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さいたま地方裁判所 平成11年(行ウ)19号 判決

原告

同訴訟代理人弁護士

梶山敏雄

齋田求

梶山敏雄訴訟復代理人弁護士

村井勝美

被告

浦和税務署長

本郷良一

同指定代理人

磯野宏

萩庭隆伸

北田聖一

東野登代次

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告が、原告に対し、平成9年3月10日付けでした原告の平成6年分の所得税更正処分(ただし、国税不服審判所長のした平成10年10月21日付け裁決による一部取消後のもの)のうち、事業所得金額マイナス1306万8666円、分離長期譲渡所得金額1896万円及び納付すべき税額118万8200円を超える部分並びにこれに対する過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

第2事案の概要

1  事案の要旨

本件は、原告の平成6年分の所得税の確定申告に対して被告が推計課税の方式によりした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分について、原告が、上記各処分(上記裁決による一部取消後のもの)の取消しを求めた事案である。

本件の争点は、被告のした推計課税の必要性及びその合理性並びに原告がした実額反証の成否である。

2  基本的事実関係(争いのない事実)

(1)  原告は、肩書地に居住し、さいたま市領家において、平成6年11月5日まで「パブラウンジA」の屋号で飲食業(スナック)を営んでいたが、同月6日から同営業を廃業し、その後、事業の内容を変更した上、同年12月3日から「B」の屋号で飲食業(酒場)を営む個人事業者であり、いわゆる白色申告者(青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受け、かつ、青色申告書を提出した者以外の者)である。

(2)  被告は、原告が被告に対してした平成5年分ないし平成7年分の所得税の確定申告につき、平成5年分及び平成7年分については、事業所得金額が記載されているのみで、その算出の基礎となる収入及び必要経費の記載がなく、かつ、所得税法120条4項及び同法施行規則47条の3に規定する「事業所得に係る総収入金額及び必要経費の内訳書(以下「収支内訳書」という。)」が添付されていなかったため、その所得金額の算出過程が不明であったこと、また、平成6年分については、収支内訳書は添付されていたものの、算定された事業所得金額は赤字であり、平成5年分及び平成7年分の事業所得の各金額と比較しても、金額の変動が大きかったことから、原告の申告内容が適正であるか否かについて調査する必要があるものと認め、平成8年5月14日から、被告所部係官の乙事務官(以下「乙係官」という。)及び丙上席調査官(以下「丙係官」という。)が、原告事業所等において、原告及び原告の内縁の夫である丁(以下「丁という。)に対し、調査(以下、被告の命による乙係官あるいは丙係官の調査を「本件調査」という。)を進めた。

被告は、本件調査の結果、原告の平成6年分の事業所得金額を推計によって算定した上、原告に対し、平成9年3月10日付けで平成6年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした(以下、一括して、「本件課税処分」といい、個別には「本件更正処分」ないし「本件賦課処分」という。)。

(3)  原告の平成6年分の所得税に関する確定申告、更正及び賦課決定、異議申立て、異議決定、審査請求、裁決の経緯は、別紙1記載のとおりである(なお、本件課税処分は裁決により一部取り消されている。)。

3  当事者の主張

(1)  推計課税の必要性について

ア 被告

本件においては推計課税の必要性があった。

(ア) 本件調査の経緯等

a 原告による関係書類の提示

乙係官らは、本件調査開始後、平成8年7月ころまでの間に、原告及びその意を受けた丁から、本件各係争年分の自主計算書と記された収支計算書(以下「自主計算書」という。)、日付別に売上金額を記載した売上集計表(以下「売上集計表」という。)及び仕入先別、月別に仕入金額を記載した経費集計表(以下「経費集計表」という。)等の集計表、平成6年分の売上伝票と仕入れ、経費に係る領収証等の提示を受けた。

b 提示書類の問題点

乙係官の異動により、本件調査を単独で担当することとなった丙係官は、売上集計表については、売上伝票から集計した金額と売上集計表に記載された金額とが一致しない日があること、売上伝票については、001から100までの一連番号(以下「伝票ナンバー」という。)が付されている売上伝票(以下「連番売上伝票」という。)について、伝票ナンバーが連続せず、欠落している部分が相当数あること、たばこの売上について、売上数量が仕入数量に比べて少なくなっていること、経費に係る領収証の中に、金額を訂正している領収証や原告の事業との関連性の有無を確認できない領収証が存在することなどを認識した。

c 問題点に対する原告の説明

(a) 丙係官は、平成8年10月14日、原告の事務所において、丁に対し、これまでの調査の結果、上記bの各問題点があることを指摘した上、再度説明を求めるとともに、更に、提示されていない帳簿書類や売上伝票等の提示を求めた。

(b) これに対し、丁は、日々記帳している帳簿等はないこと、売上伝票は、1日分ずつ区分して、1か月ごとにまとめており、支払に係る領収証は、月別にまとめて封筒に入れて保管し、申告の時期に同人がこれらの書類に基づき集計表を作成すること、そのままの数字で集計すると赤字になるため、経費を削り、事業所得金額を黒字にして申告しているなどと述べたものの、それ以上の帳簿書類や売上伝票等の提示はしなかった。

(c) 売上伝票から集計した金額と売上集計表に記載された金額とが一致しない日があることについて、丁は、「売掛金(いわゆる「付け」)」分を入金日で売上に計上するため、売上集計表の記帳金額と伝票の合計額とは相違すると説明をした。

(d) 売上伝票に相当数の欠落があることについて、丁は、従業員が書き損じたり、売上伝票を3冊程度並行して使用していたため、番号がつながらないことがあると説明したが、一連番号から使用されたと推測される平成6年度の売上伝票の総枚数は約952枚であるところ、保存されている売上伝票は約702枚であり、全体の4分の1を超える約243枚が欠落していた。また、連番売上伝票は、概ね一連番号順に使用されており、かつ、同一番号の重複もなかった。

(e) たばこの売上数量と仕入数量との開差について、丁は、全てを売上伝票に記入しているわけではない旨の収入の計上漏れを自認する説明がされたのみであった。

(f) 経費に係る領収証について、丁から、原告らが支払先から白紙で受領した領収証に、後日丁が金額等を書き入れたものがあるとの説明がされたが、書き入れた金額の正確性の判断あるいは丁が金額を書き入れたとする領収証を特定できず、加えて、原告の事業との関連性を確認することができない相当数の領収証について、丁は具体的な説明や原始資料等の提示をしなかった。

(g) さらに、丙係官は、給料及び賃金の支払金額を検討するため、丁に対し、従業員の勤務実態等を明らかにする資料の提示を求めたところ、丁からは、従業員の勤務状況はカレンダーに記録し、従業員の給料はカレンダーに記録した勤務状況に基づいて支払っていたとの説明がされたが、従業員の勤務状況を記録したカレンダーを保存しておらず、従業員の中には不法滞在を理由に強制送還になった者もおり、当時の従業員がどこに住んでいるかも不明であるなどと述べるのみで、従業員の勤務実態を明らかにする書類等の提出はなく、カレンダーの提示もなかった。

(h) そこで、丙係官は、丁に対し、日々の事業の内容を記録した帳簿の備付けがなく、また、原告から提示された書類等からでは、原告の事業所得金額を実額で算定することはできない旨を説明するとともに、再度、欠落部分の売上伝票及びその他の原始書類等の記録の提示並びに丙係官が丁に指摘した事項に対する説明を求めたが、丁は、提示したものがすべてであり、それ以外の書類はなく、伝票を捨てたり、経費の水増しなどしていないなどと述べるのみであった。

d 推計課税による旨の説明

丙係官は、それまでの調査結果から、原告から提示された書類等には、上記cの(b)ないし(g)の問題があるため、原告の事業所得金額を実額で計算することはできないと判断されることから、推計の方法で課税額を計算せざるを得ないことを原告に説明した上、修正申告書の提出を奨励するようにとの上司の指示を受け、平成9年2月13日、原告事務所に臨場した。

このとき、原告は不在であったため、丙係官は、丁に対し、これまでの調査結果を説明し、やむを得ず、推計課税の方法で税額を計算せざるを得ないことを説明した上、被告主張の推計課税の方法による本件各係争年分の売上金額の所得金額を伝え、その理解を求めると共に、これに対応する修正申告書の提出を奨励したが、丁は、その提出に応じなかった。

(イ) 推計課税の必要性

被告は、上記の経緯により、原告の提示書類等に基づいて、実額によって原告の事業所得金額を算出することができなかったため、やむを得ず、推計課税の方式により原告の所得金額を算出し、これに基づいて本件課税処分を行ったのであり、本件においては、推計の必要性があったものというべきである。

(ウ) 原告の主張に対する反論

a 原告が連番売上伝票を使用していたとすれば、同一営業日の売上伝票は、従業員の外国人女性の人員に応じて各順に分散されるはずであるところ、原告から提出された連番売上伝票の使用状況は、別紙2の1,2のとおり、番号の多少の前後こそ認められるものの、概ね一連番号順に使用されており、同一番号の重複もなく、複数冊の売上伝票を同時に使用していたとは考えられない。

また、連続売上伝票を使用しているからといって、それが売上伝票を抜いていないということにはならない。

b 原告の保存していた売上伝票等の直接資料には不備な点が多数あり、その正確性についても、日々継続的に作成された帳簿書類等が作成されていないことから信憑性に欠けるものであり、このような直接資料によっては、原告の事業所得金額を実額により計算することはできない。

そして、売上伝票から集計した金額と売上集計表に記載された金額とが一致しない日があることについて、丁は「売掛金(付け)」分は、入金日で売上に計上したために集計表の記帳金額と伝票の合計額とが相違するとの説明があったものの、その不一致がすべて丁の説明による売掛金の計上方法の誤りによるものというわけではなかった。

また、売上集計表に計上されていない売上伝票(付番のない売上伝票)が存在することからすると、売上集計表はおよそ信用できるものではなく、さらに、売上集計表に計上されていない売上金額が正確に把握できない以上、売上集計表に若干の修正を加えたからといって、売上集計表が十分信頼できるものにならないことは明らかである。

c 単に接待の内容が「居酒屋開業の調査・研究と従業員慰安・同業者との旅行など」であるとの説明だけで、接待交際費に該当するか否かを判断することはおよそ不可能であり、個々の支払ごとに接待等の相手が誰であり、いかなる理由で接待したのか等の具体的な説明がない限り、原告の事業との関連性の有無を確認することはできないが、丁からそのような具体的な説明はなかった。

したがって、経費として認められないものが全体としてどのくらいあるのかを具体的に確認することさえできないから、経費として認められない部分を否認した上で実額計算することも不可能である。

そもそも、原告の場合、売上について実額で計算することが不可能であったのであるから、仮に経費について確実に経費として認められる部分のみを実額によって計算することが可能であったとしても、原告の事業所得金額については、これを実額で計算することはできない。

イ 原告

本件において推計課税することは許されない。

(ア) 本件調査の経緯等について

a 丁及び原告は、乙係官に対し、平成6年分の従業員の集金状況を記録したカレンダーを提示した。

b 乙係官は、原告らに対し、原告側が提示した飲食代の領収証について、接待の相手が誰でいかなる理由で接待したのかを明らかにすることを求めなかった。

c 原告との事業の関連性が明らかでないとされたその他の領収証について、丁は、「居酒屋開業の調査・研究と従業員慰安・同業者との旅行など」と具体的に説明している。

(イ) 被告の指摘する問題点について

a 平成6年当初の原告の事業は、外国人の女性従業員に接客させる形態のスナックであったが、そのような営業形態のスナックにおいては、テーブルごとに伝票を置き、あるいは従業員ごとに伝票を持たせて、お客の注文ごとに伝票に記入していくことが一般に行われており、原告の店も、従業員にそれぞれ伝票を一冊ずつ持たせていたのであり、接客の中で、伝票をメモ代わりに使うなどして、複数の売上伝票の伝票ナンバーを意識せずに使用していた。

したがって、原告が提示した売上伝票について、伝票ナンバーが連続していなかったとしても、そのことから直ちに売上伝票が信頼できないということにはならない。伝票ナンバーと日付が前後しているものが多数存在し、しかも、前後する日付が2日以上のものが見受けられ、複数の伝票の存在が裏付けられる。

b 仮に、被告の指摘するように、経費としては認められない部分があったとしても、その部分を否認した上で実額計算することは十分可能であるから、領収証等について事業との関連性が明らかでないものが含まれている点は何ら推計の必要性を基礎づけるものではない。

c 収入・支出の直接資料により具体的金額を明らかにすることが可能であれば、推計課税の必要性は存しないのであり、売上伝票や領収証等の直接資料が存在する本件では、各集計表が確定申告の際に作成されたことを理由として推計の必要性を導き出すことはできない。

d 売上伝票から集計した金額と売上の集計表に記載された金額とが一致しない日が存する点についても、その点については、丙係官から指摘を受けた際、その違いの原因が売掛分の入金にあることが判明し、これを照合したところすべて一致している点からすれば、売上集計表は全く信用し得ないというものではなく、若干の修正を加えれば、十分信頼できるものであった。

(2)  推計課税の合理性について

ア 被告

本件における推計課税は合理的である。

(ア) 推計課税は、納税者の所得金額を実額で把握できない場合に、やむを得ず間接資料によって真実の所得金額に近似するものとして推計した数値をもって所得金額と認定して課税するものであり、同業者の平均値によって推計課税をする場合に、当該納税者の個々の具体的営業条件をすべて把握した上でこれと同一の同業者だけを抽出することは不可能であるから、当該納税者と具体的営業条件を同一にする同業者の抽出を要求することは、推計による課税自体を否定することになりかねず、正確な帳簿書類を備え付け、調査に協力する納税者との間での課税の公平にも反する。

したがって、推計課税の性質上、比準同業者の抽出基準は、当該納税者の営業形態や規模の細部にわたって類似性が要求されるものではなく、一般的・抽象的にみて実額に近似した金額を算出するのに必要な限度で類似的に設定されることで足りるものというべきある。そして、比準同業者による推計の方法は、平均値による推計であり、同業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は捨象されることとなるから、その推計方法が業種の同一性、営業規模の類似性及び平均値算出過程の整合性等、推計の基礎的要件に欠けるところがない以上、営業条件の差異が平均値による推計自体を全く不合理なものとする程度に顕著なものでない限り、推計の合理性は是認されるものというべきである。

(イ) 関東信越国税局長は、平成11年9月21日付け一般通達(以下「本件通達」という。乙2号証)により、被告に対し、浦和税務署管内において原告と同様に所得税の納税地を有する個人事業者のうち、平成6年分につき、次のaないしeの条件に該当する者について、売上(収入)金額等の報告を求めた。

a 平成6年分の暦年を通じて飲食業(スナック)を営んでいる者であること

b 上記a以外の事業を兼職していない者であること

c 所得税の申告において、青色申告の承認を受けており、青色申告決算書を提出している者のうち、旧浦和市に事業所を有する者であること

d 年間の酒類等の仕入金額が42万4870円以上169万9478円以下の範囲内にある者であること

f 次の(a)及び(b)のいずれにも該当しない者であること

(a) 災害等により、経営状態が異常であると認められる者

(b) 税務署長から更正又は決定処分がされている者のうち、次のいずれかに該当する者

ⅰ 当該処分について国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間の経過していないもの

ⅱ 当該処分に対し不服申立てがされ、又は訴えが提起されて現在審理中であるもの

(ウ) 被告所部係官は、上司から、本件通達を示され、これに対する報告書の作成を命ぜられた。そこで、同係官は、本件通達に記載された各抽出基準を一つ一つ確認した上、申告者名簿、所得税の確定申告書(以下「申告書」という。)、所得税青色申告決算書(現金主義用を除く、以下「決算書」という。)及び不服申立をした者を記載した整理簿を使用するなどして、本件通達の調査対象者の抽出要件の全てを満たす者をもれなく、かつ、機械的に抽出する作業を行い、別紙3のとおりの報告を行った(以下「本件報告」という。)。

(エ) 被告は、本件報告をもとに、下記のとおり、推計により、原告の納付すべき税額を算定した。

a 事業所得金額 166万3612円

原告の平成6年分の事業所得金額は、次表のとおりであり、その計算根拠は、下記①ないし③の順号記載のとおりである。

順号

項目

金額

摘要

酒類等仕入金額

84万9739円

収入金額

689万7232円

①÷平均酒類等仕入率

(0.1232)

事業所得金額

166万3612円

②×平均所得率

(0.2412)

(a) 酒類等仕入金額 84万9739円

上記金額は、平成6年1月ないし同年10月末までの間に、原告がCから仕入れた酒類等の仕入金額である(乙1号証)

(b) 収入金額 689万7232円

上記金額は、(a)の酒類等仕入金額を、平成6年分の比準同業者の平均酒類等仕入率である0.1232(別紙3参照)で除して算出した金額(ただし、小数点以下の数値を切り捨てた後のもの。)である。

(c) 事業所得金額 166万3612円

上記金額は、上記(b)の収入金額に、平成6年分の比準同業者の平均所得率である0.2412(別紙3参照)を乗じて算出した金額(ただし、小数点以下の数値を切り捨てた後のもの。)である。

b 分離課税の長期譲渡所得の金額 1896万円

上記金額は、原告の確定申告額と同額である。

c 所得控除額 120万9500円

上記金額は、原告の確定申告額の93万9500円に、原告が所得税法2条1項31号に規定する寡婦に該当することから、同法81条1項に規定する寡婦控除額の27万円を加算した金額である。

d 課税総所得金額 45万4000円

上記金額は、aの事業所得金額からcの所得控除額を控除した金額(ただし、通則法118条1項により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

e 課税分離長期譲渡所得金額 1896万円

上記金額は、bの分離課税の長期譲渡所得の金額と同額である。

f 納付すべき税額 458万6700円

上記金額は、dの課税総所得金額に所得税法89条(平成6年法律第109号による改正前のもの。)に規定する税率を適用して算出した金額4万5400円に、eの課税分離長期譲渡所得金額に租税特別措置法31条1項(平成7年法律第55号による改正前のもの。)に規定する税率を適用して算出した金額568万8000円を加算した金額から、平成6年分所得税特別減税のための臨時措置法(平成6年法律第29号)4条の規定を適用して算出した特別減税額114万6680円を控除した金額(ただし、国税通則法119条1項により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

g 以上によれば、平成6年分の原告が納付すべき税額は、458万6700円であるところ、本件更正処分により原告が納付すべき税額(裁決により一部取消後の額)は、435万0400円であって、上記金額の範囲内であるから、本件更正処分は適法である。

(オ) 原告は、平成6年1月から同年11月5日まで飲食業(スナック)を営業していたが、同年12月3日からは飲食業(酒場)を営んでおり、暦年を通じて飲食業(スナック)を営む者ではない。これに対し、被告は、平成6年分の暦年を通じて、飲食業(スナック)を営んでいる者を原告の比準同業者として抽出しているが、この方法には、以下に述べるとおり、合理性が認められる。

a 年の途中で業種を変更したことによって変更前の事業の営業時間が1年未満である場合には、暦年を通じて営業した場合に比べて営業時間が短縮されることにより、一般的には売上金額が減少するが、それに伴って仕入金額も当然に減少するのであり、また、固定経費を除けば、通常の経費も減少するのが通例であるから、営業時間が1年未満であったとしても、暦年を通じて営業した場合と比較して所得率等が大きく変動するとは限らない。

また、年の途中で業種を変更したことにより、変更後の事業の営業期間が数か月程度と短期間であっても、変更前と変更後の事業の業態が類似している場合には、変更前の事業用資産を引き継ぐことができるなどの理由によって開業のために要する費用が相当額になるとは限らず、更に、開業費等は、繰延資産として翌年以降に繰り延べられ、必ずしも開業した年の必要経費となるものでもないから、所得税法における所得金額の計算上、変更後の事業が赤字になるとは限らない。

原告は、10か月余りの間飲食業(スナック)を営業しており、これは暦年を通じて営業している同業者と比較しても、酒類等仕入率及び所得率ともに大きな差異を生じることにはならないから、原告に対し、暦年を通じて営業している比準同業者の平均酒類等仕入率及び平均所得率を適用することには合理性がある。

b また、原告の飲食業(スナック)から飲食業(酒場)への業種の変更は、日本標準産業分類における中分類内の変更であり、その業種間にはもともと類似性が認められ、原告が保持する営業上の知識、経験等を十分に活用し、営業活動を行いうることが想定でき、更に、開業に伴う備品等の購入あるいは買換えや業種変更等に伴う除却損のような経費は、業種を変更しなくとも通常の営業の中で店舗改装や減価償却資産の買換え等に伴って発生する経費と同様に考えられるから、同業者の平均値を求める過程で吸収され、捨象されるものというべきである。

したがって、原告が平成6年中の相当期間営んでいた飲食業(スナック)について、飲食業(スナック)を暦年を通じて営んでいた者を比準同業者として抽出したとしても、それが推計の方法自体を不合理とするものではない。

(カ) 被告は、上記のとおり、同業者の事業規模の近似性を確保するため、酒類等の仕入金額が原告の半分ないし2倍以下の範囲内である同業者を抽出したが、このいわゆる倍半基準については、推計課税の基礎となる収入金額や仕入金額の多寡が当該納税者の事業規模を推測する蓋然性の高い価値尺度足り得るという経験則を前提とするものであり、これによって抽出された比準同業者の合理性及びこれによって得られた同業者率の内容の合理性が認められるならば、同業者の類似性を十分担保することができる。

なお、住所及び氏名を開示しない開業者に関する資料に基づく推計は、守秘義務(所得税法243条)がある以上やむを得ないものであり、その開示がなくとも、同業者の抽出方法の無作為性及びその資料の正確性等を明らかにすることによって合理性を担保することも不可能ではなく、本件においても合理性は担保されている。

(キ) 以上のとおり、被告が本件において採用した推計の方法は、その抽出基準が、業種及び業態の同一性、事業所の近接性、事業規模等の近似性等のいずれの点においても、同業者の類似性を判別する基礎的要件を欠くものでなく、合理的であることは明らかであり、また、その抽出過程に恣意的作為等が介在する余地も存しない。

更に、本件における比準同業者は、いずれも帳簿等の備え付けのある青色申告者であり、経営状態が異常であると認められる者や更正等に対して不服申立て等をしている者が除外されているのであるから、その収入金額及び必要経費の算出根拠となる正確性も十分担保されている。

したがって、本件比準同業者の平均酒類等仕入率及び平均所得率は、十分に合理性を有するものであり、本件における推計の方法には合理性が認められるものというべきである。

(ク) 仮に、原告が事業を変更したことに伴って同業者の平均値を求める過程で平均値に捨象されないような特殊な事情、すなわち、居酒屋の開業に伴って支出した開業費で、推計を行うに際し、それを特別経費として差し引かなければ推計の方法を不合理とする特殊な事情があり得るとしても、本訴において原告が主張する開業費(甲20号証)には、以下に述べるとおり、そのすべてにおいて不明なものが多く、開業費としての区分が適正であるか否かの判断さえできないため、被告が推計によって算出した原告の事業所得金額からこれらの金額を差し引くことはできないものというべきである。

a 甲20号証の1及び2

いずれも原告作成に係る出金伝票に記載されたものにすぎず、領収証等さえ提出されていない。

b 同号証の3,22及び31

各領収証には、但書きの記載がなく、同領収証に係る支払分の内訳明細が明らかでない。また、開業費としての区分も適正であるか否か不明である。

c 同号証の4

この領収証は、青色カーボン複写によって記載されているところ、「追加、製氷器」に係る2000円、手数料金額欄上部の2000円及び欄外の5000円がいずれもボールペン書きで追記されており、領収証としては不自然な体裁である。そればかりか、領収証に記載された申請者は「戊」であり、しかも、その領収証に係る開業費としての原告の主張額は、手数料の金額欄の合計額の5090円ではなく、欄外に追記された5000円である(甲4号証117頁・11月21日欄参照)。

d 同号証の5(振込受領証)、同号証の18ないし20,23,24,26,29,30,32ないし36(領収証)、同号証の27(計算テープ)

同領収証に係る支払分の内訳明細が明らかでなく、また、開業費としての区分も適正であるか否か不明である。

e 同号証の6ないし17(領収証)

品名等から概ね内容の推認はできるものの、開業費としての区分が適正であるか否か不明である。

f 同号証の25(領収証)

同領収証の収入印紙の左側に鉛筆書きで、その領収金額82万9000円を冷蔵庫工具器具備品31万950円と開業費51万8050円とに分けて記載されているが、同領収証に記載された「品代別紙」の別紙が提出されておらず、同領収証に係る支払分の内訳明細が明らかにされていない。また、開業費としての区分も適正であるか否か不明である。しかも、同領収証によれば、有限会社Dからの請求金額は92万9008円であり、内金として11月15日に10万円を支払っていると認められるところ、上記内金について、原告は、開業費、建物付属設備及び工具器具備品のいずれの必要経費としても主張していない。

g 同号証の28(領収証)

但書に「折込料B5 5500枚として」との記載はあるものの、同領収証の宛名は「スナックA」になっており、内訳明細も明らかでないことから、原告のスナック営業期間における新聞折込料の支払である可能性も払拭できず、また、開業費としての区分も適正であるか否か不明である。

イ 原告

本件における推計課税は合理性を欠く。

(ア) 原告は、平成6年1月から同年11月5日までスナックを営業したものの、同月6日から12月5日までは全く営業せず、同月6日からは居酒屋に業種転換して営業し、売上減や店舗改装工事等の多額の資本を投下したという特殊事情が存在する。それにもかかわらず、被告は、暦年を通じて営業した通常のスナック業者を比較対象に選定しており、同業者の選択に誤りがある。

(イ) スナック営業は、店舗によって客単価、経費が大きく異なり、営業場所、従業員の有無、人数、店舗の大きさなど、比較するのに困難な要素が多い。それを一律にどこで、どのような形態で営業しているのかも明らかでない同業者を並べても比較は困難である。

(3)  実額反証について

ア 原告

(ア) 原告の平成6年の営業行為に基づく収支等は、別紙4収支等一覧表記載のとおりであり、原告の納付すべき所得税額は、118万8200円である。

平成6年度の原告の事業所得が約1300万円の赤字(損失)になったのは、業種転換に伴うもの、具体的には売上の減少と特別経費の増加が原因となったものであるから、原告の主張には十分な理由があるものというべきである。

したがって、上記金額を超える税額の納付を命ずる本件課税処分は違法である。

(イ) 被告は、実額反証の立証の対象として、a その主張する収入及び必要経費の各金額が存在すること、b その収入金額が全ての取引先から発生した全ての収入金額であること、c その経費がその収入金額と対応するものであることの3点であり、かつ、その立証の程度は合理的疑いを容れない程度、すなわち本証であると主張するが、aに止まらず、b及びcの主張、立証を求めるのは原告に過大あるいは著しく困難な立証を強いるものというべきである。すなわち、bについては、主張額以外の収入がないことの立証は、いわゆる「不存在の証明」を強いるものであり、公平な証明責任の分配という理念に反し、cについても、所得税法は、当該年度の必要経費について収入と対応させて明らかにすることまでは求めていないものというべきである。

更に、実額反証を再抗弁と解する見解は、推計課税の必要性・合理性と訴訟時の実額主張が両立した上で、実額が優先するという点に重点を置いていると考えられるが、その立証責任や主張、立証の対象、程度等については、公平の観点から定めれられるべきである。

すなわち、本来、行政処分について適法性が問題とされる場合、その違法性の主張、立証は被告である国が負うべきであり、この適法性に疑いが生じた場合には、当該行政処分は違法とならざるを得ない。そして、課税処分も行政処分であるから、被告が課税処分を適法であると主張するのに対し、原告はこれに疑いがあることを主張する場合、それに対応する資料を提出すればよいと考えるべきであり、実額反証も反証で足りると解すべきである。

(ウ) 被告の主張によると、会計帳簿を備えていない納税者は、およそ実額反証をすることが不可能になるが、会計帳簿等が存在しないため、推計課税がされる場合が多い実情を考えたとき、このように会計帳簿を実額反証の不可欠の前提とすること自体、納税者の実額反証の可能性を全て奪うものであり、相当でない。

イ 被告

(ア) 課税庁を被告とする所得税更正処分の取消訴訟において、原告が直接資料によってその収入及び必要経費の実額を主張・立証する、いわゆる実額反証は、被告課税庁の行う推計課税の適法性の抗弁に対する単なる反証ではなく、自らが主張・立証責任を負うところの再抗弁であり、しかも、その再抗弁は、単に収入又は必要経費の実額の一部又は全部を主張・立証するだけでは足りず、収入及び必要経費の実額のすべてにわたって、これを主張・立証することが必要であると解すべきである。

すなわち、実額反証をする原告においては、a その主張する収入及び必要経費の各金額が存在すること、b その収入金額がすべての取引先から発生したすべての収入金額であること、c その経費がその収入金額と対応するもの(必要経費)であることの3点を証明しなければならないものというべきである。この3点についての主張・立証を原告に求めても、課税標準である所得を算定する要素たる売上金額及び必要経費は、納税者の支配領域内で起こる事柄であり、納税者の最もよく知るところであるから、原告に過酷な負担を課すものとはいえない。

そして、その証明は、合理的疑いを容れない程度の証明、すなわち、正規の簿記の原則に則した組織的な帳簿資料等でなければ不可能な証明を意味すると解すべきである。

(イ) 実額反証においては、会計帳簿の存在が不可欠の前提であり、殊に、常に現金残高を検証していたことが窺われる現金出納帳の存在が不可欠であるから、このような会計諸帳簿に基づかない実額反証は、極めて例外的な場合を除き、許容される余地はない。

実額反証が奏功するためには、事業に関して生じる収入及び支出の一切を細大漏らさず記録した会計帳簿が存在することが最低限必要であるというべきであって、上記会計帳簿を前提としない実額反証は、そもそも実額反証の各要証事項を合理的な疑いを容れない程度に立証する可能性がないというべきであるから、その立証方法自体からみて、失当であることが明らかというべきである。

(ウ) 原告については、事業に関連して生じる収入及び支出の一切を細大漏らさず記録した会計帳簿が存在せず、さらに、原告が実額反証の証拠として提出した書証等についても、極めて不完全、あるいは真実と反するものであって、原告の平成6年分の事業所得金額を実額で算定するに足りる証拠資料とは到底成り得ないものであるから、原告の実額反証は、その点において既に失当である。

(エ) なお、原告が実額反証の証拠として提出した書証等には、別紙5記載のとおりの問題があり、その収入、必要経費及びそれらの対応関係のいずれについても、原告の主張は、失当である。

(4)  本件賦課決定について

ア 被告

平成6年分の過少申告加算税の額である62万7500円は、本件更正処分によって、原告が新たに納付すべきこととなった税額435万円に、国税通則法65条1項の規定に基づき、100分の10の割合を乗じた金額43万5000円と、同条2項の規定に基づき、原告が新たに納付すべきこととなった税額(435万円)のうち50万円を超える部分に相当する金額である385万円に100分の5の割合を乗じて計算した金額19万2500円との合計額である。

イ 原告

被告の主張は争う。

第3争点に対する判断

1  推計の必要性について

(1)  甲4号証ないし25号証、乙4号証、5号証、7号証ないし14号証、証人丙、同丁の各証言及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。

ア 乙係官らは、本件調査過程において、平成8年7月ころまでの間に、原告及び丁から、本件各係争年分の自主計算書、売上集計表及び経費集計表等の集計表等の集計表、平成6年分の売上伝票と仕入れ、経費にかかる領収証等の提示を受けた。

イ 乙係官の異動により、本件調査を単独で担当することとなった丙係官は、上記提示書類等を検討したところ、売上集計表については、売上伝票から集計した金額と売上集計表に記載された金額とが一致しない日があること、売上伝票については、連番売上伝票について、伝票ナンバーが連続せず、欠落している部分が相当数あること、たばこの売上について、仕入数量と売上数量とを比較したところ、売上数量が仕入数量に比べて少なくなっていること、経費に係る領収証の中に、金額を訂正している領収証や原告の事業との関連性の有無を確認できない領収証が存在することなどを認識した。

ウ そこで、丙係官は、同年10月14日、原告の事務所において、丁に対し、これまでの調査の結果、上記イの各問題点があることを指摘した上、日々の記帳状況や決算に至る経緯などについて、再度説明を求めるとともに、さらに、提示されていない帳簿書類や売上伝票等がある場合には、その書類等を提示するように求めた。

これに対し、丁は、日々記帳している帳簿等は存在しないこと、売上伝票は1日分をホッチキスで止め、1か月ごとに輪ゴムでまとめておき、支払に係る領収証は月別にまとめて封筒に入れて保管し、申告の時期に同人がこれらの書類に基づき集計表を作成すること、そのままの数字で集計すると赤字になるため、経費を削り、事業所得金額を黒字にしたところで申告しているなどと述べるのみで、それ以上の帳簿書類や売上伝票等の提示はしなかった。

売上伝票から集計した金額と売上集計表に記載された金額とが一致しない日があることについて、丁は、「売掛金(いわゆる「付け」)」分を入金日で売上に計上するため、売上集計表の記帳金額と伝票の合計額とは相違すると説明をしたが、一致しないもののすべてが「付け」によるというわけではなかった。

売上伝票に相当数の欠落があることについて、丁は、従業員が書き損じたり、売上伝票を3冊程度並行して使用していたため、番号がつながらないことがあると説明したが、一連番号から使用されたと推測される平成6年度の売上伝票の総枚数は約952枚であるところ、保存されている売上伝票は約709枚であり、全体の4分の1を超える約243枚が欠落していることになり、書き損じ等を理由にするにはあまりに欠落した枚数が多く、また、連番売上伝票は、概ね一連番号順に使用されており、かつ、同一番号の重複もなかったことから、複数冊の売上伝票が同時に使用されていたとは考えられなかった。

たばこの売上数量と仕入数量との開差について、丁は、全てを売上伝票に記入しているわけではない旨の収入の計上漏れを自認する説明がされたのみであった。

経費に係る領収証について、丁からは、原告らが支払先から白紙で受領した領収証に、後日丁が金額等を書き入れたものがあるとの説明がなされたが、書き入れた金額の正確性の判断あるいは丁が金額を書き入れたとする領収証を特定できず、加えて、原告の事業との関連性を確認することができない相当数の領収証について、丁は具体的な説明や原始資料等の提示をしなかったことから、丙係官は、これらにつき、原告の事業との関連性の有無を確認できなかった。

丙係官は、給料及び賃金の支払金額を検討するため、丁に対し、従業員の勤務実態等を明らかにする資料の提示を求めたところ、丁からは、従業員の勤務状況はカレンダーに記録し、従業員の給料はカレンダーに記録した勤務状況に基づいて支払っていたとの説明がされたが、丁は、従業員の勤務状況を記録したカレンダーを保存しておらず、従業員の中には不法滞在を理由に強制送還になった者もおり、当時の従業員がどこに住んでいるかも不明であるなどと述べるのみで、従業員の勤務実態を明らかにする書類等の提出はなく、当該カレンダーの提示もなかった。

そこで、丙係官は、丁に対し、日々の事業の内容を記録した帳簿の備付けがなく、また、原告から提示された書類等からでは、原告の事業所得金額を実額で算定することはできない旨を説明するとともに、再度、欠落部分の売上伝票及びその他の原始書類等の記録の提示並びに丙係官が丁に指摘した事項に対する説明を求めたが、丁は、既に提示したものがすべてであり、それ以外の書類はなく、伝票を捨てたり、経費の水増しなどしていないなどと述べるのみであった。

エ 丙係官は、それまでの調査結果から、原告から提示された書類等には、上記のウの各問題があるため、原告の事業所得金額を実額で計算できないと判断されることから、推計の方法で課税額を計算せざるを得ないことを原告に説明した上、修正申告書の提出を奨励するようにとの上司の指示を受け、平成9年2月13日、原告事務所に臨場した。

原告は不在であったため、丙係官は、丁に対し、これまでの調査結果を説明し、原告から提示された書類等からでは、原告の事業所得金額を実額で計算することができないこと、そのため、やむを得ず、推計の方法で計算せざるを得ないことを説明した上、被告としての推計課税の方法による本件各係争年分の売上金額の所得金額を丁に伝え、その理解を求めると共に、これに対応する修正申告書の提出を奨励したが、丁は、その提出に応じなかった。

(2)  以上の事実関係によると、原告は、日々継続的に、秩序正しく記録された帳簿等を備え付けておらず、その提出した関係書類には、上記の各問題があり、さらに、被告係官が問題点を原告に対して指摘し、欠落部分の売上伝票及びその他の原始書類等の記録の提示並びに同係官の指摘事項に対する説明を求めても、上記集計表や原始書類の不備を補うに十分な資料の提示や説明はなかったのであるから、被告が、原告の提示書類等に基づいては、実額によって原告の事業所得金額を算出することができないと判断して、推計により原告の所得金額を算出し、これに基づいて本件課税処分を行ったことは相当であり、したがって、本件においては推計課税の必要性があったものというべきである。

(3)  これに対し、原告は前記のとおり主張して推計課税の必要性の存在を争うが、以下のとおり、いずれも理由がない。

ア 原告は、外国人の女性従業員にそれぞれ連番売上伝票を1冊ずつ持たせ、お客の注文ごとに伝票を記入しており、接客に際して伝票をメモ代わりに使用することも行われていたため、伝票ナンバーが連続していなかったとしても、売上伝票を信頼できないとはいえないと主張する。

しかしながら、提出された売上伝票から推測される客数からすれば、そもそも、外国人の女性従業員に連番売上伝票を持たせておく必要性自体乏しいものというべきである上、原告主張のように連番売上伝票を使用していたとすれば、同一営業日の売上伝票は、従業員のフィリピン女性の人員に応じて各順に分散するはずであるところ、甲5号証によれば、原告から提出された連番売上伝票の使用状況は、別紙2の1、2のとおりであり、番号の多少の前後こそ認められるものの、概ね一連番号順に使用されており、かつ、同一番号の重複もない。また、売上伝票(甲5号証)は、いずれも日本語を書き慣れた者により記載されており、外国人が記載したと明確に把握できる記載も認められない。

以上によれば、複数冊の売上伝票を外国人女性従業員に渡しておき、同時に使用していたとする原告の主張事実を認めることはできない。

イ 原告は、売上伝票や領収証等の直接資料が存する本件では、各集計表が確定申告の際に作成されたことをもって推計の必要性を導き出すことはできず、また、売上伝票から集計した金額と売上集計表に記載された金額とが一致しない日が存する点についての丙係官からの指摘に際し、その原因が売掛金(付け)の入金にあることが判明し、これを照合したところすべて一致していたことからすれば、売上集計表は全く信用し得ないというものでなく、若干の修正を加えれば、十分信頼できるものであった旨主張する。

しかしながら、上記のとおり、売上伝票に欠落の可能性が高く、そもそも信用できないのであるから、売上集計表自体に信用性が求められるところ、原告は、売上伝票から集計した金額と売上集計表に記載された金額とが一致しない日が存する理由として、売掛金(付け)分を入金日で売上に計上したためであるとするのであるが、売上集計表を申告時にまとめて作成したという原告の主張からすれば、そのような事態が生じること自体不自然であって、不一致が生じた説得的な理由とはなり得ないものというべきである。更に、売上集計表に計上されていない売上伝票(付番のない売上伝票)も存在していることからすると、売上集計表を信用できるものと評価することはできない。

そして、以上のとおり、売上集計表に計上されていない売上金額が正確に把握できない以上、売上集計表に若干の修正を加えたとしても、売上集計表が十分信頼できるものとはならないことは明らかであるから、原告の主張は採用できない。

ウ 原告は、経費の領収証に関する原告の事業との関連性について、丁が調査に際し、「居酒屋開業の調査・研究と従業員慰安・同業者との旅行など」と具体的に説明しており、仮に、経費として認められない部分があれば、これを否認した上で実額計算することが十分可能であるから、領収証等の中に事業との関連が明らかでないものが含まれていることは、推計の必要性を基礎づけるものにはならない旨主張する。

しかし、証人丁の証言によれば、丁は、接待の内容が「居酒屋開業の調査・研究と従業員慰安・同業者との旅行など」であると説明したにとどまり、これに沿う具体的な資料を提出しなかったことが明らかである。そうすると、原告の事業との関連性の有無を確認し、経費として認められない部分とを区別することはできないものというべきであるから、全体を経費として実額計算することは不可能というべきである。

よって、原告の主張は採用できない。

2  推計課税の合理性について

(1)  甲25号証、乙1号証ないし3号証、5号証ないし7号証、11号証、証人丙、同丁の各証言及び弁論の全趣旨によれば、被告は、その主張のとおり(第2の3の(2)のア(イ)ないし(エ))の推計方法を用いて原告の税額を算定したものであることを認めることができる。

(2)  上記事実によると、被告は、原告がスナックを営業した平成6年1月から同年11月5日まで(以下「スナック期間」という。)について、平成6年分の暦年を通じて、スナックを営んでいる者を原告の比準同業者として抽出した上、スナック期間の事業所得金額を算定しているところ、上記の抽出基準により選定された比準同業者は、業種、業態、事業場所、事業規模等において原告と類似性を有し、しかも、帳簿等の備付けを義務づけられた青色申告者であるから、その申告内容の正確性も担保されていると認めることができる。

そして、その選定は、機械的にされたものであり、抽出過程に被告の恣意が入る余地もないとみることができるから、比準同業者の算出所得率の平均値については、各業者個別事情を捨象するに足りる普遍性を肯定することができるものというべきである。

したがって、原告のスナック営業期間分の酒類等仕入金額を、上記の基準と方法により抽出された比準同業者の平均酒類等仕入率で除して、収入金額を算定し、更に、収入金額に平均所得率を乗じることによって、スナック期間の事業所得金額を推計する方法は、合理的ということができる。

そうすると、スナック期間における原告の事業所得金額は、被告主張のとおり、166万3612円となる。

(3)  居酒屋期間について

ア ところで、被告は、平成6年11月6日に原告がスナックを廃業し、同年12月3日から居酒屋を営んでいたにもかかわらず、同月3日から同月末日まで(以下「居酒屋期間」という。)の損益を計算せず、スナック期間の事業所得金額を、平成6年分の事業所得金額としており、その根拠として、被告は、年の途中で業種を変更したことにより、変更後の事業の営業期間が数か月程度と短期間であったとしても、変更前後の事業の業態が類似している場合には、変更前の事業用資産を引き継ぐことができるなどの理由によって開業のために要する費用(以下「開業費」という。)が相当額になるとは限らず、また、開業費等は、繰延資産として翌年以降に繰り延べられ、必ずしも開業した年の必要経費となるものでもないから、所得税法における所得金額の計算上、変更後の事業が赤字になるとは限らない、原告の飲食業(スナック)から飲食業(酒場)への業種の変更は、日本標準産業分類における中分類内の変更であり、その業種間には類似性が認められ、原告が保持する営業上の知識、経験等を十分に活用し、営業活動を行いうることが想定でき、さらに、開業に伴う備品等の購入あるいは買換えや業種変更等に伴う除却損のような経費は、業種を変更しなくとも通常の営業の中で店舗改装や減価償却資産の買換え等に伴って発生する経費と同様に考えられるから、同業者の平均値を求める過程で吸収されて捨象されるべきであると主張している。

イ しかしながら、開業費は、一般に事業を営む者の経営方針により支出額が変動するため、そのための金額の支出の多寡は多様であって、営業形態に類似性が認められたからといって、開業費についても類似性が常に認められるとはいい難いものというべきである。そうすると、被告からスナック店の設備と居酒屋の設備とを比較できる資料の提出もない以上、本件開業費を、業種を変更しなくとも通常の営業の中で店舗改装や減価償却資産の買換え等に伴って発生する経費と同視することまではできず、同業者の平均値を求める過程で吸収されて捨象される範囲内に収まっていたとは断ぜられないものというべきである。

そうであるとすれば、開業費の額次第によっては、居酒屋期間の事業所得金額が赤字となる可能性もあることを考慮すると、平成6年分の事業所得金額の算定に当たり、これをスナック期間の推計のみで足りるとすることはできず、その限度において被告の主張は合理性を欠くものといわざるを得ない。

(4)  そうすると、原告の平成6年分の事業所得金額については、スナック期間の事業所得金額に加えて、開業費を含めた居酒屋期間の事業所得金額を合計したものとして計算することとするのが相当であるから、以下においてこれを算定することとする。

ア 居酒屋期間の事業所得金額

(ア) 居酒屋期間の事業所得金額の算定に当たり、原告は平成6年12月に開業している事実が認められるところ、その特殊事情を含む原告に類似する同業者の資料は提出されていないから、居酒屋期間の事業所得金額については、平成6年分の居酒屋営業の同業者の平均的な差益率及び所得率をもって同期間に係る事業所得金額を合理的に算定することができない。

しかしながら、平成6年居酒屋期間の事業所得金額は、平成6年スナック期間と同様の方法で抽出され、合理性の認められる平成7年分の飲食業(酒場)の同業者調査表(別紙6、乙3号証参照)を用いた上、推計することができるものというべきである。

(イ) 開業費は、類似同業者にあっては通常存在する費用とはいえない特異な支出であり、類似同業者に比して通常存在する程度の営業条件等の差異が顕著なものと認められ、類似同業者の平均値に吸収して捨象される範囲内のものということはできないから、このような状況下においては、開業費を別途考慮して算定する方法が合理的というべきである。

そうすると、本件においては、平成6年居酒屋期間の事業所得金額は、平成7年分の同業者率を適用し、更に、原告につき同業者所得率に変動をきたす特殊事情と認められる開業費を考慮するのが最も合理性のある方法と認めるべきである。

(ウ) そこで、上記の方法により平成6年居酒屋期間の事業所得金額を算定すると、甲4号証、20号証、乙1号証ないし3号証、6号証及び弁論の全趣旨によれば、次表のとおりであり、その計算根拠は、後記①ないし③のとおりである。

順号

項目

金額

摘要

種類等仕入金額

57万1935円

収入金額

330万4072円

①÷平均種類等仕入率

(0.1731)

開業費

133万0246円

事業所得金額

△62万3175円

②×平均所得率-③

(0.2140)

a 酒類等仕入金額 57万1935円

上記金額は、平成6年12月に、原告がCから仕入れた酒類等の仕入金額である(乙1号証)

b 収入金額 330万4072円

上記金額は、aの酒類等仕入金額を、平成7年分の比準同業者の平均酒類等仕入率である0.1731(別紙6参照)で除して算出した金額(ただし、小数点以下の数値を切り捨てた後のもの。)である。

c 開業費の額 133万0246円

上記のとおり、開業費は一般に事業を営む者の経営方針により支出するもので、この金額の支出の多寡は多様であり、推計の方法によっては合理的に算定できない特殊事情といえる。そうすると、開業費の額については、原告が主張・立証する開業費のうち、開業費として認められる額を実額で算定するのが、最も合理的である。

原告は、開業費として、159万4226円を要したものと主張し、被告は、原告の挙げる費用が開業費の区分に含まれるか疑問であるなどとして、原告の開業費は認められない旨の主張をする。

そこで検討するに、甲4号証、甲20号証及び弁論の全趣旨を総合すると、平成6年11月から12月にかけて、原告が総勘定元帳に基づいて主張する開業費のうち、領収証の存しない同年11月6日付けの容器代4万円(甲20号証の1)、同月8日付けの取壊し手数料18万円(甲20号証の2)、同年12月3日付けペーパー代1000円、計算テープの形態ではあるが、相手方、品目とも全く不明である同年12月1日付け洗剤ペーパー代3万2239円(甲20号証の27)、総勘定元帳の摘要欄に記載がなく、領収証からも開業費としての区分に属するか不明である同月2日付けの1万円(甲20号証の34)、同月3日付けの741円(甲20号証の35)の合計26万3980円については、開業費とは認めることはできないが、その余の支出については、その費目及び支出の時期に照らし、居酒屋営業の開業費と認めるのが相当である。

そうすると、原告の開業費は、133万0246円となる。

d 事業所得金額 △62万3175円

上記金額は、bの収入金額に、平成7年分の比準同業者の平均所得率である0.2140(別紙6参照)を乗じ(ただし、小数点以下の数値を切り捨てた後のもの。)、更に、当裁判所が相当と認める上記cの開業費用の額を減算して算定したものである。

エ 以上の結果、原告の平成6年分の事業所得金額は、平成6年スナック期間の事業所得金額166万3612円と平成6年居酒屋期間の事業所得金額△62万3175円の合計額104万0437円となる。

オ 以上の事業所得金額をもとに、以下の数値に基づいて計算すると、以下のとおりとなる。

(ア) 分離課税の長期譲渡所得の金額 1896万円

(イ) 所得控除額 120万9500円

(ウ) 課税総所得金額 0円

上記金額は、事業所得金額から(イ)の所得控除額を控除した金額である。

(エ) 課税分離長期譲渡所得金額 1879万円

上記金額は、(ア)の分離課税の長期譲渡所得の金額から、(イ)の所得控除額から事業所得金額を差し引いた金額を控除した金額(ただし、国税通則法118条1項により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

(オ) 納付すべき税額 450万9600円

上記金額は、(エ)の課税分離長期譲渡所得金額に租税特別措置法31条1項(平成7年法律第55号による改正前のもの。)に規定する税率を適用して算出した金額563万7000円から、平成6年分所得税特別減税のための臨時措置法(平成6年法律第29号)4条の規定を適用して算出した特別減税額112万7400円を控除した金額である。

カ 以上によれば、平成6年分の原告が納付すべき税額は450万9600円であるところ、本件更正処分により原告が納付すべき税額(裁決により一部取消後の額)は、435万0400円であって、上記の金額の範囲内であるから、本件更正処分は適法である。

(5)  なお、原告は、スナック店営業は、店舗によって客単価、経費が大きく異なり、営業場所、従業員の有無、人数、店舗の大きさなど、比較するのに困難な要素が多い、それを一律にどこで、どのような形態で営業しているのかも明らかでない同業者を並べても比較は困難であるとして、推計の合理性がない旨主張する。

しかしながら、本件のように、同業者による推計の方法が平均値による推計の場合には、原告が主張する、従業員の有無や人数、店舗の大きさなどの同業者間に通常存在する営業諸条件の差異は、平均値を求める過程で捨象されるというべきであり、また、この点の比較をしなくとも、被告が用いた推計の方法の合理性を争うことができるから、本件比準同業者の経営内容等が開示されなかったことのみをもって、直ちに合理性に疑いがあるということはできない。

したがって、原告の主張は失当である。

3  原告の実額の主張(いわゆる実額反証の主張)について

(1)  原告は、本来、行政処分について違法性が問題とされる場合、その適法性の主張、立証は被告である国が負うべきであり、この適法性に疑いが生じた場合には、当該行政処分は違法とならざるを得ないところ、課税処分も行政処分であるから、被告が推計による課税処分を適法であると主張する場合において、原告がこれに疑いがあると主張する場合には、それに対応する資料を提出すればよいと考えるべきであり、実額反証と反証で足りると解すべきであると主張した上、原告は、会計帳簿等を備え付けていなかったが、売上伝票、領収証等を保存していたとして、これらに基づき、平成6年分の売上金額、仕入金額及び必要経費の額の各実額を指摘して、被告主張額を下回る平成6年分の事業所得金額及び総所得金額を主張する。

このように、課税庁が推計によって把握した売上金額等について、原告が、これと実額とは異なるとして、所得金額において課税庁の認定額を下回ることとなる実額の主張・立証をする場合においては、推計によって算出された額は、近似値にすぎないから、実額が把握できるのであれば、それによって所得税額を算定すべきものと解される。しかし、このようないわゆる実額反証は、課税庁の推計に合理性が認められ、これによって把握された所得額をもって所得税額算出の基礎とすることが適法であるとされているのに、右のような実額が本来持つ優先性をもって、その適法性を覆すものなのであるから、実額の主張・立証は、これを排斥するものとして完全なものでなければならないものというべきである。

そして、所得税法37条1項の規定に照らせば、原告は、係争年分の総売上金額及び必要経費の実額についての立証を尽くした上、売上金額と必要経費との対応関係(期間対応)を立証しない限り、当該年分の必要経費の実額を立証しても、有効な経費の立証とはなり得ないというべきである。すなわち、訴訟において立証の対象となる収入金額や経費の額はあくまでも課税標準となる所得金額を算出する基礎となるべきものであることに照らせば、原告が主張・立証する収入金額が、納税者の総収入金額の一部にすぎないと窺われる場合においては、この金額から総経費の実額を控除した額をもって、所得金額とは認め難いのであって、係争年分の総収入金額の実額の立証が尽くされない限り、仮に係争年分の経費の実額を立証したとしても、その実額立証は、算出所得金額の推計を覆すに足りる有効な実額反証としての意味を持ち得ないものというべきである。

(2)  これを本件についてみると、原告の平成6年分の売上金額の立証は、原告が提出した売上伝票と売上集計表を根拠とするものであるが、甲5号証によれば、別紙2のとおり、原告が提示した売上伝票は、平成6年度において、既に認定したとおり、多数の欠落が認められる。

この点に関し、原告は、外国人の従業員ごとに伝票を持たせて、客の注文ごとに伝票を記入していたため、従業員にそれぞれ伝票を一冊ずつ持たせていたのであり、接客の中で伝票をメモ代わりに使うなどしていたため、売上伝票が欠落したと主張する。

しかし、上記認定のとおり、売上伝票の4分の1を超える枚数が欠落しており、連番売上伝票は、別紙2のとおり、概ね一連番号順に使用されおり、かつ、同一番号の重複もなかったことからすると、上記の原告の主張は首肯しがたい。そうすると、売上伝票の欠落は、その欠落部分にも原告の売上となった取引が記載されていたが、何らかの理由でそれが失われたものではないかとの疑いをいれる余地があるものといわざるを得ない。

したがって、原告提出の売上伝票等の書証によっては、原告主張の売上金額が全て捕捉漏れのない総収入金額であることについて、疑いの余地のない程度に立証が尽くされたとはいえないというべきであり、原告主張の売上金額について実額反証として意味を持ちうる程度の立証がなされたとはいえないというべきである。

(3)  上記認定説示のとおり、本件においては、原告が実額によって平成6年分の総収入金額の立証が尽くされていない以上、仮に、同年分の経費の実額が立証されたとしても、その実額立証は、算出所得金額の推計を覆すに足りる有効な実額反証としての意味を持ち得ない。

したがって、原告の必要経費の実額反証は、算出所得金額の前記推計を覆すには足りないことが明らかである。

4  本件賦課決定について

以上の事実関係のもとにおいては、被告主張のとおり、平成6年分の過少申告加算税の額は、62万7500円となる。

5  結論

そうすると、本件更正及び過少申告加算税の賦課決定は、いずれも、原告の総所得金額の範囲内において、適法にされたものと認められる。

よって、本件更正及び過少申告加算税の賦課決定の取消を求める本訴請求は、理由がないから、いずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 松田浩養 裁判官 菱山泰男)

裁判長裁判官 田中壯太は転補につき署名押印することができない。 裁判官 松田浩養

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