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さいたま地方裁判所 平成22年(ワ)1409号 判決

原告

同訴訟代理人弁護士

鷲見賢一郎

戸舘圭之

三浦佑哉

被告

Y株式会社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

藤原宇基

外井浩志

同訴訟復代理人弁護士

草開文緒

浦辺英明

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  原告が、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

二  被告は、原告に対し、二六〇万四七九二円及びうち四三万四一三二円に対する平成二一年一一月一七日から、うち四三万四一三二円に対する同年一二月一六日から、うち四三万四一三二円に対する平成二二年一月一六日から、うち四三万四一三二円に対する同年二月一六日から、うち四三万四一三二円に対する同年三月一六日から、うち四三万四一三二円に対する同年四月一六日から、各支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告に対し、平成二二年五月以降毎月一五日限り四三万四一三二円を支払え。

四  被告は、原告に対し、六〇〇万円及びこれに対する平成二二年五月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告は、原告に対し、三六四一万四九九二円及びこれに対する平成二二年五月一八日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

被告の倉庫内において被告の業務に従事していた原告が、被告との間で締結した契約は、業務委託契約ではなく、労働契約であり、被告が平成二一年九月三〇日に行った当該契約の解約は違法な解雇に当たり無効であるとして、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②解雇後の平成二一年一〇月分から平成二二年三月分までの未払賃金及び未払残業代相当額二六〇万四七九二円(平成二一年四月から同年九月までの賃金及び残業代の平均額である月額四三万四一三二円を基に計算した。)及びこれに対する支払期経過後の遅延損害金の支払、③本件訴訟提起後に支払期が到来する未払賃金及び未払残業代相当額毎月四三万四一三二円の支払、並びに、④原告が解雇されたことに伴う慰謝料として三〇〇万円、被告が原告を労働基準法及び労働契約法上の労働者として扱わなかったことに対する慰謝料として三〇〇万円並びにこれらに対する訴状送達の翌日である平成二二年五月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、⑤原告は、厚生年金保険法及び健康保険法上の労働者に該当するとして、労働契約の付随義務違反又は不法行為に基づき、厚生年金に加入していれば得られたであろう厚生年金相当額及び原告が支払った国民健康保険料の合計から、受給可能な老齢厚生年金と厚生年金保険料及び国民健康保険料の労働者負担分を控除した金額の三二八三万四九九二円に弁護士費用三五八万円を加えた三六四一万四九九二円並びにこれに対する訴状送達の日である平成二二年五月一八日から年六分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等(証拠により認定した事実については、その末尾の括弧内に証拠を掲げる。)

(1)  当事者

ア 原告は、昭和二四年○月○日生まれの者であり、昭和六〇年九月一日から平成二一年九月三〇日まで、被告の蕨市所在の配送センター(旧a1配送センターが他の工事配送センターとの統合分離を経て、現在は「a配送センター」という名称になっている。以下「本件配送センター」という。)において、プレハブエクステリア部門(ハウスメーカーから受注したプレハブのベランダ、手すり、シャッター等外回りのエクステリア製品を取り扱う部門)等で、倉庫管理業務と工事配分業務等を行っていた。なお、本件配送センターは一階が倉庫、二階が事務所になっている。

倉庫管理業務は、製品管理業務とも呼ばれ、工場から出荷されてくる製品を倉庫内において管理し、工事予定等を勘案しながら、工事現場・日時にあわせて仕分け、発注、検品し発送する業務であり、工事配分業務とは、工事士と呼ばれる工事施工業者にプレハブエクステリア工事を割り当てる業務であった。

イ 被告は、昭和二六年に資本金約一五〇億円で設立され、各種シャッター、雨戸、間仕切、ドア、サッシ、什器、建具、建築金物、エクステリア製品及びインテリア製品の製造並びに販売を業とする株式会社である。

(2)  原告は、昭和六〇年九月一日に、被告との間で、本件配送センター内で業務を行うことを内容とする契約(以下「本件契約」という。)を締結した。

(3)  原告は、同月中旬頃、本件配送センターの倉庫内において、業務中に顔面などを火傷する災害に遭った。この際、被告は、原告のために労災申請手続を行い、原告が労災給付を受給できるようにし、原告を社会保険及び雇用保険に加入させた。厚生年金の加入期間は、昭和六〇年九月三日から昭和六一年二月二一日までであった。〈証拠省略〉

(4)  原告と被告は、平成一八年九月三〇日、以下の内容で、業務委託契約書を交わした。なお、原告は、上記契約書に「bサービス」名義で記名した。

ア 業務

工事依頼の受付窓口業務、工事配分業務、工程管理業務、工事終了確認業務、管理台帳の作成業務、倉庫管理業務、配送業務

イ 期間

平成一八年一〇月一日~平成一九年九月三〇日

ただし、期間満了の一か月前までに原告、被告いずれからも、書面による延長しない旨の通知がない場合には、更に一年間自動的に延長されるものとし、その後も同様とする。

ウ 委託料

覚書にて定める金額を支払うものとする。

原告は、被告に対して、当月分の請求書を当月末日までに被告に提出し、被告は、原告に対して、その翌月一五日に支払うものとする。

(5)  被告は、原告に対して、平成二一年八月二六日付けで「『業務委託契約解約』のご通知」と題する書面を送付し、原告と被告との間の本件契約を更新せず、同年九月三〇日付けで解約する(以下「本件契約の解約」という。これをもって原告は、解雇又は雇止めであると主張し、被告は業務委託契約の終了であると主張する。)旨の通知をした。

二  争点

(1)  原告の労働者該当性

(2)  本件契約の解約の効力

(3)  未払賃金及び未払残業代相当額並びに原告が解雇されたこと及び労働者として扱われなかったことに伴う慰謝料額

(4)  原告の厚生年金保険法及び健康保険法上の被保険者該当性及び損害額

三  当事者の主張

(1)  争点(1)(原告の労働者性)について

ア 原告の主張

(ア) 仕事の依頼及び業務従事への指示等に関する諾否の自由

原告は、昭和六〇年九月から被告のプレハブエクステリア部門や窓シャッター部門の製品管理を担当していた。その後、平成一一年四月に配送センターが統合し、原告の担当業務は、上記の業務に加え、プレハブエクステリア部門の工事配分業務や通常エクステリア部門(工務店等から受注した建物のエクステリア製品を取り扱う部門)の倉庫管理業務、産業廃棄物の分別及び管理業務、倉庫内の改善及び整理業務であった。

原告は、被告の指示に基づき、上記のように担当業務を変更されたものであり、被告の業務指示に対する諾否の自由はなかった。原告は、被告に入社した以降、被告の業務指示や業務依頼を断ったことはない。

(イ) 被告の指揮監督下の労働

原告は、原告から事前に送付されてくる施工すべきシャッター等の製品名、施工日、施工場所、施主名等が記載された業務内容を指示する予定表に従って業務を行い、本件配送センターの所長若しくは営業社員の指揮命令、監督を受けて倉庫内の業務に従事しており、配分業務に関して、工事日及び工事士の決定権限は、営業社員が有していた。

いったん所長からある業務を行うように指示されれば、その後、所長が交替した場合は、特に業務の指示がなくとも、引き続き当該業務に従事していた。

(ウ) 時間的・場所的拘束性

原告の業務場所は、常に本件配送センター内であり、一階が倉庫で、二階が事務所になっているところ、原告と同じように本件配送センター内で倉庫管理業務や工事配分業務等に従事する構内作業員(以下「原告ら構内作業員」ないし「構内作業員」という。)の専用の机も、所長や事務員らと同じ二階の事務所内にある。

また、原告は、被告において業務を行うようになってから、本件契約が解約されるまでの間、場所的な異動はなかった。

原告ら構内作業員の勤務日や休日は、被告の「標準カレンダー」のとおりであり、被告の正社員と全く同じであった。原告ら構内作業員の就業時間も、本件配送センターの所長や事務員などの被告の正社員と同じであり、休憩時間は正午から午後一時までと定められ、終業時刻より前に業務が終了しても、終業時刻まで帰宅することは許されていなかった。なお、原告は、休憩時間や業務終了後に倉庫内でトレーニングを行ったり、営業社員や他の構内作業員にスキー板の手入れの仕方を教えたことはあるが、いずれも業務時間内に行ったことはない。

そして、原告は、被告が残業代や休日出勤手当等を管理するために、昭和六一年二月から被告に対して出勤簿を提出していた。

本件配送センターにおいて、所長あるいは所長代理が責任者となって、所長、所長代理、事務員及び原告ら構内作業員が参加して、午前九時から五分程度朝礼を行っており、原告ら構内作業員が早退や遅刻をする場合には、所長の許可を得ていた。

原告ら構内作業員の業務に代替性はなく、被告は、原告ら構内作業員本人に代わって他の者が労務を提供すること及び原告ら構内作業員が補助者を使用することを認めていない。

(エ) 報酬の労務対価性

原告が被告から支給されていた報酬金額は、昭和六〇年九月から三か月間は、見習い期間として日給一万円、昭和六一年一月までは日給一万二〇〇〇円、昭和六一年二月から月給二八万円、平成三年から平成一一年頃までは月給三八万円、平成一二年までは月額四三万円である。そして、原告は、被告から、平成一三年から平成一八年までは、月給四三万円に加えて、時間外手当の最低保障分として三〇時間分四万五〇〇〇円と休日出勤手当の最低保障分として一日分一万五〇〇〇円の合計六万円が支給され、平成一九年一月頃から平成二一年までは月給四〇万円に加えて時間外手当の最低保障分として一五時間分二万二五〇〇円と倉庫整理他二万七五〇〇円の合計五万円を支給され、平成二一年三月支払分の給与以降は、基本給四〇万円及び時間外手当の最低保障分等一万円(七時間分)の合計四一万円の支給を受けていた。

早退や遅刻をした場合には一時間当たり一五〇〇円が給料から差し引かれており、一時間一五〇〇円の残業手当や一日一万五〇〇〇円、半日七五〇〇円の休日出勤手当も支給されていた。なお、被告は、平成二二年一月二一日に、池袋労働基準監督署から、労働基準法三七条違反があったとして、時間外手当の未払分を、過去二年間に遡って再計算して、原告に支払うように是正勧告を受け、それに従って、同年二月九日、原告に対し、六〇万三八七一円を支払った。また、原告は、平成一八年一月支払分の給与から給与所得として源泉徴収を受けている。

(オ) 事業者性、専属性及びその他

被告は、昭和六〇年九月から平成三年四月まで、原告ら構内作業員に対して、制服、安全靴、革手袋等の装備品を支給しており、原告ら構内作業員は、事務用品、掃除用具、フォークリフトも被告のものを使用していた。また、原告は、被告で業務を行い始めてから、副業を行ったことはなく、工事士が忙しく工事が回らない場合には、営業社員の指示を受けて、工事士と一緒に工事業務を行ったことがある。そして、原告は、業務遂行上の損害に対する責任を負っておらず、被告から業務遂行上の損害賠償責任を請求されたことはない。なお、原告が個人の屋号として「bサービス」の名称を使用するようになったのは、本件配送センターの所長から、指示されたからである。

原告は、昭和六〇年九月三日頃、川口職業安定所から職業紹介を受け、被告との間で、労働契約を締結しており、その後、退職届を書いたり、被告を退職したことはない。被告は、飯田橋公共職業安定所に対する離職票で、原告との契約が雇用契約であることを記載し、原告を雇用保険に遡及加入させた上、失業給付を受領できるようにした。

イ 被告の主張

原告は、被告との間で、昭和六〇年九月から、業務委託契約を締結していた。

(ア) 仕事の依頼及び業務従事への指示等に関する諾否の自由

原告は、被告から包括的に倉庫管理業務及び工事配分業務を受託していたため、業務の性質上、個別に倉庫管理業務及び工事配分業務について諾否を行う状況になかった。また、原告は、他の構内作業員に仕事を依頼したり、用事を告げて、早退、遅刻することがあったが、本件配送センターの所長がこれを拒否したことはなかった。

(イ) 被告の指揮監督下の労働

原告の被告からの委託業務の内容は、営業社員が注文者であるハウスメーカーから請け負った工事の希望日を伝えてくるので、工事量と工事内容を考慮して、これにふさわしい工事施工業者を決定し、工事日にあわせて、部材の搬入、管理、搬出を行うというものであり、工事日の決定及び工事施工業者の選定は、原告の判断と責任において行っていた。

原告が業務の遂行上日常的にやり取りするのは、被告の営業社員と工事士のみてあり、被告から業務内容及びその遂行方法について指揮命令を受けていなかった。

また、原告ら構内作業員の業務開始時刻及び業務終了時刻は、同人らが自ら決めたものであり、被告が指示したわけではない。

(ウ) 時間的・場所的拘束性

被告の本件配送センター内で業務に従事することは、委託した業務の内容上当然のことであり、被告が原告に対して指揮命令をするための措置ではない。

被告は、原告の出退勤時間等を管理しておらず、製品が倉庫に到着して荷下ろしが可能になる時刻に出勤し、一日の業務が終了すれば、正社員の終業時刻前に帰宅しており、その間の休憩時間に関しても管理したことはない。早退や遅刻に所長の許可は必要なく、就業規則に定められた業務時間中に医者に行ったり、漫画を読んだり、トレーニングやスキー板の手入れ等を行ったりしていた。原告は、被告に対して、月に一回出勤簿の提出をしていたが、原告の申告に基づく出退社時間であり、被告は、タイムカード等で原告の就業時間を管理したことはないし、出勤簿に応じて時間外手当を支払ったこと、遅刻した時間分の報酬を支給額から控除したことはなかった。なお、被告は、被告の正社員の労働時間の管理を「勤怠データ」により管理し、時間外労働を被告の正社員にさせる場合には、「時間外(休日労働)勤務指示書」を提出させて、所長の決裁を得たうえで行わせていた。また、被告の正社員は、早退や遅刻、有給休暇の申請等は所定の届出用紙に記入して、所属長に申請した上で、同人の承認印を得ていた。原告の休日が、正社員と同じなのは、原告の業務が本件配送センターの倉庫内での業務であり、倉庫が閉まっていた日が、休日になっていたに過ぎないからである。

そして、他の構内作業員が原告の業務を代替して行うことがあり、被告もそれを容認していた。また、原告ら構内作業員の中には、自己が請け負った業務の一部を自ら雇用した複数の者に行わせている者もおり、業務には代替性がある。

(エ) 報酬の労務対価性

被告は、原告に対して、業務委託料として毎月定額を支払っており、原告が被告に対して提出した出勤簿の業務時間に応じて、報酬を決定していたわけではない。原告の報酬額は、同人と被告の所長が、原告の業務量を勘案して話合いによって決定されていたものであり、追加の委託料は、業務時間に関係なく、倉庫管理作業の延長時間や産業廃棄物の分別などの構内作業員の業務量に応じて一律に支給していた。また、被告は、原告ら構内作業員が休日に業務を行った場合、一日当たり一万五〇〇〇円を支給していたが、これは倉庫管理業務に対する報酬であった。原告が遅刻や早退をしたとしても、それに伴って業務委託料から一定の金額を控除したことはない。なお、原告ら構内作業員が、遅刻、早退、欠勤した場合、一時間当たり一五〇〇円の報酬を控除した時期はあるが、これは倉庫管理業務が行われないことから、業務の減縮に伴う報酬の減額であった。

(オ) 事業者性、専属性及びその他

原告が、被告の事務用品や掃除用具を使用していたことは認めるが、制服や安全靴、革手袋等の装備品については、平成二年以降は、原告ら構内作業員らが自ら団体を作り、その積立金から支給していた。

また、原告は、「bサービス」という屋号を用いて、被告からの業務を受注していた。

原告は、被告と本件契約を締結した際に、本件配送センターの当時の所長と面接をしただけであり、書類等は交わしておらず、被告の正社員と同様の採用選考過程を経ていないし、雇用保険等の社会保険料を負担したことはない。

(2)  争点(2)(本件契約の解約の効力)について

ア 原告の主張

(ア) 被告は、①人員削減の必要性がなかったにもかかわらず、②解雇回避努力を行わず、③人員選定の合理性もなく、④事前説明、協議をせずに原告の解雇を行っており、当該解雇は権利の濫用に当たり無効である。

すなわち、①被告の本件配送センター以外の配送センターでは、人員不足であり、人員削減の必要性を示す資料等は被告から原告に対して明らかにされていないし、当期損失を出す業績でありながら、取締役の報酬を増額させている。そして、原告は、プレハブエクステリア部門以外の業務も行っており、同部門の業務量の減少は、原告を解雇する理由にはならないし、他の者に関しては、業務委託料を下げて、契約を継続している等、人員削減の必要性は存在しない。また、②被告は、原告が他の配送センターへの異動を承諾していたにもかかわらず、それを無視して解雇を行っており、原告に対して、担当業務の変更や工事士への転向を勧めたことはなく、原告を解雇する前に、早期退職の募集等も行っていない。さらに、③原告は、原告ら構内作業員の中で、最も経験年数が長く、技能も他の従業員に比して優れており、他の配送センターへと異動可能と回答していたことに加え、プレハブエクステリア部門の業務担当者は原告しかおらず、他の部門の業務担当者は複数名いたにもかかわらず、被告は原告を解雇した。そして、④被告は、原告に対して、被告の具体的な経営状況などを説明しておらず、被告から解雇を告げられた際にも、営業損益が赤字であること等が記載された業界紙を見せただけであった。これらの事情からすれば、原告の解雇は、整理解雇の四要件をいずれも満たしておらず、無効である。

(イ) また、被告は、①原告が、本件配送センターの所長に対して、全ての製品の倉庫管理業務を担当できると言ったにもかかわらず、被告が通常エクステリア部門の倉庫管理業務を担当させなかったこと、②本件配送センターにおいて一名しかいないプレハブエクステリア部門の業務担当者である原告の本件契約を解約したこと、③多摩工事配送センターに異動させることができたのに異動させなかったこと、④他に被告との間の契約を解約した二名の構内作業員に対しては、代替業務を提案して、契約関係を継続しているにもかかわらず、原告には代替業務を提案しないで、本件契約を解約したことからすれば、原告が労働組合員であること及び組合活動を行ったことを理由として、本件契約を解約しており、本件契約の解約は不当労働行為に該当するから無効である。

イ 被告の主張

(ア) ①被告では、住宅市況の低迷により主力であったシャッター及び建材の販売が落ち込み、急激に業績が悪化し、平成二一年度には、昭和四八年の創業以来初めて営業赤字になった。これに対応するため、工事の統合等の組織改編並びに人件費及び材料費の削減によるコストカットを行った。なお、本件配送センターでは、原告担当のプレハブエクステリア部門は、売上が平成一三年時と比べて、平成二一年時には五分の一弱に減少していた。また、②解雇回避努力として、採用中止、一時帰休、工場閉鎖、役員報酬返上・減給、早期退職の募集、人件費削減、各センターで削減策(業務委託料の減額)を行っている。しかし、業務委託契約の解約募集については応募がなく、本件配送センターの原告ら構内作業員らに対して、本件配送センターから他の配送センターへの異動を提案したところ、原告がそれに難色を示したため、他の者が異動することに決定したため、人員余剰で、かつ、人員配置による人員調整ができないなかで、原告との契約を解約せざるを得なかったものである。なお、人員余剰の程度は大きく、原告の報酬を一部下げて契約を継続することはできなかった。さらに、③被告が、原告を選んだのは、人員余剰となっていた本件配送センターの構内作業員の中で、原告の業務量が他の構内作業員に比べて圧倒的に少なく、また、委託料が高額化していたことに加え、資格取得をせず、業務能力の向上に関して努力が見受けられなかったことからであり、合理性がある。そして、④被告は、原告ら構内作業員に対して、被告の経営状況やそれに対する打開策をとったが、今後も厳しい状況が予想されることを説明した上で、上乗せの慰労金を示して業務委託契約の解約及び更新中止に応じるように求め、他の配送センターへの業務委託場所の変更を求めたのであるから、適切な手続を踏んで、本件契約を解約している。これらの事情からすれば、本件契約を解約したことは有効である。

(イ) 原告の契約を解約したのは、上記(ア)の理由からであり、原告が組合員であること及び組合活動を行ったことを理由としたものではないし、原告と同時期に業務委託契約を解約した者は、他に二名おり、原告のみを狙い撃ちしたわけではないから、本件契約の解約は、不当労働行為には該当しない。

(3)  争点(3)(未払賃金及び未払残業代相当額並びに原告が解雇されたこと及び労働者として扱われなかったことに伴う慰謝料額)

ア 原告の主張

原告の解雇後の未払賃金及び未払残業代相当額は、平成二一年一〇月分から平成二二年三月分までの合計二六〇万四七九二円であり、本件訴訟提起後に支払期が到来する未払賃金及び未払残業代相当額は、毎月四三万四一三二円である。

また、被告は、原告に対して、解雇されたことに伴う慰謝料として三〇〇万円並びに被告が原告を労働基準法及び労働契約法上の労働者として扱わなかったことに対する慰謝料として三〇〇万円の支払義務がある。

イ 被告の主張

原告の労働者性は認められず、本件契約を解約したことも有効であるから、未払賃金及び未払残業代は発生しないし、被告が原告に対して慰謝料を支払う義務はない。

(4)  争点(4)(厚生年金保険法及び健康保険法上の被保険者該当性及び損害額)について

ア 原告の主張

被告は、原告が、厚生年金保険法及び健康保険法上の被保険者資格を取得しているにもかかわらず、厚生労働大臣、保険者等に届出をしておらず、この被告の届出義務違反は、民法一条二項及び労働契約法三条四項に定める信義誠実の原則に基づき、労働契約に付随する義務に違反するものとして、債務不履行を構成する。また、被告の上記届出義務違反は、確定的な故意のもとに、労働者の厚生年金保険法及び健康保険法上の利益を侵害したものとして、不法行為を構成する。

これによる原告の損害額は、原告が本来受給可能であった老齢厚生年金及び厚生年金基金額並びに支払を免れることができた国民年金保険料及び国民健康保険料の合計額から、受給可能な老齢厚生年金並びに厚生年金保険料及び健康保険料の労働者負担分を控除した金額であり、原告が六五歳で被告を退職した場合の損害額の合計は二三一四万七七九四円、原告が六〇歳で被告を退職した場合の損害額の合計は三二八三万四九九四円となる。

イ 被告の主張

原告と被告との間の契約は、業務委託契約であり、厚生年金保険法及び健康保険法が適用される「被保険者」には当たらない。また、被告は、bサービスという屋号を用いる原告と業務委託契約を締結していたと認識しており、厚生年金保険法及び健康保険法上の被保険者資格に関して届出をしなかったことに関して過失はない。さらに、厚生年金に関しては、原告は、厚生労働大臣に対して資格取得確認請求をすることができたのであるから、被告の資格取得届出義務違反により原告に厚生年金相当額の損害が生じたという主張は失当であり、物価スライド特例措置の解消により、将来分の年金相当額の算定は困難である。

仮に、原告の被告に対する被保険者資格取得の届出義務違反に基づく損害賠償請求権が認められたとしても、原告は、昭和六〇年九月以降、社会保険事務所に出向き、厚生年金被保険者資格の有無を確認することは十分に可能であったにもかかわらず、これをせずに、むしろ昭和六一年夏頃に自ら国民年金に切り替えているのであるから、原告にも過失が認められ、過失相殺されるべきである。また、原告の被告に対する被保険者資格取得の届出義務違反に基づく損害賠償請求権は、時効により消滅している。

第三当裁判所の判断

一  争点(1)(原告の労働者該当性)について

(1)  前記争いのない事実等のほか、証拠〈省略〉によれば、次の事実が認められる。

ア 原告の業務内容等

(ア) 原告は、昭和六〇年九月に被告との間で本件契約を締結した当初は、プレハブエクステリア部門と窓シャッター部門の倉庫管理業務を行っていたが、数年後には、プレハブエクステリア部門の工事配分業務も行うようになった。平成一一年四月頃に本件配送センターが他の配送センターと統合されてからも、本件配送センター内において、上記業務に加えて、通常エクステリア部門の製品や部材等の荷下ろし及び仕分け業務を行っており、追加で倉庫内の補修改善、産業廃棄物の分別管理業務を行うこともあった。原告は、これらの業務に関して、昭和六〇年九月に被告での業務を開始してから平成二一年九月まで、被告の業務依頼を断ったことはなかった。本件配送センターには、被告に雇用された従業員として、所長、所長代理及び事務員一名がおり、その他に原告ら構内作業員が業務に従事していた。

原告は、工事配分業務においては、被告の営業社員からファックスで送られてきたプレハブエクステリア部門の工事依頼書を確認し、原告が担当する三、四人の工事士の予定や得意分野、各工事士への配分のバランスなどを考慮して、各工事を担当する工事士及び工事日を決定していた。なお、上記工事依頼書には、施主名、施工場所、製品名・数量、工事希望日等が記載されており、工事士や工事日を決定する過程で、原告と営業社員が工事士の選定等について協議することもあった。そして、原告は、工事士及び工事日が決定すると、各工事に必要な製品が倉庫内のどこに保管されているかを手書きした工事出荷伝票を作成し、それを工事士に渡しており、この時点で、工事士への工事配分内容が確定していた。その後、原告はパソコン入力が苦手なため、他の構内作業員に頼んで、出荷伝票の内容を工事予定表に入力してもらい、その内容を印刷して、営業社員にファックスで送信していた。

(イ) 原告ら構内作業員は、日々の業務において、本件配送センターの所長や事務員等と業務に関してやり取りをしたり指示を受けたりすることはなかった。そして、原告は、原告の業務内容について、昭和六〇年九月に被告において業務を開始したときに、当時の本件配送センターの所長から業務内容の説明を受けた後は、業務内容やその遂行方法について被告から指示を受けたことはなかった。

(ウ) 本件配送センターの構内作業員は、担当する部門が異なるものの、原告と同様の倉庫管理業務及び工事配分業務等に従事していた。原告ら構内作業員の中には、c工業(B)やdシステム(C)という屋号で被告から業務を請け負い、その業務の一部を、自ら雇用した複数の従業員に行わせている者がいる。

(エ) 原告が従事していたプレハブエクステリア部門の売上は、平成一六年以降、五年連続で売上が減少し、平成一三年時と比較して、平成一八年には約三分の一、平成二一年には約五分の一になり、本件配送センターの工事配分業務において、原告以外の構内作業員が担当する工事士がそれぞれ一二名~二〇名くらいであったのに対して、原告の担当する工事士は三、四名であった。

(オ) 原告ら構内作業員は、本件配送センターの二階の事務所に、専用の机、電話、ロッカーが用意され、事務用品、倉庫で使用するフォークリフトは、被告から支給されたものを使用していたが、作業服は自ら調達していた。

(カ) 原告は、「bサービス」という屋号を使用することがあり、被告において業務に従事してから、被告以外の者と業務委託契約を締結するなどして被告以外の者の業務に従事したことはなかった。もっとも、被告は、原告ら構内作業員が他の業務に従事することまで禁止していなかった。

イ 一日の業務の流れ

(ア) 原告は、午前八時半頃に本件配送センターに着き、作業着に着替え終わると、本件配送センターの二階にある事務所で、工事士が前日に行った作業内容を確認した工事出荷伝票、取付完了請求明細書を見て、前日の工事士の作業内容を確認し、工場から送られてくる入庫伝票を見て、当日の入庫予定の製品を確認していた。

(イ) 午前九時に工場からのトラックが本件配送センターの倉庫に着くと、原告ら構内作業員は、トラックに積み込まれている製品の荷下ろしを手伝い、それらの製品を品名、サイズ別に仕分けし、その後邸名別に仕分けして、倉庫内に配置するという倉庫管理業務を行っていた。

(ウ) 原告ら構内作業員は、上記倉庫管理業務が終了すると、午後からは、本件配送センター二階の事務所にある専用の机で、工事配分業務を行っていた。

ウ 業務時間等

(ア) 原告ら構内作業員の業務時間は、午前九時から午後五時四五分とされていたが、これは、原告ら構内作業員の話合いによって、倉庫にトラックが到着する時刻に合わせて決められたものであり、被告から業務開始時刻及び業務終了時刻について指示を受けて決まったものではなかった。また、原告ら構内作業員は、正午から午後一時までの一時間休憩をしていたが、その他にも、業務の空いた時間で、適宜休憩をしており、休憩時間についても被告からの指示はなかった。なお、本件配送センターの所長や事務員の勤務時間も、午前九時から午後五時四五分であった。

(イ) 原告は、一か月に一回、本件配送センターの所長に対して、出勤簿を提出していたが、被告は、原告ら構内作業員の業務時間について、正確な時間を把握することはしておらず、上記出勤簿の出社時刻と退社時刻は自己申告であった。原告の平成二〇年一〇月から平成二一年九月までの出勤簿には、出社時刻が午前九時(ただし、平成二一年六月及び七月には、午前八時三〇分も相当ある。)、退社時刻が午後六時、同六時一五分、同六時三〇分、同六時四五分と記載された日が多い。

(ウ) また、原告ら構内作業員は、業務が終了すれば午後五時四五分よりも前に帰宅することができ、その場合には、本件配送センターの所長に帰宅する旨を伝えていたが、当該所長の許可を得ることまではしていなかった。

(エ) 被告は、被告の正社員の労働時間を「勤怠データ」により管理し、時間外労働時間も一五分単位で管理して残業時間を集計していた。そして、被告が、時間外労働を被告の正社員にさせる場合には、勤務(仕事)の内容、予定時間及び実時間の記載欄のある「時間外(休日労働)勤務指示書」を提出させて、所長が決裁をしていた。また、被告の正社員は、早退や遅刻、有給休暇等を申請する場合は、所定の届出用紙に必要事項を記入して、所属長に申請した上で、同人の承認印を得ていた。

(オ) 原告ら構内作業員は、被告の営業日が記された「標準カレンダー」において、本件配送センターが休日とされる日には、自らの業務を休む日と定めていた。

(カ) 原告は、業務時間内に読書をしたり、ジョギングをしたり、ウエイトトレーニングをしたりしていた。本件配送センターの所長であったD達は、原告が長時間にわたって漫画本を読んでいるのを何回も見たが、原告が業務の合間にしていることであるとして、注意したことはなかった。本件配送センターの倉庫の一隅の壁には、何者かによって、「トレーニングジムE」(Eは原告の旧姓)と書かれていた。

エ 原告が被告から支給されていた報酬等

(ア) 被告は、原告ら構内作業員に対して、休日に業務を行った場合は、一日当たり一万五〇〇〇円の休日手当を支給していた。また、被告は、原告ら構内作業員が業務時間に遅刻、早退、欠勤をした場合には、一時間当たり一五〇〇円を減額して、報酬を支給していた時期があった。

(イ) 原告が本件契約に基づき被告から支給されていた報酬は、昭和六〇年九月から同年一一月までは日額一万円で、同年一二月から昭和六一年一月まで日額一万二〇〇〇円であった。また、同年二月頃から平成二年頃までは月額二八万円で、平成三年頃には月額三八万円になり、平成一九年二月から平成二一年一月までは月額四五万円、同年二月から九月までは月額四一万円であった。原告は、被告に対して、「物流管理代金請求書」を提出して、平成一九年二月以降、基本料金四〇万円、時間外手当一五時間分二万二五〇〇円、倉庫整理他二万七五〇〇円として四五万円の報酬を請求し、平成二一年二月以降は、基本料金四〇万円に、「時間外手当(七時間)他」などの項目で一万円を追加して、合計四一万円の報酬を請求していた。原告からの上記請求に対して、被告は、原告から請求を受けた金額を支給していた。これらの支給額は、原告と本件配送センターの所長の話合いによって決定していたものであり、被告の就業規則及び給与規定に基づく従業員の賃金体系とは異なっていた。

(ウ) また、被告の就業規則では、被告の正社員は、六〇歳の誕生日の翌日に定年退職し、一定の条件を満たした場合には、定年後に再雇用されることが定められているが、再雇用された者の給与は、定年前の給与に比べると半額以下の水準となる。しかし、原告(昭和二四年○月○日生)は、被告から本件契約を解約する旨の通知がされた当時、既に六〇歳に達していたが、就業規則の定年を適用されることなく、六〇歳になる前と同一の業務に従事し、報酬の額もそれまでと同様であった。

(エ) 被告は、昭和六〇年九月三日から昭和六一年二月二一日までの期間、原告を厚生年金に加入させていたが、原告が被告から支給されていた報酬に関して、社会保険料の控除を受けたことはなく、源泉徴収もされていなかった。また、原告は、個人事業主として確定申告を行っていた。

その後、被告が平成一九年四月二七日に麹町税務署から原告ら構内作業員について給与所得者として源泉徴収するように指導を受けたことに伴って、原告は、平成一八年一月分の報酬まで遡って、それ以降の報酬に関しては、給与所得として源泉徴収されていた。

(オ) 原告は、本件契約が解約された後、池袋労働基準監督署に対して、被告から原告に対する残業代の未払があると申告した。被告は、平成二二年一月二一日、池袋労働基準監督署から、労働基準法三七条違反があったとして、時間外手当の未払分を、過去二年間に遡って再計算して、原告に支払うように是正勧告を受けた。被告は、原告との契約は業務委託契約であるとの立場は変えなかったが、上記是正勧告に従って、同年二月九日、原告に対し、六〇万三八七一円を支払った。

(カ) 被告は、本件契約を解約した後、原告についての雇用保険被保険者離職票を作成するのを拒んでいたが、原告の申出を受けた公共職業安定所(ハローワーク)の指導を受け、原告に対し、平成二一年一二月頃、同年九月三〇日に原告が被告を離職した旨を記載した同離職票を交付した。なお、同離職票には、被告が具体的事情を記載する欄に「雇用契約満了のため」と記載されていた。原告は、雇用保険の保険料は支払っていなかったが、上記離職票を使って、失業保険の給付を受けた。

(2)  原告が、労働契約法上の「労働者」(二条一項)に該当するか。

ア 労働契約法二条一項は、労働契約法が適用される「労働者」を「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義しており、これに当たるか否かは、当事者間の契約の名称や形式にかかわらず、その実態として、使用従属関係の下で労務の提供が行われていると評価できるか否かにより判断すべきである。そして、使用従属関係の下で労務の提供が行われているか否かは、仕事の依頼及び業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無、業務の内容及び遂行方法に対する指揮監督の有無、時間的・場所的拘束性の有無、代替性の有無、並びに、時間給、欠勤の控除、残業手当の付与等、報酬の性格が使用者の指揮監督下に一定時間労務を提供していることに対する対価と評価できるか否か等を総合的に考慮して判断するのが相当である。なお、労働基準法が適用される「労働者」(労働基準法九条)も「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されていることからすれば、基本的に労働契約法が適用される労働者と同義であると解される。

イ 以下、本件について検討する。

(ア) 仕事の依頼及び業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無

原告が従事していた業務、すなわち、工場から出荷されてくる製品を倉庫内において管理し、工事予定等を勘案しながら、工事現場・日時にあわせて仕分け、発注、検品し発送する倉庫管理業務や、工事士に工事を割り当てる工事配分業務については、日々発生する個々の業務について個別に委託を受けるという性質のものではなく、包括的な委託を受けて日々の業務に従事するという性質上、倉庫管理業務の一部や工事配分業務の一部のみを拒否できるようなものではないと考えられる。そうすると、原告が、本件配送センターにおいて業務に従事してから、被告の業務依頼を断ったことはなかったとしても、それは、倉庫管理業務や工事配分業務については、委託を受けた業務内容の性質上、当然の結果であると評価することができ、その他の業務についても、諾否の自由がなかったのか否かは判然とせず、本件契約上、原告が倉庫管理業務や工事配分業務を拒否できなかったという事実をもって、直ちに、被告との間で指揮監督関係があったということはできない。

(イ) 業務の内容及び遂行方法に対する指揮監督の有無

原告ら構内作業員が工事配分業務を行う場合には、工事士の予定や得意分野、各工事士への配分のバランスなどを考慮して、自らの判断において各工事を担当する工事士及び工事日を決定しており、被告の指揮命令や監督を受けていたとはいうことはできない。この点に関して、営業社員から原告ら構内作業員らに対して送られてくる工事依頼書に工事希望日等の記載があり、原告ら構内作業員が、工事日や工事業者について被告の営業社員と協議することがあったものの、そのことをもって、原告ら構内作業員が行う工事士や工事日の決定に関して、営業社員の指示や許可が必要であったとまで推認することはできず、その他営業社員の指示や許可がなければ、工事配分業務を行っていた原告ら構内作業員が工事士や工事日を決定できなかったことをうかがわせる事実は認められない。

また、原告は、昭和六〇年九月に被告において業務を開始したときに、当時の本件配送センターの所長から業務内容の説明を受けた後は、業務内容やその遂行方法について被告から指示を受けたことはなかったというのであり、原告が業務を開始した当初に所長から受けた説明も、通常注文者が仕事の依頼をする際に行う業務内容の説明以上のものであったことをうかがわせる証拠はない。そして、その他に、原告ら構内作業員が日々の業務を行う中で、本件配送センターの所長等の被告社員が、原告ら構内作業員の具体的な業務に関して指揮命令や監督をしていたという事情は見当たらないことからすれば、原告が被告の指揮監督の下に労務を提供していたと評価することはできない。

なお、原告は、被告の指示に基づいて担当業務が変更されていたと主張するが、当初は、プレハブエクステリア部門と窓シャッター部門の倉庫管理業務であったものが、数年後に、プレハブエクステリア部門の工事配分業務が加わり、平成一一年四月頃に上記業務に加えて、通常エクステリア部門の製品や部材等の荷下ろし及び仕分け業務、倉庫内の補修改善、産業廃棄物の分別管理業務が追加されたというのであるから、これら原告の業務の変遷は、被告から委託される業務内容の追加に他ならず、そのことをもって、被告の指揮命令を受けていたと評価することはできない。

さらに、原告は、一か月に一回、本件配送センターの所長に対して、出勤簿を提出していたが、上記出勤簿の出社時刻と退社時刻は自己申告であり、被告が、原告ら構内作業員の業務時間について、正確な時間を把握することはしていなかったというのであるから、被告として、原告の記載してきた業務時間が正確なものかどうか精査していたとは認められず、原告の労働時間を管理するために出勤簿を提出させていたとは必ずしもいえないことからすれば、原告が出勤簿を提出していることをもって、被告が原告の労働時間を管理していたということはできない。

なお、原告は、本件配送センターで毎日午前九時から朝礼があり、所長からその日やるべき指示があったと供述するけれども、朝礼は行われていなかったという証人Cの証言からすれば、直ちに原告の供述を信用することはできず、その他客観的な証拠はないことからすれば、上記原告の供述をもって、所長の原告に対する指揮監督をうかがわせる事実を認めることはできない。

(ウ) 時間的・場所的拘束性の有無

前記認定事実からすれば、原告の業務開始時刻と業務終了時刻は、本件配送センターで勤務していた所長等の被告社員と同じであるが、原告ら構内作業員の業務開始時刻が午前九時となっていたのは、被告の指示によるものではなく、原告ら構内作業員の話合いによって、倉庫にトラックが到着する時刻に合わせたことによるものであるから、業務の性質上やむを得ないものであったといえ、被告が原告ら構内作業員の業務の遂行を指揮命令・監督するために業務開始時刻を被告の正社員と同じにしていたとは認められない。また、原告ら構内作業員が、本件配送センターが休日である日を自らの休日と定めていたことも、基本的に本件配送センター自体が休みであれば、倉庫管理業務及び工事配分業務等ができないのは、業務の性質上当然であるから、時間的拘束性を検討する際に、これらの点を重く見ることは相当ではない。もっとも、業務終了時刻が決まっていたということについては、業務の性質上やむを得ないものであったということはできず、一定程度時間的拘束性があったことをうかがわせる事実であるか、原告ら構内作業員は、その日の業務が終われば、業務終了時刻を待たずに帰宅することもでき、その際に、所長の許可はいらなかったというのであり、さらに、原告ら構内作業員は、正午から午後一時までの一時間休憩をしていたが、その他にも、業務の空いた時間で、適宜休憩をしており、休憩時間についても被告からの指示はなかったこと、原告は、業務時間内に読書をしたり、ジョギングやウエイトトレーニングをしていたことからすれば、時間的拘束性は強いものではなかったと評価することができる。

この点、原告は、その日の業務が終わっても帰宅することはできず、早退するためには所長の許可が必要であったと主張するが、原告は、その本人尋問において、用事があって早退する場合、業務が終了しているか業務が残っていても他の者に頼めば、所長から早退することに関して拒否されたことはない旨を述べており、これによって、原告が早退する場合に所長にその旨を報告していたことは認められても、所長の許可が必要であったことまで推認させるものではなく、上記原告の主張は、原告と同じ本件配送センターの構内作業員である証人C及び証人Fの証言とも相反し、その他原告の主張を裏付ける客観的な証拠もないことからすれば、原告の上記主張を採用することはできない。

また、原告が業務に従事していた場所は、本件配送センター内の倉庫と事務所であり、その意味では、場所的拘束性があったともみられるが、原告の業務内容は、全て本件配送センターの倉庫又は事務所での仕事であったのであるから、業務の性質上当然のものであったといえ、被告が原告ら構内作業員の業務の遂行を指揮命令ないし監督をするために場所を限定していたとは評価し難い。

(エ) 代替性の有無

被告において、原告と同様の業務に従事していた構内作業員の中には、c工業やdシステムという屋号で被告から業務を請け負い、その業務の一部を、自ら雇用した複数の従業員に行わせている者がいるのであり、自己の業務をさせるため他の者を使用することが許容されていることからすれば、原告も同様に、自己の業務を行わせるために、他人を雇用することができたものと推認でき、原告が行っていた業務に代替性がなかったとまではいえない。

(オ) 報酬の性格

原告が本件契約に基づき被告から支給されていた報酬は、昭和六一年二月頃以降は、毎月決まった額であり、業務量に応じた支払や出来高払の方法はとられておらず、また、被告は、原告ら構内作業員が業務時間に遅刻、早退、欠勤をした場合には、一時間当たり一五〇〇円減額して、報酬を支給していた時期があったこと、原告ら構内作業員に対して、休日に業務を行った場合は、一日当たり一万五〇〇〇円の休日手当を支給していたことからすれば、この点において、原告が被告から支給されていた報酬が、労務の提供の対価としての性質を有していたことは否めない。

しかし、これらの支給額は、原告と本件配送センターの所長の話合いによって決定しており、一方的に、被告が定めていたわけではなく、また、就業規則(給与規定)との関連性も証拠上うかがわれない。そして、被告が原告の業務時間を正確に把握した上で、それに応じて報酬額が決定されていたわけでもなく、労働時間と報酬額とが対応しているわけでもない。

また、原告が時間外手当として一律の金額を請求したことに対して、被告は、原告から請求を受けた金額を支給していたが、前述のとおり、被告が原告の労働時間を管理していたわけではないこと、時間外手当の額は毎月同一の額であることからすれば、時間外労働に対する手当として、月ごとに時間外労働時間を把握して、それに基づいて支払われていたものではないから、追加の倉庫整理業務等に関する委託料として支給されていたと解しても矛盾するものではない。

そうすると、報酬が労務の提供の対価としての性質を有していたことを、原告の労働者性を判断する際に重く見ることはできない。

(カ) 以上検討したところによれば、原告の報酬には、労務に対する対価と評価できる面があるものの、原告の業務の内容及び遂行方法に対する被告の指揮監督があったとはいえず、また、原告の業務には代替性がなかったとまでは認められず、被告からの時間的・場所的拘束性は原告の業務の性質上生じるものであった面があり、その拘束性も強いものであったと評価することはできない。

以上の事実に、被告の正社員は、時間外労働する場合や早退や遅刻をする場合にも所長の決裁又は許可が必要であり、原告の業務に対する管理方法とは異なること、被告においては、正社員は、六〇歳の誕生日の翌日に退職することになっており、退職後再雇用された者の給与は、従前の給与の半額以下の水準になるところ、原告は、六〇歳に達した後も、従前と同一の業務に従事し、同額の報酬を受けていたことを併せて考慮すると、原告が、被告において、使用従属関係の下で労務の提供をしていたとは認め難い。

(キ) なお、原告は、平成一八年一月分の報酬から、給与所得として源泉徴収されていたけれども、これは、被告に麹町税務署から指導が入り、指摘を受けたことに伴うものであり、被告が自ら原告の報酬を給与所得として扱っていたことを示す事実ではなく、麹町税務署がいかなる調査によって原告の報酬を給与所得として源泉徴収すべきであると判断したのか本件全証拠によっても判然としないことからすれば、この事実を原告の労働者性の判断の際に重く見ることはできない。また、原告の労働者性を判断する際に重視されるのは、原告の業務実態であるから、被告が、本件契約を解約した後に、原告の時間外手当未払分の支払を命じる池袋労働基準監督署からの是正勧告に従って、原告に上記未払相当分の金額を支払ったこと、及び、原告が、被告から、平成二一年九月三〇日に被告を離職した旨が記載された雇用保険被保険者離職票の交付を受けたことが原告の労働者性の判断を左右するとはいえない。

原告ら構内作業員は、本件配送センターの二階の事務所に、専用の机、電話、ロッカーが用意され、事務用品、倉庫で使用するフォークリフトについて、被告から支給されたものを使用していたことが、原告の労働者性を肯定する方向に働く事実であったとしても、原告は、「bサービス」という屋号を使用することがあり、昭和六一年二月以降、平成一八年一月の報酬分より前の報酬に関しては、個人事業主として確定申告を行っていたという事実もあり、また、原告が被告において業務に従事してから、事実上、被告以外の者と業務委託契約を締結するなどして被告以外の者の業務に従事したことはなかったとしても、被告は、他の業務に従事することまで禁止してはいなかったのであり、その他原告が縷々主張する事実を含めて、これらの事実が、原告が、被告において、使用従属関係の下で労務の提供をしていたとは認め難いという上記判断を覆すものとはいえない。

ウ 原告は、被告との間で昭和六〇年九月当初に労働契約が締結されていたと主張し、被告も、本件審理の当初はそれを認めたうえで、昭和六一年二月二一日に退職したと主張していたが、被告は、後にこの主張を撤回するに至っている。

この点について、原告が厚生年金に加入していたのは、昭和六〇年九月三日から昭和六一年二月二一日までであるところ、被告が、昭和六〇年九月に業務中の災害が起こり原告が負傷したために、労災申請手続を行い、原告が労災給付を受給できるようにし、原告を社会保険及び雇用保険に加入させたことからすれば、上記厚生年金加入期間があることをもって、直ちに原告が雇用契約を締結していたと認めることはできないし、その他、原告と被告との間で労働契約を締結していたことをうかがわせる客観的な証拠もないことからすれば、直ちに、原告が被告との間で労働契約を締結していたと認めることはできない。

エ 以上からすれば、原告が、労働契約法が適用される「労働者」であったとは認め難い。

二  争点(2)(本件契約の解約の効力)について

(1)  原告に労働契約法及び労働基準法上の労働者性は認められず、本件契約が労働契約とは認められない以上、これを前提とする原告の主張は理由がない。

(2)  次に、原告は、原告に労働組合法上の労働者性が認められることを前提として、本件契約の解約が不当労働行為に当たり無効であると主張するので、以下検討する。

ア 証拠〈省略〉によれば、次の事実が認められる。

(ア) 原告は、本件契約が解約された平成二一年九月三〇日当時、e労働組合のf支部所属の組合員であり、同支部の執行委員長を務めていた。

(イ) 被告において、平成一九年四月から平成二〇年三月までの第六二期連結決算の純利益は、前期比三六・四%減の一二億四八〇〇万円で、同年四月から平成二一年三月までの第六三期連結決算の純利益は、マイナス二二億八七〇〇万円であり、同年四月から平成二二年三月までの第六四期連結決算の純利益は、マイナス一〇〇億六二〇〇万円となり、被告の業績は急激に悪化した。本件配送センターにおいても、原告が従事していたプレハブエクステリア部門の売上は、平成一六年以降、五年連続で売上が減少し、平成一三年時と比較して、平成二一年には約五分の一になった。

(ウ) 本件配送センターにおける工事配分業務において、原告が担当する工事士は三、四名であったのに対して、他の構内作業員らが担当する工事士は、それぞれその約四倍に当たる一二名~二〇名くらいであった。

(エ) 原告は、工事予定表の作成に関して、パソコンに入力することが苦手であったため、同じ構内作業員であるCに代わり入力してもらっていた。

(オ) 被告は、業績の悪化に伴って、工場の統廃合、新規採用の停止、契約社員の雇止め、派遣社員の契約解除、一時帰休、賞与カット、役員の報酬返上、各種経費削減等を行ったが、本件配送センターの原告ら構内作業員らに対して、各センターの業務量の平準化のため、平成二一年七月二四日に、本件配送センター以外の、多摩工事配送センター及び千葉工事配送センターへの業務場所の異動を募集した。

(カ) 原告は、上記募集に対して、本件配送センターの所長に、多摩工事配送センターであれば、異動することができるが、原告の妻の体調が優れないこと及び労働組合の委員長の任期が一年ある旨を伝えた。しかし、被告は、異動することに応募したもう一名の構内作業員のほうが、住居の位置関係や多摩工事配送センターの取扱業務(原告が担当していたプレハブエクステリア部門の業務はなかった。)及び業務委託料等の点で、適任であると判断し、当該構内作業員が、多摩工事配送センターに異動した。

(キ) 被告は、本件配送センターにおいて、本件契約を解約した時期と同時期に、原告の他に二名の構内作業員について、従来の業務委託契約を解約した。もっとも、その二名は、被告と業務委託契約を締結していたc工業及びdシステムの従業員であり、被告との業務委託契約を解約された後は、それらの従業員として、被告の業務に従事している。

イ 原告は、①原告が、本件配送センターの所長に対して、全ての製品の倉庫管理業務を担当できると言ったにもかかわらず、被告が通常エクステリア部門の倉庫管理業務を担当させなかったこと、②本件配送センターにおいて一名しかいないプレハブエクステリア部門の業務担当者である原告の本件契約を解約したこと、③多摩工事配送センターに異動させることができたのに異動させなかったこと、④原告の外に契約を解約した二名の構内作業員に対しては、代替業務を提案して、契約関係を継続しているにもかかわらず、原告には代替業務を提案しないで、本件契約を解約したことから、本件契約の解約は不当労働行為に該当する旨主張する。

しかし、①の点に関しては、まず、原告が主張するやり取りが本件配送センターの所長との間であったことを認めるに足りる証拠はなく、たとえ、この事実があったとしても、被告として、原告に、全ての製品の倉庫管理業務を担当させなければいけない義務を負っているわけではなく、業務量や担当の構内作業員の数、当該構内作業員の能力等を考慮して、業務を依頼するか否かを判断するものであり、この事実のみをもって、被告が、原告が組合員であることを理由に業務を担当させなかったとまで推認することはできない。また、②の点に関しては、プレハブエクステリア部門の売上が減少しており、原告が担当する工事士の数が、原告以外の構内作業員がひとりで担当する工事士の数と比較して四分の一程度であったことなどからすれば、被告が、原告ら構内作業員の中で、原告との間の本件契約を更新しないという選択をしたことは、経営判断の一環として不合理なものとはいえず、原告が組合員であることを理由として本件契約を更新しなかったということをうかがわせるものとはいえない。そして、③の点に関しては、被告として、原告を多摩工事配送センターに異動させなければいけない義務を負っているわけではなく、原告が提示した諸条件からすれば原告が選ばれるはずであるのに、被告が、原告が組合員であったことから、あえてもう一名の構内作業員を異動させたという事情も見当たらない状況からすれば、被告が、もう一名の構内作業員のほうを上記アの認定事実のとおり適任であると判断して異動させたとしても、経営判断として不合理なものとはいえないし、原告が組合員であることを理由として不利益に扱ったということはできない。さらに、④の点に関しても、そもそも、被告が、本件契約を解約する際に、代替業務を提案しなければいけない義務はないし、原告以外の二名に関しては、被告と業務委託契約を締結していたc工業及びdシステムの従業員であり、未だそれらの従業員として被告の業務に従事しているものであるから、その二名の存在をもって、原告が組合員であったことを理由として被告に不利益に扱われたと推認することはできない。

ウ そうだとすれば、原告が組合員であることを理由として本件契約を解約したということはできず、本件契約の解約が不当労働行為に当たり無効であるという原告の主張は理由がなく、採用することができない。

三  争点(3)(未払賃金及び未払残業代相当額並びに原告が解雇されたこと及び労働者として扱われなかったことに伴う慰謝料額)

争点(1)及び(2)における上記判断のとおり、原告の労働者性は認められず、本件契約の解約も有効であるから、原告の労働者性が認められること及び本件契約の解約が無効であることを前提とする、未払賃金及び未払残業代並びに慰謝料の支払に関する原告の主張は理由がなく、採用することができない。

四  争点(4)(原告の厚生年金保険法及び健康保険法上の被保険者該当性及び損害額)について

被保険者に関して、厚生年金保険法九条は、「適用事業所に使用される七〇歳未満の者」と定め、健康保険法も年齢は規定されていないものの同旨の規定となっている。この「使用される」者とは、労働基準法上の労働者と全く同義であるとは解されないものの、法人の代表者や短時間労働者等を除いて、基本的には重なるものと解するのが相当であるところ、原告が労働契約法上の労働者であるとは認められないことは前述のとおりであり、そうすると、原告は、労働基準法上の労働者とも認められず、被告に使用される者であるといえないから、厚生年金保険法及び健康保険法の被保険者には該当しない。

したがって、厚生年金保険法及び健康保険法の被保険者に該当することを前提とする原告の主張には理由がなく、採用することができない。

第四結論

以上によれば、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求は、理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野村高弘 裁判官 佐野信 平山翔悟)

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