さいたま地方裁判所 平成14年(わ)1810号 判決
主文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,A(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,
第1 平成14年7月23日午後2時19分ころ,埼玉県a市内のホテルで姦淫し,
第2 同月28日午後零時3分ころ,同県b市内のホテルで姦淫し
たものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも刑法177条後段に該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の事情)
本件は,僧侶で寺の副住職をしていた被告人が,携帯電話のいわゆる出会い系サイトで知り合った12歳の被害者を2回にわたり姦淫したという事案であるが,被告人は,女子中高生を相手に性欲を満たしたいと考え,出会い系サイトを利用して相手方となる女性を募っていたところ,これに応じた被害者と知り合い,電子メールの交信を通じて被害者が12歳であることを知った上で未成熟な肉体に対する性的興味の赴くままに本件各犯行に及んでいるのであって,その自己中心的な犯行動機に酌量の余地はない。犯行態様をみても,被害者の判断能力が未熟であることに乗じる形でラブホテルに伴い,被害者に口淫させるなどした上で姦淫し(判示第1の犯行),さらにその数日後にも再びラブホテルで姦淫するとともにその様子をビデオカメラで撮影するなどしている(判示第2の犯行)のであって,被害者の心身に対する悪影響も懸念される甚だ悪質な犯行というほかない。被告人には,平成13年12月に公然わいせつ罪の前歴があることなどにも照らすと,被告人の刑事責任を軽視することはできない。
しかしながら,他方において,被告人の父親が被害者の母親に300万円を支払い,同女から被告人を宥恕するとの一筆を得ていること,被告人は,公判廷においては本件各犯行を素直に認め,被害者らにつらい思いをさせてしまったと述べるなどして反省の念を示していること,被告人には前科がないこと,父親が出廷して被告人を監督する旨誓っていることなど被告人にとって斟酌すべき事情も認められる。
以上の諸事情を総合考慮すると,被告人に対しては,主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予するのが相当と認める。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 若原正樹 裁判官 大渕真喜子 裁判官 小笠原義泰)