X様(原告)の11月09日のお仕事については残念ながらご希望にそうことができませんでした。ご応募のお仕事以外にあらためて応募することができます。下記URLよりログインしてご応募ください。」とするメールを送信した。

被告Fの担当者は、12月2日、原告に対し、件名を「[F]スポット求人情報」とするメールを送信した。当該メールには、「●月●日スポット求人情報のご案内です。」、「■求人情報①、職種:倉庫内(仕分・梱包)業務、勤務時間:hh:mm~hh:mm、勤務場所:市区町村まで、最寄駅名:●●駅」などと記載されていた。(書証略)

(13)  ア 埼玉労働局長は、平成25年3月25日、被告Fに対し、職安法違反について、是正指導を行った。

当該是正指導書には、法条項として職安法44条、違反事項として、「被告Fと待機労働者の雇用契約、被告Tのセンターと同センターに採用された待機労働者の雇用契約が20分間重複しており、部分的に二重の雇用契約が成立していた。」、「また、被告Tのセンターに採用された待機労働者が実際に作業を行う場所の決定を被告Fの事務所の担当者が行っていた。」、「上記のような状況が継続している状態においては、被告Fと待機労働者の間には支配従属関係にあると判断され、労働者を被告Tのセンターに供給していることから、労働者供給事業に該当するものである。」と記載されている。

また、当該是正指導書には、法条項として職安法5条の3第1項、違反事項として、「被告Fが、求職者に対する職業紹介にあたって、当該求職者が従事することとなる業務の労働条件を適正に明示していないことは職安法5条の3第1項に違反するものである。」と記載されている。(書証略)

イ  埼玉労働局長は、同日、被告Fに対し、指導票を交付した(書証略)。

ウ  被告Fは、同年10月1日、埼玉労働局長に対し、上記是正指導及び上記指導票に対する改善を報告した。改善の内容は、被告Tのセンターにおいて労働者を待機させることを、同年8月19日をもって終了したため、既に改善しているというものであった。(書証略)

(14)  ア 埼玉労働局長は、同年3月25日、被告Tに対し、職安法違反について、是正指導を行った。

当該是正指導書には、法条項として職安法44条、違反事項として、「被告F埼玉支社から、当日紹介され被告Tで直接採用した労働者について、実際に作業を行う場所の決定を、被告Tでは行わずに、被告Fの担当者が行っていた。」、「また、当該労働者が、被告Tで就労を開始した時点では、当該労働者は同時に被告F埼玉支店とも雇用関係にあることが確認された。」、「上記のような状況が継続している状態においては、被告F埼玉支社と被告Tが採用した労働者の間には支配従属関係があると判断され、被告F埼玉支社から労働者の供給を受けていることから、労働者供給事業に該当するものである。」と記載されている。(書証略)

イ  被告Tは、同年10月8日、埼玉労働局長に対し、上記指導に対する改善を報告した。改善の内容は、被告Fが労働契約している待機労働者を、被告Tのセンター内に待機させることは、同年8月19日をもって終了したため、改善したというものであった。(書証略)

(15)  被告Fは、派遣労働者に対して、即給サービスを提供していた。即給サービスは、派遣労働者がその利用を申請すると、就労した日の所定労働時間に対応する給与から税・保険料を控除した金額を翌日に受け取ることができるものである。その場合、三井住友銀行に開設した預金口座に振り込みを依頼する場合には振込手数料105円が、他行に開設した預金口座に振り込みを依頼する場合には、振込手数料305円が別途必要となる。

被告Tでも、被告Tと労働契約を締結し、センターで就労する労働者は、即給サービスの利用が可能であった。即給サービスの内容は、上記被告Fの派遣労働者が利用する場合と同様であった。(証拠略)

3 争点及び当事者の主張

本件の争点は、(1)被告F及び被告Tが共同不法行為責任を負うか否か、(2)原告の損害額であるところ、当事者双方の主張の要旨は、次のとおりである。

(1)  争点1 (被告F及び被告Tが共同不法行為責任を負うか否か。)について

(原告)

ア 被告らによる日雇派遣及び日々職業紹介について

被告らは、原告を日雇派遣及び日々職業紹介という形式で労働者として供給しており、これは、職安法44条に違反する、そのため、原告は、細切れで、不定期にしか働くことのできない不安定な日雇形態で労働者として供給されることとなり、日雇でない契約期間のある派遣労働者としてか、同様に日雇でない契約期間のある直接雇用労働者として働く権利を侵害され、不安定雇用から抜け出せないまま、その日暮らしの不安定で経済的にも困窮した生活を強いられるという精神的苦痛を被った。

イ 被告らの中間搾取について

被告らは、上記アの行為を通じ、原告が受けるべき賃金から労基法6条に違反して中間搾取を行い、これにより、原告は、中間搾取された金額相当額の損害を被るとともに、被告らの労働者供給事業に組み込まれ、違法・無効な利得となる中間搾取をされたことにより、正当な賃金を得られる権利を奪われ、精神的苦痛を被った。

ウ 被告らによる不安定雇用について

被告らは、上記アの行為を通じて、一貫して、原告を日雇という不安定雇用の地位に置いた。これにより、原告は、労働契約法17条2項に違反する、細切れで、不定期にしか働くことのできない不安定な日雇形態で労働者として供給されることとなり、日雇でない契約期間のある派遣労働者として、あるいは日雇でない契約期間のある直接雇用労働者として働く権利を侵害され、不安定雇用から抜け出せないまま、その日暮らしの不安定で経済的にも困窮した生活を強いられ、精神的苦痛を被った。

エ 被告らによる振込手数料控除について

被告らは、上記アの行為を通じて、原告に即給サービスを利用させた。

即給サービスとは、被告Fに派遣登録した労働者が、月払で支払われる賃金を労働日の翌日に受け取れるようにするサービスである。このサービスを利用すると、三井住友銀行を利用すれば振込手数料105円、その他の銀行を利用すれば振込手数料315円が賃金から差し引かれる。原告ら日雇労働者は、月払の賃金支払日を待っていては生活ができないので、即給サービスを利用せざるを得ない立場にある。そして、被告Fは、派遣登録する労働者に対し、賃金の支払のための口座振込依頼をするのと同時に、即給サービスを申し込ませる取り扱いをすることにより、原告に即給サービスを利用させ、その賃金から振込手数料を天引きした。

被告Tも、被告Fに紹介されて労働契約を締結した日雇労働者に対し、同様に即給サービスを利用させ、原告の賃金から振込手数料を天引きした。被告らが、原告に上記即給サービスを利用させ、原告の賃金から振込手数料を天引きしたことは、賃金の全額を支払わないものであり、労基法24条1項に違反する。これにより、原告は、振込手数料相当額の損害を被っただけでなく、労働者としての人格権を侵害され、精神的苦痛を被った。

オ 被告らによる労働者待機について

被告らは、日々職業紹介を通じ、被告Tのセンターで原告を待機させた。待機に従事する労働者は、被告Fとの間で、午前8時20分から午前9時20分までの間、原告が被告Tのセンター内の食堂において待機すること等を内容とする労働契約を締結する一方で、被告Tに採用されてセンター内で就労する場合には、被告Tとの間で、午前9時から午後5時までの間、センター内で業務に従事すること等を内容とする雇用契約を締結することとなっており、午前9時から午前9時20分までの20分間、雇用契約が重複する。これは、供給元である被告Fと原告との間、及び、供給先である被告Tと原告との間に同時に雇用関係が存在することから、さらに職安法44条に違反する労働者供給に該当することになる。これにより、原告は、被告Tのセンターに欠員が出れば、被告らによって都合よく労働者として供給され、センターに欠員が出なければ働くことができないまま帰宅を強いられて労務の提供を拒まれることとなり、安定的に働くという労働者の人格権を侵害され、精神的苦痛を被った。

また、被告らは、11月7日、被告Tのセンターで待機して同日センターで就労する期待を抱いていた原告をセンターで就労させなかった。これにより、原告は、同日センターで就労する期待を抱かせられながら、就労できない場合にその機会を奪われ、本来取得できたはずの賃金相当額の損害を被るとともに、労働者としての人格権を侵害され、精神的苦痛を被った。

カ 被告らの安全配慮義務違反について

(ア) 被告Fは、原告が派遣登録した際、被告FのK支店において、原告に日雇派遣労働者として働く際の手順や一般的な安全及びマナーの注意事項に関するビデオを見せた。原告が被告Fから受けた安全教育はこれのみである。また、被告Fは、原告に医師による健康診断を一度も受けさせなかった。

被告Fは、原告が3月頃から少し仕事をすると腕がぱんぱんになる状態で、両前腕部の痛みを訴えていたにもかかわらず、9月頃まで、医師による定期健診を実施することを怠り、原告の健康状態を把握することに努めなかった。また、被告Fは、E社での就業内容を適確に把握することを怠り、そのため、原告は、募集条件には「小さな部品の整理、仕分け作業?」、労働条件通知書には「就業場所名小さな部品の整理、仕分け作業等①」と明示されていたにもかかわらず、E社の指示により1本20から30キログラムの鉄柱の移動作業を命じられた。これにより、原告は、両前腕部を痛め、その治癒を阻害されただけでなく、むしろ悪化させられ、心身に苦痛を受けた。

(イ) 被告Tは、原告に対し、日雇労働者として雇入れ時に安全衛生教育を実施せず、また、医師による健康診断を実施しなかった。

原告は、10月中旬頃から、被告Tのセンター内でカレンダーの発送作業に従事した。原告は、特に、カレンダーが入った包装を、作業台の上に置かれた段ボールの中に詰め込む作業に従事した。この作業1回に2から3分の時間がかかるが、原告は、この作業を約7時間延々と繰り返し、1日に数千部のカレンダーの束を両手で持ってパレットの上から作業台の上に置かれた段ボールに詰め込む作業を繰り返した。原告は、この作業を10月中旬から11月上旬まで続けたことから、両前腕筋膜炎の傷害を負った。

被告Tは、雇用主として、原告の定期健診や雇入れ時のカレンダーの詰め込み作業に関する安全教育を実施することを怠ったため、原告の健康状態を適確に把握することが出来ず、原告に対し、両前腕を負傷していることを踏まえて、重い商品を1日中持ち続けることを回避して、原告の両前腕筋膜炎の治癒を阻害したり、悪化させないように配慮すべき義務を負っていたにもかかわらず、それを怠り、これにより、原告は、両前腕筋膜炎の傷害を負い、心身に多大な苦痛を被った。

キ 被告Fによる派遣契約の一方的なキャンセル等について

(ア) 被告Fは、原告の勤務先が確定したにもかかわらず、6月6日、7月3日、8月17日及び同月18日の仕事をいずれも一方的にキャンセルした。原告は、被告Fの当該行為により、本来取得できたはずの賃金相当額の損害を被るとともに、原告の労働者としての人格権を侵害され、精神的苦痛を被った。

(イ) 被告Fは、次のとおり、原告を使い勝手のよい究極の雇用の調整弁として扱い、これにより、原告は、労働者としての人格権を侵害され、多大な精神的苦痛を被った。

被告Fは、6月14日、8月24日、原告の就業時間を一方的に変更し、8月25日には、原告の就業時間を一方的に短縮した。また、被告Fは、9月20日の勤務について、前日の午後11時25分という深夜に、原告に対し、一方的に待ち合わせ時間を変更する旨通知した。被告Fは、9月5日、原告に対し、就業場所についてI駅から徒歩20分、住所を埼玉県B郡C町Dと連絡したが、原告が当該住所に徒歩で行ってみると、就業場所は存在していなかった。原告は、驚いて被告Fの従業員に問合せ、ようやく就業場所に到着することができたが、到着するまでに40分かかった。

被告Fは、9月10日のE社での業務内容について、原告に交付した労働条件明示書に「小さい部品の整理」と明示しながら、実際には原告に20から30キログラムもある鉄柱の移動作業を行わせた。

ク 被告Fが意図的に仕事を紹介しなかったこと等について

被告Fは、次のとおり、原告に対し、仕事の案内の中止という日雇労働者にとっては致命的な報復措置を行った上、就業日時、勤務場所、勤務時間等の労働条件の中でも中核的な情報が一切記載されていない職業紹介の案内メールを送信するという嫌がらせを行い、これにより、原告は、多大な精神的苦痛を被った。

原告は、11月7日、被告Tのセンターで待機していたところ、センターで就労することを予約していた者が遅刻してきたにもかかわらず、当該予約者がセンター内で就労し、原告は帰宅させられた。原告は、同日、被告Fに対し、遅刻した予約者が待機していた自分よりも優先されるのはおかしいとして、遅刻した労働者の取り扱いについて苦情を述べた。これに対し、前提事実のとおり、被告Fは、11月8日午後4時29分に善処する内容のメールを送信したが、そのわずか2時間25分後の同日午後6時54分には、原告に対し、一方的に仕事の案内を中止する内容のメールを送りつけ、そのわずか7分後の同日午後7時1分には、原告が申し込んでいた仕事の落選を知らせるメールを送信した。

その後、前提事実のとおり、被告Fは、12月2日午後1時32分に、原告に対し、日時、勤務場所、勤務時間等を明記していない職業紹介のメールを送信した。

(被告F)

ア 被告Fは、労働者派遣事業及び職業紹介事業の許認可を得て、日雇派遣及び日雇紹介の事業を行っていたものであり、これらは職業安定法44条が規制する労働者供給事業には該当しない。

イ 被告Fは、労働者派遣事業及び職業紹介事業により、取引先(派遣先企業及び紹介先企業)から手数料を得ているが、これは被告Fが上記事業を運営する上で当然の対価であって、原告の賃金から控除(中間搾取)したものではない。

ウ 原告が就労した当時において、日雇派遣及び日々職業紹介という事業は職業安定法44条や労働基準法6条に違反するものではなく、また、労働契約期間について日単位(日雇)の期間とすることも禁止されていない。

被告Fが日雇派遣や日々職業紹介を行っているのは、取引先(派遣先及び職業紹介先の企業)から、単発で業務依頼があり、その内容も日によって人数に増減があるものが多いためであって、被告Fが殊更に原告らスタッフの契約期間を短期(日単位)に設定し、雇用を不安定にさせることを意図しているものではないから、違法行為に該当するものではない。

エ 即給サービスは、被告Fのスタッフが給料日前に現金収入を得るために利用した制度であり、その利用手数料は、運営銀行に対して支払われるものであって、被告Fが受領する手数料ではない。また、即給サービスの利用は、スタッフの任意であって、被告Fが原告に即給サービスの利用を強制した事実はない。原告は、実際に即給サービスによって経済的利益を得ているのであり、何ら経済的損害を被っていない。

オ 原告は、現場での待機を希望したもので、被告Fは、待機を強制したことはない。被告Fは、派遣や職業紹介によって就労予定であったスタッフから欠勤等の連絡を受けた場合、待機中のスタッフに代替での就労を依頼することはあったが、かかる依頼に備えて現場での待機を希望したスタッフには待機時間分として1時間分の時給(1000円)を支払っていた。この場合、待機をしても実際に欠員がなければ代替スタッフとしての就労はないが、この点は、原告も含め、待機希望者は了承していた。したがって、原告が待機していたのに被告Tで就労できなかったことをもって、原告の就労の期待ないし機会を侵害したことにはならない。

カ 原告が主張する傷害、疾病は、近隣トラブルを原因とするもので、被告Fにおける就労とは全く無関係である。

また、原告は、被告Fに対し、3月頃から、両前腕の痛みを訴えていたと主張するが、被告Fには、原告からかかる申告を受けたとか、相談を受けたという記録は残ってない。

キ 原告が主張する4件のキャンセルの理由は、派遣先企業からの派遣中止の連絡によるものであり、被告Fの責任によるものではない。仮に、キャンセルが無効であるとしても、不法行為を理由とする損害賠償請求は、解雇無効や賃金請求とは別個の要件で検討すべきものであるところ、4件のキャンセルは、派遣先企業の都合によるものであり、被告Fは、派遣先企業からの派遣依頼の中止を受けて、速やかに原告に対してキャンセル連絡を行い、その上で、原告に対して、他の派遣業務を手配するなどの代替措置を講じた。また、その後も、原告に対しては派遣業務の紹介を継続的に行っていた。したがって、被告Fの措置は原告に対する違法行為には該当しない。

ク 就業時間等の変更連絡は、派遣先の要請を受けてなされたものであって、被告Fの都合によりなされたものではないし、かかる時間変更は、日雇派遣の業務ではやむを得ず発生することがあるものである。実際、原告も上記変更に応じ、異議なく変更後の就業時間で勤務しているのであって、時間変更の通知は何ら不法行為を構成するものではない。

就業場所の連絡については、被告Fが間違った就業場所を案内した事実はなく、不法行為は成立しない。

待ち合わせ時間の変更については、当該変更は派遣先におけるバス手配の都合によるものであり、被告Fは、原告のために上記変更を連絡したものであって、違法行為に該当するものではない。原告は、上記連絡によって、待ち合わせ時間を知ることができたのであって、何ら経済的損害を被っていないのであるから、被告Fについて不法行為を構成するものではない。

ケ 原告は、11月7日の現場待機に関し、被告Fに対して抗議を行い、その中で、被告Tにおける採用も問題としていた。そのため、被告Fは、今後の職業紹介において、原告が被告Fからの紹介業務や現場待機に納得せずに紛争となったり、紹介先に対してクレームをつけるなどして取引上のトラブルに発展する可能性があると判断し、かかる事態を避けるべく問題解決までは職業紹介の案内を中止することとした。したがって、かかる取り扱いが、被告Fの不法行為を構成するものではない。

12月2日に原告に対し送信したメールは、被告Fの担当者の単純な操作ミスによってフォーマットを送信してしまったものであり、これによって原告の就労機会が喪失させられたり、精神的苦痛を被るものとはいえない。

(被告T)

ア 被告Tは、そもそも労働者を直接雇用している。また、物流センターの業務は、繁閑が激しく、派遣会社に200名近く人材紹介を依頼せざるを得ない日もあれば、被告Tに常時雇用している人数で足りる日もある。そのような実態を踏まえれば、被告Tが派遣会社に日々人材紹介を依頼することには十分な合理性が認められ、職安法44条に違反するものではない。

イ 被告Tに労働基準法6条違反行為はない。

ウ 被告Tに労働契約法17条違反行為はない。

エ 被告Tは、原告に対し即給サービスの利用を強いた事実はなく、労働基準法24条1項違反行為はない。

オ 被告Tは、埼玉労働局長から是正指導を受けた二重雇用について知らなかったものの、当該是正指導がされた事項に対しては、直ちに是正を行い、既に是正報告を済ませている。

被告Tは、被告Fに対し、紹介を受ける労働者の1時間待機を要請したことはない。なお、原告は、上記二重雇用になっていた時間(午前9時から午前9時20分)については、被告T及び被告Fから二重に賃金を得て、二重の利得を得ていたはずであり、原告に損害はない。

カ 被告Tには原告に対する健康診断実施義務はない。また、被告Tは、原告に対して、雇い入れ時に、安全衛生教育を実施している。

原告が、10月中旬頃から、カレンダーの発送作業を行ったが、カレンダーの発送作業は、約10キログラム程度のカレンダーの包みを取り扱うものであり、男性に限らず女性も多数従事している業務であるから、重量物を取り扱う重労働とはいえない。

また、昼休みの1時間及び作業途中の休憩時間もあり、原告主張の作業を7時間繰り返した事実はない。

原告が、被告Tで就労していたのは、派遣労働者として勤務した日数も含めわずか27日間にすぎない。原告が被告Tでの就労(10月中旬)より相当以前の3月中旬から両腕に痛みを感じていたこと等からすると、原告が被告Tの労働により原告主張の傷害ないし疾病を負ったとはいえない。

被告Tは、原告を含む労働者に対し、雇い入れ時の安全衛生教育を施した際、体調が悪い場合には申し出るようにと伝えているが、原告から両腕の不調を訴えられたことはない。

(2)  争点(2) (原告の損害額)について

(原告)

原告は、被告らの不法行為により、原告の労働者としての人格権を侵害され、精神的苦痛を被ったものであり、これを慰謝するには300万円が相当である。

(被告ら)

否認ないし争う。

第3当裁判所の判断

1  認定事実

上記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1)  原告は、4月16日から9月15日までの間、被告Fの派遣社員として次のとおり就労した。

ア 原告は、4月16日から5月15日までの間に合計6日就労した。

イ 原告は、5月16日から6月15日までの間に合計20日就労した。

このうち、6月1日、2日、4日、7日、8日、11日から14日まではA社のKセンターで就労した。

ウ 原告は、6月16日から7月15日までの間に合計9日就労した。

このうち、6月16日はA社のKセンターで就労し、同月18日及び19日はG社のHセンターで就労し、同月21日、22日、26日から29日まではA社のKセンターで就労した。

エ 原告は、7月16日から8月15日までの間に、7月17日及び18日の2日、G社のHセンターで就労した。

オ 原告は、8月16日から9月15日までの間に合計11日就労した。

このうち、8月20日、同月24日から28日までは、G社のHセンターで就労した。また、9月5日は、O社U工場で就労し、同月10日は、E社で就労した。

カ 原告は、9月中に、被告Tのセンターで7日程度就労した。

(書証略及び弁論の全趣旨)

(2)  原告の平成24年3月以降のS病院受診状況について

ア 原告は、3月10日、同病院外科のW医師を受診した。同医師は、診療録に、所見として、「本日0200、外の猫に餌をあげていたら3階の住人(本人は4階居住)が酔って帰ってきて傘で暴れ出した。言い争いになり、つかみ合いになった。警察を呼んで処理してもらった。」、「左手首が痛い。後頚部も痛い。」、「明らかな外傷の所見なし。」、「週明けに、整形外科を受診するとのこと。」と記載した。

イ 原告は、同月12日、同病院整形外科のM医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「左手関節痛、頸部痛3/10 午前2時過ぎ外の猫に餌をあげていたら3階の住人(本人は4階居住)が酔って帰ってきて傘で暴れ出した。言い争いになり、つかみ合いになった。警察を呼んで処理してもらった。」、所見として、「頸部両側PVMに圧痛(+)、両側手関節痛腫脹(-) 皮下出血(-) XPチェックを勧めたがお金が無いとのことで施行せず。警察に診断書」と記載した。

ウ 原告は、同月21日、同病院整形外科のM医師を受診した。同医師は、診療録に、所見として、「頸部痛続いている両側PVMに圧痛(+) 両側前腕違和感(重い感じ) 両側手関節痛腫脹(-)皮下出血(-)」と記載した。

エ 原告は、4月6日、同病院整形外科のN医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「じっとしているとき頸部痛は変わらない。ちょっと仕事をすると両上肢がぱんぱんになる肩こりも出やすくなった。接骨院で電気の治療をしてマッサージを受けている。安静時しびれはない。」、所見として、「jacson・spurling test で左肩に放散痛MMT上腕二頭筋・上腕三頭筋・腕橈骨筋・手根屈筋・手根伸筋は明らかな筋力低下なし左握力は右と比較し著明に低下知覚低下は(-)腱反射上腕二頭筋・上腕三頭角筋・腕橈骨筋でに亢進している印象」、考察として、「頸髄症の疑いレントゲン・MRIなどの画像検索を勧めたが、事件相手と交渉中でありそちらが落ち着いてからの検査を希望。」と記載した。

オ 原告は、5月24日、同病院整形外科のQ医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「依然と比べると頸部周囲のいたみはよくなり、仕事もしているとMMT) BICE 5/5 BR 5/5 WE5/5WF 5/5 ADM 5/5 両上肢がぱんぱんになると湿布希望」と記載した。

カ 原告は、7月11日、同病院整形外科のM医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「両手関節痛、両側前腕部痛3月から続いている7月1日から仕事を休んでいる傷害事件は継続保険を利用し、実費は相手に請求」、所見として、「両側前腕部屈筋群も圧痛(+)(+)ストレッチ」と記載した。

キ 原告は、9月20日、同病院整形外科のQ医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「何もしなければ痛くない4、5日/1W 仕事すると、両前腕が痛くなってしまう加減しながらストレッチ+湿布でOBS」と記載した。

ク 原告は、11月15日、同病院整形外科のQ医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「9/20受診時はよくなっていたが、2012/10月から力仕事が増えてきたが、手が痛くなっていたが、2012/11/7から仕事がもらえなくなったが、両前腕の痛みが強くなった両前腕)手が動かないと右痛いところさしてというとちゃんとさせる→休んだところで痛みが酷くなるのは整形外科的問題ではない可能性が高いことをmtしたが、理解得られず心療内科の受診をお勧めしたが、行くが薬出してくれと脅迫するため、よくならない可能性があると再度mtした。」と記載した。

原告は、同日、同病院整形外科のR医師も受診した。同医師は、診療録に、所見として、「右前腕から母指にかけての疼痛屈筋群の圧痛があり母指MPに圧痛手指屈伸は可能コンパートメントを疑う前腕腫脹は無しクリックは無し両前腕屈筋に圧痛有り腫脹無しMP 屈曲almost5 FDP 屈曲almost4 触覚傷害無し頸部前屈/後屈後屈で僧帽筋部痛有りsupurling頸部痛印象としては上肢(前腕)筋膜炎susp. NSAID 処方も考えたが、以前内服(詳細不明)であり希望せず次回は注意薬持参次回でも頸部XP をmental クリニックは湿布治療経過診て、必要であれば検討することで納得していただく次回からRの外来で」と記載した。

ケ 原告は、12月11日、同病院整形外科のR医師を受診した。同医師は、診療録に、所見として、「手指から前彎の筋緊張かなり緩和された手指屈曲拘縮なし伸展時疼痛緩和」、「FPL 5 FDP almost5右母指MP 掌側圧痛軽度ひっかかり感(-)本年3月の事件 ロキソン3T ミオナール3T ムコスタ3T 湿布有効」と記載した。

コ 原告は、平成25年1月19日、同病院整形外科のR医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「1/16~生活保護時給となったそれとともにマッサージ(接骨院)の継続も出来なくなった経過で前腕から上肢にかけての疼痛が継続昨年10月に就業とともに上肢の疼痛が出現・継続諸々の疼痛(頸部・腰部)」、所見として、「両側前腕緊満感は強くない左手指MP 掌側に微少なcrepitus(+) 手指屈伸ゆっくりなら可能スムースな屈伸が出来ない左優位MP 掌側圧痛は右に(+) ひっかかり(-)現時点では明らかなコンパートメントを疑わす腫脹・筋緊張は(-) できればマッサージを生活保護でマッサージ加療が出来なくなってmentalにも影響出ている出来ればリハをしてあげたい」と記載した。

サ 原告は、平成25年2月23日、同病院整形外科のR医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「両側前彎の緊満感継続接骨院へは通えるようになった」、所見として、「視診上の前彎の腫脹無いが、屈筋群に圧痛(+) MMTでの低下は無いが、持続する力が無い接骨院で頸部・腰部・背部処置→有効DTR 上肢亢進無し下肢亢進(-)」と記載した。

シ 原告は、平成25年4月2日、同病院整形外科のR医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「接骨院通院されている*接骨院/生保で支払い開始時期についてもめた。そのしわ寄せが本人におよび、stress となっているらしい。」、所見として、「前腕の緊満感・圧痛軽度(+) grip短時間の筋収縮であれば疼痛(-)」と記載した。

ス 原告は、平成25年5月28日、同病院整形外科のR医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「歩行入室」、所見として、「右前腕の緊満感は相変わらず屈筋群ややtight figer grip/open 入浴中の訓練を促す労災について書類を考えている→認定されないかもと話す*昨年10月下旬から仕事量が増してからの愁訴」と記載した。

セ 原告は、平成25年6月25日、同病院整形外科のR医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「引っ越しの荷造り動作で両側前腕の緊満感増強」、所見として、「両側前腕屈筋群圧痛(+) 腫脹は無いが、やや緊満感(+) 左肘屈曲で二頭筋痛末梢筋萎縮なし(母指球・小母指球) 湿布有効」と記載した。

ソ 原告は、平成25年7月27日、同病院整形外科のR医師を受診した。同医師は、診療録に、主訴として、「両側前腕の緊満感・回内回外がスムースに出来ない」、所見として、「前腕屈側やや緊満(+) 少なくとも筋萎縮はなし労働指導が会社に入った今後裁判に移行があるかもしれないと」と記載した。(書証略)

(3)  被告Tでは、日雇派遣労働者に対し、各現場の責任者が、作業内容及び作業における安全上の注意点を口頭で説明していた。日々紹介による労働者に対しては、上記現場での説明に加え、初めての労働者に対し、工場内ではフォークリフトが行き交うため歩行帯を通行することや、通路が交差する場所や物陰からの人やフォークリストの飛び出しに注意すること、気分が優れなかったり体調を崩したりした場合は直ちに休みをとること、作業中にけがをした場合には直ちに職場に申し出ることなどを説明していた。また、センター内のフォークリフトにも安全装備を施していた。被告Tの担当者は、10月2日、原告に対し、上記と同様の注意事項を口頭で説明した。原告は、同日、タイムシートの雇入教育欄に、「受けた」とチェックを入れた。原告は、その後被告Tのセンターで就労した際にもタイムシートの雇入教育欄に「受けた」とチェックを入れているが、上記注意事項は聞いてない。(証拠略)

2  争点(1) (被告F及び被告Tが共同不法行為責任を負うか否か。)について

(1)  原告は、①被告Fからのメール情報を介して被告Tのセンターで稼働していること、②被告Fは、原告に提供できる業務を有しておらず、原告と雇用契約を締結して原告を派遣する場合でも、これを締結せず被告Tに紹介する場合でも、原告は被告Fを介してしか被告Tで稼働することができないこと、③被告Tは、被告Fから派遣され、直接雇用関係にない原告に対しても、被告Fの紹介により雇用契約を締結した原告に対しても、指揮命令を行うこと、④被告Tは、原告の派遣を受けていた際も、その後紹介を受けて原告を直接雇用するようになっても、センターでの作業内容を1日の細切れ雇用に分断して労働契約法17条2項に反する経営方針で臨んでいることなどを挙げて、被告らは、日雇派遣及び日々職業紹介という形式で、原告を労働者として供給しており、職安法44条に違反しており、不法行為を構成すると主張する。しかし、被告Fは、労働者派遣事業及び職業紹介事業の許認可を受けて、上記①ないし③のようなシステムで日雇派遣ないし日々職業紹介を行っていたものであり、このことが直ちに違法性のある行為であるとまでいうことは困難であるし、違法であることを疑わせる事実は認められない。そして、被告Tは、被告Fのシステムを利用して、派遣ないし紹介を受けていたものであるし、また、労働契約法17条2項は、使用者に対し配慮を求める規定であり、1日単位の雇用が直ちに違法とまでいうことができないことに照らすと、上記④の1日単位の雇用が違法性のある行為であるとまでいうことは困難であるし、違法であることを疑わせる事実も認められない。また、職安法が、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等の適正な運営を確保することなどを目的とする(同法1条)、行政上の取締法規であることを踏まえれば、仮に、同法に違反する事実が認められたとしても、そのことから直ちに労働者の個々具体的な法律上保護されるべき利益が損なわれたものとみることはできないというべきであるところ、弁論の全趣旨によれば、原告も、被告Fに登録し、派遣ないし紹介の形で被告Tで稼働して各労働契約に基づき、賃金の支払を受けていた(原告が主張する中間搾取や手数料の件については後述する。)と認められ、この点について、原告に何らかの法律上の不利益が生じていたものとは認められない。

以上によれば、原告の上記主張は採用することができない。

(2)  原告は、被告らが、職安法44条に違反する形式で、原告を労働者として供給したことにより、原告が受けるべき賃金から中間搾取を行ったことが、労基法6条に違反し、不法行為を構成すると主張する。しかし、上記のとおり、被告らが原告を違法に就労させた事実はなく、原告の主張はその前提を欠く。また、被告Fが被告Tから得ている手数料は、労働者派遣ないし労働者紹介の対価であることに照らすと、これが原告が受けるべき賃金から中間搾取されたものということはできない。したがって、原告の上記主張は、その前提を欠き、採用することができない。

(3)  原告は、被告らが、日雇派遣及び日々職業紹介を通じて、一貫して、原告を労働契約法17条2項に違反する、細切れで、不定期にしか働くことのできない不安定な日雇という地位に置き、日雇でない契約期間のある派遣労働者として、あるいは日雇でない契約期間のある直接雇用労働者として働く権利を侵害したなどと主張する。しかし、被告Fの日雇派遣及び日々職業紹介並びに被告Tがこれを利用していたことが職安法44条に違反するものではないこと、労働契約法17条2項は、使用者に対し配慮を求める規定であり、1日単位の雇用が直ちに違法とまでいうことができないことは、上記(1)で述べたとおりである。そして、原告は、自ら被告Fに派遣登録し、被告Fの派遣社員として就労していたものであるし、また、被告Fの職業紹介を受けて、自ら被告Tと労働契約を締結して就労していたものであること、これにより労働契約に基づき就労の対価を得ていたことに照らすと、原告に何らかの法律上の不利益が生じていたものとは認められない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。

(4)  原告は、被告らが、日雇派遣及び日々職業紹介を通じて、原告に即給サービスを利用させ、労基法24条1項に違反して原告の賃金から振込手数料を天引きしたことにより、原告は、振込手数料相当額の損害を被っただけでなく、労働者としての人格権を侵害されたと主張する。しかし、上記認定事実によれば、即給サービスを利用した場合に給与から天引きされるのは、即給サービスによる金融機関の振込手数料であることが認められる。そして、本件において、被告らが原告に対し即給サービスを利用させたことを認めるに足りる証拠は存在せず、即給サービスが労働者にもメリットがある制度であることに照らすと、原告は、自らの意思でこれを利用していたものと認めるのが相当である。そうであるとすると、上記振込手数料の天引きは、即給サービス利用によるものであり、労基法24条1項に違反するということはできない。したがって、原告の上記主張は、採用することができない。

(5)  原告は、被告らが、日々職業紹介を通じて、被告Tのセンターで原告を待機させ、欠員等が生じたときはセンターで稼働させて都合よく労働者として供給し、欠員が出なければ働くことができないまま帰宅を強いて労務の提供を拒み、これにより原告は安定的に働くことができなかったこと、また、11月7日には、被告Tのセンターで待機して同センターでの就労の期待を抱いていた原告を就労させず、これにより、原告は、就労する期待と機会を奪われ、本来取得できたはずの賃金相当額の損害を被ったことを挙げて、これらにより、原告の労働者としての人格権を侵害されたと主張する。

ア 上記認定事実によれば、センターでの待機に従事する労働者は、被告Fとの間で、午前8時20分から午前9時20分までの間、原告が被告Tのセンター内の食堂において待機すること等を内容とする労働契約を締結する一方で、欠員等が生じ被告Tに採用されてセンター内で就労することになると、被告Tとの間で、午前9時から午後5時までの間、センター内で業務に従事すること等を内容とする労働契約を締結することとなっていた。したがって、欠員等が生じた場合には、午前9時から午前9時20分までの20分間、労働契約が重複することになり、供給元である被告Fと原告との間及び供給先である被告Tと原告との間に同時に雇用関係が存在することは、職安法44条に違反する労働者供給に該当する。また、その際、待機労働者が実際に作業を行う場所の決定を被告Fの担当者が行っていたことは、被告Fと待機労働者の間に支配従属関係があるということができ、この点も職安法44条に違反するものである。しかし、上記のとおり、職安法が行政上の取締法規であることを踏まえれば、仮に、同法に違反する事実が認められたとしても、そのことから直ちに労働者の個々具体的な法律上保護されるべき利益が損なわれたものとみることはできないというべきである。そして、労働契約の重複が20分間のことであること、上記前提事実によれば、原告は、待機するに当たり、募集条件において、Lの現場での現場待機であり、待機のまま終了しても待機時間1時間の時給1000円と往復電車賃が支払われ、実作業に入る場合には印刷加工物の封入・検品・梱包等に従事することなどを告知されており、待機しても被告Tのセンターで就労できない場合があることや、待機後実作業に従事する場合の概ねの業務内容を理解していたと認められることに加え、弁論の全趣旨によれば、被告F及び被告Tは、上記重複分を控除等することなく、各労働契約どおり給与を支払っていたことに照らすと、この点について、原告が何らかの法律上の不利益が生じていたものとは認められない。したがって、上記職安法44条に違反することをもって、原告の人格権を侵害するものであるとする原告の主張は採用することができない。

イ また、原告は、11月7日には、センターで待機したもののその後被告Tで就労することは出来なかったものであるが、当日の原告と被告Fとの労働契約の内容は1時間の現場待機であり、センター内での就労を紹介することまでは契約内容には含まれていないことに加え、上記のとおり、原告は被告Fから労働条件について現場待機した場合でも欠勤や増員が発生しなければセンター内で就労することはできないことを告知されていたことに照らすと、原告が当日現場待機するに当たり、被告Tで就労することを期待していたとしても、かかる期待が法的に保護するに値するものとまでいうことはできない。また、かかる労働条件で現場待機に臨んでいたことに照らすと、被告らが原告の就労の機会を奪ったということもできない。そうであるとすると、被告らに上記アのとおり職安法44条違反が認められることを考慮しても、11月7日に原告が待機した後被告Tで就労できなかったことが共同不法行為を構成するということはできない。

(6)  原告は、被告らそれぞれに安全配慮義務違反があり、これにより両腕部を痛め、その治癒を阻害されて心身に苦痛を受けたなどと主張する。

確かに、証拠(書証略)によれば、S病院の医師らは、原告が両腕部の症状を訴え、11月15日に筋膜炎ではないかとの印象を診療録に記載している。しかし、上記認定事実によれば、原告が同病院を受診したのは3月10日の下階の住人とのトラブルにより同日左手首等の痛みを訴えたことからであり、同日には明らかな所見がないとされたが、同月12日には上記トラブルによる両側手関節痛の所見が診療録に記載され、その旨の診断書も警察に提出されたことがうかがえる。原告は、その後もちょっと仕事すると両上肢がぱんぱんになるなどと訴えて同病院を受診したが、医師は4月6日に頸髄症の疑いとの考察を診療録に記載した。その後原告は、5月24日にも、仕事により両上肢がぱんぱんになると訴えて同病院を受診し、7月11日には3月から続く両手関節痛、両側前腕部痛で同月1日から仕事を休んでいるとし、9月20日には何もしなければ痛くない4、5日/1W仕事すると、両前腕が痛くなってしまうと訴えていた。そして、同病院の診療録上、これらの原告の訴えの原因は上記3月のトラブルによるものとされている。その後、原告は、11月15日の受診時に、9月20日の受診時はよくなっていたが、10月から力仕事が増えてきて手が痛くなっていたこと、11月7日から仕事がもらえなくなって両前腕の痛みが強くなったことを訴えたが、医師は、仕事を休んだところで痛みが酷くなるのは整形外科の問題ではない可能性が高いと説明し、心療内科の受診を勧め、薬を出してもよくならない可能性があるとも説明した。また、原告は、同日別の医師を受診し、同医師は、上肢(前腕)筋膜炎の疑いがあるとの印象を抱いた旨診療録に記載した。同医師は、平成25年1月19日には、診療録に、主訴として昨年10月に就業とともに上肢の疼痛が出現・継続と記載したが、頸部・腰部の諸々の疼痛も訴えているとし、所見として、生活保護でマッサージ加療が出来なくなってmentalにも影響が出ていると記載した。また、同医師は、同年4月2日受診時に、生活保護による接骨院の通院費の支払開始時期についてもめたため、そのしわ寄せが本人におよび、stressとなっているらしいとも記載し、同年5月28日受診時には労災について書類を考えているとした原告に対し、認定されないかもしれない旨を述べている。以上の診療経過に加え、原告の上記症状の機序については、もっぱら原告の訴えに基づくものであるところ、原告は9月10日のE社で当初の業務内容と異なる1本20から30キログラムの鉄柱の移動作業を命じられ、両腕部を痛めた旨主張する一方で、本人尋問において、同日の作業ではけがはしなかった、9月20日には治りに近い状態だったなどとし、11月7日には仕事がしたくてしようがなかった旨供述しており、その症状に関する訴えは信用性に疑問があるというべきであること、医師の診断書が提出されていないこと、証拠(証拠略)によれば、被告Tのセンターで原告が従事した10月中旬からのカレンダーの仕分け等の作業における、原告が従事した梱包作業における梱包済みカレンダーの重量は上記原告が主張する鉄柱の重量の半分程度とみられることに照らすと、原告が主張する前腕部の傷害と、E社での就労や被告Tのセンターでの就労との間に因果関係があるとまで認めることは困難であり、その他、これを認めるに足りる的確な証拠は存在しない。

したがって、原告の上記主張は、その前提を欠き、採用することができない。

(7)  原告は、被告Fが、仕事を一方的にキャンセルしたり、変更する等し、さらに、派遣先の場所や業務内容について誤った情報を提供するなどしたことにより、労働者としての人格権を侵害されたと主張する。

ア 原告が主張するキャンセルは、6月6日、7月3日、8月17日及び同月18日の4回のものであるところ、これらは、いずれも、派遣先のキャンセルによるものであり、被告Fは、その旨を原告にメールで連絡しており(書証略)、これらは、「お仕事についてのご連絡です」(書証略)、「【重要】伝達事項」(書証略)、「重要なお知らせ」(書証略)、「(緊急)重要なお知らせ」(書証略)との表題の下、キャンセルの連絡の他、原告に対し、代替の仕事をキャストポータルから再検索すること(書証略)、他の仕事を案内するので電話すること(書証略)、再検索または電話をすること(書証略)及び代わりの仕事を用意しているので電話をすること(書証略)を促していた。他方、原告は、被告Fからのメールは、仕事の決定の通知の他は、ほとんど見ないことにしていた(人証略)。また、上記前提事実によれば、原告は、被告Fからの電話に出ないこともあった(書証略)。

確かに、これら4回のキャンセルについて、原告に対し代替の派遣先が用意されたり、休業手当が支払われた事実は認められない。しかし、日雇派遣である以上、派遣先の都合によるキャンセルが発生する可能性がないとはいえないことは、派遣元としても派遣社員としても理解している事項であると思料されること、上記のとおり、原告と被告Fとの間においては、もっぱらメールによって派遣先や労働条件の連絡がされ、原告はこれによって集合時間、集合場所等を把握していたこと、被告Fが上記4回のキャンセル連絡の後実際に代替措置を提供できたかどうかを認めるに足りる証拠は存在しないものの、派遣元として、これを提供しようとする姿勢を原告に対し示していたこと、他方、原告はその旨のメールを見ることをせず、電話にも出なかったこと、被告Fは、その後も、原告に対して派遣業務の紹介を継続的に行っていたことに照らすと、被告Fが代替措置の提供や休業手当の支払をしていないことを考慮しても、原告に対する違法な侵害行為があり、不法行為を構成するとまでいうことは困難である。

イ 原告が主張する被告Fによる就業時間の一方的な変更は、6月15日及び8月24日の2回であるところ、これらは、いずれも、派遣先の都合によるものであり、被告Fは、6月15日午後4時31分に、前日に決定した翌16日の仕事について、「お仕事についてご連絡です」との表題で、「時間帯の変更がございます。」、「電話にでられなかったため、メールでご伝達させていただきます。」として、午前9時00分から午後6時00分までの就業時間を午前9時30分から午後6時30分に変更する旨連絡し(書証略)、8月24日午後1時11分に、当日午後零時57分に決定した翌25日の仕事について、原告に対し、「明日につきまして」との表題で、午前9時30分から午後5時30分までの就業時間を午前9時30分から午後5時30分に変更する旨連絡している(書証略)。

また、原告が主張する被告Fによる就業時間の一方的短縮は、8月25日午後2時頃決定した翌26日の仕事について、被告Fから、8月25日午後5時41分に、「(重要)お仕事の時間について」との表題で、午後5時30分までとなっていた就業時間を午後5時までに30分短縮する旨連絡したものである(書証略)。

原告はこれらのメールを見ていない(証拠略)。

確かに、これらは、被告Fによる就業時間の一方的な変更、短縮に当たる。しかし、日雇派遣である以上、派遣先の都合による就業時間の変更がないとはいえないことは、上記アのキャンセルと同様、派遣元、派遣社員の双方が理解していると思料されるところ、被告Fはその旨を原告に対しメールで連絡し、上記8月25日の短縮の連絡の際には、短縮後の就業時間で対応が出来ない場合には、電話連絡するよう申し添えている。そして、原告と被告Fとの間においては、もっぱらメールによって派遣先や労働条件の連絡がされていたが、原告はこれを見ていないこと、原告は上記いずれの連絡にも異議を述べることなく就労したこと、上記変更にかかる就業時間は、従前の就業時間に比して大幅な変更、短縮とまではいえないことに照らすと、これらの変更、短縮が違法な侵害行為であり、不法行為を構成するとまでいうことは困難である。

ウ 原告は、被告Fが、9月20日の勤務について、前日19日の午後11時25分という深夜に一方的に待ち合わせ時間を変更する旨通知したことで、送迎バス乗り場で20分待たされた旨主張する。

確かに、午後11時25分という時間は、深夜ということができる。しかし、派遣先やバス会社の都合で待ち合わせ時間が変更になることがないとはいえないことは、上記アのキャンセルと同様、派遣元、派遣社員の双方が理解していると思料されること、被告Fは、深夜とはいえ、これを連絡していること、原告は、それまで何度か始業時間が変更になったことを経験していたにもかかわらず、朝一でメールを確認する等することはせず(人証略)、そのために上記メールに気づかなかったことに加え、待ち合わせ時間の変更が20分間であったことに照らすと、この変更が違法な侵害行為であり、不法行為を構成するとまでいうことも困難である。

エ 原告は、被告Fが、9月5日に、同月6日の仕事について、原告に対し、就業場所をI駅から徒歩20分の埼玉県B郡C町Dと連絡したが、原告が当該住所に行ってみると、就業場所は存在しておらず、被告Fは、誤った就業場所についての情報を提供したと主張する。しかし、証拠(書証略)によれば、原告は、O社U工場が就業場所であるとして、指定された就業場所に行ったが、同工場は存在せず、被告Fの担当者にその旨を連絡したが、回答がなく、O社の現場責任者に連絡して、車で迎えに来てもらって就業場所に到着できたとしているところ、被告Fが指定した同日の就業場所は、B郡C町D25―5であり、O社のU工場は、派遣先の事務所名であって、その所在地も兵庫県J市とされている。そして、被告Fは、仕事決定の通知において、「就業開始10分前までに現地にお集まりいただき、担当者にTEL して合流してください。」としている。そうであるとすると、原告は、就業場所名をO社U工場と誤解し、また、現地到着後直ちに合流のため担当者に電話連絡をすることもせず、就業場所が分からなくなったものと推認するのが相当である。そして、他に、上記B郡C町D25―5が誤った就業場所であったことを認めるに足りる証拠は存在しないことに照らすと、原告の上記主張は理由がなく採用することができない。

オ 原告は、9月10日にE社で就労した際、被告Fは、労働条件明示書に「小さい部品の整理」と明示しながら、実際には原告に20から30キログラムもある鉄柱の移動作業を行わせ、業務内容について誤った情報を提供したもので、これにより、原告は精神的苦痛を被ったと主張する。この点、原告は、証拠(書証略)及び本人尋問において、上記主張に沿う供述をする。しかし、原告が従事した具体的な作業内容について、他にこれを認めるに足りる的確な証拠が存在しないこと、原告は、本人尋問において、上記(6)のとおり、当日の作業でけがをすることはなく、また、それまでの症状が悪化することもなく9月20日には治りかけていた旨も供述していることに照らすと、かかる供述のみをもって、被告Fの労働条件についての情報提供が誤っており、原告に対する違法な侵害行為があったとまで認めることは困難である。

(8)  原告は、被告Fが11月7日に原告がした抗議に対し、その後原告に対し意図的に仕事を紹介せず、嫌がらせを行い、これにより原告は精神的苦痛を被ったと主張する。

確かに、被告Fは、11月8日に原告にメールを送信し、現在、被告Fとの問題が解決していない状態であるから、仕事の案内を中止したものである。しかし、上記前提事実のとおり、被告Fは、上記メールに先立ち、原告に対し、「昨日の件でご連絡をさせていただいておりますが、ご連絡がとれないようですので、メールにて失礼致します。」「昨日はX様(原告)のご要望に添えず申し訳ありませんでした。しかるべき対応を当社も取りたいと考えております。このままでは何も解決出来ないので、ご都合のよろしい時にご連絡ください。お待ちしております。」とのメールを送信しており、その内容によれば、それ以前に原告に対し電話連絡をしたこともうかがわれる。また、被告Fの担当者Pは、原告に対し、遅刻者や時間ぎりぎりに来た者を採用するか否かは紹介先である被告Tが判断することである旨を告げていたものであり、そうである以上、被告Fとしては、原告が紹介先である被告Tに対しても抗議をする可能性があることを危惧することはもっともなことであり、原告は、11月7日に被告Tの本社に対し、遅刻が許されない旨を確認している(人証略)。そうであるとすると、被告Fが職業紹介を停止したのは、顧客である被告Tとのトラブル等に発展することを防止するためであり、その理由において不合理なものとはいえず、原告に対する違法な侵害行為があったということはできない。また、上記前提事実によれば、被告Fの担当者は、12月2日、原告に対し、内容不明のメールを送信したことが認められる。しかし、同メールは被告Fが使用するメールのフォーマットであると推認されることに照らすと、担当者がフォーマットを誤送信したとみるのが相当であり、かかるメールが送信されたことをもって原告に対する嫌がらせであり、違法な侵害行為であるとまで解することは困難である。

(9)  以上によれば、原告の主張はいずれも採用することができず、被告らが原告に対し不法行為責任を負うとは認められない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない。

3  文書提出命令について

原告は、埼玉労働局長が被告らに対してした上記是正指導に関して、日雇労働者派遣及び日々職業紹介双方に関する書類として、是正指導書、是正指導票、是正報告書、調査復命書等、臨検報告書及び苦情相談記録表、日雇派遣に関する書類として、被告ら間で締結された契約書等、請求書、領収証及び管理台帳、日々職業紹介関係として、求人・人材紹介に関する文書一切、被告ら間で締結された日々職業紹介に関する契約書等、請求書及び領収証並びに安全配慮義務違反に関する文書として、タイムカード及び業務日報等について文書提出命令を申し立てている(平成27年(モ)第10号)。しかし、本件では原告らの主張する被告らの不法行為の成否が主要な争点であることによれば、上記是正指導の内容については被告ら提出の書証により上記のとおり認定できるものであるし、その他の点に関しても、上記文書を取り調べるまでもなく不法行為が成立しないことは上記認定判示したとおりである。

したがって、上記各文書について証拠調べの必要性は認められず、上記文書提出命令の申立ては却下するのが相当である。

第4結論

以上によれば、原告の請求は、いずれも理由がないから棄却するのが相当である。

よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

さいたま地方裁判所川越支部第二部

(裁判長裁判官 野口忠彦 裁判官 永山倫代 裁判官 桑原眞貴は、差し支えのため、署名押印することができない。 裁判長裁判官 野口忠彦)

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