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さいたま地方裁判所 平成18年(ワ)1054号 判決

原告

X1他3名

被告

主文

一  被告は、原告X1に対し、二億六二八七万一五〇六円及びこれに対する平成一五年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2、原告X3、原告X4に対し、それぞれ三三〇万円及びこれに対する平成一五年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告X1及び原告X2のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、原告X1と被告の間に生じたものについては、これを二分し、その一を原告X1の、その余を被告の負担とし、原告X2と被告との間に生じたものについては、これを五分し、その二を原告X2の、その余を被告の負担とし、原告X3及び原告X4と被告との間に生じたものについては、被告の負担とする。

五  この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告X1に対し、五億七一四三万八九二一円及びこれに対する平成一五年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2に対し、五五〇万円及びこれに対する平成一五年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告X3に対し、三三〇万円及びこれに対する平成一五年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告は、原告X4に対し、三三〇万円及びこれに対する平成一五年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  訴訟費用は、被告の負担とする。

六  仮執行宣言

第二事案の概要等

一  事案の概要

本件は、原告X1が、自転車を運転して、信号機による交通整理の行われている交差点を直進走行していたところ、同交差点を左折する被告運転の車両と衝突したことにより、急性硬膜外血腫、頭蓋骨骨折等の傷害を受けたとして、被告に対し、不法行為に基づき、逸失利益等の損害賠償を求めたほか、原告X1の夫及び子らが、慰謝料請求をした事案である。

二  争いのない事実等(証拠により容易に認定できる事実については、かっこ内に証拠を示す。)

(1)  原告ら

ア 原告X1(原告X1)は、平成一五年二月一四日当時、c生命保険相互会社に勤務する五三歳の女性であった。

イ 原告X2(原告X2)は、原告X1の夫である。

ウ 原告X3(原告X3)は、原告X1の長女、原告X4(原告X4)は、原告X1の次女である。

(以下、原告X1を除く原告らを、「原告ら家族」という。)

(2)  交通事故の発生(本件事故)

ア 交通事故の発生日時・場所

(ア) 日時 平成一五年二月一四日午後六時六分ころ

(イ) 場所 東京都北区滝野川三丁目一番一号先交差点(本件交差点)

(ウ) 関係車両 a 自転車(原告X1自転車)

運転者 原告X1

b 普通乗用自動車(〔ナンバー省略〕)(被告車両)

運転者 被告

イ 事故態様及び責任原因

被告は、被告車両を運転して、信号機により交通整理の行われている本件交差点を池袋方面から十条方面に向かい左折進行するに際し、同交差点の左折方向出口には横断歩道が設けられていたのであるから、同横断歩道上の横断歩行者等の有無に留意し、その安全を確認しながら進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、同横断歩道を自転車が進行していったことから、他の自転車等はないものと軽信し、同横断歩道上の横断歩行者等の有無に留意せず、その安全確認不十分のまま、時速約一五キロメートルで左折進行した過失により、折から同横断歩道上を信号機の青色表示に従い左方から右方へ進行してきた原告X1自転車を左前方約二・八五メートルの地点で認め、急制動の措置をとったが間に合わず、被告車両左側面前部を同自転車に衝突させ、原告X1を同自転車もろとも路上に転倒させた。

(3)  原告X1の受傷、治療経過及び後遺障害

ア 本件事故により、原告X1は、急性硬膜外血腫、頭蓋骨骨折の傷害を負った。

イ 原告X1は、以下のとおり入院して、治療を受けた。(甲二一の一ないし二一の一〇、二三の一ないし二三の一〇、二四の一ないし二四の八、二五の一、二五の二、二六の一ないし二六の八、二七の一ないし二七の八、二八、八四)

(ア) 東京都立大塚病院(大塚病院) 平成一五年二月一四日から同年八月一四日まで(入院日数一八二日)

(イ) 医療法人社団健育会竹川病院(竹川病院) 平成一五年八月一四日から平成一六年一二月二八日まで(症状固定日までの入院日数二二三日)

(ウ) 大塚病院 平成一六年一二月二八日から平成一七年二月七日まで

(エ) 都立豊島病院(豊島病院) 平成一七年二月七日から同月一八日まで

(オ) 大塚病院 平成一七年二月一八日から同年三月二八日まで

(カ) 財団法人慈愛会慈愛病院(慈愛病院) 平成一七年三月二八日から同年七月四日まで

(キ) 医療法人社団双愛会大宮双愛病院(双愛病院) 平成一七年七月四日から同年九月一七日まで

(ク) さいたま赤十字病院 平成一七年九月一七日から同年一〇月一日まで

ウ 原告X1は、平成一六年三月二三日に症状が固定し、後遺障害等級政令等級別第一級一号の認定を受けた。

(4)  既払金

自賠責保険から、原告X1に対し、四〇〇〇万円が支払われている。

また、被告の加入する保険会社であるd保険株式会社(d社)から、別紙一記載のとおり、総額三一〇一万二六七三円が支払われている。

三  争点

(1)  損害額(争点一)

(2)  過失相殺(争点二)

四  当事者の主張

(1)  争点一(損害額)について

(原告らの主張)

ア 原告X1の請求

本件事故により、原告X1が被った損害は、次のとおりである。

(ア) 治療費関係 一二六九万三八六九円

a 症状固定前 一万五四五〇円

b 症状固定から退院まで

① 竹川病院 八六四万八一三〇円

② e歯科医院 四万三九二〇円

③ 大塚病院 一六二万三〇〇〇円

④ 豊島病院 一五万五三九〇円

⑤ 慈愛病院 一五七万四五二〇円

⑥ 双愛病院 五九万七四九九円

⑦ さいたま赤十字病院 五〇七〇円

上記のうち、竹川病院、大塚病院、慈愛病院、双愛病院の費用には、個室料も含まれる。

この点、被告は、竹川病院における個室料の必要性を争うが、竹川病院において、原告X1の移動に使用する大型車椅子の出し入れのできる病室は個室のみであった。加えて、原告X1は、いびき様呼吸が頻発し、自己喀出不能のため、喀痰吸引処置・ネブライザー処置をしたり、夜間にも栄養摂取や、排便排尿障害による摘便等の処置をするなど二四時間常時介護を要する状態であったため、同室者の迷惑を考慮すると、個室において治療した方が適するという事情もあった。

以上によれば、個室料は、本件事故と相当因果関係を有する損害というべきである。

c 退院後通院

① 大塚病院 五三八〇円

② 埼玉精神神経センター(原告らのインフルエンザ等予防接種治療費) 一万四七〇〇円

原告X1は免疫力が低下し、感染症に罹患しやすくなっているため、看護・介護にあたる者は全員インフルエンザ等の予防接種を受けるよう主治医から指示を受けていた。原告X1がショートステイの際に利用する施設でも、面会者は、予防接種を受けていることを証明しなければ、面会をすることができない。

したがって、原告X1以外の原告らのインフルエンザ予防接種治療費についても本件事故と因果関係を有する損害といいうる。

③ f歯科診療所 一万〇八一〇円

口腔内が不衛生な状態になると、肺炎等の疾患を引き起こす原因となるから、定期的な口腔ケアが必要である。原告X1は、ほぼ寝たきりで、自ら歯磨きができないばかりか、指示に従って口を開けることも困難であるから、医師等による歯科診療が必要であり、これも本件事故と因果関係を有する損害である。

(イ) 入院中の付添看護費関係 九六二万九二二一円

a 入院付添費 七六八万円

本件事故直後の原告X1は、いつ容態が急変して臨終に至るか余断を許さない状態であった。頻発する原告X1の発作を原告ら家族が手で押さえ呼びかけるなどして抑止する等の処置も必要であり、原告ら家族は病院に常駐せざるをえなかった。

危篤状態を脱した後も、原告X1には二四時間常時介護が必要であり、特に入院治療時には、原告X2ら家族が、常に声かけやスキンシップを図ることで、原告X1の意識レベルを回復させる努力が不可欠であった。しかも、四肢麻痺・筋力低下による四肢拘縮をくい止め、関節の可動域を確保するためには、不断に原告X1の四肢や関節をマッサージし、あるいは他動的なストレッチを行う等のリハビリテーションが不可欠であったが、このようなことは、病院では対処不可能であり、家族で行う必要があった。

さらに、主治医らの指導により在宅介護への切り替えを検討するようになってからは、原告ら家族は在宅介護の際のおむつ交換等の指導を受けるためにも病院に通う必要があった。かかる家族による付添看護・介護の分担は、主治医らの指導に基づくものである。

以上によれば、入院治療中の原告ら家族の付添看護・介護は単なる見舞いを越え、必要な治療・介護の一環であるから、付添看護費は本件事故と相当因果関係を有する損害であり、これについては、日額八〇〇〇円とし、入院期間九六〇日を乗じた七六八万円と評価するのが相当である。

b 近親者の休業損害相当額 一九四万九二二一円

原告X3及びX4は、原告X1の付添看護のため、休業し、原告X3については平成一五年ないし平成一六年一月三一日の給与合計三九万〇五四〇円が支給されず、原告X4については、別紙二記載のとおり八六万九六四三円の減給がなされたほか、平成一五年四月ないし六月については給与全額が支給されなかった。この三ヶ月間の給与相当額は、事故前三ヶ月の差し引き支給額合計六八万九〇三八円と同額とみることができる。上記のとおり、原告X1は、本件事故により家族の付添を要する重篤な症状に陥ったのであり、これらの合計額(原告X3につき三九万〇五四〇円、原告X4につき合計一五五万八六八一円)についても、本件事故と相当因果関係にある損害というべきである。

この点、被告は、休業損害と入院付添費を重複して請求することは許されないと主張するが、休業損害と入院付添費については、両方につき損害として認めるべきである。また、そもそも原告らの請求には休業損害と入院付添費における重複は存在しない。すなわち本件において、原告ら家族が連日のように原告X1の看護をしていたところ、主に看護を担当していた原告X2については、入院付添費による算定を行ったことから休業損害の請求を行っていないのに対し、原告X3及び原告X4は現実に家庭や就労等のため、一日中の付添は困難であったことから、付添看護・介護のために休職した分につき休業損害の請求をしているものであり、本件において両者が重複する部分は存在しない。

(ウ) 交通費関係 二一二万七九四六円

a 本人通院費、転院費 二三万六一七九円

b 付添人交通費 一八九万一七六七円

(エ) 入院雑費 一四四万円

一日一五〇〇円としこれに入院日数合計九六〇日を乗じたもの。

(オ) 在宅介護費関係 三億九三一一万六八六三円

a 在宅介護費 四六五万九四七六円

① 平成一七年一〇月から、平成一八年四月までに支出した職業介護人による介護費用は、以下のとおりである。

ⅰ 平成一七年一〇月 一二万七三四五円

ⅱ 同年一一月 八万一二二七円

ⅲ 同年一二月 一四万四一七五円

ⅳ 平成一八年一月 一一万九三六七円

ⅴ 同年二月 一一万八九三四円

ⅵ 同年三月 一七万九六九七円

ⅶ 同年四月 七三万六七三一円

② 職業介護人による介護は、昼間の介護のみであり、夜間の導尿や体位交換は、専ら原告ら家族が分担していたうえ、昼間でも、職業介護人のいない時間は、当然原告ら家族が介護を担っていたものであるし、職業介護人が付されている時間でも、複数いる職業介護人間の引き継ぎ、家の鍵の管理、看護師資格のない職業介護人では行えない導尿、経管栄養など、原告ら家族が行わなければならないことが相当あった。

このような原告ら家族の介護の負担を評価すると、一人日額八〇〇〇円とするのが相当であり、職業介護人の利用の少なかった平成一七年一〇月から平成一八年三月までについては、家族介護は二人と評価し、同年四月については、家族介護は一人と評価したうえで、上記職業介護人費用に、家族介護費用一五二日分三一五万二〇〇〇円を加えた四六五万九四七六円が、本件事故と相当因果関係ある在宅介護費用となる。なお、平成一八年四月の職業介護人費用は、それ以前に比較して高額になっているが、同年五月の職業介護人費用は六六万一四〇七円であり、同年四月の職業介護人費用が特別に多額であったわけではない。

この点、被告は、在宅介護の必要性を争うものであるが、原告X1のように治療による改善の望みがなく二四時間常時完全看護・介護の必要な重篤な後遺障害患者について、これを終身で受け入れようとする医療施設や福祉施設は皆無に等しく、強いて施設介護を選択するとすれば、在宅介護に勝るとも劣らない費用が必要となると考えられる。原告X1には、栄養補給と排泄等の最低限生命維持に必要な処置を施したとしても、それは生命維持を行っているにすぎず、生存権・幸福追求権の保障する最低限度の健康で文化的な生活などと呼びえない。原告X1は、原告ら家族による声かけ、スキンシップ、四肢拘縮防止及び関節可動域確保のためのマッサージ、他動ストレッチなどの不断の看護によって、生命への危険を免れているのであって、これらの家族らによる付添看護・介護処置は、施設介護では到底望み得ぬものである。

原告X1が、人としての尊厳を保って生きてゆくためには、在宅介護への切替が不可欠だったのである。

b 在宅介護装備・器材費 二八万六四八三円

別紙三記載のとおり、在宅介護のために設備を購入した。

c 住宅改修費 八六万三九〇〇円

在宅介護のため、和室の段差解消、トイレの水栓設置、浴室の折り戸交換、おむつ交換台の設置の工事を行い、上記費用を支出した。

d 在宅介護雑費 八二万三七三二円

平成一七年一〇月から平成一八年四月の間に、原告X1のイリゲーター、チューブ、オムツ、洗浄綿、手袋、お尻ふき、清拭剤、手洗い石鹸、消毒液、ガーゼ、綿棒、うがい薬、口臭剤、防臭液、ハンドクリーム、トイレットペーパー、ティッシュ、シャンプー、リップクリーム、コットン、ワセリン、シーツ、タオル、パジャマを購入し、上記金額を支出した。これらは、原告X1を在宅介護するために必要な物品であり、本件事故により生じた損害である。

この点、被告は、一般に後遺症にかかる逸失利益の算定において、生活費控除を行わないのは、通常の健常人に比べて活動範囲が狭まり、生活費の支出が少なくなる一方、介護にかかる雑費の支出が増えることを考慮してのことであり、在宅介護雑費を請求するのであれば、逸失利益の計算において生活費控除をすべきであると主張するが、本件請求において原告らは原告X1の在宅生活にかかる費用のうち、原告X1が本件事故によって受傷し、重篤な後遺障害を負い、常時介護等の処置が必要とならなければ使用することのない物品について在宅介護雑費の基礎として請求している。

また、重篤な後遺障害を負った場合、健常者と比べ生活費の支出が低額になるとはいい難い。

e 将来の在宅介護費 三億二九三〇万一六一六円

将来の付添看護・介護費は、別紙四記載のとおり計算すべきである。

① 中間利息控除について

将来介護費等の介護関係費用は、賃金センサス等に基づき算出される一定かつ抽象的な逸失利益とは異なり、現実に介護のために支出を要する費用である上に、いかに民法所定の法定利率が年五分であるとしても、昨今の低金利時代において、先んじて受領した将来介護費等を年五分の運用利益で運用するなど不可能に等しい。また、仮に本件訴訟において一定の補償を得られたとしても、将来的にも原告X1の常時在宅付添看護に追われるであろう原告X3らにおいて、資産運用などをしているゆとりはあり得ない。それにもかかわらず、中間利息控除が行われる場合には、運用利益が得られずに実損として生ずる介護費用負担は、すべて原告ら被害者とその家族が負わなければならないことになり、債権者・債務者間の公平を図る中間利息控除の趣旨にもとる。よって、将来の介護関連費用の請求については、中間利息控除を行うべきでない。

仮に、中間利息を控除するとしても、被害者が蒙った不利益を補填して不法行為がなかった状態に回復させることを目的とする損害賠償制度の趣旨からして、複利計算をするライプニッツ方式ではなく、被害者が受け取るべき金額との乖離がより少ないと考えられる単利式のホフマン方式による算定が行われるべきである。

② 原告X1の余命について

逸失利益や介護費用等を算出する際に、平均余命に依拠することは明らかである。そもそも、原告X1の現在の病状は自らの意思で随意に身体を動かし、あるいは接食、排泄等する機能は奪われているがその瞳やうめき声で感情を表すことはできるのであって、いわゆる植物状態ではない。

したがって、原告X1の余命が平均余命以下に制限されることはない。

③ 職業付添人の付添看護・介護費

被告は、将来請求に関しては、家族の就労状況の変動などの介護体制・介護環境に変化のありうること、将来の医療の進歩による改善可能性、介護用具、補助器具等の技術革新による進歩、公的扶助の拡充等が考えられるから、控えめに認定すべきであると主張するが、たとえば医療の進歩があったとしても、高度な医療にはそれだけ高額の治療費がかかるなど、介護費用が将来において減少すると予測される根拠はないのであるから、訴訟提起時点における実費相当額から計算すべきである。

④ 家族の付添介護費

二四時間常時完全介護の必要な原告X1に対し、介護保険の枠をいっぱいに用いたうえ、更に自己負担によりヘルパーや訪問看護師の看護・介護枠を増強したとしても、一日二四時間のうちのせいぜい七~八時間を網羅することが精一杯であって、その余の時間帯は家族による付添看護・介護に頼らざるをえず、また、専ら原告ら家族がしている深夜の体位交換や一日六回の導尿、一日三回の経管栄養等による拘束は十分付添看護費用による填補に値する労働である。

さらに、原告X1の看護師、ケアマネージャーから、家族不在の状況での介護ははなはだ困難であるとの指摘を受け、原告ら家族は、日中入るヘルパーへ、原告X1の前日夜の状況説明や体操の指導などをしなければならず、ヘルパーが入るからといって家を完全に空けられることはほとんどない状態であり、家族の付添看護が不要になることはありえない。

したがって、職業付添介護人の費用を認定した場合には家族付添介護費は不要となると即断すべきものではありえない。

f 将来の医療費 一五七万八五二八円

原告X1は、第一級の障害により、自身では歯磨き等の日常的に必要な行為を行うことが不可能であることから、上記のとおり、在宅介護開始以後も、毎月歯科医師による診療等を受け、歯科疾患を予防することが必要である。また、毎月定期的に脳神経外科、泌尿器科等の診療を受ける必要もある。

上記のとおり、在宅介護を開始した平成一七年一〇月以降平成一八年四月までの医療費の合計額は三万一二四〇円であり、月額平均医療費は、五二〇六円である。そうすると、原告X1が今後、将来にわたり、上記と同程度の治療を受ける必要があることは容易に予想されるから、上記月額平均医療費の一二ヶ月分に、平均余命である二八年を乗じた一七四万九二一六円が、将来の医療費額として相当であり、その内金一五七万八五二八円を請求する。

g 将来の在宅介護装備・器材費 一六〇四万二九九二円

在宅介護を開始した平成一七年一〇月から平成一八年四月までの介護装備・機材の合計額は二八万六四八三円であるから、在宅介護装備・器材費平均月額を算出すると、四万七七四七円となる。これらの費用は今後将来にわたって必要な費用であるから、上記月額を基準とし、平均余命である二八年分に相当する一六〇四万二九九二円が、本件事故と相当因果関係ある将来の介護装備・器材費である。

h 将来の在宅介護雑費 三九五三万九一三六円

平成一八年四月分の介護関連雑費は、月額一一万七六七六円であり、これを基準として、平均余命二八年分の雑費を計算すると、上記金額となる。

i 介護のための近親者転居費用 二万一〇〇〇円

(カ) 医師への謝礼 三〇万円

(キ) 損害賠償関係 七万八六八〇円

(ク) 休業損害 八六八万四九九四円

原告X1は、事故の翌日である平成一五年二月一五日から症状固定日である平成一六年三月二三日まで四〇三日休職した。本件においては、営業社員である原告X1の収入を正確に把握するには、平成一二年度から平成一四年度の三年間の年収の平均額を休業損害計算の基礎とすべきであり、過去三年間の平均年収七八六万六〇六二円を三六五日で日割計算し、上記休業日数を乗じた金額に相当する八六八万四九九四円が本件事故と相当因果関係ある損害である。

(ケ) 逸失利益 九五〇六万三七一九円

原告X1は本件事故以前にはc生命保険相互会社上野支社王子営業推進部において営業担当者として勤務し、優秀な営業成績と営業手腕を高く評価されていたところ、同社においては、就業規則上も実態としても、営業担当者は七三歳まで勤務可能であり、現に七〇歳を過ぎても新規顧客獲得等に励む営業担当者は多数存在している。

原告X1の勤務環境と勤務実態が上記のとおりであること、高齢化社会と高齢者医療の進歩等を背景として「高齢者の能力の有効活用」「退職年齢の引き上げ」が検討される昨今、賃金センサス等においても就労可能年数の引き上げ、見直しが議論されていることからすれば、本件において、ことさらに原告X1の就労可能年数を六七歳に限定する根拠はない。

なお、原告X1の基礎収入は、本件事故が平成一五年二月一四日に発生しているため、平成一五年の原告X1の収入額自体はほとんど参考としえないこと、前年分の実収入分のみでは様々な要素によって増減し得る基礎収入額を正確に算出しえないことから、前年を含む過去三年分の平均を基礎収入とすべきである。

(コ) 入通院慰謝料 五七四万六〇〇〇円

本件の入院期間は、平成一五年二月一四日ないし同一八年九月三〇日までの約三二ヶ月である。これに傷害の程度が重度であることを考慮すると、慰謝料は五七六万六〇〇〇円を下らない。本件においては、その内金五七四万六〇〇〇円を請求する。

(サ) 後遺症慰謝料 四〇〇〇万円

原告X1の後遺症は、後遺障害第一級であり、きわめて重篤なものであるから、これを慰謝するには四〇〇〇万円を下らない。

(シ) 損害の填補 自賠責保険からの既払金 四〇〇〇万円

(ス) 弁護士費用 五二八八万八一二九円

損害の一割である五二八八万八一二九円が相当である。

(セ) 上記合計 五億七一四三万八九二一円

なお、被告は、内払金の必要性に疑義をはさみ、この必要性が立証されない場合、本件の請求額について充当されるべきであると主張するが、原告らは、原告X1の症状固定前、入院加療中、本件事故のために発生した出費について、領収書や明細を添え、d社に対し、説明を付して請求を行っており、同保険会社は、これを相当な請求と認めた場合にのみ支払をしてきたのであるから、原告らがした不当・過大な請求に対し、「仮に払われた」ものではない。したがって、原告らがこの必要性について主張立証する必要も、内払金額を上記損害額に充当すべき必要もない。

イ 原告X2の請求

(ア) 慰謝料 五〇〇万円

(イ) 弁護士費用 五〇万円

(ウ) 上記合計 五五〇万円

ウ 原告X3の請求

(ア) 慰謝料 三〇〇万円

(イ) 弁護士費用 三〇万円

(ウ) 上記合計 三三〇万円

エ 原告X4の請求

(ア) 慰謝料 三〇〇万円

(イ) 弁護士費用 三〇万円

(ウ) 上記合計 三三〇万円

(被告の主張)

ア 原告X1の請求

(ア) 治療費関係

不知ないし争う。

竹川病院の入院治療費については、個室料が含まれており、その必要性についても争う。原告ら家族がインフルエンザ予防接種を受けた際の治療費等の必要性について争う。インフルエンザ予防接種治療費については、仮に原告ら主張のような事情があったとしても、原告ら家族が予防接種により受ける原告ら家族固有の利益も在することは疑いないから、本件事故と相当因果関係を有する損害としては相当額の減額がなされるべきである。

(イ) 付添看護費関係

a 入院付添費

入院先病院が完全看護の体制にあるならば、家族の付添は、治療上の必要に基づくものとは考えられず、家族の情愛による見舞いという性格を有することは否定できないから、本件事故と相当因果関係ある損害であることを争う。

原告ら主張の声かけ、スキンシップ、マッサージ、ストレッチ等は、治療に有益ではあるものの、医学上必須のものではない。これらの行為は被害者自らに家族が存在することによって受ける恩恵というべきものであって、法的には損害として評価すべきではない。

原告ら家族が在宅介護の際の介護行為のための指導を受けるためにも病院に通う必要があったと原告らは主張するが、仮にそうであっても、そのようなことは、在宅時の家族付添の準備行為であって、法的には在宅家族付添看護費によって評価されつくしており、別個に損害評価されるべきものではない。さらにいえば、家族による付添が別個に損害評価されたとしても、その準備行為にどの程度の通院が必要であったかは、厳密に評価されるべきであって、指導を受けるのに必要相当な期間のみの付添看護費のみが認定されるべきである。

原告らは、家族の付添監護・介護の分担は、主治医の指示・指導によると主張するが、原告X1にとって原告ら家族の付添が有益であるとしても、これをもって、完全介護体制下でも医学上・治療上家族の付添を要したことにはならない。

仮に付添看護が必要であるとしても、上記の事情を斟酌して付添費用日額を算定すべきである。

b 近親者の休業損害相当額について

休業の事実関係について不知。

入院先病院は完全看護の体制であるから、家族の付添は治療上の必要性がなく、本件事故と相当因果関係にある損害とは言えない。

また、仮に休業について本件事故との相当因果関係が認められるとしても、入院付添費とは別に損害として認めるべきかは争う。原告は、休業損害と入院付添費の請求が重複しているところはないと主張するが、一般に家族付添費については、これが認められる場合でも、付き添う家族の人数にかかわらず、一日あたりいくらという算定がなされるところであって、原告らが全入院期間について日額八〇〇〇円の入院付添費を請求している以上、これと欠勤分の休業損害を併せて請求することは損害を重複して評価することとなるはずである。

(ウ) 交通費関係

a 本人通院費、転院費等

不知。

b 付添人交通費

不知。

(エ) 入院雑費

不知ないし争う。

(オ) 在宅介護費関係費

a 在宅介護費について

原告X1が常時介護の状況にあることは争うものではないが、その介護の内容、在宅介護が必要かについては争う。

原告X1のような患者を終身で受け入れる施設が少ないことは、積極的には争わないが、半年なり一年といった期間で受け入れる施設が存在しないわけではない。

法的な見地から相当因果関係のある損害がどこまでか判断した場合、施設介護に適する状況にある被害者の場合はもとより、施設介護が適するとまでいえなくとも可能な被害者の場合は、施設介護に必要な費用をもって、まず一義的な最低限必要な将来介護料としてとらえるべきである。

また、職業付添人と家族看護費を共に請求する趣旨と思われるが、両者の関係及び家族看護費の算出根拠が不明である。

b 在宅介護装備・器材費について

不知ないし争う。

c 住宅改修費

不知ないし争う。ただし、在宅介護を前提とした場合の住宅改修費としては、その請求に係る内容の住宅改造は、概ね本件事故との間で必要性のある範囲内と考えられるので、その限りにおいては積極的に争わないが、改修により、改修部分の耐用年数が延びた場合もありうると考えられること等を勘案し、本件事故と相当因果関係ある損害としては、原告X1請求額から相当額の減価をした金額が認められるべきである。

d 在宅介護雑費

不知ないし争う。

在宅介護雑費は、重度の後遺障害を負った原告X1の生活費ともいうべきものであって、逸失利益の算定に際して生活費を控除しないものとすれば、これらを独立の損害費目として考慮すべきではない。

重度の後遺障害であって、とりわけ労働能力の喪失率を一〇〇パーセントとみるべき本件のようなケースにおいては、被害者の日常生活における行動範囲も著しく狭まるのであって、それに伴い、健常者と比べて交際費、娯楽教養費、通信費その他生活費の支出も低額になると考えられる。

にもかかわらず、実務上生活費の控除がなされない扱いが多いのは、行動範囲・生活範囲が狭まる反面、原告ら請求のような介護雑費等が必要となる事情が考慮されているからと考えられる。したがって、在宅介護雑費については、本件事故と相当因果関係ある損害と認めるべきではない。

仮に、かかる費目についてこれを認容するのであれば、逸失利益の算定にあたり、生活費を一定割合で控除すべきである。

e 将来の在宅介護費

不知ないし争う。

① 中間利息の控除について

将来費用については、中間利息を控除すべきである。

この点、中間利息控除に関する原告ら主張は全く独自の見解に立つものであって、その理論的根拠も不明である。中間利息控除は、将来得べかりし利益を一括して現時点で請求することから、現価計算する必要があることに基づく論理必然的なものである。低金利時代においても利息はつくのであって、中間利息控除をすること自体が中間利息控除の趣旨にもとるなどということはない。中間利息控除の必要性のない定期金請求という手段も存在するところ、自ら一括請求しておきながら、中間利息控除を否定するなど不当である。

そして、中間利息控除について、遅延損害金を不法行為時から起算していることとの均衡上、逸失利益は事故時を基準としてその現価を算出すべきである。すなわち、事故時から就労可能年限までの係数から、事故時から症状固定時までの係数をひいた数を使用すべきであり、本件では、原告X1は事故時五三歳であるから、一四年のライプニッツ係数から、事故時から症状固定時までの一年のライプニッツ係数を控除し、八・九四六三となる。

② 原告X1の余命について

原告X1の現状は、ほとんど植物状態にあるところ、一般に寝たきりの患者特に植物状態に至った患者の場合、余命は一〇年程度に制限されるといわれている。原告X1もこれまで尿路感染症を繰り返し、平成一六年一二月には敗血症に罹患し、かなり重篤な状況に陥っており、医学的見地から余命五年ないし一〇年程度に制限される可能性が高い。したがって、将来介護費等の将来請求においては、余命を長くとも一〇年として算定すべきである。

③ 職業付添人の付添看護・介護費

将来の介護料の算定にあたっては、家族の就労状況の変動などの介護体制・介護環境に変化のありうること、将来の医療の進歩による改善可能性、介護用具、補助器具等の技術革新による進歩、公的扶助の拡充、その他多種多様な不確定な要素を考慮し、かつ、被害者・加害者間の負担の公平や支払原資の確保に伴う社会的影響への配慮等々をふまえた規範的見地にたって妥当な日額を算出すべきものであって、訴訟提起時点における実費相当額をそのまま前提とすべきものではない。

④ 家族の付添・介護費

将来介護費については、上記のとおり規範的見地に立って妥当な日額を算出すべきものであって、原告ら主張の介護実態を前提とする限り、夜間等の家族の付添看護の必要性については首肯しうるものの、その場合であっても、職業付添介護人が付されている場合に、これに加えて別途家族の付添・介護費用が認められるべきではなく、両者を併せて介護費日額が算定されるべきである。

原告は、ヘルパーが日中いても、前日夜の状況説明、体操の指導などの義務があるというが、これらをもって、介護費用日額の全額である八〇〇〇円と評価するには足らない。

また、ヘルパーが不在の間、原告ら家族が介護をすることになるのは被告としても争うところではないが、日額八〇〇〇円とは、職業付添人が付されていない場合の家族付添費二四時間分と解釈すべきであって、逆に職業介護人が付される場合にあっては、職業付添費日額をもって、夜間等の職業介護人が不在の間の家族介護の労力をも評価する趣旨であるのが通常である。

f 将来の医療費

不知ないし争う。上記同様、中間利息を控除すべきである。また、原告X1がほとんど植物状態に近いという状況であるとすれば、医学的・統計的に平均余命が制限的になる傾向が認められており、この点は斟酌されるべきである。

g 将来の在宅介護装備・器材費

不知ないし争う。

これらの介護装備が必要であるとしても、額が相当であるかは争う。体温計等の備品を七ヶ月ごとに購入することを前提とする原告らの計算は不合理であり、中間利息の控除もなされるべきである。

h 将来の介護雑費

不知ないし争う。

在宅介護雑費の項目で述べたとおり、独立の損害費目とすべきではない。

i 介護のための近親者転居費用

不知ないし争う。

(カ) 医師への謝礼

不知ないし争う。

(キ) 損害賠償関係

不知ないし争う。

(ク) 休業損害

休業の事実及び休業損害の発生自体は争わないが、休業損害日額の算定は、事故前三か月の平均収入日額により算定すべきである。

(ケ) 逸失利益

逸失利益の発生、症状固定日、労働能力喪失率は争わないが、喪失期間については、就労可能年限を六七歳までとすべきである。

基礎収入については、事故前年度の収入額を採用すべきである。また、一般に、事故当時の収入を就労可能年限まで得られる蓋然性は低いと考えられるから、六〇歳以降については賃金センサス等によって相当な基礎収入を算出すべきである。

(コ) 入通院慰謝料

争う。

(サ) 後遺症慰謝料

争う。

(シ) 弁護士費用

争う。

(ス) 既払額

d社から、内払金として支払われた既払額は、総額三一〇一万二六七三円にのぼる。原告らは、本件訴訟においては、この内払金を除いた金額を請求していると主張するが、上記金額の明細には、ただちにその必要性があるとは認められないものもある。本件事故と相当因果関係のないものに対して支払われた内払金は、その限度において、本件において請求されている損害額の一部を填補するものとして算定されるべきである。

イ 原告X2の請求

争う。

ウ 原告X3の請求

争う。

エ 原告X4の請求

争う。

(2)  過失相殺(争点二)

(被告の主張)

自転車は軽車両に属するものであるから、交差点に進入する際には道路交通法上、一般の安全運転義務のほかに、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等に特に注意し、かつできうる限り安全な速度と方法で進行すべき義務がある。

そして、本件交差点には自転車横断帯が設置されていなかったとみられ、そうであれば、原告X1には、自転車を降り、これを押して歩行する義務があったというべきである。仮に自転車横断帯が設置されていたとしても、他の車両との事故を防ぐために、少なくとも歩行者と同等の速度で走行すべき義務があったというべきである。本件においては、被告車両は徐行をしていたから、原告X1が自転車を押して横断するか、あるいは自転車を走行させていたとしても歩行者と同等の速度であったとすれば、被告車両は衝突前に停止することが可能であったといえ、この点の過失は斟酌されるべきである。

さらに、原告X1は、右後方から左折して交差点に進入してくる車両があることを予見すべきであり、かつ予見しえたのであって、進行方向向かって右方から横断歩道を横切る車両の有無を確認して横断歩道を進行すべきであったのであり、これを怠った過失も認められる。

本件事故による車両の損傷状態は、被告車両はもとより、原告自転車においても比較的小さなものである。したがって、事故による衝撃そのものはそれほどの大きさではなかったと考えられ、それにもかかわらず、急性硬膜外血腫、外傷性脳幹部損傷という重大な結果が発生したのは、原告X1が自転車に乗ったまま衝突したため、自転車もろとも転倒して頭部を地面に打ち付けたからであって、もし原告X1が歩行者であったり、あるいは自転車を押して歩行する者であったとすれば、本件のような重大な後遺障害が生じたとは考えにくく、原告X1が自転車に乗ったまま横断歩道を渡ったことは、結果の拡大に寄与したものというべきである。

以上の事実にかんがみれば、原告X1にも斟酌すべき過失が存在し、五パーセントないし一〇パーセントの過失相殺がなされるべきである。

(原告らの主張)

本件道路には自転車横断帯が設置されていたとみるのが相当である。仮に、自転車横断帯上を走行していなかったとしても、被告車両進行方向の見通しからして、原告X1の存在の視認可能性に影響を与えることはあり得ないし、むしろ左折してくる被告車両にとっては、自転車横断帯よりも左奥に離れた位置で走行していたことになるのであるから、被告が遅ればせながらも注意を喚起し、制動措置をとっていれば、本件事故は回避しえたことにもなり、にもかかわらず衝突が避けられなかったのは、むしろ被告の注意義務違反の著しさを示すものというべきである。

以上によれば、原告X1に過失は一切存しない。

第三争点に対する判断

一  損害額(争点一)について

上記第二、二、(2)記載の本件事故態様によれば、被告は、民法七〇九条により、本件事故により発生した損害を賠償すべき義務がある。そこで原告らの損害について検討する。

(1)  原告X1の損害

ア 原告X1の症状及び治療経過等

(ア) 大塚病院入院時(平成一五年二月一四日から平成一五年八月一四日まで)

原告X1は、平成一五年二月一四日の本件事故の直後は、被告に対して「大丈夫、大丈夫」と言って体を起こし、事故現場に駆けつけた警察官とも話をしていたが、その後、意識を失い、大塚病院に緊急搬送された。同時点で、原告X1は、意識レベルJCS二〇〇の昏睡状態にあり、同日、同病院の脳神経外科医であるAにより、開頭血腫除去手術が行われた。

手術後、原告ら家族は、医師から、一週間以内に意識が戻らなければ危険であると告げられ、連日、病院に泊まりこみ、集中治療室内の原告X1に呼びかけをするなどし、意識の回復を待った。

手術から五日目に、原告X1は、かろうじて声を発するようになったが、術後も意識障害、重度の四肢・体幹機能障害、排泄障害が残り、脳幹部の障害から自発呼吸が安定せず、人工呼吸管理を要する状態であった。

平成一五年三月になっても、原告X1は、ときおり目を開けるものの、依然として意思疎通ができない状態が続いた。原告X1の筋拘縮、関節拘縮は著しく、痙攣発作も頻発し、原告ら家族が体を押さえて痙攣を抑制しなければならないほどであった。このため、抗痙攣剤が投与されたが、原告X1は、その副作用により重度の貧血をきたし、輸血を行わなければならなくなった。

その後、原告X1は、同年四月三〇日にカンジダ性膣炎、同年五月一三日に細菌性膣炎、同年六月二三日に股部白癬、同年七月二七日には単純疱疹に罹患するなど、免疫力の低下も著しかった。気管切開術を受けていた原告X1は、呼吸器管理や痙攣発作の頻発などから、集中治療室における治療を終えた後も、個室において治療を受けた。

(甲五、八一、八四)

(イ) 竹川病院入院(平成一五年八月一四日から平成一六年一二月二八日まで)

大塚病院は急性期病院であったため、投薬治療の必要のない原告X1の長期の入院継続は認められず、退院を要請されるようになった。原告ら家族は、自ら三九の病院に照会をする一方、ソーシャルワーカーを介して問い合わせをし、転院先を探した。その結果、原告X1は、平成一五年八月一四日、唯一受け入れ可能との回答を得た長期療養型病院である竹川病院に転院することとなった。当時、竹川病院では、個室(特別室)しかベッドの空きがなく、原告X1は、個室(特別室)において入院治療することとなった。なお、個室において治療することは、原告X1が当時、痙攣発作やいびき様呼吸が頻発する状態であり、夜間でも出入りして頻繁にネブライザー等の処置をすることを要したため、同室者の迷惑を考えた結果でもあった。(甲九、一二、八四、一一三、原告X3)

平成一六年五月一四日、原告X1は、竹川病院において、胃ろう造設術を受け、以後、胃ろうを通じて、経管栄養による栄養摂取がなされ、また排尿管理はオムツによって行われていた。同年一二月二五日、原告X1は、尿排泄処置が不十分であることによる尿路感染から敗血症を発症し、同月二八日、様態が急変したため、大塚病院へ救急搬送された。

なお、同病院入院中の同年一〇月一三日、原告X1は、自賠責保険別表第一の後遺障害等級一級一号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」との認定を受けている。

(甲一七、七七、八四)

(ウ) 大塚病院・豊島病院入院(平成一六年一二月二八日から平成一七年三月二八日)

原告X1は、平成一六年一二月二八日、大塚病院の集中治療室に搬入され、以後、内科及び泌尿器科において入院治療が行われた。このとき、泌尿器科のB医師から、原告ら家族に対し、尿路感染の完治のためには、カテーテルによる定期的な導尿をするほかなく、病院ではこのような処置をすることはできないから、今後、自宅での介護を考える必要がある旨告げられた。なお、同期間中の同年二月七日から同月一八日までの間、原告X1は、腎臓・尿管結石を併発し、検査や処置のため、豊島病院に入院した。

(甲八三、八四)

(エ) 慈愛病院入院(平成一七年三月二八日から同年七月四日)

原告X1は、平成一七年三月二八日、慈愛病院に転院した。このころには、原告ら家族は、いずれ在宅介護へ切り替えたい旨、医師に伝えていたが、原告X1を都内の病院から埼玉県内の自宅に移すことは距離的に危険なので、一度県内の病院に移してから自宅介護をするよう指示があった。

(甲八二、八三、八四)

(オ) 双愛病院入院(平成一七年七月四日から同年九月一七日)

平成一七年七月四日、原告X1は、双愛病院に転院した。同病院では、導尿は週二回程度行われるのみであった。同年九月ころから、原告X1の容態は悪化し、同月一七日、尿路感染によりさいたま赤十字病院に搬送され、同病院に転院した。

(甲八三)

(カ) さいたま赤十字病院入院(平成一七年九月一七日から同年一〇月一日)

さいたま赤十字病院においては、泌尿器科のC医師により、導尿を繰り返して体内の菌を排出することが、原告X1の状態改善にとって最善の方法であるとの方針で治療が行われ、原告X1の容態は安定していった。このころ、原告ら家族は、同病院側から、陰部洗浄や導尿の指導を受け、並行して自宅改修、障害者支援費の申請、ケアプランの作成等、原告X1を自宅で介護する準備をした。

(甲八三)

(キ) 在宅介護開始

平成一七年一〇月一日、原告X1は同病院を退院し、在宅介護が開始された。

a 在宅介護開始当時の原告X1の状況

平成一七年一〇月一日の在宅介護への切り替え当時、原告X1には、四肢の麻痺があり、日常生活動作は全介助を要した。また、意識障害、言語障害があり、意思疎通は困難であった。食事、排泄についても、自律的にこれを行うことはできず、胃ろうによる経管栄養、導尿、摘便等により管理する必要があった。上記入院期間に、身長約一五〇センチメートルの原告X1の体重は、二八キログラムまで落ち、事故前の体重から二〇キログラム以上減少していた。

(甲一二、一三、一四、一七、八三)

b 介護の内容

原告X1の介護として必要とされる行為は、一日六回以上の間欠導尿、三回の経管栄養、摘便、陰部・臀部洗浄、オムツ交換、リハビリテーションのためのマッサージ、体位交換、着替え、入浴、車いすへの移乗等であり、体位交換や導尿は夜間も定期的に行う必要があった(甲一七、七七、七九、八二、八三、一一四、一一七、原告X2、原告X3、原告X4)。

このうち、経管栄養は、予め湯で割ってさました栄養剤を、胃ろうに接続したチューブから摘下する作業、間欠導尿は、陰部にカテーテルを挿入した上、膀胱が空の状態になるよう腹部を押し、尿器に尿を排出させる作業であり、特に間欠導尿は、身体への侵襲を伴う行為であり、感染症発症防止のため、衛生面にも注意を払う必要がある。この経管栄養、間欠導尿及び摘便は、医療行為であり、家族又は看護師資格をもつ職業介護人でなければ行うことができないものである。(甲五一、八四)

c 平成一七年一〇月から平成一八年三月の介護体制

平成一七年一〇月から平成一八年三月にかけては、日中、原告ら家族による介護に加え、介護保険の適用額の限度で、職業介護人による訪問介護の利用をするとともに、一か月あたり四、五日の頻度で、デイサービスや短期入所施設を利用して、介護が行われた。

① 日中の介護体制

職業介護人には、入浴介助、オムツ交換、着替え、拘縮予防体操、体位交換、手湯、足湯、口腔ケア、外出介助などを依頼していたが(甲四七、四八)、導尿、経管栄養については、看護師資格のない職業介護人ではなしえないため、日中も、約二時間おきの導尿、胃ろうによる経管栄養等、原告ら家族がなすべき作業があり、また、二、三時間ごとに別の職業介護人が介護をせざるをえないため、原告ら家族が家の鍵を管理し、職業介護人らに原告X1の状態等についての引き継ぎをしなければならなかった(原告X4、原告X3)。さらに、原告ら家族の外出中も、職業介護人が発語困難な原告X1の要求を理解できず、原告ら家族を電話で呼び出すこともたびたびあり、原告ら家族が揃って長時間家を空けることは困難であった(甲七九、八四、原告X2、原告X3、原告X4)。

原告X1は、退院後も月一回程度、大塚病院のリハビリテーション科及び脳神経外科に通院し、診察、リハビリテーションを受けていたが、これも原告ら家族のいずれかが付き添う必要があり、原告X2は、リフト付きの車を借りて原告X1の送迎を行った(甲二九の一ないし二九の六、八一)。

② 夜間の介護体制

夜間のおむつ交換、体位交換、導尿等は、専ら原告ら家族が交代で原告X1と同室に床をとり、行っていた(原告X2、原告X4)。原告X1は、痰がからみやすく、夜中に泣いてこれを訴えたりするため、自宅介護に切り替えた当初、原告ら家族はほとんど眠れないこともあった(原告X3)。

原告X2は、日中の仕事から帰宅してこれらの介護を行い、原告X4は、在宅介護の開始に先立ち、平成一七年七月に退職して介護に専念していた。また、原告X3は、幼い息子を連れて自宅のある赤羽から原告X1宅へ通い、介護を行っていた(原告X3)。

d 平成一八年四月及び同年五月の介護体制

このようななか、原告X4は原告X1の介護費用を援助するため、再び就職しようと考え、平成一八年四月から介護保険と障害者支援費以外の自費での介護ヘルパーの利用を増やしたが、同年五月に、原告X2が帯状疱疹にかかり、原告X3及び原告X4が、二人で原告X1の介護と並行して原告X2の看護をする必要が生じたため、再就職をすることはできなかった(甲八一、八三)。

e 平成一八年六月から平成一九年二月の介護体制

平成一八年九月に、原告X2が前立腺癌と診断され、入院した。同人は、同年一二月に全摘手術を受け、回復したものの、平成一九年二月には、右耳難聴が発生し、再び三週間の入院療養を余儀なくされた。この間、原告X3及び原告X4が、原告X1宅と原告X2の入院する病院とを行き来しながら、原告X1の介護をする状態が続いた(甲八一、八三)。

f 現在の介護体制

原告X2は、日中は住宅供給公社の嘱託として働き、帰宅後、夜間の介護にあたっており、日中は、職業介護人を依頼するとともに、原告X3及び原告X4が交代で介護を行っている。

① 日中の介護体制

自費によるヘルパーの利用を増やし、平日は午前八時から午後七時までの間に、訪問看護師及び介護ヘルパーを一日約九時間程度利用している。介護ヘルパーにより、入浴、車いすへの移乗、着替え、オムツ交換、訪問看護師により、胃ろう管理、導尿、排便の管理、リハビリマッサージ、体位交換等の介護が行われているが、医療行為である導尿や経管栄養ができる看護師の訪問は週四、五回、一回につき一時間程度であり、日中もこの時間帯以外は、原告ら家族が導尿の作業を行う必要があるほか、引き継ぎや鍵の管理の必要性があることにはかわりなく、やはり家族が長く家を空けることはできない。

土日の日中は、デイサービスを利用するほか、家族を中心に介護を行っている。

(甲七九、一一四ないし一一七、原告X3、原告X4)

② 夜間の介護体制

夜間介護は、なお原告X2、原告X3及び原告X4の三人で分担している。原告X4も婚姻して別に家庭を持ったため、自宅から原告X1宅へ通い、原告X3と交代で泊まり込む生活となっている。

(甲七九)

(ク) 現在の原告X1の症状

原告X1は、呼びかけなどの外部刺激に対し、足を動かすなどの反応をみせるようになったほか、一日一回全介助による経口接取が可能となっている。在宅介護開始後、尿路感染症や尿路結石症は発症しておらず、入院中、二八キログラムまで落ちた原告X1の体重は四二キログラムにまで回復している。

(甲七六、七七、八四、原告X4)

(ケ) 原告ら家族の健康状態

原告X2は、前立腺癌の手術後も、再発防止のため、薬による治療を継続しているほか、耳の難聴については、再手術の必要が示唆されている。

また、原告X2のみでなく、原告X4も原告X1の体位交換や車椅子への移乗の際にかかる腰やひざの負担から、腰痛等を抱えた状態である。

(原告X2、原告X4)

イ 上記認定事実を前提に、以下判断する。

(ア) 治療費関係 計九九六万〇二三九円

a 症状固定前 一万五四五〇円

甲第二〇号証の一ないし三によれば、原告X1は、平成一五年九月二日に、大塚病院へ文書料として九〇〇〇円、竹川病院へ、平成一六年一月一〇日に予防接種料として二五〇〇円、同年二月一〇日、画像診断料等として三九五〇円、合計一万五四五〇円を負担したことが認められる。

上記認定の原告X1の症状及び治療経過からすれば、上記金額は、本件事故と相当因果関係にある損害というべきである。

b 症状固定から退院まで 計九九二万八九〇九円

① 事実認定

ⅰ 甲第二一号証、同第二二号証ないし第二八号証及び上記争いのない事実等によれば、原告X1は、本件事故により、傷害を負い、次のとおり計一二六〇万三六〇九円の治療費等を負担したことが認められる。

い 竹川病院

治療費 二九三万六一三〇円

個室料 五七一万二〇〇〇円

(甲二一の一ないし二一の一〇)

ろ 大塚病院

治療費 八〇万九〇〇〇円

個室料 八一万四〇〇〇円

(甲二三の一ないし二三の一〇、二四の一ないし二四の八)

は 豊島病院

一五万五三九〇円(甲二五の一、二五の二)

に 慈愛病院

治療費 六三万五八二〇円

個室料 九三万八七〇〇円

(甲二六の一ないし二六の八)

ほ 双愛病院

治療費 一四万七四九九円

個室料 四五万円

(甲二七の一ないし二七の八)

へ さいたま赤十字病院

五〇七〇円(甲二八)

ⅱ 原告X1は、竹川病院入院中の平成一六年四月一〇日、同年五月八日、同月二九日、同年六月一二日、同月二八日、同年七月一〇日、同月二四日、同年八月七日、同月二三日、同年九月四日、同月二五日、同年一〇月二三日、同年一一月六日、同月二七日、同年一二月一一日に口腔内清掃を受け、合計四万三九二〇円を支払った(甲二二の一ないし二二の一五)。

② 判断

ⅰ 治療費 四六八万八九〇九円

上記争いのない事実等及び上記認定事実のとおり、原告X1は本件事故の後遺症により、意思疎通が困難であり、日常生活には全介助を要すること、食事は経管栄養によらざるを得なかったこと、自律的な排泄が困難であり、免疫力の低下等により感染症をひきおこしやすい状況であったところ、平成一七年二月には腎臓・尿管結石を発症し、同年九月には尿路感染を発症し、このため同年二月に豊島病院、同年九月にはさいたま赤十字病院においてそれぞれ治療を行っていること、原告X1の体の拘縮を防ぐためにはリハビリテーションが欠かせない状態であったこと、在宅介護への移行のため、自宅の改修や看護師資格のない職業介護人ではできない導尿や経管栄養の技術を原告ら家族が習得する必要があったこと、これらのことからすれば、症状固定後も、原告X1の症状悪化を防ぐため、若しくは在宅介護へと移行する準備として、入院治療が必要であったことが認められ、症状固定日以降の治療費四六八万八九〇九円も本件事故との間に相当因果関係を認めることができる。

ⅱ 個室料 五二四万円

上記認定の原告X1の症状や、当時、竹川病院において個室以外での受け入れは不可能であったことをかんがみれば、入院中の個室の利用も必要性があったものと認められる。しかしながら、竹川病院における個室料は、特別室料であり、一日あたり約二万一〇〇〇円と他の病院の個室料に比較して高額であること、上記入院期間全期間について特別室の使用もやむをえない事情があったか必ずしも明らかではないことからすれば、竹川病院における個室料全額を本件事故と相当因果関係ある損害ということはできない。

そこで、本件においては、上記認定の原告らが支出した各病院の個室料にかんがみ、日額一万円の限度において、本件事故と相当因果関係にある損害と認めるのが相当である。

そうすると、竹川病院については、原告らが費用を請求している平成一六年四月一日以降の入院日数が二七二日であるから二七二万円、大塚病院(個室での入院日数七七日(甲二四の一ないし五))については七七万円、慈愛病院(入院日数九九日)については九九万円、双愛病院(入院日数七六日)については七六万円の計五二四万円が、個室料相当の損害と認められる。

ⅲ 歯科治療費 〇円

原告らは、口腔内を清潔に保てないと、肺炎を引き起こす可能性もあり、原告X1には歯科衛生士による口腔ケアが必要であると主張し、これに沿う証拠として甲第一〇九号証ないし同一一一号証があるが、その内容は、歯磨きや歯石の除去、唇等のマッサージであり、必ずしも歯科衛生士によることを要しない作業であることからすれば、日常動作全般に介助を要する原告X1の介護ないし看護の一内容と評価すべきものであって、これと別個に上記の歯科治療費用を本件事故と相当因果関係にある損害と認めることはできない。

c 退院後通院費用 計一万五八八〇円

① 大塚病院 五三八〇円

甲第二九号証の一ないし六号証によれば、平成一七年一〇月ないし同年三月にかけ、大塚病院に通院し、リハビリテーション科及び脳神経外科を受診し、理学療法を受け、合計五三八〇円を支払ったことが認められるところ、これらの診療は、本件事故により頭部外傷を受け、一命をとりとめたものの、なお四肢の麻痺や意識障害、排泄障害等の残る原告X1の予後を観察し、四肢の拘縮の進行を食い止めるなど、その身体・意識の状態を維持するため、必要があることが認められるから、本件事故と相当因果関係にある損害と認められる。

② 埼玉精神神経センター 一万〇五〇〇円

甲第三〇号証の一ないし三〇号証の四によれば、平成一七年一一月に原告らが埼玉精神神経センターにおいてインフルエンザ予防接種を受け、それぞれ二一〇〇円を負担したこと、同年一二月に原告X1が同センターにおいてワクチンの接種を受け、八四〇〇円を負担したことが認められる。このうち、原告X1については、いわゆる寝たきりの状態であり、免疫力の低下がみられ、疾病の予防の必要性が高かったこと、また、同時期に短期入所施設を利用するためにはインフルエンザ予防接種を受けた旨の証明が求められていたこと(甲四六)からすれば、上記各予防接種も、本件事故により、介護上、受けざるをえなくなったものとして、これにかかる費用は、本件事故と相当因果関係にあるというべきである。しかしながら、原告ら家族分にかかるインフルエンザ予防接種料については、同人らは原告X1の介護や見舞いを契機として予防接種を受けることとなったと推認されるものの(甲四六)、一般に、インフルエンザ予防接種は特別な予防接種ではなく、冬季に接種を受ける者も稀ではないことや、原告ら自身が同予防接種により利益を受けた面もあることを考慮すると、原告X1の場合と同様に考えることは相当でなく、本件事故と相当因果関係ある損害とは認められない。

③ f歯科診療所 〇円

上記のとおり、歯科診療にかかる費用は、本件事故と相当因果関係にある損害と認めることはできない。

(イ) 付添看護費関係

a 付添看護費・介護費 計六二四万円

① 事実認定

ⅰ 救急病院である大塚病院では、急患も多く、看護師は最低限の体位交換、おむつ交換、着替え、バイタルのチェックをする以外に見回りに来る余裕はなく、緊急時には、原告ら家族が医師や看護師を呼びに行く必要があった。

また、原告ら家族は、毎日、原告X1の筋肉の拘縮を予防するために、体操をさせるとともに、意識レベルが回復するように不断に呼びかけなどの刺激を与えた。

(甲一〇、七六、八四、原告X2、原告X3、原告X4)

ⅱ 大塚病院の脳神経外科の医師Aは、平成一五年八月一一日付けで「家族による声かけに時折感情変化(泣く笑う)認められるため意識回復の訓練のために家族の常時付添介護を要する状態である」旨の診断をしている(甲九)。

ⅲ 療養型病院である竹川病院では、看護師の数や医師の回診も少なかったため、原告ら家族が交代で、リハビリテーションの付添を行い、日中や夕方にマッサージを行った(甲一〇一)。

ⅳ 竹川病院の医師Dは、平成一六年一二月一七日付けで、平成一五年八月一四日から平成一六年一二月一七日までの四九二日間について、意識回復の訓練のために、家族の付添介護を要する旨の診断をしている(甲一二)。

ⅴ 急性期を過ぎた原告X1を受け入れ可能な病院は少なく、原告ら家族が原告X1を受け入れる病院を探す作業は難航し、竹川病院以降の転院に際しても、①在宅介護の準備が整うまでの三か月程度、②リハビリテーション、導尿はしないという条件がつけられた(原告X3)。

ⅵ 原告X1が豊島病院で腎臓結石の除去手術を受ける際は、医師から、麻酔の使えない手術であるため、意思疎通の困難な原告X1の場合、コミュニケーションのとれる家族の立ち会いが手術の条件であるとされ、原告ら家族の立ち会いの下、手術が行われた(甲一〇一)。また、一時的な入院である同病院においては、リハビリテーションが受けられず、原告ら家族がこれを行っていた(甲一〇一)。

ⅶ 慈愛病院においては、導尿による排泄管理が行われなかったために、再び尿路感染等により体調が悪化しないよう、原告ら家族が原告X1の状態に留意する必要があった。本人の意識回復のため、車いすに乗せて散歩をし、リハビリテーションが週一、二回、一五分程度しか行われなかったため、拘縮予防と腹部にたまったガスを出しやすくするために、毎日、原告ら家族がリハビリテーションを行った。

双愛病院では、リハビリテーションもオムツ交換も十分に行われなかったため、原告ら家族がこれらの作業をする必要がさらに高かった。

(甲一〇一)

② 判断

上記認定のとおり、原告X1は、入院当初から意識障害等があり、人工呼吸器による呼吸管理を必要とし、痙攣発作を頻発するなど特に重篤な症状であったこと、入院期間全期間にわたり、自力で日常動作を行うことができず、排泄障害や意思疎通の障害を抱えていたこと、このため緊急時に医師、看護師を呼ぶにも原告X1本人がこれをすることは不可能であったこと、適切なリハビリテーションがなされない場合、四肢の拘縮は悪化する可能性があったことからすれば、頻繁なリハビリテーションや症状の観察、排泄処理等は、身体機能の低下をくいとめるために必要であったということができ、上記の原告ら家族による付添は、単なる家族の情愛に基づく見舞いを超え、保存的治療またはリハビリテーションを補助するものということができる。そして、かかる家族介護については日額六五〇〇円と評価するのが相当であり、これに入院期間九六〇日を乗じた金額に相当する六二四万円が、本件事故と相当因果関係のある付添看護費ということができる。

b 近親者の休業損害相当額 〇円

原告X3は、勤務先の株式会社aを、平成一五年三月一日から平成一六年一月三一日までの期間で三九日間休業し、その間一部給与三九万〇五四〇円が支払われなかったこと(甲三二)、原告X4については、勤務先の株式会社bを平成一五年二月一七日から平成一七年七月一五日までの期間で、一八八日休業し、平成一五年四月ないし同年六月は給与全額六八万九〇三八円が支給されなかったこと、同年二月一七日ないし同年三月三一日、同年七月一日ないし平成一七年七月一五日までの期間で合計八六万九六四三円の給与が減額されたことが認められるが(甲三三)、上記のとおり、身体の拘縮状況の悪化や意識の低下を防ぐ等のため、病院職員による看護に加え家族による付添を要したとしても、上記認定の原告X1の症状、看護内容からすれば、家族による付添看護の負担については、上記付添看護費・介護費において評価しつくされているものというべきである。よって、原告X3及び原告X4が休業して原告X1に付き添っていたとしても、上記付添看護費と別途に、同人らの休業損害相当額を本件事故と相当因果関係にある損害と認めることはできない。

(ウ) 交通費関係 計 一〇六万五六七九円

a 本人通院費、転院費等 二三万四六七九円

甲第三五号証によれば、平成一六年四月から平成一八年三月の間に原告X1が大塚病院から豊島病院へ、同病院から大塚病院へ、同病院から慈愛病院へ、同病院から双愛病院へ転院する際の原告X1の移送費用、さいたま赤十字病院へ通院する際の移送費用、高速料金及びガソリン代等として二三万四六七九円が支払われたことが認められ、原告X1の症状からすれば、これらは、本件事故と相当因果関係ある損害と認められる。なお、上記認定額は、原告らの請求する額より一五〇〇円少ないが、これは、原告らの請求が、平成一七年七月四日付けの慈愛病院から双愛病院への転院の際の移送費用を四万四〇三〇円、同日の高速料金を合計一五〇〇円として計算したものと推認されるところ、移送費用の領収書(甲三五)によれば、移送費用は消費税額込みで四万二五三〇円と記載されており、「ご請求額」欄外に記載された「一五〇〇」、「四四〇三〇」は、同日付けの高速料金の領収書三通(浦和南本線料金所での料金四〇〇円、東池袋料金所での料金七〇〇円、新都心西(上)料金所での料金四〇〇円)にかかる高速料金一五〇〇円と、移送費用との合計額とをそれぞれ記載したものと推認されることから、移送費用を四万二五三〇円と認定したためである。

b 付添人交通費 八三万一〇〇〇円

上記(イ)認定のとおり、家族による付添看護の必要が認められ、実際に三人が同時ないし交代で介護をしていたとしても、その内容からすれば、必ずしも数人の家族付添を要するものではないから、本件事故と相当因果関係のある付添人交通費としては、一人分の交通費相当額を認めるのが相当である。そして、甲第三四号証によれば、平成一六年四月から、さいたま赤十字病院を退院する平成一七年一〇月一日までの期間に自宅と病院間の交通費として一七五万八二一一円を支出したことが認められるが、これは、概ね二人分の交通費であるとともに、バス又は電車に代えてタクシーを利用した場合のタクシー代も含むものである。原告らは、病院からの帰宅が遅くなってバスがなくなった場合や持ち帰るべき洗濯物等の荷物が多い場合などに限ってタクシーを利用したとするが(甲一〇一)、損害の公平な分担の観点からは必ずしもやむをえないものとは認められないから、自宅・病院間を往復公共交通機関を利用した場合の一人分の交通費日額(竹川病院入院時は一七四〇円、大塚病院、豊島病院入院時は一四二〇円、慈愛病院入院時は一五〇〇円、双愛病院入院時は九八〇円、さいたま赤十字病院入院時は九八〇円)に、平成一六年四月一日以降の各病院の入院期間を乗じた金額に相当する金額である八三万一〇〇〇円が、付添人交通費として相当な額と認められる。なお、原告らが請求する、在宅介護へ切り替えた後の平成一七年一〇月二日から平成一八年三月までの交通費は、結婚し、原告X1及び原告X2と別に家庭を持つ原告X3が、原告の介護のため、原告X1方に通う際支出した交通費や、短期入所施設への付添のための交通費であると認められるところ、これらについては、在宅介護費に含めて評価されており、付添人交通費として別途認めることはできない。

(エ) 入院雑費 一四四万円

入院期間は合計九六〇日(甲一一、一二、二一の一ないし二一の一〇、二四の一ないし二四の五、二五の一及び二五の二、二六の一ないし二六の八、二七の一ないし二七の八、二八)であり、一日にかかる雑費としては一五〇〇円が相当であるから、一四四万円が本件事故と相当因果関係ある損害と認められる。

(オ) 在宅介護関係 計 一億五一〇七万五一〇八円

a 在宅介護の必要性

上記認定のとおり、原告X1は、頭部外傷後急性硬膜外血腫の後遺症として中枢神経障害による高度の膀胱直腸機能障害を有し、在宅介護を開始した平成一七年一〇月一日から現在も自律的排尿が困難な状態である。このため、原告X1の介護の一内容として、適切な排尿管理が必要であるが、医師によれば、カテーテル留置による排尿管理では、膀胱炎などの尿路感染の発生率が高いため、衛生上、間欠導尿(定期的に尿道からカテーテルを挿入して排尿させ、膀胱を空にする方法)が望ましいとされている(甲七七)。そうであれば、原告X1の介護については施設による介護が期待されるところであるが、施設による介護と同程度の介護が維持され、さらに改善が認められるのであれば、在宅介護も、その選択の一つというべきであり、実際、在宅介護へ切り替えた後、原告X1には、呼びかけなどの外部刺激に対し、足を動かすなどの反応がみられ、一日一回全介助による経口接取が可能となるなど、家族による導尿、リハビリテーションにより症状が改善していることを考慮すれば、原告X1の介護方法としては在宅介護が適切であるといえる。

この点、被告は、一応施設介護が可能な場合には、施設介護相当額を基準として介護費用を算定すべきであると主張するが、在宅介護が適切である以上、施設介護を前提として、在宅介護費を算定することは相当でない。

b 在宅介護費 計 三六七万五二七三円

① 事実認定

平成一七年一〇月から平成一八年五月に、以下の費用が支払われたことが認められる。

ⅰ 平成一七年一〇月 計 一二万七三四五円

きりしき 四五四一円(デイサービス三回)

ナーシングヴィラ与野 一万九二四二円(短期入所施設八日)

与野訪問看護ステーション 七万九一八九円(訪問看護一〇回)

アイリスケアセンター与野 七四一八円(訪問介護六回)

アースサポート株式会社 一万六九五五円(訪問介護)

(甲三六の一ないし三六の九)

ⅱ 同年一一月 計 七万六九〇九円

きりしき 三万九一三三円(デイサービス三回、短期入所一〇日)

与野訪問看護ステーション 一万五六四八円(短期入所三日、訪問看護八回)

アイリスケアセンター与野 五二〇五円(訪問介護)

アースサポート株式会社 一万六九二三円(訪問介護)

(甲三六の一〇ないし三六の一九)

ⅲ 同年一二月 計 一四万四一七五円

きりしき 三万三五四九円(デイサービス三回、短期入所七日)

ナーシングヴィラ与野 八万二四四七円(短期入所七日)

与野訪問看護ステーション 七九九一円(訪問看護八回)

アイリスケアセンター与野 四六〇〇円(訪問介護)

アースサポート株式会社 一万五五八八円(訪問介護)

(甲三六の二〇ないし三六の二八)

ⅳ 平成一八年一月 計 一一万九三六七円

きりしき 三万三六三七円(デイサービス五回、短期入所施設七日)

与野訪問看護ステーション 六万四八〇七円(訪問看護一一回)

アイリスケアセンター与野 五九八二円(訪問介護)

アースサポート株式会社 一万四九四一円(訪問介護)

(甲三六の二九ないし三六の四〇)

ⅴ 同年二月 計 一一万八九三四円

きりしき 二万六六六五円(デイサービス四回、短期入所六日)

ナーシングヴィラ与野 一万三八六〇円(短期入所四日)

与野訪問看護ステーション 五万八八六九円(訪問看護一〇回)

アイリスケアセンター与野 五三七七円(訪問介護)

アースサポート株式会社 一万四一六三円(訪問介護)

(甲三六の四一ないし三六の五一)

ⅵ 同年三月 計 一七万九五九七円

きりしき 六万六五六四円(デイサービス五回、短期入所施設八日)

与野訪問看護ステーション 八万七五三四円(訪問看護一一回)

アイリスケアセンター与野 七一八九円(訪問介護)

アースサポート株式会社 一万八三一〇円(訪問介護)

(甲三六の五二ないし三六の六三)

ⅶ 同年四月 計 七五万〇〇八六円

きりしき 六四四〇円(デイサービス五回)

与野訪問看護ステーション 一五万六五一五円(訪問看護二〇回)

アイリスケアセンター与野 一五万三〇三七円(訪問介護)

アースサポート株式会社 三八万八九三六円(訪問介護)

株式会社やさしい手 四万五一五八円(訪問介護)

(甲三六の六四ないし同三六の七四の一)

ⅷ 同年五月 計 六五万八五九八円

きりしき 一万二二六四円(デイサービス四回、短期入所二日)

与野訪問看護ステーション 一三万五九八七円(訪問看護一六回)

アイリスケアセンター与野 一三万六四三三円

アースサポート株式会社 三三万一九七〇円

株式会社やさしい手 四万一九四四円

(甲一一八の一の一ないし一一八の六の二)

② 判断

上記認定のとおり、在宅介護を開始した平成一七年一〇月から本件訴訟提起がなされる平成一八年五月までは、家族による介護に加え、主に日中、職業介護人による介護が利用されていたところ、本件では、原告ら家族が介護にあたっているものの、原告ら家族の生計維持のため就労の必要があることや、原告ら家族の体力面を考慮すれば、上記の程度の職業介護人の利用はやむを得ないものである。そして、夜間介護料金は通常日中の介護料金よりも高額であるところ(甲一二〇の一、原告X4)夜間介護については原告ら家族でまかなっており(原告X2、原告X4)、上記期間を通じてみれば、一日あたり平均の職業介護人費用は約八五〇〇円と比較的低額に抑えられていると評価できることも考慮すれば、上記の職業介護人に支出した費用も相当な範囲にあるものというべきである。

他方、原告X1は、排泄、寝返りも自律的にすることができないため、夜間にも定期的な介護が必要であり、これは原告ら家族で賄っていたこと、原告ら家族により夜間約二時間ごとの体位交換等の介護が行われており、昼間の職業介護人利用時も導尿、胃ろうによる経管栄養、補水等家族による介護の必要があったこと(甲七九、原告ら本人尋問)を考慮すれば、原告ら家族による介護の負担は、上記職業介護費用実費に吸収されるものではなく、これに加えて評価する必要があり、訪問介護の利用が少なく、原告ら家族中心で介護をなしていた平成一七年一〇月から平成一八年三月については日額七〇〇〇円、職業介護人の利用が増えた平成一八年四月及び同年五月については、日額五〇〇〇円と評価するのが相当である。

そうすると、上記職業介護費用実額のうち、本件訴え提起前日である平成一八年五月二八日までの費用相当額二一一万一二七三円(平成一七年一〇月から平成一八年四月分の上記実費に同年五月分の上記実費を日割計算し、二八日分相当額である五九万四八六〇円を加えて算出。なお、本件では、平成一八年五月分の介護費用実額にかかる証拠が提出されているところ、実際に被害者が支出を強いられる積極損害については、できうるかぎり実額を反映して賠償額を算定すべきであるから、訴え提起までの実費については過去の支出費用として検討し、訴え提起の日である平成一八年五月二九日を基準とし、同日以後にかかる費用を将来費用の項目において算定することとする。)に、家族介護費用一五六万四〇〇〇円(7000円×182日=127万4000円、5000円×58日=29万0000円)を加えた三六七万五二七三円が本件事故と相当因果関係にある損害というべきである。

c 在宅介護装備・器材費 計 二〇万一八六九円

甲第三七号証の一ないし三七号証の一〇によれば、平成一七年一〇月に吊り上げシートフルサイズの購入代金二万八〇〇〇円、ネブライザー(NS―一四〇〇WDXB)セットの購入代金五万七九六〇円、同月ないし同年一一月に体温計、血圧計、タオル温存器等の購入代金一七万九八六八円、同年一〇月から平成一八年四月までの各月に車いす、ベッド等のレンタル費用として計六万七九五〇円を、それぞれ支出したことが認められ、このうち、車いす、ベッド等、吊り上げシート、ネブライザー、体温計、血圧計、タオル温存器については、寝たきりの状態にある原告X1の介護に必要なものと認められるが、DVDテープ一万〇七七三円(甲一二三の七)、ポケットテレビ三万九八〇〇円(甲一二三の九)、デジタルレコーダー五万〇一〇〇円(甲一二三の一〇)、DVDソフト二万一五四六円(甲一二三の一一)、ラジカセ八七〇〇円(甲一二三の一二)については、同人の介護に必ずしも必要なものとは認められず、また、平成一七年一一月二二日に支払った七一〇円(甲一二三の一四)、同月二六日に支払った二八〇円(甲一二三の一三)については、何にかかる支払か不明であり、原告X1の介護との関係は必ずしも明らかでないから、これらに係る支払一三万一九〇九円を除いた二〇万一八六九円が、本件事故と相当因果関係にある損害というべきである。

d 住宅改修費 計 八六万三六〇〇円

原告X1の在宅介護を開始するにあたり、原告らは、原告X1宅につき、介護用ベッドを置く和室の床板張り、段差解消、トイレへの尿瓶洗浄のための水道設置、浴室の折り戸交換、オムツ交換台の設置の工事を行い、それぞれ三万七〇〇〇円、七万九八〇〇円、七二万三五〇〇円、二万三三〇〇円の計八六万三六〇〇円を支払ったことが認められる(甲三八の一の一の一ないし三八の五の三)。原告X1が寝たきりの状態であり、四肢の拘縮から容易に手足を曲げることができないこと、オムツ交換や導尿や摘便を行った後の処理を頻繁にする必要があることからすれば、上記設備の設置のための住宅改修は原告X1の介護を行ううえで必要なものであり、その費用についても相当な範囲内にあるものと認められる。

この点、被告は、改修工事の内容が相当であるとしても、これにより、住宅の耐用年数が延びている面もあるから、被告が負担すべき額としては、相当の減価がなされるべきと主張するが、上記のとおり、改修内容はオムツ取り替え台の設置やユニットバス折り戸の交換、溲瓶洗浄用水栓の設置など主に介護用設備の設置にかかるものであり、住宅の耐用年数自体に寄与するものとは認められず、また原告X1以外の家族が、原告X1を介護する際の便宜を超えて、住宅の機能設備の更新又は向上による利益を享受するということもできないから、減価の必要は認められず、被告の上記主張は採用できない。

e 在宅介護雑費 計 七六万九五二四円

原告らは、原告X1の在宅介護雑費として、平成一七年一〇月から平成一八年四月までに八二万三七三二円を要したと主張し、甲第三九号証及び同第一〇一号証によれば、イリゲーター、チューブ、注射器、オムツ、洗浄綿、手袋、お尻拭き、清拭剤、手洗い石鹸、消毒液、ガーゼ、綿棒、テープ、うがい薬、口臭剤、防臭液、ハンドクリーム、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、シャンプー、リップクリーム、コットン、ワセリン、シーツ、タオル、パジャマ、下着の費用として、平成一八年四月の一か月間に一二万一二六六円を支出したことが認められる。上記品目の多くは消耗品であって、原告X1の介護を続ける以上、毎月要するものと考えられるが、その中には、シーツ、タオル、パジャマ、シャンプー、トイレットペーパー、ティッシュペーパー等、健常人の生活費としても必要であるものが相当数入っており、寝たきりの状態で自律的な排せつ、栄養摂取ができないことにより、健常人に比較し、衣類や寝具、タオル等の交換頻度の高くなることを考慮しても、一か月あたりの雑費は、その八割にあたる九万七〇〇〇円(一〇〇円以下四捨五入)とし、平成一八年五月二八日までの金額に相当する七六万九五二四円(五月分は日額三二三三円で計算。)を在宅介護雑費と認めるのが相当である。

f 将来の在宅介護費 計 一億二五〇六万八七一〇円

① 介護費用日額

上記認定のとおり、四肢の拘縮、意識障害、意思疎通についての障害がある原告X1の身体、精神の状態を良好に保つには、家族の情愛に基づくマッサージや声かけ等の不断の働きかけが重要であり、実際、在宅介護への切り替え後の原告X1の状態には、その成果が認められるところであって、家族も在宅介護の意欲を強く有していること、うち原告X3及び原告X4は、原告X1の子であり、将来にわたっても、いずれかの家族が原告X1の介護に従事することが可能であるものと考えられることからすれば、将来的にも、介護方法としては、家族による介護を基本とする在宅介護が望ましいと考えられる。

しかし、長期の介護が見込まれ、終日家族介護によることは家族の肉体的精神的負担が大きいこと、原告X2が、生計維持のため昼間は就労せざるをえず、原告X3及び原告X4も婚姻家庭をもっており、家事・育児の負担があるという事情を考慮すれば、介護体制としては、職業介護人による介護と家族による介護を併用することが相当である。そして、平成一七年一〇月から平成一八年五月までに負担した職業介護費用実額、原告ら家族による介護の負担、将来、事情の変化がありうること等諸般の事情を考慮して、本件事故と相当因果関係にある将来介護費用は、余命期間全期間にわたり、日額二万三〇〇〇円とするのが相当である。

この点、被告は、規範的な見地からは、必要な介護者の人数は一人であって、将来介護費用は、職業介護人費用一人分または家族介護費用一人分を基礎として計算されるべきであると主張するが、現実に原告ら家族が導尿等、医療資格者でなければできない行為をしていることや、日中も一定の時間毎にこれを行っていること、夜間における介護は、継続的な作業を要するものでないとしても、まとまった睡眠をとることを困難とし、肉体的な負担の大きいものであること、このような点から夜間に職業介護人を利用する場合、その費用は高額となっていると考えられること、介護保険の導入後、介護費用額そのものは高額化したといわれていること、他方、従来家族による介護費の算定はかなり低くなされてきたことからすれば、職業介護が中心か家族介護が中心かを決し、その必要人数によって将来の介護費用を算定するという算定方法は相当ではなく、被告の上記主張は採用できない。

② 原告X1の余命について

被告は、一般に寝たきりの患者、特に植物状態に至った患者の場合、余命は一〇年程度に制限される旨主張し、これに沿う乙第七号証ないし同第一〇号証があるが、在宅介護への切り換えの後、原告X1には、声を挙げる、左下肢を大きく動かすなどの反応を示すなどの改善が見られ、尿路感染等の発症により医師の治療を要したことはないこと、定期的な経管栄養がなされていることからすれば、原告X1は、栄養面、衛生面、外的な刺激の面において良好な状態にあるということができ、実際に原告X1の診療を行った医師らが、現在の適切な介護が継続すれば、原告X1の余命が平均余命以下に短縮される畏れはない旨の意見書を作成していること(甲七六、八四)を考慮すれば、原告X1の余命が平均余命以下に制限されると考えることは妥当でない。

③ 中間利息控除率及び計算方法

原告らは、将来介護費用につき中間利息を控除すべきでない、また仮にするとしても、昨今の金利の低迷からすれば、利率は五分より低いものとすべき旨主張するが、原告らが将来発生する費用に相当する金員につき一括して支払を受けることとの均衡からすれば、将来介護費用についても、中間利息の控除をせざるをえない。そして、現在、低金利ではあるものの、将来的には利率は変動するものであること、民法が法定利率を年分とし、加害者が支払うべき損害賠償金には、事故時からの遅延損害金が付されるところ、遅延損害金の利率は年五分であることとの均衡からすれば、中間利息の控除率を五分とすることは不合理ではない。

さらに、原告は、実際に支出をともなう将来介護費用等の場合、被害者が実際に支払うことになる金額に近い計算となるホフマン係数により中間利息控除をすべきと主張するが、実際の出費額は上記認定の介護費用日額を上回る可能性も下回る可能性もあることからすれば、中間利息の控除率及び控除方法は、結局は、不確定な要素のある将来費用や逸失利益の金額を算定するための方法にすぎず、将来費用等を一時金の方式で支払うことを命じ、一括して資金調達することを要求することとの均衡からすれば、複利計算によるライプニッツ係数をとることが不合理とはいえない。

そこで、上記認定の将来介護費用日額を年額に直し、平均余命期間である二八年に該当するライプニッツ係数を乗じ、将来介護費用を計算すると、以下のとおりとなる。

2万3000円×365×14.898=1億2506万8710円

g 将来の医療費 四七万三二二〇円

上記認定の原告X1の後遺症及び症状固定後の治療経緯からすれば、将来的にも定期的に脳神経外科及び泌尿器科、リハビリテーション科に通院し、リハビリテーションを受けるとともに、予後を観察する必要があることが認められる。

そして、上記(ア)c認定のとおり、平成一七年一〇月から平成一八年三月までの六か月間に支出した医療費のうち本件事故と相当因果関係にあるものの合計は一万五八八〇円であるから、一か月あたりの平均医療費は二六四七円(小数点以下四捨五入)、一年あたりの平均医療費は三万一七六四円となり、これに訴訟提起時からの平均余命期間である二八年に該当するライプニッツ係数一四・八九八を乗じて中間利息を控除した四七万三二二〇円が、将来の医療費として相当な金額と認められる。

h 将来の在宅介護装備・器材費 二六八万一六四〇円

上記(オ)c認定のとおり、平成一七年一〇月から平成一八年四月の七か月間の在宅介護器材費として、二〇万一八六九円が支払われたところ、これを一か月あたりに平均すると、月額二万八八三八円を要したことになる。しかしながら、NS―四〇〇WDXBセット、体温計、血圧計等については、正確な耐用年数は明らかでないものの、その性質上、これらを七か月に一度買い換える必要があるかは疑問があり、将来にわたっても毎月二万八八三八円を必要とするとは認められない。原告らは、上記備品は精密機械であり、使用頻度が多いため、耐用年数が短くなる旨主張するが、平成一七年一〇月以降本件口頭弁論終結時までに買い換えた旨の主張立証はないことから、これらの器材の耐用年数は三年はあるものと考慮し、上記月額の約五割に相当する一万五〇〇〇円とするのが相当である。

以上を前提として、将来の在宅介護装備・器材費を計算すると、以下のとおりとなる。

1万5000円×12ヶ月×14.898(平均余命までの期間28年に該当するライプニッツ係数)=268万1640円

i 将来の在宅介護雑費 一七三四万一二七二円

上記(オ)e認定のとおり、平成一七年一〇月から平成一八年四月における一か月あたりの在宅介護雑費として本件事故と相当因果関係にあるのは一か月あたり九万七〇〇〇円であるから、これを一年あたりの額に直し、余命期間二八年に該当するライプニッツ係数を乗じた金額である一七三四万一二七二円が、将来の在宅介護雑費として相当である。

j 介護のための近親者転居費用 〇円

甲第七号証及び甲第四〇号証によれば、平成一五年四月二六日、原告X4が一人暮らしをしていたアパートを引き払い、実家へ戻ったこと、引っ越し費用として二万一〇〇〇円が支払われたことが認められるが、当時、大塚病院に入院中であった原告X1の付添看護との因果関係は本件証拠上、必ずしも明らかではなく、本件事故と相当因果関係ある損害と認めることはできない。

(カ) 医師への謝礼 三〇万円

甲第四一号証及び原告X2本人尋問によれば、平成一五年八月一三日に、原告X1名義の東京三菱銀行の普通預金口座から三〇万円が引き出され、本件事故時に緊急搬送された大塚病院において、頭部の血腫除去手術及びその後の治療にあたった脳神経外科のA医師に対し、謝礼として三〇万円が渡されたことが認められる。医師への謝礼は、社会通念上相当な限度で交通事故による損害と認めるべきであるところ、緊急搬送時に原告X1は昏睡状態にあったものの、治療の末、集中治療室から一般病室へ移ることが可能となったことを考慮すれば(甲八四)、三〇万円の謝礼は、社会通念上相当な額ということができるから、これを本件事故と相当因果関係にある損害と認めるのが相当である。

(キ) 損害賠償関係 七万八六八〇円

弁論の全趣旨によれば、原告X1については、平成一六年八月に原告X2を成年後見人とする後見開始の審判がなされたことが認められ、甲第四三号証によれば、この成年後見申立にかかる収入印紙、郵券代として五五五〇円、登記されていないことの証明書の交付費用として一〇〇〇円、住民票等の取り寄せ費用として合計二〇五〇円、成年後見登記にかかる収入印紙代として四〇〇〇円、都立大塚病院からカルテを取り寄せた際のコピー費用六万六〇八〇円が支払われたことが認められる。これらは、上記認定のとおり、本件事故により、原告X1が意思疎通困難な状態に陥ったために生じた費用であり、本件事故と相当因果関係にある損害と認められる。

(ク) 休業損害 八〇〇万二九〇四円

原告X1は、本件事故当時、c生命相互会社上野支社に勤務し、保険の外交員として働いていたところ、本件事故の日である平成一五年二月一四日から症状固定日である平成一六年三月二三日まで四〇三日間休業したことが認められる。原告X1の事故前三か月の収入は、平成一四年一一月が三七万二四七〇円(本給二四万三八七五円、付加給一二万八五九五円 稼働日数二〇日)、同年一二月が三八万〇七四二円(本給二四万三八七五円、付加給一三万六八六七円 稼働日数一九日)、平成一五年一月が三七万九六二二円(本給二一万一六七五円、付加給一六万七九四七円 稼働日数一九日)であったことが認められ(甲四二)、月ごとに本給及び付加給が異なっているところ、これは、外交員という職種の性質上、営業成績が収入に反映されているためと推認される。したがって、休業損害を算定する基礎とすべき原告X1の収入額を決定するにあたり、その収入額をより実態に近いものとするには、一定程度長期の実績から算定する必要があり、通常の休業損害において基礎となる休業前三か月の給与平均ではなく、事故前年一年の収入を基礎とするのが相当である。そうすると、本件では、平成一四年の報酬が七二四万八二八八円であったこと(甲八五の一)が認められるから、これを日額に直し、休業日数四〇三日を乗じた八〇〇万二九〇四円を休業損害相当額と評価すべきである。

この点、原告らは、平成一二年ないし平成一四年の年収の平均額を基礎とすべきと主張するが、平成一二年の報酬は八〇一万二六三八円、平成一三年の報酬は八三三万七二五九円、平成一四年の報酬は七二四万八二八八円であったこと(甲八五の一ないし八五の三)が認められ、平成一四年は前年より一〇〇万円以上年収が下がっていること、事故前三か月の給与月額が上記のとおりであることからすれば、前年の年収が休業期間の原告X1の収入により近いものと考えられ、原告らの主張は採用できない。

(ケ) 逸失利益 六八〇九万〇四一七円

a 基礎収入及び労働能力喪失期間

① 事実認定

ⅰ 原告X1は、本件事故当時、c生命相互会社上野支社に勤務し、毎月三件から九件の新規契約を締結し、新契約増加成績月額二〇〇〇万円から一億四七〇〇万円の成績を上げていた(甲一〇〇)。

平成一二年には、同社の首都圏営業職員成績上位一二〇人に与えられる「パイオニア二一ブロック一二〇傑」の資格を表彰されるとともに、新職員の採用に功労があった者に与えられる「新採功労営業職員賞」を授与されたほか、同社内外からの表彰を受け、営業成績のみならず、営業職員の採用・育成についてもその能力は高く評価されていた(甲八七ないし一〇〇)。

ⅱ c生命保険相互会社の営業職員就業規則によれば、営業職員は満六〇歳の誕生日が到来したとき定年退職するものとされているが、本人が希望する場合は、満六〇歳の誕生日以降一年ごとに、満六五歳の誕生日が到来するまで勤務期間を延長することができる。また、六五歳に達した際、満六五歳の誕生日の属する月の前月までの一年間において成績が月平均取扱件数二・〇件以上、月平均計上成績九〇〇万以上などの成績要件、月平均欠勤日数が一・五日以内であることなどの基準を満たし、会社が適当と認める者については、六五歳以降も七〇歳まで特別営業嘱託として就労が可能であり、さらに七〇歳に達した際、直前一年間の成績が月平均五四〇万以上、または一年間の取扱い件数が一二件以上などの要件を満たし、会社が適当と認める者については七五歳まで新別格営業嘱託として就労が可能とされている。

(甲八〇)

ⅲ c生命上野支社王子営業所においては、平成一八年一一月現在、三二名の営業職員が在籍し、うち六名が六〇歳以上、一名が七〇歳以上の職員である(甲一〇〇)。

② 判断

ⅰ 基礎収入

上記のとおり、原告X1が保険外交員であり、契約成立成績による収入変動があったことからすれば、事故前年一年の年収を基礎とするのが相当である。

被告は、一般に事故当時の収入を就労可能年限まで得られる蓋然性は低いから、六〇歳以降の基礎収入については賃金センサス等によって相当な基礎収入を算出すべきであると主張するが、一般にそのようにいえるかは疑問であり、むしろ就労可能年限近くにおいては退職金の支給がなされる場合が多く、本件のc生命においても退職金規定があり、原告X1が勤続二〇年以上かつ五五歳以上となれば退職年金の支給規定が適用されていたこと(甲一二七、原告X2)も考慮すれば、事故前の実収入を基礎収入として就労可能年限までの逸失利益を計算することには合理性があり、被告の主張は採用できない。

ⅱ 労働能力喪失期間(七三歳まで就労可能とすべきか)

本件事故以前の約三年間において、原告X1はかなり優秀な成績を挙げていたことが認められるが、c生命保険相互会社において、特別嘱託職員として七〇歳まで就労可能か否かは、六五歳になるまでの直近の一年間の成績等により決まることとされ、さらに七〇歳以降も引き続き就労可能か否かは、七〇歳になるまでの直近の一年間の成績等により決まるとされており、原告X1は事故時五三歳であり、上記年齢に達するまで相当の期間があることからすれば、原告X1が七三歳まで働けることが相当程度に確実であったと認めることはできない。確かに、保険外交員という職種からすれば、勧誘技術や交友範囲は勤務年数に従い向上ないし拡大するのであるから、原告X1は、六五歳以降の就労可能性を判定する時期まで優秀な成績を保つことが可能だという原告らの主張も理解できないではないが、その業務内容は、外回りの営業を要するものであり、加齢に伴う体力面の衰えによる活動量の低下も無視することはできないことからすると、やはり原告X1が六七歳をこえて稼働できることが相当程度に確実だということはできず、就労可能年数を六七歳までとするのが相当である。

ⅲ 中間利息控除率及びその方法

上記のとおり、中間利息控除の方法は、年五パーセントの中間利息をライプニッツ方式によることとし、休業損害額算定との均衡から、症状固定時の現価にひき直すこととする。

以上を前提に、原告X1の逸失利益を計算すると、以下のとおりとなる。

724万8288円×9.394(労働喪失期間13年に対応するライプニッツ係数)=6809万0417円

(コ) 入通院慰謝料 四八〇万円

入院期間が長期にわたること(症状固定までに約一三ヶ月要しており、症状固定後も約一年半にわたり入院を要していることも考慮する。)、傷害の程度が重度であることを考慮すると、これに対する慰謝料としては四八〇万円が相当である。

(サ) 後遺症による慰謝料 三〇〇〇万円

本件事故当時五三歳であり、健康で仕事上も優秀な成績を収めていた原告X1が一瞬にして、排泄、入浴を含め、日常生活全般に介助を要する状態となり、家族と意思疎通をすることも困難となった無念さ及び苦痛を慰謝するには、三〇〇〇万円を下らない。

(シ) 上記合計 計二億八一〇五万三〇二七円

(ス) 損害の填補 四二一八万一五二一円

上記のとおり、自賠責保険から、賠償金四〇〇〇万円が支払われたことは争いがない。

また、d社からの内払金三一〇一万二六七三円が支払われたことについても争いのないところ、このうち、別紙一「入院中の諸経費」欄記載の各項目及び「雑費」欄記載の各項目は、入院雑費に含まれるべき項目であるから、これらの金額の合計である二一八万一五二一円については、上記認定の入院雑費の一部を填補するものと認められる。

なお、被告は、既に支払われた内払金の中には、必ずしもその必要性が認め難い出費についての支払も含まれているとし、必要性の認められない項目についての支払は、その部分について、本件で請求されている原告らの損害の填補がなされているとして計算すべきであると主張するが、損害の填補については、被告に有利な事実であるから、その主張立証責任は、被告にあるというべきところ、甲第五二の一号証ないし同七五の三号証によれば、原告ら家族は、d社に対し、領収書等を添付したうえで、内払金の支払を請求し、これに対し、d社は、疑問のあるものについては説明を求め、相当と認める範囲で支払をしていたことが認められ、本件全証拠によってもこれらの支払につき必要性がないとまで認めることはできず、本件請求と重複する上記入院雑費等に係る支払分をこえて、これを損害の填補として控除することは相当でない。

(セ) 残額 二億三八八七万一五〇六円

(ソ) 弁護士費用 二四〇〇万円

本件の事案の内容、訴訟の経過、認容額、その他諸般の事情を総合すると、二四〇〇万円が、本件不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

(タ) 合計 二億六二八七万一五〇六円

(2)  原告X2

ア 慰謝料 三〇〇万円

妻である原告X1に重度の後遺障害を負わされた悲しみ、自身も癌などの病気と闘いながら、会社員として働き、生計を立てるとともに原告X1を介護している精神的肉体的負担を考慮すれば、その精神的苦痛を慰謝するには三〇〇万円を下らない。

イ 弁護士費用 三〇万円

ウ 合計 三三〇万円

(3)  原告X3及び原告X4

ア 慰謝料 各三〇〇万円

母である原告X1が重度の後遺障害を負わされた悲しみ、婚姻家庭をもち、家事や育児をしながら、夜も交互に原告X1宅に泊まり、介護をしている負担を考慮すれば、その精神的苦痛を慰謝するには、それぞれ三〇〇万円を下らない。

イ 弁護士費用 各三〇万円

ウ 合計 各三三〇万円

二  争点二(過失相殺)について

平成一八年一二月一八日付け調査嘱託の結果及び甲第四九号証によれば、平成一四年九月二〇日に東京都公安委員会により本件交差点の滝野川三丁目一番一号と滝野川二丁目二三番をつなぐ横断歩道に自転車横断帯を設置する旨の決定がなされていたこと、平成一八年一一月二二日において、同横断歩道に自転車横断帯が設置されている状況が認められるものの、本件事故当日実施された実況見分において作成された実況見分調書添付の現場見取図(甲三)には、同横断歩道に自転車横断帯が設置されている旨の記載がなく、自転車横断帯が事故当日に実際に設置されていたかは必ずしも明らかでない。しかし、実況見分の際の被告の指示説明(甲三)によれば、原告X1は、本件交差点の横断歩道上を青信号に従って直進していたのであり、本件事故当時、原告X1自転車の前にも、二台ほど自転車が横断歩道上を通過していったことが認められることからすれば(甲四)、原告X1が自転車に乗車したまま横断歩道を走行したのもやむをえないところであり、原告X1に損害賠償額の算定にあたって斟酌すべき落ち度は認められない。

三  結論

以上のとおりであるから、原告らの請求のうち原告X3及び原告X4の請求については理由があり、原告X1の請求については二億六二八七万一五〇六円、原告X2の請求については三三〇万円及びこれらに対するそれぞれ平成一五年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求については、理由がないからそれぞれ棄却することとし、主文のとおり判決する。なお、被告は担保を条件とする仮執行免脱宣言を申し立てているが、相当ではないので、これを付さないこととする。

(裁判官 遠山廣直 八木貴美子 酒井玲子)

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